ドル円 FRB議長議会証言、日銀金融政策決定会合、米2月雇用統計と重要イベント続く(週報3月第一週)

ドル円は1月16日安値127.21円から3月2日高値137.09円まで9.88円の上昇幅となった。

ドル円 FRB議長議会証言、日銀金融政策決定会合、米2月雇用統計と重要イベント続く(週報3月第一週)

FRB議長議会証言、日銀金融政策決定会合、米2月雇用統計と重要イベント続く

〇ドル円、3/2夜137.09を付けた後は伸びず、米長期債利回り大幅低下に一時135.73まで切り下げて越週
〇今週はパウエル議長議会証言、日銀金融政策決定会合と総裁会見、米2月雇用統計と重要イベント続く
〇黒田総裁体制最後の日銀金融政策決定会合では政策修正なしか
〇ドル円は1/16安値127.21から9.88円の上昇、上げ幅は10円に迫り上昇一服感も
〇134.85割り込みその後も135円台中盤へ切り返せない場合134円前後への下落を想定
〇137.20超えから高値試しとなる場合持ち合い上放れとみて138円前後への上昇、勢い次第で更に上も

【概況】

ドル円は3月2日夜高値で137.09円を付けた後は伸びず、3月3日は米長期債利回りが前日までの大幅上昇に対する修正で大幅低下したことで売られて3月4日早朝には135.73円まで安値を切り下げたが、3月1日夜安値135.24円割れには至らずに週を終えた。
2月3日の米1月雇用統計で非農業部門就業者数が予想を大幅に超えたことをきっかけとして米FRBによる利上げ継続感が強まったとして米長期債利回りが上昇に転じ、その後も2月14日の米消費者物価指数(CPI)や2月16日の米生産者物価指数(PPI)、2月24日の米個人消費価格指数(PCE)デフレーターがいずれも市場予想を上回ったことで米長期債利回り上昇とドル高が勢い付いてきた。また日銀新総裁人事を巡る候補者報道による乱高下が落ち着き、植田新総裁候補らの国会所信表明における金融緩和政策継続姿勢により急激な政策変更はないとの安心感もドル円の上昇に寄与してきた。

しかし欧州のインフレ率も上ブレが目立ったことで欧州各国の長期債利回りも大幅上昇してきたために2月2日から下落してきたユーロやポンドが2月27日以降は反発してドルの強弱感も定まらなくなる中、ドル円も2月28日夜高値136.93円に対して3月2日夜高値137.09円でわずかに高値を更新したものの137円前後に抵抗感を抱えた動きを見せている。
今週は3月7日と8日にパウエル米FRB議長の半期に一度の議会証言、3月10日の日中に日銀金融政策決定会合と黒田総裁会見、10日夜には米2月雇用統計と重要イベントが続く。ドル円としては1月16日安値を起点とした上昇基調を継続できるのか、いったん調整安期に入るのか試される局面だ。

【黒田総裁として最後の日銀金融政策決定会合】

3月9日から10日の日程で黒田総裁体制における最後の日銀金融政策決定会合が行われる。
昨年12月10日の前々回会合で長期金利ゼロ%誘導のための許容変動幅上限を従来の0.25%から0.50%へ引き上げたことが事実上の利上げと市場は受け止めて円高が勢い付いたが、前回会合を含めて黒田総裁らは金融緩和政策の継続を強調して市場を落ち着かせ、共通担保資金供給オペ拡充と指値オペによる無制限国債購入で長期金利上昇を抑えてきた。
植田新総裁の就任が確実となった状況で退任前の黒田現総裁らが金融政策の追加修正を行うとは考え難い。植田総裁候補や副総裁候補等の国会所信表明では機能不全に陥っていると指摘されているYCC(イールドカーブコントロール、長短金利操作)については12月の修正効果を見定めたいと述べており、中川審議委員や高田審議委員も同様の発言を行っている。

