ドル円見通し 2月末から3月にかけての急騰並みに勢い付く
〇昨日のドル円、米市場休場で新たな手掛かり難の中、安値112.13から高値113.41まで1円を超える急騰
〇米雇用統計後は円が全面安、今年2月末から3月31日高値急伸時に近い上昇角度
〇米10年債利回りをはじめ主要国長期債利回り上昇、ドル円の急伸・クロス円全般の上昇際立つ
〇ドル円、パンデミック前高値112.21を超え日足・週足・月足レベルの抵抗線クリア、先高期待高まるか
〇113円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは、114円試しとする
〇113円割れから続落の場合は弱気転換注意とし、112.85割れからは112.50前後への下落を想定する
【概況】
ドル円は113円台に到達した。10月11日は米国市場がコロンブスデーの祝日で主要指標の発表はなく新たな手掛かり難だったが当日安値112.13円から高値113.41円まで1円を超える急騰ぶりだった。10月8日夜の米雇用統計通過後は円の全面安であり、上昇角度としては今年2月末から3月31日高値へ急伸した時に近いかそれを上回る角度となっており、売り方の損切りによる買い戻しに先高期待の買いも含めて踏み上げ型の上昇となっている印象だ。
【主要国長期債利回り上昇による円の全面安】
10月8日の米9月雇用統計では非農業部門就業者の増加が予想を大幅に下回る低調な数字だったものの失業率の改善や平均時給の伸び、物価上昇を踏まえて米連銀による年内テーパリング開始と来年の利上げという既定路線は変わらないだろうと市場は受け止め、発表直後にいったん低下した米長期債利回りは早々に上昇へ転じた。
米10年債利回りは10月8日に1.61%台へ上昇して8月以降の高値を更新、10月11日は米国債券市場は休場だったが12日午前序盤には1.62%台後半へ続伸している。一方で欧州主要国や英豪等の長期債利回りも上昇しており、10月8日のユーロドルやポンドドル、豪ドル米ドル等の動きはドル円の急上昇と比較すれば鈍いものにとどまっており、ドル円の急伸、クロス円全般の上昇が際立った。
日本10年債利回りも上昇はしているが、2月の0.18%から8月の0.006%まで低下したところから10月12日午前序盤で0.09%まで上昇しているもののきわめて低水準にあること、主要国中銀が世界的な景気回復と物価上昇に対して金融緩和から引き締めへとスタンスを変えつつある中で日銀による緩和継続性やYCCによる長期金利上昇への抑制を踏まえれば、中銀のスタンスの差が意識され、米長期債利回り上昇が顕著になればドル円としてはドル買い円売りへと単純に反応しやすい状況といえる。ユーロ圏についても独10年債利回りはまだマイナス金利状態にある中での上昇だが、仏10年債は0.2%台、南欧は高い水準にあり伊10年債が0.9%台、スペイン10年債が0.51%台などであり平均的に見れば日欧の長期債利回りが揃って上昇すればユーロ買い円売り反応となりやすい。
【日足、週足、月足レベルの抵抗線クリアによるテクニカルな勢い】
ドル円は10月8日から11日への上昇で今年3月31日、7月2日、9月30日の高値を結ぶ抵抗線を突破している。年初来高値の更新だけでなく、週足では2016年12月天井以降の右肩下がりの下降チャンネルから抜け出しており、パンデミック前の高値である2020年2月の112.21円を超えたことでここ数年間の下降チャンネル内での上昇規模を超える勢いとなっている。また月足レベルでは2015年6月天井以降の100円前後を下値支持線とした巨大な三角持ち合いの上値抵抗線も突破している。日足、週足、月足レベルでテクニカル上の抵抗線をクリアしてきたことで市場心理の先高期待値も上がってきていると思われる。
チャート上の上値目安となる高値は2018年10月4日高値114.54円、2017年11月6日高値114.72円等のある114円台中後半、さらに2016年12月15日高値118.65円等も意識され始めているのではないかと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、10月6日深夜安値と7日夕安値をダブルボトムとした強気サイクル入りとして11日午後から13日午後にかけての間への上昇を想定するが、8日夜へ反落してから一段高に入っているため、4日深夜安値から4日目となる8日夜安値を直近のボトムとした強気サイクル入りとすればトップ形成期がさらに伸びる可能性もあると考える。ただし連騰に対する反動安も警戒されるところであり、113円割れからは弱気転換注意とし、112.85円割れからはいったん弱気サイクル入りとみて12日夜から14日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では10月7日夜の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンを上抜いたがその後も両スパン揃っての好転が続いているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパン悪化からはいったん下げに入るとみて安値試し優先とする。ただし先行スパンを上回る状況を維持するならその後に遅行スパンが再び好転するところからは上昇再開とみる。
