ドル円見通し 米経済指標を見ながらの乱調な展開続く
〇ドル円、11/16夕刻151.42を付けるも、経済指標の結果を受け11/17日未明には150.28まで反落
〇11/17早朝には150.77まで戻したが、方向感の定まらない乱調な展開続く
〇昨日発表の米新規失業保険申請件数が予想を大幅に上回る悪化、米長期債利回りが低下に転じる
〇FRB高官らの利上げ停止への期待に釘を刺す発言相次ぐも、効果は乏しい様子
〇米長期債利回りは総じて低下、前日の上昇を解消、NYダウは5日ぶりの下落、ナスダックは小幅上昇
〇151円以下での推移中は一段安余地ありとし、150.05割れからは149円台中盤を試す下落を想定する
〇151円超えからは上昇再開として、151.50前後への上昇を想定する
【概況】
ドル円は11月15日夜の米PPI(生産者物価指数)鈍化を見て150.05円へ下落して14日夜の米CPI(消費者物価指数)の鈍化による下落で付けた15日早朝安値150.13円をわずかに割り込んだが、米長期債利回りが前日の大幅低下後の反動高で上昇したのを見て16日早朝には151.42円まで切り返した。
11月16日の日中にやや下げた後の夕刻にも151.42円を付けたが151.50円台へは進めずに上値が重くなり、16日夜の米新規失業保険申請件数が予想を大幅に上回る悪化となったことをきっかけに米長期債利回りが低下に転じたのを見て17日未明には150.28円まで反落した。
11月15日夜安値150.05円割れには至らずに11月17日早朝には150.77円まで戻したが、14日夜からの急落、15日夜からの反騰、16日夜から再び急落というように方向感の定まらない乱調な展開が続いている。
【米失業保険申請件数が悪化、輸出入物価指数大幅低下、鉱工業生産低調】
11月16日夜の米経済指標はフィラデルフィア連銀景況指数が予想外に改善した他は総じて悪かった。
米労働省による新規失業保険申請件数は11月11日までの週間で前週比1万3000件増の23万1000件となり、市場予想の22万件を大幅に上回り2週ぶりに悪化、今年8月以来の高水準となった。失業保険受給者総数は11月4日までの週間で186万5000人で前週から3万2000人増やして市場予想の184.7万人を上回った。労働市場の需給緩和により米FRBによる追加利上げの必要性を低下させる内容だった。
フィラデルフィア連銀による11月の製造業景況指数はマイナス5.9となり、10月のマイナス9.0から上昇して市場予想のマイナス9.0を上回った。2か月連続の改善だが依然としてマイナス圏にとどまっている。
米FRBによる10月鉱工業生産指数は前月比0.6%低下となり、9月の0.1%上昇(速報の0.3から下方修正)から悪化して市場予想の0.3%を下回った。設備稼働率は78.9%で9月の79.5%から低下し、製造業の稼働率は77.2%で9月から0.6%低下した。
全米住宅建設業者協会(NAHB)による11月の住宅市場指数は34となり、10月の40から低下したが、4か月連続低下で2022年12月以来の低水準となった。
【FRB高官らは利上げ停止への期待に釘を刺すも効果乏しい】
NY連銀のウィリアムズ総裁は16日の講演で「データ次第」との認識を強調し、具体的な金利への利下げ期待に釘を刺した。
FRBのクック理事も16日の講演で「経済と労働市場の需給逼迫が保たれてディスインフレのペースが鈍化する可能性がある」とし、「インフレ率を2%へ低下させる上で十分に景気抑制的なスタンスを追求する必要がある」として追加利上げに含みを持たせた。
クリーブランド連銀のメスター総裁は、16日のインタビューで「インフレ率が2%に向かって低下することを確信できるようなより多くの証拠を必要としている」と述べ、「一つのデータでは反応しない。データすべてを見ていく」として早期利下げ期待に釘を刺した。
11月2日未明のFOMC声明とパウエル議長会見から利上げ打ち止め感が優勢となったが、11月6日以降は追加利上げ余地がまだ消えていないと市場の楽観に釘を刺す発言が多い。しかし年内は利上げの見送りが確実視され、来年は利下げ再開に入るとの見方が徐々に高まっている。
【米長期債利回りは総じて低下、ダウは5日ぶりの下落】
11月16日の米長期債利回りは総じて低下した。長期金利指標の10年債利回りは11月14日の米CPI鈍化をきっかけに前日比0.19%低下し、15日は急低下後の反動で0.08%上昇だったが、16日は0.09%低下の4.44%となり前日の反発分を解消した。30年債利回りも14日に0.13%低下、15日に0.07%上昇だったが、16日は0.08%低下の4.62%となり前日の上昇を解消した。利上げ動向に敏感な2年債利回りは14日に0.20%の大幅低下、15日に0.08%上昇だったが、16日は0.08%低下の4.84%となり前日の上昇を解消した。
長期債利回りは総じて10月からの低下傾向の範囲で推移している印象だ。ドル円にとっては日米金利差の縮小が円高要因となるものの、金利差の絶対水準は高く、利回り格差を確保するためのドル買い円売りを呼び込みやすく、低成長下で日銀が金融緩和政策を継続することにより円安基調がまだ続くと思われ、大きく下げたところは繰り返し買われやすいと思われる。