しかし日銀が3月1日に公表した「債券市場サーベイ」においては市場機能が一段と悪化し、3か月前との比較でも低下したとの見方が過半を占めており、日銀が新体制に入った後はYCC修正を含む「異次元」金融緩和政策に対する軌道修正が始まるのだろうと思われる。
3月3日には新発10年債利回り(369回債)が一時0.505%を付けて日銀許容上限を超えてから0.500%で終了するなど、長期金利上昇圧力は継続している。

【米ISMサービス業景況指数はわずかに低下も雇用は1年ぶり高水準】

3月3日に米サプライ管理協会(ISM)が発表した2月のサービス業景況指数は55.1となり、1月の55.2からわずかに低下したものの市場予想の54.5を上回り、好況目安の50を大幅に上回った状況を維持した。このうち新規受注が1月の60.4から62.6へ上昇、雇用は1月の50.0から54.0へと上昇したが、価格は1月の67.8から65.6へと低下した。
3月1日に発表された2月のISM製造業景況指数は47.7で1月の47.4からわずかに改善したものの50を下回った状況を続けたが、経済の3分の2を占めるサービス業の好調さはFRBによる金融引き締め姿勢をよりタカ派にすることに寄与するものといえる。

【3月7日、8日にパウエルFRB議長の半期議会証言】

パウエルFRB議長は3月7日に上院銀行委員会、3月8日に下院金融委員会で半期に一度の議会証言を行う。FRBは3月3日に議会に対して報告書を提出しているが、その中ではインフレ率はFRBの目標を大幅に上回っていること、労働力不足が続いていることで労働市場は極めて引き締まっていること、物価上昇を抑制するためには一段の景気減速が必要であること、政策金利の誘導目標レンジを継続的に引き上げることが適切と予想している等と指摘し、「高インフレが経済にもたらす課題を痛感し、2%のインフレ目標達成を強く確約する」としている。
3月21-22日の次回FOMCまでにはまだ時間があるが、市場としては3月10日の米雇用統計、3月14日の米2月CPI、3月15日の米PPI等を見ながらFOMCにおける利上げ幅が大方の予想通りの0.25%で落ち着くのか、0.50%利上げへとペースアップする可能性が高まるのか、利上げのピーク水準や利上げ状態の長期化程度を見極めてゆくことになる。当面は米経済指標とFRB高官や地区連銀総裁らの発言に対して一喜一憂を繰り返して行くと思われる。

FRB高官発言については、3月2日にウォラー理事が「雇用統計とCPIが引き続き過熱を示すなら今年は政策金利をより一層引き上げられる必要がある」とタカ派姿勢を示したが、一方でアトランタ連銀のボスティック総裁は次回FOMCでは0.25%利上げを支持するとし、「必要以上に引き締めないよう、慎重かつ注意深く調整することが適切」と述べるなど、タカ派的な発言とハト派的な発言が入り交じっている。3月3日にはリッチモンド連銀のバーキン総裁が「利上げはより慎重に動くことが妥当だ」としつつも「インフレが持続すれば一段の利上げで対応する」と述べており、FOMCメンバーもタカ派的となるべきかハト派的とすべきか悩ましい状況ということだろう。

【米長期債利回りは連騰から一転大幅低下】

米10年債利回りは3月2日に前日比0.06%上昇で2月28日から3連騰となり、一時は4.09%を付けて昨年11月以来の高値となったが、3月3日はこの間の大幅上昇に対する修正が入り前日比0.10%低下して3.96%で週を終えた。30年債利回りも3月2日には0.06%上昇の4.06%となり、昨年11月以来の4%台に到達したが3月3日は前日比0.11%低下して3.88%で週を終えた。利上げに敏感な2年債利回りは3月2日に一時4.94%を付けて昨年11月4日に付けた4.88%を超えて2007年以来16年ぶり高水準としたが、3月3日は0.03%低下の4.86%に終わったが週間では5週連続の上昇だった。

