トルコリラ円レポート月曜版(2018年6月18日)

先週のトルコリラは、FOMCとECB理事会でドル高トレンドが鮮明になり、特に新興国通貨から米国への資金還流懸念が

トルコリラ円レポート月曜版(2018年6月18日)

トルコリラ円レポート月曜版

まず、先週の振り返り(ショートコメント)ですが、トルコリラ円は短期的なトルコリラ高のトレンドは継続しそうで「24.00レベルをサポートに25.00レベルをレジスタンスと25円の大台を試しやすい週」を見ていました。実際のレンジは、安値が23.18レベル、高値が24.57レベルと、ほとんど上値を試すことなく週を通してトルコリラ安の一週間となりました。

先週のトルコリラは、FOMCとECB理事会でドル高トレンドが鮮明になり、特に新興国通貨から米国への資金還流懸念がドルトルコリラでのトルコリラ売りを強めたことが最大の要因ですが、もうひとつは今週末に行われるトルコの大統領選と総選挙への思惑です。

まず前者ですが、先進国通貨と新興国通貨の対比で考えた場合、先進国通貨が低金利故に高金利の新興国通貨が買われるという動きは、日本のFXにおけるトルコリラ円人気を見てもわかります。当然、ドルトルコリラでもドル売り・トルコリラ買いという動きが出てきますが、新興国通貨の場合金利上昇分が通貨安で棄損する可能性が高く、米ドル金利が2.0%まで上昇した現在、あえて通貨安リスクを取らずとも安全資産の米国債で良いという投資家が出て来るのは当然です。ましては年内にあと2回、来年も3回と政策金利があと1.25%上がる可能性があると考えたらなおさらのことです。

ユーロでさえFOMCとECB理事会を経て金利差拡大の思惑から、300pipsを超えるユーロ安となったわけですから、トルコリラが売られても不思議ではありません。実際にEURTRYでユーロとトルコリラとの強弱を比べるとユーロ>トルコリラとなっていて、ECB理事会直後こそユーロが売られる動きも見られましたが、その後はユーロ高へと戻し、トルコリラの弱さが目立ちます。参考までにEURTRYの1時間足チャートを載せておきます。

EUR/TRY一時間足

EUR/TRY一時間足

そうなると前半のトルコリラ安(ユーロ高)の動きは何かということになりますが、週前半は対ユーロだけでなく、対ドル、対円など全ての主要使に対してトルコリラ安に動きとなっています。経済指標といった要因もありますが、今週末の選挙でも大統領選に向けての影響が大きいと見られます。

トルコの大統領選は、過半数を取った候補が大統領となり、過半数を取れなかった場合、上位2者による決選投票とフランスの大統領選を思い起こさせる仕組みです。そして与党AKPの候補が現職のエルドアン大統領、野党からは5人の候補が出ていますが、現時点でエルドアン大統領の得票率予想は50%前後と微妙な数字です。仮に50%以上を取ればエルドアン大統領となりますが、50%未満では野党第1党(中道左派CHP)のインジェ議員に野党連合で票を集める動きとなっています。

つまり、1回目の投票で現職が過半数を取れるかどうか、取るとするならばトルコに変化は無いという消極的なトルコリラ売りが強まり始めているというのが先週からの動きです。前回の大統領に権力を集中させる憲法改正の国民投票では賛成が過半数とエルドアン大統領派が優勢でしたが、一部では投票に不正があったとの指摘もありましたし、今回の選挙でもエルドアン大統領に有利な不正もしくは選挙妨害といった行動が懸念されています。

仮にエルドアン大統領が続投ということになると2028年までエルドアン大統領による強権政治が続くことが予想され、国内の経済などの改善が見られないとトルコにとっても不幸な未来が待っているというのが先週の動きと言えます。果たして、今週末の選挙結果がどうなるか、エルドアン大統領が1回目の投票で勝った場合には改めてトルコリラ売りが再開するという懸念が高まります。

いつもの4時間足チャート(上からトルコリラ円、ドルトルコリラ、ドル円)をご覧ください。

トルコリラ円、ドルトルコリラ、ドル円四時間足

トルコリラ円、ドルトルコリラ、ドル円四時間足

先週示した上昇ウェッジは見事に下抜けてしまい、それまでのトルコリラ安を継続するチャートパターンとなってしまいました。現在は4月の戻り高値から引いたレジスタンスライン(太線)の下でトロコリラ安トレンドを継続する展開です。


選挙に向けてエルドアン大統領が有利となると、さらなるトルコリラ安を招き、ここまで善戦してきたトルコ中銀の引き締め政策を無に帰す結果も考えられます。対円だけでなく対ドルでも5.0の大台が意識されていますので、今週は下方向にかなり余裕あるレンジを考え、22.00レベルをサポートに23.90レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

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