『ドル円は年初来高値を更新。来週は日米金融政策イベントに注目』
〇今週のドル円、週明け早々に145.90まで下落後、週末にかけ147.96まで急伸
〇CPI、PPI、小売売上高等の8月米指標の好調、日経平均株価の堅調等が背景
〇ユーロドル、ECB声明文のGDP見通し下方修正、総裁ハト派発言に1.0631まで急落
〇ドル円、主要テクニカルポイントの上で推移、強い買いシグナルも継続、地合い極めて強い
〇ファンダメンタルズも日米金融政策の方向性の違いがサポート
〇引き続き、ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):146.50ー149.50、(EURUSD):1.0450−1.0750
今週のレビュー(9/11−9/15)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初147.02で寄り付いた後、(1)読売新聞社が9/9に報じた植田日銀総裁による「マイナス金利政策の解除を含めいろいろなオプションがある」との発言や、(2)Fedウォッチャーとして知られる米ウォール・ストリート・ジャーナルのニック・ティミラオス記者による9/10付けの「FRBが今後の利上げに慎重になっている」とのツイート発信、(3)中国人民銀行による「人民元レートには合理的で均衡取れた水準で適切な安定状態を維持する強固な基盤。一方的でプロシクリカルな動き是正へ必要なら措置講じる構え」との元安抑制方針の明確化(対人民元でのドル売り圧力→ドル円連れ安)、(4)本邦長期金利の上昇圧力(マイナス金利解除の思惑→新発10年国債利回りが2014年1月以来の高水準となる0.70%へ急上昇→円全面高)、(5)日経平均株価の冴えない動き(リスク回避の円買い圧力)が重石となり、週明け早々に、週間安値145.90まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(6)急ピッチな下落に対する自律反発や、(7)日経平均株価の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)、(8)日米金融政策格差に着目した円キャリートレードの再開期待、(9)米8月消費者物価指数(結果+3.7%、予想+3.6%、前回+3.2%)の市場予想を上回る結果、(10)米8月小売売上高(結果0.6%、予想0.2%)の市場予想を上回る結果、(11)米8月生産者物価指数(結果1.6%、予想1.5%)の市場予想を上回る結果、(12)米新規失業保険申請件数(結果22.0万件、予想22.5万件)の良好な結果、(13)米9月ニューヨーク連銀製造業景況指数(結果1.9、予想▲10.5)の市場予想を上回る結果、(14)米8月鉱工業生産(結果0.4%、予想0.2%)の市場予想を上回る結果が支援材料となり、週末にかけて、年初来高値147.96(昨年11/4以来、約10カ月半ぶり高値圏)まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間9/16午前5時45分現在)では、147.85前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0716で寄り付いた後、(1)米ウォール・ストリート・ジャーナルのニック・ティミラオス記者による「FRBが今後の利上げに慎重になっている」とのハト派的なツイート発信や、(2)ECB理事会を控えたポジション調整(ユーロショートの手仕舞い)、(3)中国人民銀行による元安抑制方針の明確化(対人民元でのドル売り圧力→ユーロドル連れ高)が支援材料となり、翌9/12にかけて、週間高値1.0769まで上昇しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(4)欧州委員会によるユーロ圏経済成長率見通しの下方修正(2023年分を前回時点の1.1%から0.8%へ下方修正、2024年分を前回時点の1.6%から1.3%へ下方修正)や、(5)ドイツ9月ZEW景況感指数の現況指数(結果▲79.4、予想▲75.5)の冴えない結果(3年ぶり低水準を記録)、(6)ユーロ圏7月鉱工業生産(結果▲2.2%、予想▲0.3%)の市場予想を下回る結果、(7)ドイツ政府による2023年GDP予想の下方修正(4月時点の+0.4%から▲0.3%へ下方修正)、(8)米インフレ指標(米8月消費者物価指数、米8月生産者物価指数)の市場予想を上回る結果、(9)米景気指標(米8月小売売上高、米新規失業保険申請件数)の良好な結果、
(10)ECB理事会声明文におけるGDP見通しの下方修正(25bpの利上げを決定しつつも、2023年GDP見通しを前回の+0.9%から+0.7%へ下方修正、2024年GDP見通しを前回の+1.5%から+1.0%へ下方修正、2025年GDP見通しを前回の+1.6%から+1.5%へ下方修正)、(11)ラガルドECB総裁による「景気は今後数カ月低迷が続くだろう」「インフレは今後数カ月低下を見込む」「政策委員の数人は利上げ休止を選好した」とのハト派的な発言が重石となり、週後半にかけて、週間安値1.0631(3/20以来、約6カ月ぶり安値圏)まで急落しました。週末にかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間9/16午前5時45分現在)では、1.0660前後で推移しております。
来週の見通し(9/18−9/22)
<ドル円相場>
