【概況】
トルコリラ円は3月9日早朝に16.82円まで急落して3月2日安値17.08円を大きく割り込み、午前に16.26円まで一段安となった。その後は新たな安値更新を回避しつつ17円台を回復できない程度に止まっていたが、10日午後からの上昇で10日夜には17.19円まで一段高となり、深夜の反落時に16.73円まで下げたものの11日未明には17.26円まで高値を切り上げた。
3月9日朝への急落は世界連鎖株安の深刻化に加えてOPEC等の協調減産協議が破綻したことで原油相場が先週末比で一時30%を超える歴史的大暴落となったことで金融市場全般がリスク回避の売りとなり、ドル円が101円台まで急落したことがトルコリラ円急落の背景だった。しかしその後はダウが巻き返しの上昇となりドル円も反騰入りしたためにトルコリラ円もドル円と同調して上昇し、3月9日午前への急落値幅をほぼ解消して先週の終値17.29円にあと一歩と迫った。
ドル円は3月9日夜安値101.23円から11日未明高値105.91円まで反騰し、この間の戻り幅は4.68円となったが、2月20日高値112.21円から3月9日までの下げ幅は10.98円であり、半値戻しには届いていない。3月11日朝時点では週足で見れば長大下ヒゲであり、2019年1月3日のフラッシュクラッシュによる急落反騰でつけた長大下ヒゲを彷彿とさせるが、果たして週末まで下ヒゲ効果を維持できるのかどうか、試されると思われる。
【新興国通貨売りによりドル高リラ安再燃、トルコ株も売られる】
ドル/トルコリラは3月2日に6.2615リラの高値を付けて2019年5月高値6.2539リラをわずかに超えたもののダブル天井警戒感から反落して3月3日には6.0307リラまで反落していた。しかしその後はリスク回避感の強まりのなかで新興国通貨売りが進んだために3月10日には6.1951リラまで反騰し、11日も新たな高値更新には進めなかったが終値ベースでは0.48%高とドル高リラ安基調での推移となっている。3月10日も南アランド、ブラジルレアル等の下落が目立っている。
イスタンブール100株価指数は2月27日から28日への2日間で8%を超える急落後に3月2日から3日にかけては4.87%の反発を入れていたが、戻りは続かずに3月6日は1.98%安と失速し、3月9日は前日比5.54%安と大幅下落した。10日も2.38%安と続落しており、この3日間で9.90%の下落率となっている。
10日のNYダウは1167.14ドル高と上昇して1日の上昇幅としては過去3番めだったが、3月9日に2013.76ドル安という過去最大の下落幅を見せたばかりであり、その半値戻しを実現したに過ぎず、10日も900ドル超の上昇後にマイナス圏へ下落してからまた反騰する等波乱状態は続いている。感染拡大問題での終息見込みが立たない内はリスク回避的な動きは継続しやすく、特に投機的な新興国通貨・株は売られやすい状況が続くと思われる。
【新型コロナウイルスのトルコ感染者はまだ出ていない】
新型コロナウイルスの感染拡大は中国では感染者及び死者増加数の鈍化により終息期待が高まり、習近平国家主席が感染爆発の中心であった武漢を訪問したことで、中国の封じ込めが成功している印象となっているのだが、欧米及び世界への感染拡大は続いている。イタリアは感染者1万人を超えて死者631人へ増加、フランスやドイツ、スペインの感染者数も千人を超えて増加している。米国の感染者は975人に増加して死者も30人に拡大している。感染問題は中国と周辺アジアから欧米・中東・世界全体へと焦点が拡大している。WHOはまだパンデミック宣言をしていないが事実上はパンデミック状態にあり、感染拡大の世界的なピークはまだ先と思われる。
トルコではまだ感染報告がないが、国境を接するイランは感染者8042人で死者291人、ギリシャの感染者が89人、イラクの感染者が71人等、周辺の感染拡大が続いている。シリアからの報告は無く、難民の感染状況も不明だが、いずれはトルコへも感染が拡大してくることも警戒しておく必要があるだろう。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月9日午前安値からの反騰により、10日午前時点では3月2日朝安値から5日目となる3月9日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。高値形成期を3月6日夜から10日深夜にかけての間と想定したが、11日未明まで戻り高値を切り上げた後は失速気味のため既にサイクルトップをつけた可能性がある。3月10日深夜安値16.73円を割り込まない内は上昇期の延長入りも考えられるが、10日深夜安値割れからは弱気サイクル入りとして3月12日朝から16日午前にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では10日午後に遅行スパンが好転し、10日夜の上昇で先行スパンも突破した。10日深夜反落では先行スパン下限が下値を支え、11日午前時点では両スパン揃って好転を維持しているが、遅行スパンは悪化しやすい位置にある。このため遅行スパン悪化からは安値試し優先とし、10日深夜安値割れからは先行スパンからの転落となるので下げが加速しやすいと注意する。
60分足の相対力指数は10日夜から11日未明への高値更新に対して指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られるため、11日未明で戻りを一巡させて下げ再開に入りやすい状況と思われる。50ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント前後への下降を伴う下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月10日深夜安値16.73円を下値支持線、3月11日未明高値17.26円を上値抵抗線とみておく。
(2)16.73円以上での推移中は上昇余地ありとし、11日未明高値超えからは17.50円前後への上昇を想定する。17.50円以上は反落警戒としてその後の17.00円割れからは下げ再開とする。
(3)16.73円割れからは下げ再開とみて3月9日午前安値16.26円試しへ向かうとみる。16.20円台では買い戻しも入りやすいとみるが、仮に3月9日午前安値を割り込む場合は16.00円試しまで下値目処を引き下げる。また16.73円以下での推移なら12日も安値試しを続けやすいと考える。
【当面の主な経済指標等の予定】
3月11日
16:00 1月経常収支 (12月 -28億ドル)
3月13日
16:00 1月鉱工業生産 (12月 8.6%)
16:00 1月小売売上高 前月比 (12月 1.1%)
16:00 1月小売売上高 前年比 (12月 11.0%)
3月19日
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 10.75%)
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