一方で11月16日のNYダウは前日比45.74ドル安と5日ぶりに下落、ナスダック総合指数は9.83ポイント高と小幅上昇だった。10月序盤からの上昇一服感が出ているところと思われる。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は11月15日夜の下落時に15日早朝安値をわずかに割り込んだもののその後に急伸したため、11月15日夜安値を目先の底として反騰入りしたが、16日夜に急落したことにより戻り一巡から新たな下落期に入った可能性が懸念される。
11月15日夜安値150.05円割れを回避して151円台を回復すれば、15日夜安値を起点とした上昇期の継続として20日深夜にかけての上昇を想定するが、15日夜安値を割り込む場合は22日夜にかけて下落基調が続きやすくなると思われる。
60分足の一目均衡表では11月16日夜からの下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落したため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。ただし、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開の可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は11月16日夜からの下落で30ポイントを一時割り込んでから40ポイント台へ戻している。50ポイントを超えないうちは一段安余地ありとし、次に30ポイントを割り込む場合は20ポイント前後への低下を想定する。50ポイント超えからは上昇再開と仮定して60ポイント台を目指すとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月15日夜安値150.05円を下値支持線、151.00円を上値抵抗線とする。
(2)151円以下での推移中は一段安余地ありとし、150.05円割れからは149円台中盤(149.65円から149.35円)を試す下落を想定する。149.50円以下は反騰注意とするが、15日夜安値を割り込んだ後も150円台序盤以下に留まる場合は週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)151円超えからは上昇再開として151.50円前後への上昇を想定する。151.50円以上は反落注意とするが、151円を超えた後も150.70円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の予定】
11/17(金)
16:00 (英) 10月 小売売上高 前月比 (9月 -0.9%、予想 0.3%)
16:00 (英) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 -1.0%、予想 -1.5%)
16:00 (英) 10月 小売売上高・除自動車 前月比 (9月 -1.0%、予想 0.4%)
16:00 (英) 10月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (9月 -1.2%、予想 -1.5%)
17:30 (欧) ラガルドECB総裁、講演
18:00 (欧) 9月 経常収支・季調済 (8月 277億ユーロ)
19:00 (欧) 10月 HICP(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (9月 2.9%、予想 2.9%)
19:00 (欧) 10月 コアHICP・改定値 前年同月比 (9月 4.2%、予想 4.2%)
22:00 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演
22:10 (英) ラムスデン英中銀副総裁、講演
22:30 (米) 10月 住宅着工件数・年率換算 (9月 135.8万件、予想 135.0万件)
22:30 (米) 10月 住宅着工件数 前月比 (9月 7.0%、予想 -0.6%)
22:30 (米) 10月 建設許可件数・年率換算 (9月 147.3万件、予想 145.0万件)
22:30 (米) 10月 建設許可件数 前月比 (9月 -4.4%、予想 -1.4%)
22:45 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、会議挨拶
23:45 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、発言テキスト公表
24:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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