143.54円へ続伸後に米国債格下げで143円を割り込む
〇ドル円、8/1夜に143円を超え8/2未明143.54まで高値を伸ばす
〇8/1夜の米経済指標が市場予想を下回るも景気と労働市場は底固いとしてドル売りは限定的
〇8/2早朝、フィッチが米国債格付けをトリプルAからダブルAプラス引き下げで142.70へ下落
〇週末の米雇用統計も迫ってくる中で3連騰の急伸に対する上昇一服感が出ているところか
〇NYダウ、13連騰から7/27は反落したが7/28から3連騰、株式市場の楽観的な先高感は継続
〇143.25以下での推移中は一段安注意とし、142.50割れからは142円試しへ向かうとみる
〇143.25超えからは8/2未明高値143.54試しとし、高値更新からは144円台前半を目指す上昇を想定
【概況】
ドル円は7月28日の日銀金融政策決定会合を前後した乱高下で付けた安値138.06円を起点として反騰に転じ、29日早朝に141円台に到達、31日夜には高値で142.67円を付け、8月1日夜には143円を超えて2日未明には143.54円まで高値を伸ばした。しかし2日早朝に格付け大手のフィッチが米国債を格下げしたことをきっかけに142.70円へ下落した。
8月1日夜の米経済指標では7月ISM製造業景況指数やJOLTS求人件数が市場予想を下回ったものの米国の景気と労働市場は底固いとして発表後のドル売りは限定的なものにとどまり、ドル円は143円を一時割り込んでから一段高した。
8月2日早朝にかけては米長期債利回りが上昇してドル円を押し上げた。また日銀のYCC(長短金利操作)における長期金利変動許容上限の引き上げに対しても当面の円買い材料消化として円安基調は継続するとみてのドル買い円売りが優勢だった。しかし米国債格下げをきっかけとしドル買いにブレーキがかかり、週末の米雇用統計も迫ってくる中で3連騰の急伸に対する上昇一服感が出ているところと思われる。
【米国債格下げでドル円の連騰にブレーキ】
格付け大手のフィッチ・レーティングスは8月2日早朝に米国債の格付けを最上級の「トリプルA」から「ダブルAプラス」に1段階引き下げた。格下げの根拠は今後3年間で予想される財政状況の悪化や政府債務増の影響を考慮したためとしている。米国は6月の債務上限問題ではデフォルトを回避したが、フィッチは「繰り返される政治対立が財政運営の信任を蝕む」とした。
これに対してイエレン米財務長官は米国債格下げに「強く反対する」と声明を出し、「米国債は引き続き世界で並外れて安全な資産」であり、「フィッチの格付け変更は恣意的で古いデータに基づくものだ」、「米経済は根本的に強い」と批判した。
当面は新たな米国債務上限問題は発生しないとはいえ、突然の格下げ報道でドル買いにブレーキがかかった印象だ。
【米ISM製造業景況指数、JOLTS求人件数は予想を下回る】
8月1日に発表されたISM=米供給管理協会による7月製造業景況指数は46.4となり、2020年5月以来の最低となった6月の46.0を上回ったものの市場予想の46.8を下回り、好不況の分岐点である50を9か月連続で下回った。
内訳では新規受注が6月の45.6から47.3へ改善、生産が6月の46.7から48.3へ改善したが、雇用は6月の48.1から44.4へ悪化、価格指数は6月の41.8から42.6へ上昇した。景況感としては50を下回る低調さではあるがドル売りを勢い付かせるほどではないと市場は受け止めたようだ。
S&Pグローバルによる7月米製造業PMI確報値は49.0で速報値と変わらず、6月の46.3から上昇した。
米労働省による6月のJOLTS(雇用動態調査)求人件数は前月比3万4000件減少の958万2000件で市場予想の961万件を下回り、2か月連続の減少で2021年4月以来の低水準となった。しかし低下したとはいえまだ高水準のために労働市場のひっぱく感は継続していると市場は受け止めたようだ。
【米長期債利回りは上昇、ダウは13連騰一服後に3連騰】
8月1日の米長期債利回りは総じて上昇した。米財務省の四半期入札を控えて債券売り・利回り上昇となり、米経済指標が予想を下回ったことに対する反応も限定的なものにとどまったが、2日早朝の米国債格下げ報道後は低下している。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.07%上昇の4.03%となり、一時は4.06%へ上昇して7月7日の4.09%以来の水準としたが、2日未明から上昇一服感で低下し、米国債格下げ報道から続落した。
30年債利回りは0.09%上昇の4.10%となり7月10日の4.09%を超えて昨年11月以来の高水準に達したが、その後に4.07%まで低下した。
利上げに敏感な2年債利回りは0.03%上昇の4.91%で終了したが7月27日に4.95%を付けてからは上げ渋りで揉み合いの様相だ。
