ドル円見通し 1月4日からの下落一巡で先週末から反騰入り
〇ドル円、1/14夜113.47へ下落したところからの反発を継続、1/17深夜114.64まで戻り高値切り上げる
〇中国人民銀行が利下げ、厳格なロックダウンの影響など景気回復鈍化への危機感の表れと思われる
〇ドル円、上昇再開に入りつつある印象、米連銀のタカ派姿勢を踏まえたドル高再燃への動きか
〇114.20以上での推移中は、114.65超えから115円を目指すとみる
〇114.20割れの場合は114.00から113.85への下落を想定するが、114円以下は買い拾われやすいと見る
【概況】
ドル円は1月14日夜に113.47円まで下落したところからの反発を継続。17日夜は米国市場がキング牧師生誕日の休場だったが週末に反落したユーロやポンドが安値をさらに切り下げ、ドル円も17日深夜に114.64円まで戻り高値を切り上げておりドル高の再燃感が出てきた印象だ。
1月4日夜高値116.34円から1月14日夜安値までの下げ幅は2.87円。既に3分の1戻しの114.43円をクリアしている。半値戻しは114.90円、3分の2戻しは115.38円にある。
1月4日夜高値とその後の戻り高値を結ぶ上値抵抗線は現在115.00円近辺に来ている。
【中国が利下げ】
中国人民銀行(中央銀行)は1月17日午前、中期貸出制度(MLF)1年物の金利を0.10%引き下げて2.85%とした。引き下げは2020年4月のパンデミック初期以来であり、景気回復の鈍化に対する危機感の表れと思われる。
中国国家統計局が17日午前に発表した2021年通年のGDPは前年比8.1%増となりパンデミックに見舞われた2020年の2.2%増からの反動で大幅に伸びて10年ぶりの高成長となった。2021年の通年での小売売上高は12.5%増で2020年の3.9%減から回復、鉱工業生産は前年の2.8%増から9.6%増への伸びた。
しかし、2021年10-12月のGDPは前年同期比4.0%増で市場予想の3.8%を上回ったものの7-9月期の4.9%増から低下した。前期比では1.6%増となり予想の1.2%及び7−9月期の0.2%増から改善しているが伸び率は鈍い。
12月の中国鉱工業生産は前年同月比4.3%増となり11月の3.8%及び市場予想の3.7%増を上回ったが、小売売上高は前年同月比で1.7%増にとどまり市場予想の3.8%及び11月の3.9%を大幅に下回った。
欧米諸国が感染拡大でもウィズコロナ政策によりロックダウンなどを採用せずにインフレを伴った景気回復を続けているものの、中国は封じ込め政策による厳格なロックダウンを繰り返していることが景気回復の足かせとなっている。また中国恒大集団のデフォルト認定に始まった不動産業界不況などが徐々に中国景気に悪影響を与えている。西安、天津に続いて北京でもオミクロン株の市中感染が確認される中、北京五輪を控えて規制が強化され春節の移動自粛も呼びかけられているため、五輪特需も期待し難い状況だ。こうした景気回復の鈍化に対して金融緩和的な対策でのテコ入れが必要ということだろうが、それだけ足元がぐらついていることを示している。
【ドル高再燃の動き】
ドル円は1月4日高値で116円台に乗せて5年ぶりの高値としたが、その後の反動安で1月14日安値まで2.87円の円高ドル安となった。14日の日足は長い下ヒゲとなり、いわゆるタクリ足型となって17日には下ヒゲ効果を活かしたまま上昇しているため、当面の底を付けて上昇再開に入りつつある印象だ。昨年1月底からの上昇においては、3月31日高値から4月23日安値まで3.50円の下落、7月2日高値から8月4日にかけて2.94円の下落、11月24日高値から11月30日まで2.99円の下落が入ってきたが、いずれも押し目形成としてその後に一段高しており、今回もそれらと同様の調整を消化して上昇再開へ進む可能性があると思われる。
一方でユーロドルは11月24日安値から下げ渋りの持ち合いに入っていたところ、1月14日への上昇で1.14ドル台後半へ上昇して持ち合いを上抜けた。しかし14日夜に反落して17日も安値を切り下げている。またポンドドルも12月8日安値からの反騰を継続してきたが13日高値から反落に転じており、上昇一服感がみられる。豪ドル米ドルも12月3日安値からはジリ高基調で戻していたものの1月13日高値から失速している。
米連銀の金融引き締め姿勢を織り込みながら12月からドル安反応を継続してきたのだが、米連銀による利上げペースも当初の年3回から4回に増えるのではないかとの懸念、オミクロン株による感染拡大では人手不足とサプライチェーン停滞でかえってインフレ進行を招くとの危機感が米連銀のタカ派姿勢を強めており、先週末からの動きは再び米連銀のタカ派姿勢を踏まえたドル高の再燃へと風向きが来ているところと思われる。
休場明けの米長期債利回りは10年債利回りが1.80%台に到達、2年債利回りが1.00%に到達して昨年来の高値水準を更新しており、週末時点から一段高の様相となっている。
中国の利下げがドル高の呼び水となり、全般的なドル高への回帰感と米長期債利回りの続伸がドル円の反騰継続に寄与しやすい状況と思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、1月12日夜に10日深夜安値を割り込んで一段安したために13日午前時点では11日深夜高値を直近のサイクルトップとして底割れから弱気サイクル入りしたところとし、ボトム形成期を13日夜から17日深夜にかけての間と想定した。
