ドル円見通し 当局の円安けん制発言を警戒しつつも高値追及指向(週報9月第二週)

今週は9月13日の米8月CPI(消費者物価指数)の上昇率に注目が集まる。

ドル円見通し 当局の円安けん制発言を警戒しつつも高値追及指向(週報9月第二週)

ドル円見通し 当局の円安けん制発言を警戒しつつも高値追及指向

〇先週のドル円、8日の鈴木財務相の円安けん制発言で146.59に急落するも147.86までV字反騰
〇神田財務官、鈴木財務相、為替市場の変動を注視との発言で市場牽制するも円安基調変わらず
〇昨年と同規模以上の実弾介入がなければ昨年10/21高値151.94試しへ向かう可能性継続か
〇今週は9/13の米8月CPI(消費者物価指数)の上昇率に注目
〇147円台を維持するうちは148円超えから148円台中盤を目指す上昇を想定
〇8日午前安値146.59を割り込む場合はいったん大きめの調整安に入る可能性を警戒

【概況】

ドル円は9月8日午前に鈴木財務相の円安けん制発言等をきっかけとして147円台前半から146.59円へ急落したが、突っ込んだところは早々に買い戻されて147円台前半を回復、9日未明には147.86円を付けて7日午前高値147.87円に迫るV字反騰となった。ベンダーによっては7日午前高値をわずかに上回り年初来高値としているところもある。
8月25日のジャクソンホール会合におけるパウエルFRB議長講演で追加利上げ余地が示されたこと等をきっかけとして8月29日高値147.36円へ上昇したところから、29日夜の米JOLTS求人件数の3か月連続低下やCB消費者信頼感指数が予想外に悪化した等をきっかけに下落に転じ、9月1日夜の米8月雇用統計でも予想外に失業率が悪化したことで144.44円まで続落したが、雇用統計発表直後の売り一巡から急騰に転じ、9月5日夜の上昇で8月29日高値を超えて年初来高値を更新した。

9月6日朝には神田財務官による円安けん制発言を意識しつつ147.81円へ高値を切り上げてから147.01円へ下落し、7日午前には147.87円まで年初来高値を更新してから8日未明には147.01円まで再び下げていた。
9月1日から休場を挟んで3連騰していた米10年債利回りが7日に反落したところから8日も続落したことと、鈴木財務相の円安けん制発言が重なったことで8日午前に146.59円まで反落したが、日米金利差を意識した状況から日銀の金融緩和政策も継続して円安基調は変わらないとみて買い戻され、年初来高値近辺を推移のまま週を終えた。

【円安けん制発言】

9月6日朝に財務省の神田財務官は「足元をみると投機的な行動あるいはファンダメンタルズでは説明できない動きが見られており、高い緊張感を持って注視している」、「昨年に続いて今年も急激な変動が起こっている。こういった動きが続くようであれば、政府としてはあらゆる選択肢を排除せずに適切に対応する」と述べて、昨年9月と10月の市場介入を意識させるような発言を行った。
9月8日に鈴木財務相は、「高い緊張感を持って注視し、過度な変動に対してはあらゆる選択肢を排除せず適切な対応を取りたい」、「為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要。過度な変動は望ましくない」と強調した。

政府・日銀は昨年9月22日に24年ぶりとなる単独の円買い介入を実施、10月21日、10月24日にも介入を行った。昨年9月22日の介入直前の高値は145.89円で、8月16日に146円台に到達して上抜いた後は市場介入への警戒感も持たれてきた。しかし昨年は9月22日の介入時に安値140.36円まで5円を超える急落が発生したもののバーゲンハント買いの場となって一段高した経緯もあり、市場は警戒感を持ちつつも一度の介入では今回の円安は収まらないとみている節もある。
財務官や財務相の発言も徐々にトーンが上がっており、市場介入への本気度を示すようなレートチェック等があれば短期的な円高反応を示す可能性もあるが、昨年と同規模以上の実弾介入がなければ昨年10月21日高値151.94円試しへ向かう可能性が継続するのではないかと思われる。

【9月13日の米CPIに注目】

今週は9月13日の米8月CPI(消費者物価指数)の上昇率に注目が集まる。市場の事前予想では全体の前月比が7月の0.2%から0.6%へ、前年比は7月の3.2%から3.6%へと伸びが加速すると見込まれている。エネルギーや食品等を除くコア指数の前月比については7月の0.2%と同じ、前年比は7月の4.7%から4.3%へ鈍化すると見込まれている。
全体の上昇率が再加速するのは7月から現在まで原油相場の上昇が続いていることを反映するものと思われるが、コア指数の鈍化傾向が顕著になれば米国の追加利上げ感も後退すると思われる。

