『米金利急低下でもドル円の下げ幅は限定的。反発リスクに要警戒』
〇今週のドル円、週央にかけ137.01まで急伸、米金利上昇、中国経済持ち直し期待等がサポート
〇買い一巡後は伸び悩み、米指標不冴え、米金利低下に週末にかけ135円台前半に下落
〇ユーロドル週初1.0616まで上昇するも週末にかけ1.0368まで下落、1.04台前半で越週
〇欧州指標の不冴え、金融引き締めによる欧州経済先行き不透明感等が背景
〇ドル円、一時23年9ヶ月ぶり高値をつけ、テクニカルの地合い極めて強い
〇ファンダメンタルズもFRBのインフレ抑制重視姿勢明確化等ドル買い要因多い
〇米国のドル高容認スタンスは日銀為替介入も難しくしており、ドル高円安トレンド継続か
〇来週の予想レンジ(USDJPY):134.00ー137.50
今週のレビュー(6/27−7/1)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初135.12で寄り付いた後、@株式市場の軟調推移や、A原油先物価格の冴えない動き、B上記@Aを背景としたリスク回避の円買い圧力が重石となり、週明け早々に、週間安値134.51まで下落しました。しかし、6/24に記録した直近安値134.35をバックに下げ渋ると、C米金利上昇に伴うドル買い圧力や、D米5月耐久財受注(結果0.7%、予想0.2%)の良好な結果、E中国経済の持ち直し期待(北京市と上海市における新型コロナウイルス新規感染者が2月下旬以来となるゼロを記録→リスク選好の円売り圧力)、Fニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁による「次回FOMC会合は0.50%か0.75%の利上げが議論される」「景気後退シナリオはない」とのタカ派的な発言、Gサンフランシスコ連銀デイリー総裁による「経済と労働市場は強くよりソフトなランディングに良い位置」との米経済に楽観的な見解発表、Hクリーブランド連銀メスター総裁による「米金利は来年4%を上回ることを望む」「米経済のリセッション入りは予想していない」「次回FOMCで75bpの利上げを支持する」とのタカ派的な発言、
IパウエルFRB議長による「米経済は実際にはかなり強い」「米経済は金融引き締めに十分対応できる状況にある」とのタカ派的な発言、J上記FGHIを背景とした米FRBによる更なるタカ派傾斜観測、K6/22に記録した直近高値136.72を突破したことに伴う仕掛け的なドル買い・円売りが支援材料となり、週央にかけて、1998年9月24日以来、約23年9ヵ月ぶり高値となる137.01まで急伸しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、L米経済指標の冴えない結果(米5月個人消費支出や米6月シカゴ購買部協会景気指数、米6月ISM製造業景況指数)や、M米5月PCEコアデフレータ(結果4.7%、予想4.8%、前回4.9%、※前年同月比)の市場予想を下回る結果、N米金利低下に伴うドル売り圧力(米10年債利回りは3.00%の大台を割り込み一時2.79%まで急低下)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間7/2午前5時30分現在)では、135.31前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0555で寄り付いた後、@欧州株の堅調推移や、A欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力、Bポルトガルの都市シントラで開催されるECB年次フォーラム(欧州版ジャクソンホール)を控えたポジション調整、C心理的節目1.0600突破に伴う仕掛け的なユーロ買い・ドル売りが支援材料となり、週明け早々に、週間高値1.0616まで上昇しました。しかし、一目均衡表雲下限をバックに伸び悩むと、DG7首脳による対露制裁強化の確約発表(エネルギー供給が一段と逼迫するとの警戒感→欧州経済のスタグフレーション懸念を想起)や、Eドイツ7月GFK消費者信頼感(結果▲27.4、予想▲27.3)の冴えない結果(過去最低更新)、Fラトビア中銀カザークス総裁による「7月の0.5ポイント利上げは検討に価する」とのタカ派的な発言、GラガルドECB総裁による「7月に0.25%の利上げの意図を再確認」「9月利上げの規模は必要に応じて大きくなる可能性あり」「低インフレの環境に戻る可能性は低い」とのタカ派的な発言、
Hリトアニア中銀シムカス総裁による「データが悪化すればオプションとして7月の50bp利上げを求める」「9月会合では50bpの利上げが実施される可能性が極めて高い」とのタカ派的な発言、Iベルギー中銀ウンシュ総裁による「来年3月までの150bp利上げは妥当」「7月会合での25bp利上げは既成事実と想定している」とのタカ派的な発言、J上記FGHIを背景とした欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中での金融引き締めは景気への逆風)、Kロシア・ウクライナを巡る地政学的リスク(ロシアによるウクライナ攻撃が激化)、Lドイツ6月消費者物価指数(結果7.6%、予想8.0%、前回7.9%、※前年同月比)の市場予想を下回る結果(欧州債利回り急低下→ユーロ売り)、Mドイツ6月失業率(結果5.3%、予想5.0%)及び、ドイツ6月失業者数(結果+13.3万人、予想▲0.6万人)の大幅増加が重石となり、週末にかけて、週間安値1.0368(6/15以来の安値圏)まで下落しました。引けにかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間7/2午前5時30分現在)では、1.0425前後で推移しております。
