ドル円見通し 市場介入を思わせる昨夜の急落から反騰するも乱調な展開に
〇ドル円、7/11夜の米CPI上昇率の鈍化をきっかけに、発表前の161.60近辺から22時台安値157.42へ急落
〇早々に158円台へ戻し、7/12早朝には159円台回復、8時台に再び158円を一時割り込むなど乱調な展開
〇7/11夜の急落は市場介入だったのではないかとの声も聞かれたが、神田財務官はコメントせず
〇米6月CPIは前月比でマイナスとなる、9月利下げと年末までの追加利下げへの期待がより高まった印象
〇米長期債利回りは一段と低下、NYダウ連騰、ナスダックは史上最高値を更新するも8日ぶりの反落
〇7/11夜安値157.42割れを回避する内は反騰期入りとみて、159.50超えからは160前後試しを想定する
〇7/11夜安値157.4割れからは、156円前後への下落を想定する
【概況】
ドル円は7月11日夜の米6月CPI上昇率が予想以上に鈍化したことをきっかけとした米長期債利回り低下とドル安により発表前の161.60円近辺から22時台安値157.42円へ急落した。米CPI発表がきっかけだったものの急落規模が4月29日の市場介入時に近い勢いだったために今年三度目の市場介入だったのではないかとの声も聞かれたが、神田財務官はコメントせずとし、売り一巡感から158円台へ早々に戻すと12日早朝には159円台を回復した。
米CPI発表後はユーロドルやポンドドルが急伸してドル全面安だったが、クロス円全般はドル円の急落が勝ったことでドル円と同様に急落して円高反応が突出したが、市場介入への警戒感から売り注文の連鎖反応を招いたことによる急落だったとすれば過剰反応に対する修正で12日は揺れ返しの上昇へ進む可能性もあると思われる。しかし、12日8時台に再び158円を一時割り込むなど乱調な展開が続いており、もう一段安へ大幅下落する場合は裏に介入があったことを疑う必要もありそうだ。
7月3日夜高値161.94円と7月11日未明高値161.80円をダブルトップ型として急落したため、12日に反騰しても早々に162円へ再挑戦することに対しては市場も慎重になると思われるが、日本景気の低迷と利上げサイクルに入ってもまだ長期債利回りが1%程度にとどまり7月の日銀会合でも国債買い入れ減額計画が示される程度ではドル円の歴史的な上昇はまだ続くのではないかと思われる。
財務省の神田財務官は11日夜に介入の有無を問われて「何もコメントする立場ではない」としたが、「円相場は年初来約20円の大幅な円安が進行してきた」、「国民に対する悪影響は決して無視できない」、「ファンダメンタルズと違った動きがかなり気になる」と述べて市場をけん制した。
7月12日は中国の6月貿易統計、米6月PPI、ミシガン大7月消費者信頼感指数と期待インフレ率が注目される。
【米6月CPI、前月比でマイナスに】
7月11日夜に発表された米6月CPI(消費者物価指数)上昇率は全体の前月比がマイナス0.1%となり5月の0.0%から低下して市場予想の0.1%を下回った。2020年5月以来のマイナスで2022年6月の1.2%以降の最低となった。前年同月比は3.0%で5月の3.3%から鈍化して市場予想の3.1%を下回り、2023年6月以来の低水準となり3か月連続の鈍化となった。
コアCPIの前月比は0.1%で5月の0.2%から低下して市場予想の0.2%を下回り、前年同月比は3.3%で5月の3.4%から低下して市場予想の3.4%を下回ったが、2022年9月の6.6%以降で最低を更新した。
発表後にシカゴ連銀のグールズビー総裁は「まさに2%への道筋」、「素晴らしい」と述べ、利下げ時期への言及はなかったものの年内利下げへの期待感を示したが、セントルイス連銀のムサレム総裁は「勇気づけられる」としたものの「2%へ持続的に低下するより多くの証拠を求めている」と慎重姿勢を示した。
米金利先物市場における9月利下げ期待度は発表前の7割台から9割を超えており、9月利下げと年末までの追加利下げへの期待がより高まった印象だ。
【米長期債利回りは一段と低下、ダウ連騰、ナスダックは反落】
7月11日の米長期債利回りは総じて低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.08%低下の4.21%となり、一時4.16%をつけて6月14日の4.19%を割り込み年初来のピークである4月25日に付けた4.74%以降の最低を更新、4月25日からは三段下げの様相となった。30年債利回りは前日比0.06%低下の4.42%となり一時4.38%をつけて7月1日の4.66%以降の最低とした。2年債利回りは前日比0.10%低下の4.52%となり、一時4.49%まで低下して4月30日に付けた年初来ピークである5.05%以降の最低とした。
一方でNYダウは利下げ期待を背景に前日比32.39ドル高と上昇して7月10日の429.39ドル高から続伸したが、ナスダック総合指数は取引時間中の史上最高値を更新してから利食い売りの連鎖で364.04ポイント安となり8日ぶりに反落、S&P500指数も同様に取引時間中の史上最高値を更新してからの反落で49.37ポイント安となった。ナスダックやS&Pは利食いを消化しながら上昇基調を継続してゆくと思われ、為替市場にとっては株高と長期債利回り低下がリスクオン優勢の心理を助長する効果があると思われる。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は7月3日夜高値161.94円と7月11日未明高値161.80円をダブルトップとして急落したが、11日夜安値から反騰しているためすでに目先の底を付けてリバウンド期に入っている可能性が高いと思われる。乱調な展開が続くと注意するが、11日夜安値157.42円割れを回避する内は12日の日中から週明けへ戻す可能性ありとし、11日夜安値割れからは次の下落期入りとして16日夜から18日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では7月11日夜の急落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落した。下げ渋りが続けば遅行スパンは好転しやすくなるが、先行スパンからの転落状況が続く内は一段安余地ありとして遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパンを上抜き返すところから上昇期入りとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は7月11日夜の急落時に10ポイント台へ低下してから30ポイント台へ戻したもののその後は伸びずにいる。40ポイント超えからは上昇再開とみて60ポイントを目指すと考えるが、40ポイント以下に留まるうちは一段安余地が残るとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月11日夜安値157.42円を下値支持線、159.50円を上値抵抗線とする。
(2)7月11日夜安値割れを回避する内は反騰期入りとみて159.50円超えからは160円前後試しを想定する。160円前後は売られやすいとみるが、159円以上で週を終えるなら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)7月11日夜安値割れからは156円前後への下落を想定する、156円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、11日夜安値を割り込んだ後も158円以下での推移なら週明けも一段安へ向かいやすいとみる。
【当面の予定】
7/12(金)
未 定 (中) 6月 貿易収支・米ドル建て (5月 826.2億ドル、予想 853.0億ドル)
13:30 (日) 5月 鉱工業生産・確報値 前月比 (4月 2.8%)
13:30 (日) 5月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (4月 0.3%)
13:30 (日) 5月 設備稼働率 前月比 (4月 0.3%)
21:30 (米) 6月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (5月 -0.2%、予想 0.1%)
21:30 (米) 6月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (5月 2.2%、予想 2.3%)
21:30 (米) 6月 コアPPI(食品・エネルギー除く) 前月比 (5月 0.0%、予想 0.2%)
21:30 (米) 6月 コアPPI(食品・エネルギー除く) 前年同月比 (5月 2.3%、予想 2.5%)
23:00 (米) 7月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (6月 68.2、予想 68.5)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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