『世界的な円安黙認を通じて節目130円が射程圏内』
〇今週のドル円、週明け早々に126.25まで下落後週央にかけ約20年ぶり高値129.40まで上昇
〇FRB関係者のタカ派発言と米長期金利上昇、地政学リスク長期化懸念等が背景
〇その後は本邦政府関係者による円安牽制発言G20への警戒感から127.47まで急落
〇FRB関係者のタカ派発言続き、日本以外の円安容認姿勢もあり週末は128円台半ばに反発
〇ユーロドル、週前半に1.0761まで下落後ECB関係者のタカ派発言相次ぎ1.0937まで急伸
〇週末にかけてはFRB関係者のタカ派発言からの米長期金利上昇に1.08割れ
〇ドル円、3ヵ月で約16円の値幅を伴う歴史的急騰、テクニカルの地合い極めて強い
〇ファンダメンタルズもドル円上昇材料多く、世界的円安黙認姿勢も露わに
〇ドル高トレンドの継続をメインシナリオとして予想、来週は日銀政策決定会合、黒田総裁会見要注視
〇来週の予想レンジ(USDJPY):127.00ー131.00、(EURUSD):1.0550−1.0950
今週のレビュー(4/18−4/22)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初126.43で寄り付いた後、@鈴木財務相による「価格転嫁できず賃金も伸びない状況は良い円安とは言えない」との円安牽制発言や、A黒田日銀総裁による「大きな急速な円安にはマイナスが大きくなる」との円安牽制発言が重石となり、週明け早々に、週間安値126.25まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、B日米金融政策の方向性の違いに着目したドル買い・円売り(米金利上昇に伴うドル高と連続指値オペ実施に伴う円売り)や、Cロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念(有事のドル買い)、Dセントルイス連銀ブラード総裁による「かなりのスピードで中立金利に達する必要がある」「基本シナリオではないが、75bpの利上げを排除しない」とのタカ派的な発言、E米長期金利の急上昇(米10年債利回りは2018年12月以来、約3年4カ月ぶり高水準となる2.98%へ急上昇)、
F原油価格上昇に伴う円売り圧力(貿易赤字の拡大懸念)、G輸入企業による実需のドル買い・円売り、H短期筋による失望の円売り(鈴木財務相や松野官房長官より円安牽制発言が見られるも反応は限定的→円安に歯止めをかけられず)、Iシカゴ連銀エバンズ総裁による「中立金利以上の利上げが必要になる」とのタカ派的な発言が支援材料となり、週央にかけて、2002年5月以来、約20年ぶり高値となる129.40まで急伸しました。もっとも、心理的節目130.00をバックに伸び悩むと、J磯崎官房副長官による「為替の急速な変動は望ましくない」との円安牽制発言や、K岸田首相による「急激な円安には懸念を持ちながら政府としてしっかり対応する」との円安牽制発言、L木原官房副長官による「為替の安定が望ましい」との円安牽制発言、M20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議を控えた警戒感が重石となり、週後半にかけて、一時127.47まで急落する場面も見られました。
しかし、下がったところでは押し目買い意欲も根強く、すぐに反発に転じると、Nサンフランシスコ連銀デイリー総裁による「5月にバランスシート縮小を発表することも可能」とのタカ派的な発言や、OパウエルFRB議長による「5月FOMCで50bpの利上げを検討する」とのタカ派的な発言、Pセントルイス連銀ブラード総裁による「75bpの利上げは過去にある」とのタカ派的な発言、Q世界的な円安黙認観測(鈴木財務相による円安に対する訴えにも係わらず各国からの反応はなし→G7共同声明に為替の安定が盛り込まれず)が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間4/23午前5時30分現在)では、128.50前後まで持ち直す動きとなっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0805で寄り付いた後、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの高まり(プーチン露大統領が5/9の対独戦勝記念日に勝利宣言を行うとの警戒感)や、A上記@を背景とした欧州経済の先行き不透明感(エネルギー価格上昇に伴う欧州経済への下押し圧力)、B米金利上昇に伴うドル高圧力が重石となり、翌4/19にかけて、週間安値1.0761まで下落しました。しかし、4/14に記録した約2年ぶり安値1.0758まであと一歩のところで下げ渋ると、Cイースターマンデー明け欧州勢の買い戻し(ショートカバー誘発)や、D米主要株価指数上昇に伴うリスク選好のクロス円買い(ユーロ円上昇→ユーロドル連れ高)、Eドイツ3月生産者物価指数(結果30.9%、予想28.2%、前回25.9%、※前年比)の伸び率昂進(1949年の統計開始以来、最大の伸び率)、
Fラトビア中銀カザークス総裁やドイツ連銀ナーゲル総裁、デギンドスECB副総裁による7ー9月の利上げを示唆するタカ派的な発言、G上記EFを背景としたECBによる早期利上げ観測再燃(欧州債利回り上昇→ユーロ買い)が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.0937(4/11以来の高値圏)まで急伸しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと(4/11高値1.0951をバックに戻り売り圧力が強まると)、H米FRBによるタカ派傾斜観測(パウエルFRB議長が5月FOMCでの50bp利上げを示唆)や、I上記Hを背景とした米長期金利の急上昇、Jロシア・ウクライナを巡る戦況悪化(ロシア軍がウクライナ南東部の都市マリウポリの掌握を宣言)、KラガルドECB総裁による「成長見通しをさらに引き下げなくてはならない」との悲観的な発言、L米主要株価指数下落に伴うリスクオフ再開(市場心理悪化→VIX上昇)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間4/23午前5時30分現在)では、1.0794前後まで値を崩す展開となっております。