来週の見通し(7/4−7/8)
<ドル円相場>
ドル円は5/24に記録した安値126.36をボトムに切り返すと、今週半ばにかけて、約23年9ヵ月ぶり高値となる137.01まで急伸しました(わずか1ヵ月ちょっとで値幅10.65円の急伸劇)。この間、主要レジスタンスポイント(一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線など)を軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転、強気のパーフェクトオーダー、ダウ理論の上昇トレンド」が全て成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます(週末にかけての下落は上昇トレンドの過程で見られる一時的な押し目)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによる金融引き締めスタンスの明確化(パウエルFRB議長をはじめ多くの米当局者は米経済よりインフレ抑制を重視する構え→米金融政策の更なるタカ派傾斜観測)や、A日銀による金融緩和の長期化姿勢(市場の度重なる緩和修正催促にも係わらず、黒田総裁をはじめ日銀金融政策決定会合のメンバーはゼロ回答)、B上記@Aを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大に伴うドル買い・円売り)、C本邦経常収支悪化に伴う構造的な円売り圧力、D世界各国と日本との金融政策格差(米国のみならず、ユーロ圏や英国、カナダやスイス、豪州やニュージーランドなど多くの国が金融引き締め政策への転換を実施→日本と世界の名目金利差拡大→クロス円上昇→ドル円連れ高)、D米国によるドル高容認スタンス(米国はインフレ抑制に繋がり得るドル高を容認する姿勢)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。
今週末金曜日に発表された東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)が約7年3カ月ぶり高水準を記録したことや、日銀短観で大企業製造業の景況感を示す業況判断指数が2四半期連続で悪化したことなどを受けて、一部では日銀が悪い円安への対処として、ドル売り・円買い介入に踏み切るとの見方が出てきていますが、上記Dの外部環境を踏まえると、ドル売り介入の実施は難しく、今後も円独歩安の流れは止まらないと考えられます(事実、今週は米10年債利回りが6/28に記録した3.25%から週末に2.79%まで46bpも急低下したにも係わらず、ドル円の下げ幅は限定的)。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。
尚、来週は7/4が独立記念日で米国市場休場となるものの、その後に米6月ISM非製造業景況指数、FOMC議事要旨(6/14ー6/15開催分)、米6月ADP雇用統計、米6月雇用統計、セントルイス連銀ブラード総裁講演などの重要イベントが目白押しとなるため、ボラタイルな相場展開の継続が見込まれます(上記イベントを見ながら次回FOMCの利上げ幅が50bpなのか75bpなのか、あるいは100bpなのかを見極める展開を想定)。
来週の予想レンジ(USDJPY):134.00ー137.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は6/27に記録した直近高値1.0616をトップに反落に転じると、週末にかけて、約2週間ぶり安値となる1.0368(6/15以来の安値圏)まで急落しました。この間、主要サポートポイントを軒並み下抜けした他、日足・週足・月足の全て強い売りシグナルが点灯するなど、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシアを巡る地政学的リスクの長期化懸念や、A中国経済の持ち直し期待、B上記@Aを背景とした資源価格の上昇圧力(エネルギー価格上昇→ユーロ圏のインフレ圧力→7/1に発表されたユーロ圏6月消費者物価指数速報値は、前年比+8.6%と、前月の+8.1%や市場予想の+8.4%を上回り過去最高を更新)、C欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中での金融引き締めは欧州経済に対する強い逆風→ここ最近発表された欧州経済指標は軒並み冴えない結果)、
D米FRBによるタカ派傾斜観測(米欧名目金利差拡大に着目したユーロ売り・ドル買い圧力)など、ユーロドル相場のダウンサイドリスクを連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の続落をメインシナリオとして予想いたします(尚、来週は7/4に予定されているユーロ圏5月生産者物価指数や、7/6のユーロ圏5月小売売上高などに注目。目先は6/15に記録した直近安値1.0359や、5/13安値1.0350、2017年1月安値1.0340を試すシナリオを想定。これらの水準を下抜けできれば、2002年12月以来、約19年6ヵ月ぶりとなるパリティ=1.0000割れが射程圏内に)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0200−1.0550
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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