7月3日高値からの下落幅をほぼ解消、一段高へ進むか今夜の米CPIで試される
〇昨日のドル円、円独歩安感からドル円も上昇継続、7/11未明に161.80まで高値伸ばす
〇FRB議長の下院議会証言、上院議会証言からタカ派姿勢の踏み込みなく、ドルストレートではドル安に
〇FRB議長、利下げに慎重ながらインフレ2%目標実現への自信示す
〇米長期債利回りは小動き、ナスダックとS&P500の史上最高値更新続く
〇161.30を上回るうちは7/11高値161.80超えから7/3高値161.94、162.20を順次試す上昇を想定
〇米CPI等をきっかけに急伸の場合、162円台中盤へ上値目途を引き上げる
〇160.30割れからは160.00前後試しを想定
〇米CPI等きっかけに急落の場合、160.0円台中盤へ下値目途を引き下げる
【概況】
ドル円は7月3日夜に161.94円を付けて5月3日安値151.85円以降及び2011年10月以降の最高値を更新してから下落に転じて7月8日午前に160.22円まで下げたが、その後は円安基調継続感を背景に買い戻し優勢となり、10日は「五・十日」のドル需要も重なり午前に161.58円へ上昇した。
7月10日夜のパウエルFRB議長による下院議会証言が前夜の上院議会証言からタカ派姿勢の踏み込みがなかったとしてユーロやポンドが上昇したためにドルストレートではドル安となったものの、ユーロ円が過去最高値を更新するなどクロス円全般の上昇が目立ち、円の独歩安感からドル円も上昇を継続して11日未明には161.80円まで高値を伸ばして7月3日以降の下げ幅をほぼ解消した。
ユーロ円は175.15円を付けてユーロ発足以降の最高値を更新、スイスフラン円は179.97円を付けて2000年9月以降の高値を更新、ポンド円は207.82円を付けて2011年9月以降の最高値を更新、豪ドル円は109.14円を付けて2008年10月以降の最高値を更新した。日本経済の低迷とマイナス金利から脱却したものの10年債利回りが1%程度に留まっており今後の追加利上げも緩いとの見方、米財務省の為替報告書における監視対象への再指定で市場介入しづらくなったことで歴史的な円安基調はさらに続くとの見方が優勢であることを反映している。
【パウエル議長、利下げに慎重ながらインフレ2%目標実現への自信示す】
FRBのパウエル議長は7月10日の下院金融サービス委員会で半期に一度の議会証言を行い、インフレ低下見通しについては「いくらか自信があるものの十分な確信には至っていない」として利下げ判断に慎重な姿勢を改めて示したものの、9日の上院銀行委員会における証言からよりタカ派的な姿勢へ踏み込む内容ではなかった。
11月の米大統領選が近づいていることについて「政治要因は考慮しない」と強調し、利下げ開始については2%の目標達成について「自信がある」とし、「2%到達まで待つことはない、指標全体を踏まえる」と述べた。また量的引き締め(QT)=FRBの資産縮小については「もっと進めることができる」とした。
市場は9月利下げ開始と年末までの追加利下げを想定しているが、9日と10日のパウエル議長発言がそうした期待を正面から否定するほどのタカ派姿勢ではなかったため、かえって9月利下げ期待度が増した印象もある。
【米長期債利回りは小動き、ナスダックとS&P500の史上最高値更新続く】
7月10日の米長期債利回りは総じてやや低下した。パウエルFRB議長の下院証言が市場の9月利下げ開始期待に対して否定的なものではなかったと受け止められたことと、10年債の390億ドル入札が堅調だったことが上昇を抑えたようだ。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.01%低下の4.29%で終了した。7月1日の4.49%をピークとした低下は落ち着いているもの下げ渋り程度の動きに留まっている。30年債利回りも同様の流れで前日比0.01%低下の4.48%で終了した。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは前日比0.01%低下の4.62%となり、一時4.61%をつけて7月5日に付けたこの間の最低である4.60%に迫った。7月5日以降は下げ渋り程度であり4月末以降の最低更新へ進みやすい状況だ。
一方で米国株式市場は総じて強気であり、NYダウは前日比429.39ドル高と大幅上昇、ナスダック総合指数は218.16ポイント高で7営業日連続で史上最高値を更新、S&P500指数も7連騰で史上最高値を更新した。米国株高が金融市場全般のリスクオン優勢感を強めていることでドル円も株高円安反応を示しやすい環境にあると思われる。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は7月3日夜高値161.94円からの下落一巡により7月8日午前安値160.22円から上昇してきた。7月11日未明へ高値を伸ばしてからやや下げていることと7月3日高値に迫ったことで目先はやや売られやすいと注意し、161.30円割れからは下落期入りとみて11日の日中から15日午前にかけての間への下落を想定する。ただし、いったん弱気転換してからの反騰で直前高値からの下げ幅の半値以上を解消するところからは次の上昇期に入る可能性を優先する。
60分足の一目均衡表では7月9日夜の上昇で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜いた状況を維持してきた。11日早朝高値からやや失速気味のため、遅行スパン悪化からはいったん下げに入るとみて安値試し優先とするが、先行スパンの上限近辺に支えられる場合はその後に遅行スパンが好転するところから上昇再開とみる。先行スパンへ潜り込んでから下げ足が速まる場合は先行スパン下限を試すとみるがそこは買い拾われやすいとみてその後に先行スパンを上抜き返すところから上昇再開と考える。
60分足の相対力指数は7月10日午前から11日未明にかけての上昇時に指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられるため、50ポイント台を維持するうちは60ポイント超えから上昇再開とするが、50ポイント割れから続落する場合はいったん下げに入るとみて30ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、160.30円を下値支持線、7月11日未明高値161.80円をを上値抵抗線とする。
