ドル円見通し FOMC後のドル安続き7月27日深夜安値を割り込む(21/7/30)

30日早朝には109.40円台序盤へ続落、30日午前序盤はさらに安値を切り下げてきている。

ドル円見通し FOMC後のドル安続き7月27日深夜安値を割り込む(21/7/30)

ドル円見通し FOMC後のドル安続き7月27日深夜安値を割り込む

〇ドル円、FOMC後のドル安続き7/30早朝には109.40台序盤へ下落、7/27深夜安値109.57を割り込む
〇NYダウ史上最高値更新など株高由来のリスクオン優勢の流れ、ドル安の背景か
〇米GDP速報値、4四半期連続のプラス成長だが市場予想は下回る、その他経済指標は不冴え
〇リスク回避・量的緩和縮小継続の思惑により、米長期債利回り低下傾向継続
〇109.75以下での推移中は下向きとして、7/19深夜安値109.05を試す流れとみる
〇109.75前後は戻り売りにつかまりやすく、強気転換には110円台を回復するような反発が必要とみる
〇7/19深夜安値109.05を割り込む場合は、4/23日安値107.46を目指す可能性も出てくると注意する

【概況】

ドル円は7月23日夜高値110.58円から7月27日深夜安値109.57円まで下げたところから買い戻されていたが、29日未明のFOMC声明発表直後に110.28円までいったん戻り高値を切り上げたものの早々に109.80円台へ失速し、29日夜にかけては109.75円を挟んだ揉み合いでの推移となっていた。その後、深夜にドル安感が増す中で7月27日深夜安値を割り込み30日早朝には109.40円台序盤へ続落、30日午前序盤はさらに安値を切り下げてきている。
FOMCは6月会合で量的緩和縮小へ向けた議論を開始するとし、利上げ再開想定時期を前倒ししたことでドル高を招いたが、NYダウが連騰で史上最高値を更新する中でリスク選好性が高まったために為替市場全般がドル高一服からドル安へと風向きを変えつつあった。今回のFOMCでは新たに踏み込んだ内容はなく、量的緩和縮小議論が進んだことは示されたものの当面は緩和姿勢の継続として発表後はドル安が加速している。

【NYダウ史上最高値更新でリスクオン優勢の流れ継続】

7月29日のNYダウは前日比153.60ドル高と上昇、取引時間中の史上最高値を更新、ナスダック総合指数も15.68ポイント高と上昇した。この日発表された4-6月期の米GDP速報値は市場予想を下回ったものの力強い回復を示し、企業決算も好調さを示したことで株式市場の先高期待も継続している印象だ。
米10年債利回りは前日比0.03ポイント高の1.27%へ上昇。FOMC後の反応は鈍く28日終値では前日比変わらずだったが、NYダウの史上最高値更新による株買い債券売りの圧力や7年債入札が若干不調だったことでやや上昇したが、7月20日に1.12%を付けて3月31日の1.77%以降の最低を記録したところから7月22日の1.31%へ戻した後は上昇一服でやや低下気味の推移にとどまっている。そのため、ドル円にとっては押し上げ材料にならず、株高由来のリスクオン優勢でのユーロやポンド等の上昇によるドル安感が先行した。

米商務省が発表した2021年4-6月期の米GDP速報値は年率換算で前期比6.5%増となり4四半期連続のプラス成長となった。GDPの水準としてはパンデミック前の2019年10-12月期を上回って過去最高を更新した。1-3月期の6.3%増を上回ったものの市場予想の8.5%は下回ったためやや過剰な楽観には若干のブレーキとなったが、GDPの7割を占める個人消費は11.8%増となり前期から連続で2桁の伸びとなった。設備投資も8.0%増となったが住宅投資は9.8%減と4四半期ぶりにマイナスだったのは住宅市況の過熱し過ぎの反動と思われる。
米労働省が発表した週間新規失業保険申請件数は7月24日まで40万件となり前週比2万4000件減少したが市場予想の38万件を上回った。失業保険受給者総数は7月17日までの週間で326万9000人となり前週から7000人増、市場予想の319.6万人を上回った。
米不動産業者協会(NAR)による6月の中古住宅販売仮契約指数は前月比1.9%減で市場予想の0.3%増を下回った。

【米長期債利回り低下傾向の継続感】

米10年債利回りは年初に1.0%を突破してから勢い付いて3月31日に1.77%まで上昇したところでピークアウトした。パンデミック対策による実質ゼロ金利と大規模な量的緩和による資金供給で景気が回復し始める中、需給ギャップによる物価上昇が続く中で長期債利回りは物価上昇率を追いかけて上昇し、株高によるリスク選好感が株買い債券売りを助長したことで利回り上昇を招いたためだった。さらに物価上昇率の上ブレが顕著になると米連銀が量的緩和縮小へ向かうのではないかとの思惑が米長期債利回りを一段と押し上げたわけだが、米連銀が物価上昇率の上ブレは一時的であり雇用完全回復まではまだ遠いために量的緩和を続けると繰り返し強調してきたことで長期債利回り上昇が一巡して低下傾向に入った。

