円安継続感と市場介入への警戒感が交錯、155円突破への挑戦続く
〇先週のドル円、154.78まで上伸後、一旦地政学リスクからの円買いで153.58まで下げるも持ち直す
〇155円前後での介入がない場合や、介入があったとしても90年4月2日天井160.36円を目指す可能性
〇双方全面戦争は望まず、中東情勢に対する反応は一時的か
〇日銀による連続利上げの可能性はまだ低く、米国の利下げ開始は9月以降へさらにずれ込む可能性も
〇154円前後は買われやすいとみるが、市場介入への警戒感から155円手前は引き続き売られやすい
〇155円前後で市場介入がある場合は直前高値から3円から5円前後の下落を想定
〇急落一巡後は反騰入り、下げ幅の半値を解消するところからは上昇再開
〇155円を超えて続伸する場合には156円、157円等を試して行く流れ、158円以上は利食いを優先したい
【概況】
ドル円は3月後半に151円台後半へ上昇し、3月27日高値151.96円をピークとして152円手前を抵抗とした持ち合いで推移していたが、4月10日夜の米3月CPI上昇率が予想を大幅に上回ったことによる米長期債利回り急上昇を受けて152円を超え11日には153円台に到達した。先週は4月17日未明に154.78円まで高値を伸ばし、市場介入を警戒して18日午前に153.95円まで下げたところを買われて19日未明に154.67円へ上昇していたところ、19日午前にイスラエルがイランを空爆したとの報道によるリスク回避型の円高で153.58円へ急落したが、イラン側の被害は軽微として両国の全面戦争化は回避されるとの楽観で早々に反騰し、20日早朝には154.65円まで持ち直して154.59円で週を終えた。
【155円前後での介入効果なければ1990年4月天井160.36円を目指す可能性も】
G20財務相・中銀総裁会合の開催されたワシントンで日米韓、日韓、日米財務相会談が行われて鈴木財務相が円安への懸念を示したことで市場介入への地ならし的な動きが進展しているが、昨年末からの円安基調そのものは変わらないとの見方は根強く、当局の市場介入姿勢についても152円を突破したところでの介入が見送られて155円に迫ったことにより、155円前後での介入がない場合や、仮に市場介入があったとしても2022年9月22日の介入後に同年10月21日高値へと一段高した経緯を踏まえれば1990年4月2日天井160.36円を目指す可能性があるのではないかとの見方が強まってきている印象だ。
(1)中東情勢に対する反応は一時的
中東情勢についてはイスラエルによるシリア内イラン大使館空爆による高官殺害、イランによる大規模なイスラエルへの空爆、イスラエルによるイランへの報復空爆と情勢が悪化しているものの、双方の空爆による被害はいずれも軽微であり、全面戦争を望んでないない印象のために軍事関連報道で一時的にリスク回避型の円高反応を見せても元の水準へ揺れ返しやすいと思われる。
(2)日銀による連続利上げの可能性はまだ低い
日銀の植田総裁は4月19日の講演で基調的に物価が上昇し続ければ金利を引き上げる可能性が非常に高いとの見方を示したが、4月19日発表の全国CPI前年比は全体が2月の2.8%から2.7%へ、コアCPIで2.8%から2.6%へ、コアコアCPIで3.2%から2.9%へといずれも低下しており、原油価格高騰と円安継続によるインフレ上昇への懸念があるものの早計な追加利上げの可能性は低いと思われる。日銀がマイナス金利等を解除した時に連続利上げ余地等を強調しなかったことが響いており、日銀は円安問題に対しては後手に回り消極的な対応が続くと思われる。
(3)米国の利下げ開始は9月以降へさらにずれ込む可能性
米金利先物市場における6月FOMCにおける利下げ決定期待度は2割を切ってほぼ可能性はなくなり、9月FOMCでの利上げ開始が市場のコンセンサスとなりつつあるが、年末までずれ込む可能性も指摘されている。ハト派のシカゴ連銀グールズビー総裁はこれまで年内3回利下げを支持してきたが、4月19日には「インフレ面での進展が失速した」「今は動く前に一段と明確になるのを待つのが理にかなう」と述べて利下げ開始の先延ばしを支持している。パウエルFRB議長もこれまでは年内3回利下げ支持姿勢でFOMC内ではハト派的とみられてきたが、4月16日には最近のインフレ統計が予想を上回っていることで利下げ実施まで待つ期間は以前の想定よりも長くなるとの見方を示して6月利下げ期待度を大きく低下させている。
【米長期債利回りは中東情勢で一時急低下してから反騰、ダウは戻すもナスダック等は6日続落】
4月19日の米10年債利回りは前日比0.02%低下の4.62%で終了した。イスラエルによるイラク空爆報道で一時4.50%へ急低下してから被害軽微との報道で急反騰したもののマイナス圏に終わった。週間では4月12日終値4.52%から0.10%上昇、4月16日に4.696%をつけて昨年12月以降の最高値とした後は伸び悩んでいるものの上昇基調は続いている印象だ。