8月25日のジャクソンホール会合におけるパウエルFRB議長講演以降、地区連銀総裁やFRB理事らの発言は追加利上げの可能性を否定しないものの当面は利上げ休止で良いとの見方も多い。特にウォラーFRB理事が9月5日に「差し迫ってすぐに何かをする必要があると示すものは一切ない」と述べたことで9月FOMCではほぼ利上げが見送られると市場は見ており、11月と12月のFOMCにおける追加利上げ確率も5割を切っている。
しかし、原油相場の上昇がさらに勢い付く場合には年内追加利上げの確率が上がり、利上げ状態の長期化や来年の利下げ開始時期の先送り感が優勢となることも懸念される。NY原油は期近ベースで8月24日から9月6日まで9連騰して1バレル88.08ドルまで高値を伸ばして昨年11月以来10か月振り高値水準に達し、その後も高値圏を維持している。

【米10年債利回りは小幅上昇、ダウは小幅続伸】

9月8日の米長期債利回りは概ね上昇した。原油相場の上昇によるインフレ高止まりへの懸念が支えている印象だ。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.02%高の4.27%で週を終えた。9月1日から6日まで休場を挟んで3連騰となり、7日には一時4.31%を付けて1日の4.06%以降の高値を更新したが、7日は前日比0.03%低下の4.25%となり、8日は一時4.21%まで続落したがその後に持ち直した。
30年債利回りは前日と変わらずの4.34%で終了。8月31日の4.18%から9月6日に一時4.40%まで上昇したが、7日に0.02%低下し、8日は4.30%まで低下したものの戻している。
利上げに敏感な2年債利回りは前日比0.03%上昇の4.99%で終了した。9月1日安値4.76%から6日高値5.04%まで連騰して8月28日の5.11%および7月6日の5.12%へ迫ったが、7日は前日比0.06%低下、8日は4.92%まで低下してから戻した。
NYダウは前日比75.86ドル高と上昇、7日の57.54ドル高から続伸し、ナスダック総合指数は前日比12.70ポイント高となり9月1日から7日までの4営業日続落から反発した。

【日足 一目均衡表・サイクル分析】

【日足 一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は1月16日安値127.22円を起点として3月8日高値137.91円までを上昇の1段目とし、3月24日安値129.63円から6月30日高値145.06円までを2段目とし、7月14日安値137.24円を起点として6月30日高値を超えたことにより3段目の上昇期に入っている。
昨年来、主要な高値の周期は3か月から5か月のレンジで推移しており、6月30日高値からはまだ2か月を経過したばかりのため上昇余地が残っていると思われる。円安けん制の動きを意識しつつ、米経済指標等に対する反応で一時的に下落しても先高期待から買い拾われやすい展開が続き、次回FOMCや日銀金融政策決定会合までは上昇基調を維持するのではないかと思われる。

日足の一目均衡表では8月10日の上昇で遅行スパンが好転し、7月28日の日銀金融政策決定会合時の乱高下でも先行スパンからの転落を回避して8月10日以降は先行スパンを上回る状況を維持している。当面は26日基準線を中勢の下値支持線とした上昇トレンドと考え、弱気転換は基準線割れから遅行スパン悪化へと続く下落の発生からとする。

日足の相対力指数は8月後半からの高値更新に際して指数のピークが切り上がっていないものの50ポイント台を維持してしっかりしているため、次に70ポイントを超えるところからは中勢レベルの上昇が勢い付く可能性があると考え、弱気転換は50ポイント割れからとする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面、147.00円を下値支持線、148.00円を上値抵抗線とする。
(2)147円台を維持するうちは148円超えから148円台中盤(148.35円から148.65円)を目指す上昇を想定する。口先介入に対する反応で直前高値から1円を超える反落が発生しても買い拾われやすく、米CPIが予想よりも上ブレしてドル高感が強まる場合は149円に迫る可能性もあるとみる。
(3)147円を割り込む場合は9月8日午前の急落時のように買われやすいとみるが、8日午前安値146.59円を割り込む場合はいったん大きめの調整安に入る可能性を警戒しつつ146.00円を試し、あるいは146円を割り込む可能性もあると思われるが、安値の落ち着きどころを見定めてその後の上昇再開への機会を伺いたいと考える。