来週の見通し(4/25−4/29)
<ドル円相場>
ドル円は1/24に記録した年初来安値113.47をボトムに反発に転じると、今週半ばにかけて、約20年ぶり高値となる129.40まで急伸しました。わずか3ヵ月で約16円の値幅を伴う歴史的急騰劇が続いております。この間、主要テクニカルポイントを軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する一目均衡表三役好転や移動平均線のパーフェクトオーダーも継続するなど、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます(アベノミクス後の高値として市場参加者に注目されていた黒田シーリングも一気に突破)。ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの悪化懸念(ロシアが対独戦勝記念日の5/9に勝利宣言を行うとの警戒感→有事のドル買い)や、A上記@に伴う資源価格の急上昇(ロシアに対する制裁長期化→資源輸入国である日本の貿易収支悪化→構造的な円売り定着化)、
B米FRBによるタカ派傾斜観測(米当局者は軒並みタカ派的な発言→米FOMCでの連続・大幅利上げ観測やバランスシート早期縮小開始への警戒感)、C日銀による金融緩和の長期化方針(連続指値オペを継続中)、D上記BCを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大に伴うドル高・円安)、E国内輸入企業による実需のドル買い(急ピッチなドル買い・円売りを受けて手当できていない輸入企業が大量発生)、F世界的な円安黙認観測(鈴木財務相はこれまで足元の急速な円安について「G7の合意に沿って緊密な意思疎通を図っていく」との協調姿勢を滲ませてきましたが、今回のG7共同声明で「為替の安定」は盛り込まれず→世界的な円安黙認→円独歩安再開リスク)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。
尚、来週は日本サイドでは4/27ー28 に予定されている日銀金融政策決定会合に注目が集まります。特に展望リポートの中で物価見通しが引き上げられるのか否か、黒田日銀総裁が記者会見で足元の円安についてどのようなスタンスを示すのかについて市場の関心が集まっています。また、米国サイドでは4/28に発表される米第1四半期GDP速報値や、4/29の米3月PCEデフレータに注目が集まります。GDP速報値、PCEデフレータ共に市場予想を上回る結果となる場合には、米主要株価指数上昇と米長期金利上昇が組み合わさることから、ドル円には強い上昇圧力が加わるものと推察されます(本日よりブラックアウト期間に突入するため、来週は米当局者イベントがなし)。世界的な円安黙認スタンスが明らかとなる中、来週もアップサイドリスクに注意を要する時間帯が続きそうです(心理的節目130.00突破が引き続き射程圏内)。
来週の予想レンジ(USDJPY):127.00ー131.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は週後半にかけて一時1.0937(4/11以来の高値圏)まで上値を伸ばすも、4/11高値1.0951をバックに伸び悩むと、週末にかけて再び、直近安値圏となる1.0757まで反落しました。上値トライに失敗したことや、主要テクニカルポイントが軒並みローソク足の上側に位置していること(上方に複数のレジスタンスポイントが控えていること)、強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転や、移動平均線のパーフェクトオーダーが成立していることなどを踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて弱い」と判断できます。ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの継続(ロシア軍がウクライナ南東部の都市マリウポリの掌握を宣言。5/9のXデーに向けて戦況が一段と悪化するとの警戒感)や、
A上記@を背景とした欧州経済の先行き不透明感(欧州各国による対露制裁強化→欧州圏におけるエネルギー不足とインフレ昂進リスク→欧州経済への下押し圧力)、B米FRBによるタカ派傾斜観測(大幅連続利上げと早期バランスシート縮小の組み合わせ)、C欧米金融政策の方向性の違い(ECBによる利上げは年3回までが織り込み済み→更なる利上げを織り込まない限りユーロ買いでの反応は限定的)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ売り・ドル買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は4/24に予定されているフランス大統領選の決選投票(マクロン氏vsルペン氏)や、欧州当局者発言(フランス中銀ビルロワドガロー総裁、ベルギー中銀ウンシュ総裁など)、ドイツ4月IFO景況指数、ユーロ圏4月消費者物価指数などに注目が集まります。
フランス大統領選でルペン氏が逆転する事態となれば、フランスの政局不透明感の高まりを通じてユーロドルに下押し圧力が加わる展開が想定されます。一方、欧州当局者よりタカ派的な発言や、欧州経済指標が市場予想を上回る場合には、一時的にユーロ買いで反応する可能性があるものの、市場は既にECBによる年内利上げを3回程度織り込んでいるため、こうした見方を覆す(更なる利上げを織り込む)内容にならない限り、ユーロ買いには繋がらないと予想されます。来週はユーロドルの下落リスクに警戒が必要でしょう(4/14に記録した約2年ぶり安値1.0758を下抜ける展開を想定)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0550−1.0950
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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