1月14日夜へ一段安したところから1円を超える反騰となっているため、現状は14日夜安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクル入りしたところと思われる、高値形成期は11日深夜高値を基準として14日夜から18日夜夜にかけての間と想定されるので反騰一服の調整安も入りやすいところだが、114.20円以上での推移中はもう一段高へ進む可能性があるとみる。114.20円割れからはいったん調整安に入るとみて19日夜から21日夜にかけての間への下落を想定するが、その際に14日夜安値から底上げをしてボトムを付ければ次の上昇で高値切り上げへと進みやすくなると考える。
60分足の一目均衡表では1月17日の上昇で遅行スパンが好転、深夜には先行スパンも上抜いたが、その後はやや上げ渋りのために遅行スパンは悪化しやすい位置にある。先行スパンを上回るうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところからは上昇再開とする。先行スパンが下値支持帯として機能するとみるが、先行スパンから転落する場合は修正安も深まる可能性があると注意する。
60分足の相対力指数は1月17日の日中から深夜への上昇時に指数のピークが切り下がる弱気逆行型となっているので目先は調整安を入れやすいところだが、50ポイントを割り込んでも60ポイント以上へ切り返す場合は上昇継続とみて70ポイント超えを目指すとみる。50ポイント割れの状況が続く場合はいったん仕切り直しの修正安が入っている状況とみて40ポイント前後試しとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、114.20円を下値支持線、114.65円を上値抵抗線とする。
(2)114.20円以上での推移中は114.65円超えから115円を目指すとみる。115円到達では売られやすいと注意するが、114.50円以上での推移なら19日の日中も高値試しへ向かうとみる。
(3)114.20円割れの場合は114.00円から113.85円への下落を想定するが、114円以下は買い拾われやすい水準と見てその後に114.20円を超えるところからは上昇再開とする。
【当面の主な予定】
1/18(火)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
未 定 (日) 日銀展望レポート
13:30 (日) 11月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 7.2%)
13:30 (日) 11月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 5.4%)
13:30 (日) 11月 設備稼働率 前月比 (10月 6.2%)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
16:00 (英) 12月 失業保険申請件数 (11月 -4.98万件)
16:00 (英) 12月 失業率 (11月 4.9%)
16:00 (英) 11月 失業率・ILO方式 (10月 4.2%、予想 4.2%)
19:00 (独) 1月 ZEW景況感 (12月 29.9、予想 32.0)
19:00 (欧) 1月 ZEW景況感 (12月 26.8)
22:30 (米) 1月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (12月 31.9、予想 25.7)
24:00 (米) 1月 NAHB住宅市場指数 (12月 84、予想 84)
1/19(水)
08:30 (豪) 1月 ウエストパック消費者信頼感指数 (12月 104.3)
16:00 (英) 12月 消費者物価指数 前月比 (11月 0.7%、予想 0.3%)
16:00 (英) 12月 消費者物価指数 前年同月比 (11月 5.1%、予想 5.2%)
16:00 (英) 12月 消費者物価コア指数 前年同月比 (11月 4.0%、予想 3.9%)
16:00 (英) 12月 小売物価指数 前月比 (11月 0.7%、予想 0.6%)
16:00 (英) 12月 小売物価指数 前年同月比 (11月 7.1%、予想 7.1%)
16:00 (独) 12月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.5%、予想 0.5%)
16:00 (独) 12月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 5.3%、予想 5.3%)
18:00 (欧) 11月 経常収支・季調済 (10月 181億ユーロ)
19:00 (欧) 11月 建設支出 前月比 (10月 1.6%)
19:00 (欧) 11月 建設支出 前年同月比 (10月 4.4%)
22:30 (米) 12月 住宅着工件数・年率換算件数 (11月 167.9万件、予想 165.0万件)
22:30 (米) 12月 住宅着工件数 前月比 (11月 11.8%、予想 -1.7%)
22:30 (米) 12月 建設許可件数・年率換算件数 (11月 171.2万件、予想 170.3万件)
22:30 (米) 12月 建設許可件数 前月比 (11月 3.6%、予想 -0.8%)
27:00 (米) 財務省20年債入札
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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