2021年の豪ドル対米ドルの見通し

例年の年間見通しでは、連続性の観点から景気の結果と見通しを過去に遡って比較してみましたが、コロナによる成長分断で、今年は先行き見通しに絞ってみたいと思います。

2021年の豪ドル対米ドルの見通し

2021年の豪ドル対米ドルの見通し

<<恒例の「FX羅針盤」の年間相場予想。例年動きの激しい年末年始の相場が終了したあたりで、「FX羅針盤」の執筆者の皆様に年間の相場見通しを書いていただいています。第四弾はオセアニア通貨や主要国の経済指標解説等を執筆いただいている橋本光正さんの豪ドル年間予想です。(編集部)>>

2020年はコロナウィルスの拡散により世界経済は混乱の極みとなりました。その状況は2021年明けても変わらず、先行きの改善はワクチン次第の状況になっています。例年の年間見通しでは、連続性の観点から景気の結果と見通しを過去に遡って比較してみましたが、コロナによる成長分断で、今年は先行き見通しに絞ってみたいと思います。

(1)ファンダメンタルズ分析

(1)ファンダメンタルズ分析

上図@はIMFの最新版(2020年10月時)の4ヶ国GDPの結果と見通しを示しています。また、図Aは豪州中銀の予想(2020年11月時)とFRBの予想(2020年12月時)を合わせたものです。伸び率の目盛りは合わせていますので、概ね同じ様相となっていますが、伸び率の絶対値の予想はやや中銀の方が高くなっています。IMFも中銀も、やや豪州>米国ですが、ほぼ同じ様な伸び率と見ていいと思います。また2021年の伸びは2020年の反動ですので、マイナス幅が大きい豪州の方が米国よりも高くなる可能性が強いです。今年は、まず2020年四半期の結果を踏まえ、3ヶ月毎に見直し、更に中銀の予想変化を加える必要があります。特に米国の2020年末の数値がFRB(▼2.4%)>IMF(▼4.27%)ですので、この辺りの差がどの様になるかで、米金利にも影響が出てきそうです。

さて、その金利ですが、下図Bは米・豪の政策金利の推移です。2019年(黒の縦線より右)は、米国の利上げ打ち止め、やや利下げ傾向に対し、豪州は一貫して利下げを強めていました。2020年に入り(緑の縦線)、コロナウィルスによりゼロ金利政策で両者は全く差がない水準まできています。ここからはコロナからの脱却が早い方が実勢金利上昇に繋がりますので、やはり中銀の経済予想の変化が重要になりそうです。

(1)ファンダメンタルズ分析 2枚目の画像

また金利に影響を与える消費者物価指数に関しては、コロナウィルスの影響で、少なくとも2021年は全くケアする必要がないと思います。エコノミストや中銀は米・豪両国共に2022年までは政策金利据え置きを予想しています。従い、2021年末頃に、先々の見通し変化だけを頭の片隅に置いておくことで済みそうです。
ご参考までに下表は豪州中銀のGDP、失業率、消費者物価指数の見通しになっています。インフレ目標政策を掲げている豪州中銀は目標とする2%には2022年まで届かない予想になっています。(下表赤い〇印)

(1)ファンダメンタルズ分析 3枚目の画像

(出所:豪州中銀HP

テクニカル分析

@豪ドル/米ドル月足チャート

@豪ドル/米ドル月足チャート

(2021年1月22日現在)

上図は月足チャートで、丁度1年前はA(=0.6770)とB(=0.6570)の3角保合いで収斂していましたが、コロナの影響で2月に下抜けてから3月に急落、6月にBを上抜いてからは豪ドル高トレンドを形成しています。まだ2011年の高値からの抵抗線F(=0.8460)は抜けていないので、長期の豪ドル安トレンドは継続しています。現在のスポットは2016年に何度も抵抗線で阻まれたD(=0.7840)付近、と2010年の下押し、2015年、2017年、2018の各高値を結んだE(=0.8010)が上値の目途になっています。下値はAを回復しているので、ここがポイントになります。もし切れたらC(=0.6040)が横サポートとして機能しそうです。そして2008年以降はこれ以下が全て下ヒゲになっています。昨年の底値は0.5510です。流れとしては年前半がDとE方向、越えればFトライになります。下値は0.7460〜0.75に横サポートがあるので、切れると短期的な豪ドル上げが一度終わりそうです。

