ドル円 先週は1円レンジ、再び動意づけるか注目
〇先週のドル円、値幅がわずか1円のレンジ取引、週初と週末のレートがほぼ同じとなる
〇米インフレ懸念が高まったが、パウエル議長の弱気コメントにより早期のテーパリング観測が後退
〇今週発表の米経済指標などの内容次第では、当局にプレッシャーをかける可能性も
〇ドル円、まずは1円レンジのブレークから次の動意に向けた動きに注目
〇今週は7月NAHB住宅市場指数・製造業PMI速報値発表、東京オリンピック開幕
〇今週のドル/円予想レンジは、109.00-111.10
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場はレンジ取引。週間を通した値幅はわずか1円、また週初のオープンレートと週末のクローズレートがほぼ同じとなっている。
前週末に実施されたG20財務相・中銀総裁会議は、「各国共通で『15%以上』とする法人税の最低税率の導入」で合意し閉幕。また「友好協力相互援助条約」締結から60周年を迎える中朝のさらなる接近が明らかとなり思惑を呼んでいた。
そうした状況下、ドル/円は110.10-15円で寄り付いたのち、当初はややドル買い優勢。週間高値である110.69円へと小幅に上値を伸ばしている。しかし勢いは続かず、上値確認後は一転して下値を試す展開に。110円を割り込み109.71円まで一時下落した。そののち週末に掛けては110円を挟んだレンジ上下動となり、16日のNYは110.10円レベルで取引を終え越週している。
なお、先週なかなか興味深い動きをたどったのが南ア・ランド。汚職問題によるズマ前大統領収監を反対する支持者が暴徒化するなど政情不安を嫌気した売りがかさみ、対ドルでは3ヵ月ぶり、対円でも2ヵ月ぶりの安値を一時示現していた。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「米金融政策」と「新型コロナ」について。
前者は、13日発表された米消費者物価指数に続き、14日の同生産者物価指数も好数字。連日の米経済指標を受け、一部で米インフレ懸念が高まったが、パウエルFRB議長は半期の一度の議会証言で「インフレは一時的」、「量的緩和の規模縮小時期はまだ遠い」などと弱気コメントを連発したことで早期のテーパリング観測が後退し、長期金利の上昇も抑制された。また、為替市場においても、ドル高の進行を抑制する一因となっていた感を否めない。なお、先週は日本も日銀が金融政策決定会合を開き、結果として「短期金利のマイナス0.1%維持」などを決定・発表している。
対して後者は、10日まで実施されていたG20で「新型コロナウイルスの変異株と途上国のワクチン不足が経済回復の障害になりうる」との認識が示されるなか、日本も12日から4度目となる「東京などへの緊急事態宣言」適用が発表されている。また、オランダや韓国、メキシコなどで感染者が急増しているとの報道も観測されたが、英国ではジョンソン首相が「感染者数は増加しており、パンデミックは終息していない」としつつも、コロナ抑制措置を19日に解除する方針を改めて示し物議を醸していたようだ。共生・共存やむなしといったところだが、政策に否定的な見解を示すメディアなども存在する。
<< 今週の見通し >>
先週のドル/円相場は週間を通して98銭レンジ。109.71-110.69円のなかでの変動にとどまっている。方向性がハッキリと示されているとは、言いにくい状況だ。カレンダー的には7月半ばで、いわゆる取引の「夏枯れ」も予想されるなか、2週続けて1円程度の小動きが続くかどうかは正直微妙。しかし、期間をもう少し長く取り上げても、ドル/円は109.50-111.70円という2.2円ほどのレンジを形成しており、そちらの大レンジ内にはとどまるといった見方もあるようだ。
前述したような状況下、マーケットでもっとも注視されているものは引き続き米ファンダメンタルズならびに金利動向。ただ、後者については前述したようにパウエル氏が議会証言で弱気コメントを連発したこともあり、「早期利上げ期待」は萎んだ感を否めない。ただ、今週発表される米経済指標などが強気の内容となれば、当局にプレッシャーをかけられるものとなるとの見方もあり、その内容には注目だ。また、終値ベースでは値を崩したが、ザラ場ベースでは最高値を一時更新したNYダウなど米株の動きも引き続き注視したい。
テクニカルに見た場合、ドル/円には過去1週間程度推移している1円レンジと、期間をもう少し長くとった2.2円、大小2つのレンジが観測されている。まずは1円レンジのブレークから、次の動意に向けた動きは果たして実現するのだろうか。
なお、日足のドル/円を移動平均の視点で見てみると、上値を21日線が抑制する反面、下値は同90日線がしっかりと支えている感がある。どちらがより強いテクニカルポイントなのか、その攻防に注目だ。
材料的に見た場合、中長期的には領有権をめぐる周辺国との対立や人権問題など話題に事欠かない「中国情勢」や「北朝鮮情勢」、「イラン情勢」、「ロシア情勢」、「新型コロナウイルス再拡大と変異種の発生、ワクチン開発・接種」、「米金融政策の行方」、「東京五輪・パラリンピックをめぐる動き」−−などが注視されている。
そうしたなか今週は、7月のNAHB住宅市場指数や同製造業PMI速報値といった米経済指標が発表される予定だ。市場では好数字への期待が強いが果たして実際のところは如何に。また、週末に掛けて日本が4連休となりマーケットが荒れ易い環境に置かれるうえ、1年延期された東京オリンピックがいよいよ開幕となる。新型コロナの感染状況なども含めて動静には要注意。
そんな今週のドル/円予想レンジは、109.00-111.10円。ドル高・円安については、21日線が位置する110円半ばをめぐる攻防に注目。ただ、抜けても先週高値の110.69円や111円前後など抵抗も多く上値は重そう。
対するドル安・円高方向は、先週安値の109.71円やフィボナッチサポートにもあたる109円半ばはなかなか強いサポートだ。下回ると109.10円や108円半ばなどが下値メドに。
ドル円日足
※ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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