『米雇用統計の力強い結果を受けてドル買い・円売りトレンド再開』
〇今週のドル円、週後半にかけて、週間安値145.89まで反落するも週末にかけて、148.59まで急伸
〇米1月雇用統計の市場予想を上回る結果を受けての米長期金利急上昇が背景
〇ユーロドルECB関係者のハト派発言と米長期金利上昇に週末にかけ1.0784まで値を崩す動き
〇ドル円、主要テクニカルポイントを上抜け、強い買いシグナルも実現、テクニカルの地合い極めて強い
〇ファンダメンタルズも日米金融政策の方向性の違いと円キャリートレードがドル円をサポート
〇引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):147.00ー150.50、(EURUSD):1.0700−1.0950
今週のレビュー(1/29−2/2)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初148.12で寄り付いた後、(1)本邦輸出企業の実需のドル売り(月末にかけての実需のドル売り圧力)や、(2)米1月ダラス連銀製造業活動指数(結果▲27.4、予想▲11.0)の市場予想を下回る結果、(3)米財務省による第1四半期の借り入れ予想額(結果7600億ドル、前回8160億ドル)の下方修正、(4)米1月ADP雇用統計(結果+10.7万人、予想+15.0万人)の市場予想を下回る結果、(5)米10ー12月期雇用コスト指数(結果+0.9%、予想+1.0%)の市場予想を下回る結果、(6)米1月シカゴ購買部協会景気指数(結果46.0、予想48.0)の市場予想を下回る結果が重石となり、週央にかけて、一時146.01まで下げ幅を広げましたが、
(7)注目された米FOMCにてタカ派的な結果(声明文への「2%の物価目標達成に向けてより確かな自信を得るまで利下げは適切ではない」との文言追加や、パウエルFRB議長による「適切であれば金利を長期間維持する用意がある」「3月利下げの可能性が高いとは考えていない」との早期利下げに慎重な発言)が示されると、一転して147.45まで持ち直す荒々しい値動きとなりました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(8)米新規失業保険申請件数(結果22.4万件、予想20.9万件)の予想比悪化や、(9)米10ー12月期単位労働コスト速報値(結果+0.5%、予想+1.2%)の市場予想を下回る結果、(10)米長期金利の急低下(米2年債利回りは1/12以来の低水準となる4.13%へ急低下。米10年債利回りは昨年12/28以来の低水準となる3.81%へ急低下)、(11)米地銀ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ株の大幅下落(リスク回避の円買い圧力)が重石とり、週後半にかけて、週間安値145.89まで反落しました。
もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(12)米1月ISM製造業景況指数(結果49.1、予想47.0)の市場予想を上回る結果や、(13)米1月非農業部門雇用者数(結果+35.3万人、予想+18.5万人)の市場予想を上回る結果、(14)米1月平均時給(結果+0.6%、予想+0.3%)の市場予想を上回る結果、(15)米1月失業率(結果3.7%、予想3.8%)の良好な結果、(16)米長期金利の急上昇(米2年債利回りが4.40%へ急上昇。米10年債利回りも4.05%へ急上昇)、(17)短期筋のショートカバーが支援材料となり、週末にかけて、週間高値148.59まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間2/3午前3時20分現在)では、148.48前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0849で寄り付いた後、(1)フランス中銀ビルロワドガロー総裁による「ECBは今年のいかなる時点においても利下げを実施することがあり得る」とのハト派的な発言や、(2)ポルトガル中銀センテノ総裁による「インフレは持続的に低下している」「遅かれ早かれ利下げを開始するべきだが突然の動きは避けるべき」とのハト派的な発言、(3)スロバキア中銀カジミール総裁による「次の動きは利下げでありそれは手の届く範囲にある」とのハト派的な発言、(4)デギンドスECB副総裁による「ユーロ圏のインフレ動向に心強い進展が見られる」「ECBは遅かれ早かれ利下げする見通し」とのハト派的な発言、(5)上記1、2、3、4を背景としたECBによる利下げ開始時期の前倒し観測(市場は4月ECB理事会での利下げ開始を皮切りに年内計6回の利下げを織り込む動き→欧州債利回り低下→ユーロ売り)、(6)米FOMCのタカ派的な結果、(7)上記5、6を背景とした欧米金融政策の方向性の違いが重石となり、週後半にかけて、週間安値1.0779まで下落しました。
その後は、(8)ドイツ1月製造業PMI確報値(結果45.5、予想45.4)の市場予想を上回る結果や、(9)ユーロ圏1月消費者物価指数(結果+2.8%、予想+2.7%)の市場予想を上回る結果、(10)ユーロ圏1月コア消費者物価指数(結果+3.3%、予想+3.2%)の市場予想を上回る結果、(11)米金利低下に伴うドル売り圧力を背景に、週末にかけて、週間高値1.0898まで反発する場面も見られましたが、買い一巡後に伸び悩むと、(12)米雇用統計の力強い結果や、(13)米長期金利の急上昇(米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測→米金利急上昇→米ドル買い)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間2/3午前3時20分現在)では、1.0784前後まで再び値を崩す動きとなっております。