A移動平均線(月足と週足)

A移動平均線(月足と週足)

上図は同じ月足チャートにフィボナッチ数値の38と62を移動平均線にしたものです。38ヶ月線は0.7142、62ヶ月線が0.7295にあります。昨年の1月21日時点では38ヶ月線0.7344、62ヶ月線は0.7398にあり、残り50ピップス強で、しかも当時のスポット換算で3〜4ヶ月でゴールデンクロスする可能性ありとしましたが、コロナウィルスの影響で豪ドルは0.5510まで急落し、その後は急回復しているものの、現在では156ピップスの差に広がっています。現在のスポットは62ヶ月線を大きく越えていますので、将来はクロスする可能性が高いですが、まだ長期の豪ドル安トレンドは維持されていることになります。

テクニカル分析

上図の週足移動平均線では現在38週線が0.7170、62週線は0.6946で既に昨年11月にゴールデンクロスしており、中期の豪ドル高トレンドを形成しています。但し、前回の豪ドル高時の2016年〜2018年3月に、週足スポットと62週線の乖離幅が500ピップスを越えると調整が入り易くなり、今回はスポット0.77で見ても750ピップスも乖離しているので、目先は大きく買い上げる勢いが少なくなっています。

B週足チャート

B週足チャート

(2021年1月22日終値現在)

週足では昨年3月末以降、ラインA(=0.7380)とB(=0.8100)で豪ドル高トレンドを形成しています。現在はレンジ内のD(=0.7650:青の矢印)にサポートされてまだ上値トライの最中にいます。当面はこのDが守られることが重要になります。トレンドとしてはまずBの抵抗線とC(=0.8140)のダブルトップが目途に見えます。
但し、週足の38・62週移動平均線の買われ過ぎの調整が先行すると、Dを割り込む可能性が大きくなります。その際はE(=0.7470)とAが下値目途になります。但しAを割り込むと中期の豪ドル高トレンドが変調をきたします。その場合はF(=0.7060)やG(=0.6680)が視野に入ります。

2021年見通し

昨年の見通しは年前半に豪ドル下押し、その後豪ドル高の見通しで、トレンドとしては良かったものの、コロナウィルスの影響でレンジ幅が大きく違いました。これまで2015年〜2019年の過去5年間の平均レンジ幅は930ピップス(毎年600〜1250ピップスのレンジ)で、2019年は僅か630ピップスの値幅しかありませんでした。しかし、2020年は約2,100ピップスの値幅となり、5年間平均値の2.3倍、前年と比較すると3.6倍ものレンジとなりました。 今年のレンジはコロナウィルスの影響が余程の悪化が見られない限り、例年通りになると予想しています。

2021年はファンダメンタルズから見ると、現在及び先行き見通しも米・豪共に大差なく、また金利差も生じておらず、先々に金利差が拡大する要因も今のところ見当たりません。年後半に豪米の景況感格差でも出てきたら、金利に影響が出始めると思いますが、かなりの時間がかかると見ています。従い、ファンダメンタルズでは決定要因が少ないとみています。むしろテクニカルやポジションの傾きで動き易くなりそうです。特に月足の38ヶ月線(0.7142)が62ヶ月線(0.7295)をクロスすれば、豪ドルは堅調推移になりそうです。

目先は週足移動平均線の乖離からみて上値が重くなり始めているので、時間調整か値幅調整になると思われ、軽い場合で0.74付近までの下押し、ここを維持できずに値幅調整になれば38週線の0.72付近までの下押しを見る必要がありそうです。上値はまず0.8100〜0.8150、ここは月足のE(=0.8010)にも相当します。ここもクリアできればいよいよ月足の高値からの抵抗線F(=0.8460)が見えてきます。
以上より今年のレンジは0.7300〜0.8400の1,100ピップス(昨年の半分)を想定します。
(2021年1月25日14:30、1豪ドル=0.7741〜42米ドル)

オーダー/ポジション状況

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