一方、NYダウは前日比71.15ドル高と上昇、7月10日から7月26日まで1987年1月以来の13連騰となり、27日に反落して連騰が途切れたものの7月28日から3連騰とし、高値で35679.13ドルを付けて昨年10月底以降の最高値を更新した。ナスダック総合指数は米長期債利回り上昇を嫌って62.11ポイント安と下落したが、7月19日に14446.55ポイントを付けて昨年10月以降の最高値とした後は14000ポイント台で高止まりの様相だ。株式市場の楽観的な先高感は継続していると思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は7月28日の乱高下で138.06円まで安値を切り下げてから反騰入りしたが、8月1日未明に高値を143.54円へ伸ばしたところから2日早朝に143円割れへ反落した。上昇基調は継続してゆくと思われるが、目先は7月28日からの3連騰一服で調整安に入っている印象だ。安値形成期は8月2日の日中から4日午後にかけての間と想定されるが、8月2日未明高値を超えるところからは新たな上昇期入りとして4日夜から9日未明にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では7月28日夜からの反騰で遅行スパンと先行スパンがともに好転し、その後も両スパンそろっての好転を維持しているが、8月2日早朝への反落で26本基準線を割り込み遅行スパンが悪化しやすい位置に来ている。遅行スパンが悪化せずに8月2日未明た高値を超える場合はそのまま上昇継続と考えるが、遅行スパンが悪化するところからは調整安が続くとみて先行スパンに潜り込む下落を想定する。ただしその場合も先行スパン上限を割り込まないか一時的に潜り込んでも上抜き返す場合は上昇再開ヘ進む可能性ありとみて遅行スパンが再び好転するところからは高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は8月2日未明に70ポイント台後半へ上昇してから50ポイント割れへ急落したため、60ポイント台を回復できないうちは一段安余地ありとし、45ポイント割れからは30ポイント前後への低下を想定する。ただし、60ポイント台回復からは上昇再開として再び70ポイント台後半へ進むとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、142.50円を下値支持線、8月2日未明高値143.54円を上値抵抗線とする。
(2)143.25円以下での推移中は一段安注意とし、142.50円割れからは142円試しへ向かうとみる。142円前後は反騰警戒とするが、142.50円以下での推移なら3日午前も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)143.25円超えからは8月2日未明高値143.54円試しとし、高値更新からは144円台前半を目指す上昇を想定する。144円到達では売られやすいとみるが、143.25円以上での推移なら3日午前も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
8/2(水)
英中銀金融政策委員会(MPC)初日
21:15 (米) 7月 ADP非農業部門民間就業者数 前月比 (6月 49.7万人、予想 18.9万人)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
8/3(木)
08:50 日銀金融政策決定会合議事要旨(6月15-16日開催分)
10:30 (豪) 6月 貿易収支 (5月 117.91億豪ドル、予想 105.00億豪ドル)
10:45 (中) 7月 財新サービス業PMI (6月 53.9、予想 52.7)
15:00 (独) 6月 貿易収支 (5月 144億ユーロ、予想 150億ユーロ)
16:55 (独) 7月 サービス業PMI・改定値 (速報 52.0、予想 52.0)
17:00 (欧) 7月 サービス業PMI・改定値 (速報 51.1、予想 51.1)
17:30 (英) 7月 サービス業PMI・改定値 (速報 51.5、予想 51.5)
18:00 (欧) 6月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (5月 -1.9%、予想 -0.3%)
18:00 (欧) 6月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (5月 -1.5%、予想 -3.1%)
20:00 (英) 英中銀(BOE) 政策金利 (現行 5.00%、予想 5.25%)
20:30 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、会見
21:30 (米) 4-6月期 非農業部門労働生産性・速報値 前期比 (1-3月 -2.1%、予想 2.0%)
21:30 (米) 4-6月期 単位労働コスト・速報値 前期比年率 (1-3月 4.2%、予想 2.5%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.1万件、予想 22.7万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 169.0万人、予想 172.1万人)
21:30 バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
22:45 (米) 7月 サービス業PMI・改定値 (速報 52.4、予想 52.4)
23:00 (米) 7月 ISM非製造業景況指数 (6月 53.9、予想 53.0)
23:00 (米) 6月 製造業新規受注 前月比 (5月 0.3%、予想 2.0%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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