(2)161.30円を上回るうちは11日未明高値161.80円超えから7月3日夜高値161.94円、162.20円を順次試す上昇を想定する。162円前後は反落注意とするが、米CPI等をきっかけとして急伸する場合は162円台中盤(162.35円から162.65円)へ上値目途を引き上げる。
(3)160.30円割れからは160.00円前後試しを想定する。160.00円前後は買われやすいとみてその後に161.50円を超えるところからは上昇再開とみるが、米CPI等をきっかけに急落する場合は160.0円台中盤(160.65円から160.35円)へ下値目途を引き下げる。
【当面の予定】
7/11(木)
15:00 (独) 6月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前月比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
15:00 (独) 6月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (速報 2.2%、予想 2.2%)
15:00 (英) 5月 月次GDP 前月比 (4月 0.0%、予想 0.2%)
15:00 (英) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 -0.9%、予想 0.2%)
15:00 (英) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 -0.4%、予想 0.6%)
15:00 (英) 5月 貿易収支・物品 (4月 -196.07億ポンド、予想 -168.00億ポンド)
15:00 (英) 5月 貿易収支 (4月 -67.50億ポンド、予想 -28.50億ポンド)
21:30 (米) 6月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (5月 0.0%、予想 0.1%)
21:30 (米) 6月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (5月 3.3%、予想 3.1%)
21:30 (米) 6月 コアCPI(食品・エネルギー除く) 前月比 (5月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 6月 コアCPI(食品・エネルギー除く) 前年同月比 (5月 3.4%、予想 3.4%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.8万件、予想 23.6万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 185.8万人、予想 186.0万人)
24:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
26:00 (米) ムサレム・セントルイス連銀総裁、質疑応答
26:00 (米) 財務省30年債入札
27:00 (米) 6月 月次財政収支 (5月 -3471億ドル、予想 -830億ドル)
7/12(金)
未 定 (中) 6月 貿易収支・米ドル建て (5月 826.2億ドル、予想 843.5億ドル)
13:30 (日) 5月 鉱工業生産・確報値 前月比 (4月 2.8%)
13:30 (日) 5月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (4月 0.3%)
13:30 (日) 5月 設備稼働率 前月比 (4月 0.3%)
21:30 (米) 6月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (5月 -0.2%、予想 0.1%)
21:30 (米) 6月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (5月 2.2%、予想 2.3%)
21:30 (米) 6月 コアPPI(食品・エネルギー除く) 前月比 (5月 0.0%、予想 0.2%)
21:30 (米) 6月 コアPPI(食品・エネルギー除く) 前年同月比 (5月 2.3%、予想 2.5%)
23:00 (米) 7月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (6月 68.2、予想 68.2)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.12.25
東京市場のドルは157円台で推移、植田日銀総裁の余波は弱く一段の円安は回避か(24/12/25)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、植田日銀総裁の発言を受けて、やや円安ドル高に振れ一時157円50銭台まで上昇した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:編集人K
2024.12.25
ドル円157円台前半、主要市場のクリスマス休暇入りで市場閑散 (12/25午前)
25日午前の東京市場でドル円は小動きに終始。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:上村 和弘
2024.12.25
ドル円見通し 第一次トランプ政権における円高の教訓(24/12/25)
ドル円は、157円割れを買われつつ25日未明に157.37円まで高値を若干切り上げて確りしている。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.07.11
ドル円、約38年ぶり高値更新が射程圏内に。本日は米CPIがメインイベント(7/11朝)
10日(水)のドル円相場は堅調な値動き。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。