30年債利回りは前日比0.02%低下の4.71%で終了したが、一時4.62%まで低下してから反騰し、週間では4月12日終値4.62%から0.09%上昇した。2年債利回りは前日と変わらず4.99%で終了、一時4.88%まで急低下してから反騰し、週間では4月12日終値4.89%から0.10%上昇とし4月16日に付けた5.01%以上は高止まりから一段高を伺う位置に付けている。
一方で4月19日のNYダウは前日比211.02ドル高と上昇したものの、ナスダック前日比319.49ポイント安で6営業日続落、S&P500指数も43.89ポイント安で6営業日続落しており、4月入りからの米国株安感が強まっている。株安によるリスク回避感が強まる場合はドル円にとっては円高圧力となるが、直近では円安・株安・債券安の様相も見られるため、日経平均の下落=円高とも限らなくなっている。
【2022年10月と2023年11月によるダブル天井破りの印象強まる】
ドル円が3月27日高値151.86円をピークとして152円手前にとどまっていたところでは、2022年10月21日高値151.94円と2023年11月13日高値151.90円によるダブル天井の再確認止まりだったが、152円の壁を超えて154円台へ続伸したことにより、長期的にはダブル天井破りにより一段高へ入った印象だ。
2021年1月6日安値102.56円を起点として2022年10月21日高値までを一段目の上昇とすれば、2023年の1月16日安値127.22円からの二段目上昇がまだ続いている、より細かく見れば2023年1月16日安値から11月13日高値まで三段上げ型の上昇であり、2023年12月28日安値140.24円を起点とした現在の上昇も2月13日高値150.88円までを一段目とし、3月11日安値146.46円から二段目と思われる。
チャートからの上値目途としては、@ 2月13日から3月11日への下落幅4.42円の倍返しと仮定して155.30円、A 2023年12月28日から今年2月13日までの上昇幅10.64円と3月11日安値からの上昇が同規模と仮定して157.10円、B 過去の主要高値としては1990年4月2日高値160.36円、C 2023年11月13日から12月28日への下げ幅11.66円の倍返しなら163.56円等と計測される。昨年の三段上げ型上昇では一段目の3月8日への上昇幅10.70円よりも3月24日から6月30日までの二段目の上昇幅15.43円が勝っているため、今年3月11日からの二段目が昨年12月28日からの一段目に勝ることもあり得ると思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面、154.00円を下値支持線、155.00円を上値抵抗線とする。
(2)4月19日午前安値153.58円を中心として60分足レベルの逆三尊型を形成する可能性もあるので154円前後は買われやすいとみるが、市場介入への警戒感から155円手前は引き続き売られやすいとみる。
(3)155円前後で市場介入がある場合は直前高値から3円前後の下落を想定するが、2022年の介入時並みの規模ならば直前高値から5円強の下落を想定する。いずれの場合も急落一巡後は反騰入りするとみて直前下げ幅の半値を解消するところからは上昇再開とみる。
(4)市場介入がないか介入効果乏しく乱高下しつつも155円を超えて続伸する場合には156円、157円等を順次試して行く流れとし、市場介入警戒水準は160円前後まで切り上がると考える。ただし、158円以上は利食いを優先したいところだ。
【当面の予定】
4/22(月)
休場 イスラエル
10:15 (中) ローンプライムレート5年 (現状 3.95%)
21:30 (米) 3月シカゴ連銀全米活動指数 (2月 0.05)
23:00 (欧) 4月 消費者信頼感・速報値 (3月 -14.9、予想 -14.3)
24:30 (仏) ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演
4/23(火)
中国全人代常務委員会(4月26日まで)
休場 トルコ、スリランカ、イスラエル
14:00 (日) 日銀、基調的なインフレ率を捕捉するための指標
16:30 (独) 4月 製造業PMI・速報値 (3月 41.9、予想 43.5)
16:30 (独) 4月 サービス業PMI・速報値 (3月 50.1、予想 50.1)
17:00 (欧) 4月 製造業PMI・速報値 (3月 46.1、予想 46.6)
17:00 (欧) 4月 サービス業PMI・速報値 (3月 51.5、予想 51.4)
17:30 (英) 4月 製造業PMI・速報値 (3月 50.3)
17:30 (英) 4月 サービス業PMI・速報値 (3月 53.1)
20:15 (英) ピル英中銀理事、講演
21:30 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演
22:45 (米) 4月 製造業PMI・速報値 (3月 51.9)