来週の見通し(2/5−2/9)
<ドル円相場>
ドル円は週後半にかけて一時145.89まで下げ幅を広げるも、週末にかけて148円台半ばを回復するV字回復を見せました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、基準線、雲上限)の上側に位置していることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「EMAベースの強気のパーフェクトオーダー」「昨年11/13高値151.91と昨年12/28安値140.25を起点としたフィボナッチ61.8%戻し」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)日銀による金融緩和の長期化観測(植田日銀総裁は先週開催された金融政策決定会合後の記者会見で「マイナス金利を解除しても極めて緩和的な環境が続く」と発言→仮にマイナス金利を解除したとしても円金利の上昇余地は限られるとの見方の台頭)や、(2)米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(今週開催された米FOMCのタカ派的な結果+米雇用統計の力強い結果→3月FOMCでの利下げ確率が18.5%まで急低下)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米金利差拡大に着目した円キャリー目的のドル買い・円売り)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。
来週2/5に予定されている米1月ISM非製造業景況指数が市場予想を上回る場合や、ブラックアウト期間明けの米当局者(アトランタ連銀ボスティック総裁、クリーブランド連銀メスター総裁、ミネアポリス連銀カシュカリ総裁、ボストン連銀コリンズ総裁、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁、クーグラーFRB理事、リッチモンド連銀バーキン総裁、ボウマンFRB理事)よりタカ派的な発言が見られる場合には、米金利上昇→米ドル買いの経路で、ドル円が1/19に記録した年初来高値148.82を上抜け、一気に心理的節目150.00や、昨年高値151.91に向かって駆け上がるシナリオも想定されるため、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの再開をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(USDJPY):147.00ー150.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は、12/28に記録した約5ヵ月ぶり高値1.1141をトップに反落に転じると、今週後半にかけて、一時1.0779(昨年12/13以来、約1カ月半ぶり安値圏)まで急落しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、基準線、雲下限)を下抜けしたことや、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」が成立したこと等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(先週公表されたECB専門家調査でユーロ圏の2024年の成長率予測は前回の+0.9%から+0.6%へ下方修正。2024年のインフレ率見通しも前回の+2.7%から+2.4%へ下方修正)や、(2)ECBによる利下げ開始時期の前倒し観測(先週開催されたECB理事会・ラガルド総裁記者会見のハト派的な結果+一部通信社による「ECBはインフレ統計が改善すれば3月にも利下げ議論を開始する用意がある」との観測報道+今週も複数のECB当局者よりハト派的な見解が相次ぎ発表)、(3)米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(今週開催された米FOMC・パウエル議長記者会見のタカ派的な結果+米雇用統計の力強い結果)、(4)上記2、3を背景とした欧米金融政策の方向性の違い(欧米金利差拡大に伴うユーロ売り・ドル買い)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。
こうした中、来週は上記1、2を見極める目的で、ドイツ12月製造業受注や、ユーロ圏12月小売売上高、ドイツ12月鉱工業生産、レーンECB専務理事講演、ドイツ連銀ナーゲル総裁講演、チポローネECB専務理事講演に注目が集まります。欧州経済の下振れリスクが明らかとなる場合や、ECB当局者よりハト派的な発言が相次ぐ場合には、欧州債利回り低下→ユーロ売りの経路で、ユーロドルにもう一段強い下落圧力が加わるシナリオが想定されるため、当方では引き続き、ユーロドル相場の続落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0700−1.0950
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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