ドル円見通し 日銀の政策修正観測記事で148.80円へ急落後に149円台を回復(23/10/31)

日銀の政策修正見通し報道をきっかけに急落に転じ、31日NY市場安値で148.80円まで切り下げた。

ドル円見通し 日銀の政策修正観測記事で148.80円へ急落後に149円台を回復(23/10/31)

ドル円見通し 日銀の政策修正観測記事で148.80円へ急落後に149円台を回復

〇ドル円、10/30朝149.42まで下げた後149円台後半へ戻し、夕刻149.28へ反落したが、夜149.84へ上昇
〇その後日銀政策修正観測報道きっかけに10/31未明148.80まで下げた後、10/31午前149円台序盤回復
〇日銀金融政策決定会合、軌道修正の議論されるか、ドル円への影響も警戒される
〇米長期債利回りは総じて上昇、NYダウは続落後の反騰
〇149.30以下での推移中は下向きとし、148.80割れからは148円台中盤への下落を想定する
〇149.50超えからは反騰継続とみて150円試しを想定する

【概況】

ドル円は10月26日高値で150.77円を付けて年初来高値を更新した直後に149.98円まで下げ、いったん戻したものの27日の日中から28日未明にかけて軟調推移で28日未明安値で149.43円を付けた。週明けの30日朝に149.42円まで安値を若干切り下げてから149円台後半へ戻し、夕刻に149.28円へ反落してから夜高値149.84円を付けて午前高値を超えたが、日銀の政策修正見通し報道をきっかけに急落に転じ、31日NY市場安値で148.80円まで切り下げた。149円割れに対する突っ込み警戒感で31日午前に149円台序盤を回復するも勢いは限定的となっている。

【日銀金融政策決定会合、軌道修正への布石を示すか】

10月30日に日経新聞は「日銀はYCCの再修正を議論し、現在1%としている長期金利の事実上の上限を柔軟にし、一定程度1%を超える金利上昇を容認する案が有力だ」と報じたため、この報道をきっかけにドル円は148.80円まで急落した。
10月3日に150.15円を付けてから147.41円まで急落した後も、小波乱を入れながらも高値更新を続けて10月26日に150.77円を付けたのだが、この報道をきっかけとした急落により10月3日夜の乱高下で付けた安値以降の安値切り上がり基調から転落している。

日銀は今回の金融政策決定会合で長短金利操作の再修正が議論されそうだ。政策発表と同時に景気予測である経済・物価情勢の展望=「展望リポート」が公表されるが、2023年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く)の上昇率については7月時点の2.5%から3%近くに上方修正され、2024年度についても7月時点の1.9%から2%台へ引き上げられるのではないかとみられている。しかし物価目標の2%を持続的に達成する状況認識に至らなければマイナス金利等の金融緩和政策の継続が示されると思われる。
ただし、長期金利操作については新発10年債(372回債)が30日に0.890%へ上昇して2013年7月以来の高水準に達してるため、国債市場の機能不全を防ぐためにより柔軟な運用とする可能性がある。

日銀はマイナス金利解除に関する総裁を含む日銀関係者らの言及等があったものの前回会合では「必要に応じて追加緩和も行う」として金融緩和継続を決定している。12月には長期間続いてきた金融緩和政策の功罪を検証するとしていることを踏まえれば、大きな政策修正は12月の検証会議後と思われるので、今回は現状維持ないしは長期金利許容基準の柔軟化程度と思われる。
市場はやや修正ありとして円高反応を見せたところのため、修正なしでの現状維持ならドル円は再上昇へ進む可能性があるが、先行きの出口戦略へ向けた姿勢が予想よりも強調される場合は7月14日以降の上昇基調一巡による下落期入りとして下げ足が速まることも警戒される。

【米長期債利回りは上昇、ダウは大幅反騰】

10月30日の米長期債利回りは総じて上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは先週末比0.06%上昇の4.90%、30年債利回りは0.03%上昇の5.05%、2年債利回りは0.05%上昇の5.06%となった。
10月31-11月1日のFOMCにおいては現状維持が確実視され、12月FOMCにおいても追加利上げの可能性は2割程度と市場は見ているが、インフレの高止まりによる利上げ状態の長期化への懸念が払しょくしきれていないために長期債利回りが高止まりの様相となっている。
米財務省による財政支出拡大による国債大量発行への懸念が債券売り・利回り上昇を招いているが、30日に発表された第4四半期の発行総額が7760億ドルとなり、7月見通しより760億ドル少なかったことで財政悪化への懸念はやや和らいだ側面もあるようだ。