6月15-16日のFOMCで量的緩和縮小議論の着手と利上げ再開時期の前倒しが示されたことで一時的に2年債利回りが急伸したが、米10年債利回りの反応は鈍く、パウエル米連銀議長が従来の姿勢を継続したことで7月20日には1.12%まで低下を続けた。
7月22日に1.31%台までいったん戻したもののその後は失速しており、7月19日未明のFOMC声明及び議長会見後も低下傾向の範囲にとどまっている。株式市場が史上最高値を更新する中で変異株の拡大もありリスク回避的に安全資産として米長期債が買われて利回り低下となる側面と、量的緩和縮小開始までにはまだ時間があり、縮小開始でも縮小規模は限定的な推移になるだろうとみて年初の水準まで往って来いとなる状況にあるのだろう。

米10年債利回りは3月31日以降、数週の下落後に1週の反発を入れながらまた一段安するというパターンを繰り返している。1.0%へ迫るところは下げ過ぎとしても、6月にかけての急激な景気回復に一服感が出ていることもあり、まだしばらくは低下傾向を続けるのではないかと思われる。
ドル円は米長期債利回り動向と必ずしも相関するわけではないが、日米金利差縮小によるドル売り円買い圧力はかかりやすい。また株高によるリスク選好感が優先されてユーロ等の上昇が続く場合も下落しやすい。リスク選好感が過熱してくるとクロス円の上昇による円安感や株高債券安による長期債利回りの上昇でドル円は上昇しやすくなるが、米10年債利回りが7月22日の1.31%を超えて二段上昇へ進めないうちはさらに低下しやすい状況としてドル円への売り圧力も続くのではないかと考える。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、7月22日夜安値から3日目となる27日深夜安値でサイクルボトムを付けて戻したが、23日深夜高値から3日目となる29日未明高値でサイクルトップを付けて弱気サイクル入りした。ボトム形成期は30日夜から8月3日深夜にかけての間と想定されるのでまだ一段安余地ありとみる。

60分足の一目均衡表では27日深夜からの反騰で遅行スパンが好転したが29日未明高値からの反落が続いて再び悪化した。29日未明に先行スパンをいったん上抜けたものの再び転落している。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、強気転換には先行スパンを上抜き返す必要があると思われる。

60分足の相対力指数は28日夜に70ポイント手前まで上昇したがその後の反落で50ポイントを割り込み、30日早朝時点では30ポイントを割り込んできている。50ポイント台を回復するような反発がみられないうちは一段安警戒として20ポイント割れを試す流れとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月19日深夜安値109.05円を下値支持線、109.75円を上値抵抗線とする。
(2)109.75円以下での推移中は下向きとして7月19日深夜安値109.05円を試す流れとみる。109円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、109.50円以下での推移なら週明けも安値試しを続けやすいとみる。
(3)109.75円前後は戻り売りにつかまりやすいとみる。強気転換には110円台を回復するような反発が必要なところとみる。
(4)7月27日深夜安値を割り込んだため、60足レベルでは逆三尊構成とはならずに7月19日深夜安値割れへ向かいやすい状況と思われるが、7月19日安値を割り込む場合は7月2日高値からの下落期が長期化して4月23日安値107.46円を目指す可能性も出てくると注意する。

【当面の主な予定】

7/30(金)
07:45 (NZ) 6月 住宅建設許可件数 前月比 (5月 -2.8%)
08:30 (日) 6月 失業率 (5月 3.0%、予想 3.0%)
08:30 (日) 6月 有効求人倍率 (5月 1.09、予想 1.10)
08:50 (日) 6月 鉱工業生産・速報値 前月比 (5月 -6.5%、予想 5.0%)
08:50 (日) 6月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (5月 21.1%、予想 20.7%)
08:50 (日) 6月 小売業販売額 前年同月比 (5月 8.2%、予想 0.2%)
10:30 (豪) 4-6月期 生産者物価指数 前期比 (1-3月 0.4%)
10:30 (豪) 4-6月期 生産者物価指数 前年同期比 (1-3月 0.2%)
14:00 (日) 6月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (5月 9.9%、予想 7.2%)
17:00 (独) 4-6月期 GDP・速報値 前期比 (1-3月 -1.8%、予想 2.0%)
17:00 (独) 4-6月期 GDP・速報値 前年同期比 (1-3月 -3.1%、予想 9.6%)

18:00 (欧) 6月 失業率 (5月 7.9%、予想 7.9%)
18:00 (欧) 7月 消費者物価指数・速報値 前年同月比 (6月 1.9%、予想 2.0%)
18:00 (欧) 7月 消費者物価コア指数・速報値 前年同月比 (6月 0.9%、予想 0.7%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP・速報値 前期比 (1-3月 -0.3%、予想 1.5%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP・速報値 前年同期比 (1-3月 -1.3%、予想 13.2%)

21:30 (米) 4-6月期 雇用コスト指数 前期比 (1-3月 0.9%、予想 0.9%)
21:30 (米) 6月 個人所得 前月比 (5月 -2.0%、予想 -0.3%)
21:30 (米) 6月 個人消費支出(PCE) 前月比 (5月 0.0%、予想 0.7%)
21:30 (米) 6月 PCEデフレーター 前年同月比 (5月 3.9%、予想 4.0%)
21:30 (米) 6月 PCEコア・デフレーター 前月比 (5月 0.5%、予想 0.6%)
21:30 (米) 6月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (5月 3.4%、予想 3.7%)
22:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
22:45 (米) 7月 シカゴ購買部協会景況指数 (6月 66.1、予想 64.6)
23:00 (米) 7月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 80.8、予想 80.8)


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