60分足の相対力指数は11日夜から12日午前にかけての高値更新に際して指数のピークが切り下がり弱気逆行気味となっているので高値警戒圏にあると思われる。70ポイントを割り込んでも切り返すうちは上昇継続とみるが、65ポイント割れからはいったん下げに入るとみて50ポイント前後への低下へ向かうとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、113.00円を下値支持線、114.00円を上値抵抗線とする。
(2)113円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは114円試しとする。114円以上は反落警戒圏とするが、113.30円以上での推移なら13日の日中も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)113円割れから続落の場合は弱気転換注意とし、112.85円割れからはいったん下げに入るとみて112.50円前後への下落を想定する。112.50円以下は反発注意とするが、112.85円以下での推移なら13日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
10/12(火)
IMF世界経済見通し
G20臨時首脳会議(オンライン)、G20貿易相会合(伊ソレント)
15:00 (英) 9月 失業保険申請件数 前月比 (8月 -5.86万件)
15:00 (英) 9月 失業率 (8月 5.4%)
15:00 (英) 8月 失業率・ILO方式 (7月 4.6%、予想 4.5%)
18:00 (独) 10月 ZEW景況感 (9月 26.5、予想 24.0)
18:00 (欧) 10月 ZEW景況感 (9月 31.1)
22:00 (欧) エルデルソンECB理事、講演
23:00 (米) 8月 雇用動態調査(JOLT)
25:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省3年債、10年債入札
10/13(水)
未 定 (中) 9月 貿易収支・ドル建て (8月 583.4億ドル、予想 472.2億ドル)
未 定 (中) 9月 貿易収支・人民元建て (8月 3763.1億元、予想 3228.2億元)
08:30 (豪) 10月 ウエストパック消費者信頼感指数 (9月 106.2)
08:50 (日) 9月 マネーストックM2 前年同月比 (8月 4.7%、予想 4.3%)
08:50 (日) 8月 機械受注 前月比 (7月 0.9%、予想 1.5%)
08:50 (日) 8月 機械受注 前年同月比 (7月 11.1%、予想 14.1%)
15:00 (英) 8月 月次GDP 前月比 (7月 0.1%、予想 0.4%)
15:00 (英) 8月 鉱工業生産指数 前月比 (7月 1.2%、予想 0.2%)
15:00 (英) 8月 鉱工業生産指数 前年同月比 (7月 3.8%、予想 3.4%)
15:00 (英) 8月 製造業生産指数 前月比 (7月 0.0%、予想 0.1%)
15:00 (英) 8月 貿易収支・物品 (7月 -127.06億ポンド、予想 -119.85億ポンド)
15:00 (英) 8月 貿易収支・全体 (7月 -31.17億ポンド、予想 -28.00億ポンド)
15:00 (独) 9月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.0%、予想 0.0%)
15:00 (独) 9月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 4.1%、予想 4.1%)
18:00 (欧) 8月 鉱工業生産 前月比 (7月 1.5%、予想 -1.6%)
18:00 (欧) 8月 鉱工業生産 前年同月比 (7月 7.7%、予想 4.7%)
21:30 (米) 9月 消費者物価指数 前月比 (8月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 9月 消費者物価指数 前年同月比 (8月 5.3%、予想 5.3%)
21:30 (米) 9月 消費者物価コア指数 前月比 (8月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 9月 消費者物価コア指数 前年同月比 (8月 4.0%、予想 4.0%)
26:00 (米) 財務省30年債入札
26:00 (世) G20財務相・中央銀行総裁会見
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(9月21-22日開催分)
29:30 (米) ブレイナードFRB理事、講演
※ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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