欧州のインフレ率が高止まりしていることで独仏伊等の長期債利回りも大幅上昇してきたことで、為替市場におけるドルの強弱ではユーロ高が優勢となったりドル高が優勢となったり交錯している印象もあるため、今後はECBの大幅利上げ継続姿勢や欧州経済指標にも注意が必要だ。
一方でNYダウは3月2日に前日比341.73ドル高、3日に387.40ドル高と連騰、ナスダック総合指数は3月2日に83.50ポイント高、3日に226.03ポイント高と連騰した。いずれもアトランタ連銀総裁やリッチモンド連銀総裁の発言がややハト派だったことで過度の不安が後退したことで買い戻されている印象だ。

【1月16日からの上昇幅も10円に迫り上昇一服感、当面のポイント】

【1月16日からの上昇幅も10円に迫り上昇一服感、当面のポイント】

ドル円は1月16日安値127.21円から3月2日高値137.09円まで9.88円の上昇幅となった。昨年10月21日高値151.94円からの下落幅24.73円に対する3分の1戻し135.45円をクリアしており、半値戻しの139.57円及び140円到達を目指して上昇を継続できるのか、いったん仕切り直しの調整安期に入るのか試されるところだ。
日銀新体制による性急な軌道修正はなさそうだとして日銀を巡る波乱は落ち着いており、当面は米長期債利回り動向を見ながらFRB議長の議会証言、日銀金融政策決定会合、米雇用統計などへ反応してゆく展開と思われる。
2月28日夜高値136.93円から3月2日夜高値137.09円へ高値ラインは若干切り上がっているが、その中間にある3月1日夜安値135.24円を割り込む場合は両高値をダブルトップ型とした下落期入りの可能性が高まると思われる。その際に135円前後で下げ止まり136円台へ切り返せば3月1日夜安値から安値ラインが切り下がる形となるものの136円を中心として前後概ね1円規模の騰落範囲に収まるボックス型持ち合いとなり、持ち合い上限を試し、きっかけを得て持ち合いを上放れしてゆく可能性も生じる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面、136.80円から137.20円までを上値抵抗帯、135.25円から134.85円までを下値支持帯とした逆張り展開を想定する。
(2)134.85円を割り込みその後も135円台中盤へ切り返せない場合は2月28日夜と3月2日夜の両高値をダブルトップとした下落期とみて134円前後への下落を想定する。FRB議長証言や米雇用統計等で売られる場合は133円台中盤へ下値目途を引き下げ、その後も調整安が長引く可能性があると考える。
(3)137.20円を超えてからも137円台を維持して高値切り上げを試し始める場合は持ち合い上放れに入ったとみて138円前後への上昇を想定する。上昇が勢い付く場合は139円、140円を順次試してゆく上昇期入りの可能性もあると考える。

【当面の主な予定】

3/6(月)
休場 タイ
19:00 (欧) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -2.7%、予想 1.0%)
19:00 (欧) 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 -2.8%、予想 -1.8%)
24:00 (米) 1月 製造業新規受注 前月比 (12月 1.8%、予想 -1.8%)

3/7(火)
休場 インド
未 定 (中) 2月 貿易収支・米ドル建て (1月 780.1億ドル、予想 958.5億ドル)
未 定 (中) 2月 貿易収支・人民元建て (1月 5501.1億元)
09:30 (豪) 1月 貿易収支 (12月 122.37億豪ドル、予想 122.50億豪ドル)
12:30 (豪) 豪中銀(RBA) 政策金利 (現行 3.35%、予想 3.60%)
16:00 (独) 1月 製造業新規受注 前月比 (12月 3.2%、予想 -0.9%)
16:00 (独) 1月 製造業新規受注 前年同月比 (12月 -10.1%、予想 -12.3%)
24:00 (米) 1月 卸売売上高 前月比 (12月 0.0%)
24:00 (米) パウエル米FRB議長、上院銀行委員会半期議会証言
27:00 (米) 財務省3年債入札
29:00 (米) 1月 消費者信用残高 前月比 (12月 115.6億ドル、予想 270.0億ドル)