22:45 (米) 4月 サービス業PMI・速報値 (3月 51.7)
23:00 (米) 4月 リッチモンド連銀製造業景況指数 (3月 -11)
23:00 (米) 3月 新築住宅販売件数・年率換算 (2月 66.2万件、予想 67.3万件)
23:00 (米) 3月 新築住宅販売件数 前月比 (2月 -0.3%、予想 1.6%)
4/24(水)
休場 イスラエル
07:45 (NZ) 3月 貿易収支 (2月 -2.18億NZドル)
08:50 (日) 3月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (2月 2.1%)
10:30 (豪) 3月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (2月 3.4%、予想 3.5%)
10:30 (豪) 1-3月期 CPI(消費者物価指数) 前期比 (10-12月 0.6%、予想 0.9%)
10:30 (豪) 1-3月期 CPI(消費者物価指数) 前年同期比 (10-12月 4.1%、予想 3.5%)
17:00 (独) 4月 IFO企業景況感指数 (3月 87.8、予想 89.0)
21:30 (米) 3月 耐久財受注 前月比 (2月 1.4%、予想 2.8%)
21:30 (米) 3月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (2月 0.5%、予想 0.2%)
23:00 (欧) シュナーベルECB理事、講演
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省5年債入札
4/25(木)
休場 オーストラリア、ニュージーランド、イスラエル、アイスランド
日銀・金融政策決定会合初日
14:00 (日) 2月 景気先行指数CI・改定値 (速報 111.8)
14:00 (日) 2月 景気一致指数CI・改定値 (速報 110.9)
15:00 (独) 5月 GFK消費者信頼感 (4月 -27.4、予想 -25.5)
16:00 (欧) シュナーベルECB理事、講演
21:30 (米) 1-3月期 GDP・速報値 前期比年率 (10-12月 3.4%、予想 2.1%)
21:30 (米) 1-3月期 GDP個人消費・速報値 前期比年率 (10-12月 3.3%)
21:30 (米) 1-3月期 コアPCE・速報値 前期比年率 (10-12月 2.0%)
21:30 (米) 3月 卸売在庫 前月比 (2月 0.5%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.2万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 181.2万人)
23:00 (米) 3月 住宅販売保留指数 前月比 (2月 1.6%)
23:00 (米) 3月 住宅販売保留指数 前年同月比 (2月 -2.2%)
24:15 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省7年債入札
4/26(金)
中国全人代常務委員会最終日
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 0-0.1%、予想 0-0.1%)
未 定 (日) 日銀展望レポート
08:01 (英) 4月 GFK消費者信頼感 (3月 -21)
08:30 (日) 4月 東京区部CPI(消費者物価指数)・生鮮食料品除く 前年同月比 (3月 2.4%)
10:30 (豪) 1-3月期 PPI(生産者物価指数) 前期比 (10-12月 0.9%)
10:30 (豪) 1-3月期 PPI(生産者物価指数) 前年同期比 (10-12月 4.1%)
10:30 (豪) 1-3月期 輸入物価指数 前期比 (10-12月 1.1%)
15:30 (日) 植田和男日銀総裁、記者会見
21:30 (米) 3月 個人所得 前月比 (2月 0.3%、予想 0.5%)
21:30 (米) 3月 PCE(個人消費支出) 前月比 (2月 0.8%、予想 0.4%)
21:30 (米) 3月 PCEデフレーター 前年同月比 (2月 2.5%、予想 2.6%)
21:30 (米) 3月 コアPCEデフレーター 前月比 (2月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 3月 コアPCEデフレーター 前年同月比 (2月 2.8%、予想 2.8%)
23:00 (米) 4月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 77.9、予想 78.0)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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