ドル円見通し 信用不安背景とした波乱続くも132円割れから持ち直す(23/3/17)

3月16日夜安値で131.71円へ下落、3月15日夜安値132.21円を割り込み3月8日につけた年初来高値137.91円以降の安値を更新したが、17日未明には133.82円まで切り返した。

ドル円見通し 信用不安背景とした波乱続くも132円割れから持ち直す(23/3/17)

ドル円見通し 信用不安背景とした波乱続くも132円割れから持ち直す

〇ドル円、3/16夜安値131.71へ下落、3/15夜安値132.21を割り込むも、3/17未明133.82まで切り返す
〇信用不安背景とした波乱続くも、米財務省長官がFRBの利上げ支持の姿勢を示し市場も落ち着く
〇ECBは従来予想通り0.50%利上げ決定、次回会合では利上げペースの減速や見送りの予想も
〇昨日発表の米経済指標はまちまち、市場の米経済指標への反応は限定的
〇米長期債利回りは上昇、米株価も上昇したがしばらくは不安定な動きが続くか
〇133.82超えからは、134円台中盤への上昇を想定する
〇132.80割れからは下げ再開を警戒して、3/16夜安値131.71を目指す下落を想定する

【概況】

ドル円は3月16日夜安値で131.71円へ下落、3月15日夜安値132.21円を割り込み3月8日につけた年初来高値137.91円以降の安値を更新したが、17日未明には133.82円まで切り返した。

先週のシルバーゲート銀、シリコンバレー銀の破綻に続き3月13日朝にNY州の地銀シグネチャー銀の破綻報道があり米長期債利回りが大幅低下を繰り返す中でドル円は134円を割り込み、13日夜へ一段安となった。週末からの急落がいったん落ち着いて米長期債利回りが戻したことで15日夕刻には135.09円まで持ち直し、3月8日からの下げ幅に対する半値戻しに達したが、今度はクレディ・スイス株の暴落により欧銀への破綻飛び火懸念から132.21円へ下落して3月13日夜安値を割り込み、16日は新たな米銀経営不振報道やECBが利上げを決定したことの受け止めで混乱したこともあり132円を割り込んだ。
しかしECBが2008年金融危機のような状況にはならずクレディ・スイス問題は米銀破綻のようにはならないと自信を示し、イエレン米財務省長官もインフレ抑制のためのFRBの利上げを支持する姿勢を示したことで市場も落ち着いてドル円もひとまず買い戻し優勢となった。

【ECBは従来予想通りの0.50%利上げを決定】

欧州中銀(ECB)は3月16日の定例理事会で0.50%利上げを決定した。通常の二倍となる0.50%利上げは3会合連続となった。クレディ・スイスの経営不安により利上げペースの減速や利上げの見送りの可能性も取り沙汰されていたが、ラガルドECB総裁は「市場の緊張を注意深く監視している」としつつも「銀行セクターは2008年の金融危機よりはるかに強固な状況にある」と市場の不安払拭に努めた。ただ、今後については「不確実性が高まっておりその時の経済・金融情勢に基づいて判断する」として2月の前回会合で示した「安定したペースで大幅に金利を引き上げる」と明記したところからは後退しており、次回会合では利上げペースの減速ないし見送りも予想される。

クレディ・スイスはスイス中銀から最大500億スイスフラン(凡そ540億ドル)の借り入れを決定しており、リーマンショック以降で初の大手グローバル金融機関として緊急支援の受け入れとなったが、ひとまず危機は回避され、ECBも利上げ決定に踏み切ったということだろう。利上げを躊躇した場合にはそれだけ危機感が大きいことを示すことになり市場がかえって動揺する可能性もあった。

【イエレン米財務長官はFRBの利上げ支持】

イエレン米財務長官が3月16日に上院財政委員会で証言に立ち、「米国経済にとっての最大の問題はインフレであり、インフレ対策がバイデン大統領の最優先課題だ」「インフレ抑制はFRBにとって非常に重要」と強調して来週のFOMCにおける利上げを支持した。シリコンバレー銀の破綻等がさらに連鎖破綻を招く懸念はあったものの早期の対策により危機は回避されているとし、市場の不安払拭に努めた。
3月16日には米中堅銀行ファースト・リパブリック銀行が大手格付け会社により「投機的水準」に格下げされたために経営危機と身売り懸念が強まったものの、JPモルガン・チェースやバンカメ等の11行が300億ドルの預金預け入れを表明したことで市場の不安も後退した。
一連の動きを踏まえれば、3月21-22日開催のFOMCでは0.25%利上げが決まる可能性が高くなったようだ。