ドル円は「読売新聞報道+ニック記者ツイート」に端を発した急落劇(前週末終値147.81→週明け安値145.90)から持ち直すと、週末にかけて、年初来高値147.96まで急伸しました(全値戻しを達成)。日足ローソク足が全ての主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、基準線、雲上限)の上側で推移していることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の上昇トレンド」が継続していること、日足のみならず4時間足などの下位足から週足などの上位足に至る全てのテナーで買いシグナルが点灯していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは極めて強いと判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(米インフレ指標の市場予想を上回る結果+米経済指標の力強い動き)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(マイナス金利脱却が年内に行われたとしても影響は軽微なものに留まるとの見方)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米金利差拡大とそれに伴う円キャリートレードの継続期待)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。政府・日銀による介入警戒感が上値を抑制する可能性はあるものの、昨年10/21に記録した高値151.95を抜けてくるまでは実弾介入には踏みこみづらいと見られることから、当方では引き続き、ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想いたします。
尚、来週は日米の金融政策イベントに注目が集まります。9/19ー9/20の日程で開催される米FOMCについては、政策金利の据え置きが見込まれているものの、同時に発表されるSEP(Summary of Economic Projections)にて、次回11/1FOMCでの追加利上げに含みが残されると共に、来年の利下げ開始時期の後ろ倒しも示される可能性が高いため、市場ではタカ派的と受け止められ、米金利上昇→米ドル買いの流れが強まるものと推察されます。また、9/21ー9/22の日程で開催される日銀金融政策決定会合については、政策変更は見込まれていないものの、植田総裁記者会見にて、先般読売新聞社から報じられた「マイナス金利政策の解除を含めいろいろなオプションがある」とのインタビュー記事についての真意を問われる可能性が高いため、仮に植田総裁より弱いトーンの返しが出てくる場合には、日銀によるマイナス金利脱却後ずれ観測→円金利低下→円売り再開の流れが強まるものと推察されます。
以上のことから、来週の日米金融政策イベントは、ドル買い・円売りで反応する可能性が高いと予測いたします(状況次第では昨年10/31に記録した高値148.86を突破する可能性あり。同水準を突破できれば心理的節目150.00や、昨年の年間高値151.95が視野に)。
来週の予想レンジ(USDJPY):146.50ー149.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は7/18に記録した約1年5カ月ぶり高値1.1277(昨年2/24以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週後半にかけて、約6カ月ぶり安値となる1.0631(3/20以来の安値圏)まで急落しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限)を軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「弱気のバンドウォーク」「ダウ理論の短期下落トレンド」「21日線と200日線のデッドクロス」も実現するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を強く印象付けるチャート形状となっております。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(欧州委員会は今週ユーロ圏経済成長率見通しを下方修正)や、(2)ECBによる利上げサイクル終了の思惑、(3)米FRBよる金融引き締め長期化観測、(4)上記2、3を背景とした欧米金融政策の方向性の違い(欧米金利差拡大に伴うユーロ売り・ドル買い)など、ユーロドル相場の更なる下落を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の続落をメインシナリオとして予想いたします。
尚、来週は欧州経済指標(ユーロ圏9月消費者信頼感指数速報値、ユーロ圏9月製造業PMI速報値、ユーロ圏9月サービス業PMI速報値など)に加えて、欧州当局者発言(エルダーソンECB専務理事、シュナーベルECB専務理事、レーンECB専務理事、デギンドスECB副総裁など)も複数予定されているため、「欧州経済の下振れ懸念→ECB高官によるハト派的な発言→ECBによる利上げサイクル終了の思惑」の波及経路で、週を通してユーロドルに下押し圧力が加わり易い時間帯が続きそうです(状況次第では3/15安値1.0516や心理的節目1.0500、1/6安値1.0483を試すシナリオも想定)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0450−1.0750
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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