3/8(水)
休場 ロシア
06:55 ロウ豪中銀総裁、講演
08:50 (日) 1月 経常収支・季調前 (12月 334億円、予想 -7374億円)
08:50 (日) 1月 経常収支・季調済 (12月 1兆1821億円、予想 8534億円)
08:50 (日) 1月 貿易収支・国際収支ベース (12月 -1兆2256億円、予想 -2兆9180億円)
14:00 (日) 1月 景気先行指数CI・速報値 (12月 97.2、予想 96.9)
14:00 (日) 1月 景気一致指数CI・速報値 (12月 99.1、予想 96.4)
14:00 (日) 2月 景気ウオッチャー・現状判断 (1月 48.5、予想 49.0)
14:00 (日) 2月 景気ウオッチャー・先行判断 (1月 49.3、予想 49.7)

16:00 (独) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -3.1%、予想 1.4%)
16:00 (独) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -3.9%、予想 -3.7%)
16:00 (独) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -5.3%、予想 2.4%)
16:00 (独) 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 -6.6%、予想 -5.0%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP確定値 前期比 (改定値 0.1%、予想 0.1%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP確定値 前年同期比 (改定値 1.9%、予想 1.9%)
19:00 (欧) ラガルド欧州中銀(ECB)総裁、講演
22:15 (米) 2月 ADP非農業部門民間就業者数 前月比 (1月 10.6万人、予想 20.0万人)
22:30 (米) 1月 貿易収支 (12月 -674億ドル、予想 -687億ドル)
24:00 (米) パウエル米FRB議長、下院金融委員会半期議会証言
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省10年債入札
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

3/9(木)
日銀・金融政策決定会合初日
バイデン米大統領、予算教書
08:50 (日) 2月 マネーストックM2 前年同月比 (1月 2.7%)
08:50 (日) 10-12月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.2%、予想 0.2%)
08:50 (日) 10-12月期 GDP改定値 年率換算 (速報 0.6%、予想 0.8%)
10:30 (中) 2月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (1月 2.1%、予想 1.9%)
10:30 (中) 2月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (1月 -0.8%、予想 -1.4%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 19.0万件、予想 19.5万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 165.5万人、予想 166.5万人)
24:00 (米) バーFRB副議長、暗号通貨関連の講演
27:00 (米) 財務省30年債入札

3/10(金)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
06:45 (NZ) 10-12月期 製造業売上高 前期比 (7-9月 5.1%)
08:30 (日) 1月 全世帯消費支出 前年同月比 (12月 -1.3%、予想 -0.1%)
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前月比 (1月 0.0%、予想 -0.3%)
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前年同月比 (1月 9.5%、予想 8.5%)
15:30 (日) 黒田日銀総裁、定例記者会見
16:00 (独) 2月 消費者物価指数(CPI)改定値 前月比 (速報 0.8%、予想 0.8%)
16:00 (独) 2月 消費者物価指数(CPI)改定値 前年同月比 (速報 8.7%、予想 8.7%)
16:00 (英) 1月 月次GDP 前月比 (12月 -0.5%、予想 0.1%)
16:00 (英) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 0.3%、予想 0.0%)
16:00 (英) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -4.0%、予想 -4.0%)
16:00 (英) 1月 貿易収支・物品 (12月 -192.71億ポンド、予想 -175.00億ポンド)
16:00 (英) 1月 貿易収支・全体 (12月 -71.50億ポンド、予想 -62.00億ポンド)

22:30 (米) 2月 非農業部門就業者数 前月比 (1月 51.7万人、予想 20.0万人)
22:30 (米) 2月 失業率 (1月 3.4%、予想 3.4%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前月比 (1月 0.3%、予想 0.3%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前年同月比 (1月 4.4%、予想 4.7%)
28:00 (米) 2月 月次財政収支 (1月 -388億ドル、予想 -2410億ドル)

注:ポイント要約は編集部

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