【3月16日の米経済指標はまちまち】

3月16日発表の米経済指標はまちまち。
米新規失業保険申請件数は19.2万件で前週の21.2万件から減少して市場予想の20.5万件を下回り、失業保険受給者数は168.4万人で前週の171.3万人及び市場予想の171.5万人を下回り労働市場の引き締まりを示した。
2月の住宅着工件数は前月比9.8%増の145.0万戸で市場予想の131.0万戸を大幅に上回り、住宅着工許可件数は前月比13.8%増の152.4万戸で市場予想の134.0万戸を大幅に上回った。最近の米住宅市況低迷の中では復調の兆しを示す数字だった。
フィラデルフィア連銀の3月景況指数は-23.2で2月の-24.3から若干改善したものの市場予想の-15.6を下回った。
2月の輸入物価指数は前月比-0.1%で1月の-0.4%及び市場予想の-0.2%を上回ったが、輸出物価指数の前月比は0.2%で1月の0.5%から鈍化して市場予想の-0.1%を上回った。
金融機関破綻問題やECB利上げ等へ市場の目が向かっていたために米経済指標への反応は限定的だった。

【米長期債利回り上昇するも波乱続く】

3月16日の米長期債利回りは総じて上昇した。
長期金利指標の10年債利回りの終盤は3.58%で前日比0.12%上昇した。ファースト・リパブリック銀の身売り騒動で一時は3.37%まで低下したもののFRBの利上げ継続の可能性が高まったとして上昇した。
30年債利回りの終盤は3.71%で前日比0.06%上昇した。
利上げに敏感な2年債利回りの終盤は4.17%で前日比0.28%上昇した。2年債利回りは3月8日に5.08%をつけて2007年以降の最高値としたところから3月9日に0.21%低下、10日に0.28%低下、13日には0.57%低下し、14日は0.24%上昇と戻して15日は0.37%低下というようにレンジの大きな騰落が続いており、当面は波乱が続くと思われる。
一方でNYダウは当初に下落で開始したものの前日比371.98ドル高と上昇、ナスダック総合指数は283.23ポイント高と上昇した。過度の破綻連鎖不安が後退したとして買い戻されているところだが、次々と金融機関の経営不安関連報道が続いていることもあり、しばらくは不安定な動きが続きそうだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は3月13日夜安値から3日目となる3月16日夜安値で目先の底を付けて戻したところだ。3月15日高値を基準として3月20日から22日にかけての間へ上昇する可能性もあるが、3月8日以降は戻り高値を切り下げつつ乱調な展開を繰り返しているので133円割れから続落に入る場合は下落再開を警戒して3月16日夜安値試しとし、底割れからは新たな下落期入りとして21日夜から23日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では3月16日夜安値からの反発で遅行スパンが好転、先行スパン突破を試している。134円を超えてくれば両スパンそろっての好転が顕著となるので遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、133円割れからは下げ再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は3月15日夜から16日夜への一段安に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せて戻したが、60ポイント前後に抵抗感が出ている。50ポイント以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは70ポイントを目指す上昇余地ありとするが、45ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント前後への低下を想定し、下げ足が速まる場合は20ポイント台前半への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、132.80円を下値支持線、17日未明高値133.82円を上値抵抗線とする。
(2)133円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし、133.82円超えからは134円台中盤への上昇を想定する。133円を上回っての推移が続くなら週明けも高値試しの継続とみるが、134.50円以上では戻り売りも出やすいと注意する。
(3)132.80円割れからは下げ再開を警戒して3月16日夜安値131.71円を目指す下落を想定する。下げ足が速まる場合は131円前後へ下値目途を引き下げ、132.50円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

3/17(金)
OECD経済見通し
13:30 (日) 1月 第三次産業活動指数 前月比 (12月 -0.4%、予想 0.5%)
19:00 (欧) 2月 消費者物価指数(HICP)・改定値 前年同月比 (速報 8.5%、予想 8.5%)
19:00 (欧) 2月 HICPコア指数・改定値 前年同月比 (速報 5.6%、予想 5.6%)
22:15 (米) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 0.0%、予想 0.4%)
22:15 (米) 2月 設備稼働率 (1月 78.3%、予想 78.5%)
23:00 (米) 2月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (1月 -0.3%、予想 -0.2%)
23:00 (米) 3月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (2月 67.0、予想 67.0)


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