一方でNYダウは前日比511.37ドル高と大幅上昇した。長期金利上昇継続への懸念と中東情勢の悪影響を警戒して下落していたが、30日はFOMCを控えての買い戻しに加え、全米自動車労組(UAW)とゼネラル・モーターズ(GM)が25%の賃上げ等で暫定合意したことで米自動車大手3社による1カ月半にわたったスト終結を好感して買われたようだ。ナスダック総合指数も146.47ポイント高と上昇した。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は10月24日安値149.30円を起点として10月26日午後高値150.77円へ急伸したが、その後の反落から昨夜の一段安へと崩れている。現状は10月26日午後高値を目先のピークとした下落期にあるが、本日の日銀会合への反応次第で反騰入りも一段安へ進む可能性もあり、臨機応変な対処が望まれる。
149.50円を超える場合は31日未明安値148.80円ないし直前安値を目先の底とした反騰入りとみて31日午後から11月2日午後にかけての間への上昇を想定するが、日銀会合を見て円高が加速する場合は下落基調の継続として11月2日にかけての下落を想定し、さらに週末から週明けにかけて安値試しを続ける可能性も出てくると注意する。

60分足の一目均衡表では10月27日の失速で遅行スパンが悪化し、27日夜に先行スパンから転落したが、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。遅行スパン好転からは反騰入りの可能性ありとみて高値試し優先とするが、その際は先行スパンの上下限が上値抵抗帯になりやすいと思われる。ただし、先行スパンを上抜き返す上昇なら勢いをさらに増して年初来高値更新へ進んで行く可能性も高まるとみる。

60分足の相対力指数は10月28日未明安値から31日未明への一段安に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行気配がみられるので、50ポイント以下での推移中は一段安余地ありとするが、50ポイント超えからは反騰入りとみて60ポイント台後半への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、148.80円を下値支持線、149.50円を上値抵抗線とする。
(2)149.30円以下での推移中は下向きとし、148.80円割れからは148円台中盤(148.65円から148.35円)への下落を想定する。日銀会合結果から急激な円高となる場合は148円割れを試す下落を想定し、直前安値から0.70円を超える反騰がみられないうちは11月1日以降も安値試しを続けやすいとみる。
(3)149.30円から149.50円手前にかけての水準では戻り売り有利とみるが、149.50円超えからは反騰継続とみて150円試しを想定する。日銀会合結果から急激な円安となる場合は150円台前半へ上値目途を引き上げ、直前高値から0.70円を超える反落がみられないうちは11月1日も高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の予定】

10/31(火)
未定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
未定 (日) 日銀展望レポート
10:30 (中) 10月 国家統計局製造業PMI (9月 50.2、予想 50.2)
14:00 (日) 10月 消費者態度指数・一般世帯 (9月 35.2、予想 34.9)
14:00 (日) 9月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (8月 -9.4%、予想 -4.0%)
15:30 (日) 植田日銀総裁、記者会見
19:00 (日) 外国為替平衡操作の実施状況(9月28日-10月27日)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP・速報値 前期比 (4-6月 0.1%)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP・速報値 前年同期比 (4-6月 0.5%)
19:00 (欧) 10月 HICP(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (9月 4.3%、予想 3.1%)
19:00 (欧) 10月 コアHICP・速報値 前年同月比 (9月 4.5%、予想 4.2%)

21:30 (米) 7-9月期 雇用コスト指数 前期比 (4-6月 1.0%、予想 1.0%)
22:00 (米) 8月 連邦住宅金融局住宅価格指数 前月比 (7月 0.8%)
22:00 (米) 8月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (7月 0.1%)
22:45 (米) 10月 シカゴ購買部協会景況指数 (9月 44.1、予想 45.0)
23:00 (米) 10月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (9月 103.0、予想 99.6)

11/1(水)
06:45 (NZ) 7-9月期 就業者数 前期比 (4-6月 1.0%、予想 0.4%)
06:45 (NZ) 7-9月期 就業者数 前年同期比 (4-6月 4.0%、予想 3.2%)
06:45 (NZ) 7-9月期 失業率 (4-6月 3.6%、予想 3.9%)
09:30 (豪) 9月 住宅建設許可件数 前月比 (8月 7.0%、予想 2.5%)
10:45 (中) 10月 財新製造業PMI (9月 50.6、予想 50.8)
18:30 (英) 10月 製造業PMI・改定値 (9月 45.2、予想 45.2)
21:15 (米) 10月 ADP非農業部門民間雇用者数 前月比 (9月 8.9万人、予想 14.0万人)
22:45 (米) 10月 製造業PMI・改定値 (速報 50.0、予想 50.0)

23:00 (米) 10月 ISM製造業景況指数 (9月 49.0、予想 49.0)
23:00 (米) 9月 建設支出 前月比 (8月 0.5%、予想 0.4%)
23:00 (米) 9月 JOLTS(雇用動態調査)求人件数 (8月 961.0万件、予想 921.5万件)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) FOMC(米連邦公開市場委員会) 政策金利 (現行 5.25-5.50%、予想 5.25-5.50%)
27:30 (米) パウエルFRB議長、記者会見



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