【当面の予定】

9/11(月)
08:50 (日) 8月 マネーストックM2 前年同月比 (7月 2.4%)
17:00 (英) ピル英中銀理事、講演
18:00 (欧) 欧州委員会経済見通し
26:00 (米) 財務省3年物国債入札

9/12(火)
09:30 (豪) 9月 ウエストパック消費者信頼感指数 (8月 81.0)
10:30 (豪) 8月 NAB企業景況感指数 (7月 10)
15:00 (英) 7月 失業率・ILO方式 (6月 4.2%、予想 4.3%)
18:00 (独) 9月 ZEW景況感 (8月 -12.3、予想 -15.0)
18:00 (欧) 9月 ZEW景況感 (8月 -5.5)
26:00 (米) 財務省10年物国債入札

9/13(水)
08:50 (日) 7-9月期 大企業全産業業況判断指数・BSI(4-6月 2.7)
08:50 (日) 7-9月期 大企業製造業業況判断指数・BSI(4-6月 -0.4)
08:50 (日) 8月 国内企業物価指数 前月比 (7月 0.1%、予想 0.2%)
08:50 (日) 8月 国内企業物価指数 前年同月比 (7月 3.6%、予想 3.3%)

15:00 (英) 7月 月次GDP 前月比 (6月 0.5%、予想 -0.2%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 1.8%、予想 -1.6%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 0.7%、予想 0.4%)
15:00 (英) 7月 貿易収支・物品 (6月 -154.55億ポンド、予想 -159.00億ポンド)
15:00 (英) 7月 貿易収支 (6月 -47.87億ポンド、予想 -45.00億ポンド)
18:00 (欧) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 0.5%、予想 -0.9%)
18:00 (欧) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 -1.2%、予想 -0.4%)
21:30 (米) 8月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (7月 0.2%、予想 0.6%)
21:30 (米) 8月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (7月 3.2%、予想 3.6%)
21:30 (米) 8月 コアCPI 前月比 (7月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 コアCPI 前年同月比 (7月 4.7%、予想 4.3%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省30年物国債入札
27:00 (米) 8月 財政収支 (7月 -2208億ドル、予想 -2582億ドル)

9/14(木)
08:50 (日) 7月 機械受注 前月比 (6月 2.7%、予想 -0.7%)
08:50 (日) 7月 機械受注 前年同月比 (6月 -5.8%、予想 -10.6%)
10:30 (豪) 8月 新規雇用者数 (7月 -1.46万人、予想 2.55万人)
10:30 (豪) 8月 失業率 (7月 3.7%、予想 3.7%)
13:30 (日) 7月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -2.0%)
13:30 (日) 7月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (6月 -2.5%)
13:30 (日) 7月 設備稼働率 前月比 (6月 3.8%)

21:15 (欧) ECB(欧州中銀) 政策金利 (現行 4.25%、予想 4.25%)
21:30 (米) 8月 小売売上高 前月比 (7月 0.7%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 小売売上高・除自動車 前月比 (7月 1.0%、予想 0.4%)
21:30 (米) 8月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (7月 0.3%、予想 0.4%)
21:30 (米) 8月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (7月 0.8%、予想 1.3%)
21:30 (米) 8月 コアPPI 前月比 (7月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 コアPPI 前年同月比 (7月 2.4%、予想 2.2%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.6万件、予想 22.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 167.9万人)
21:45 (欧) ラガルドECB総裁会見
23:00 (米) 7月 企業在庫 前月比 (6月 0.0%、予想 0.1%)

9/15(金)
11:00 (中) 8月 小売売上高 前年同月比 (7月 2.5%、予想 3.0%)
11:00 (中) 8月 鉱工業生産 前年同月比 (7月 3.7%、予想 3.9%)
13:30 (日) 7月 第三次産業活動指数 前月比 (6月 -0.4%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 7月 貿易収支・季調済 (6月 125億ユーロ)
18:00 (欧) 7月 貿易収支・季調前 (6月 230億ユーロ)
21:30 (米) 9月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (8月 -19.0、予想 -10.0)
21:30 (米) 8月 輸入物価指数 前月比 (7月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 8月 輸出物価指数 前月比 (7月 0.7%、予想 0.3%)
22:15 (米) 8月 鉱工業生産 前月比 (7月 1.0%、予想 0.1%)
22:15 (米) 8月 設備稼働率 (7月 79.3%、予想 79.3%)
23:00 (米) 9月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (8月 69.5、予想 69.2)

注:ポイント要約は編集部

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