ドル円見通し 米中問題での一喜一憂、今度は楽観の揺れ返し(8/14)

市場心理をさらに押し上げるものが見られなければ、市場としては米中協議進展催促及び米連銀の追加利下げ催促として株安債券高、ドル安円高を再開させてゆくと思われる。

ドル円見通し 米中問題での一喜一憂、今度は楽観の揺れ返し(8/14)

【概況】

8月1日夜のトランプ大統領による対中国制裁関税第4弾発動宣言からドル円は急落に転じ、8月1日高値109.31円からの反落で2日には107円を割り込んだ。さらに米国が中国を為替操作国に指定し、人民元が対ドルで7元を超える元安、中国が米国産農産物輸入停止姿勢を示す等の米中対立エスカレートにより8月6日午前には105.52円、8月7日深夜には105.49円、9日深夜には105.25円まで続落した。
週明けもこの流れを継続して12日夜には105.04円を付けて105円割れへの余裕がなくなり、13日夕刻にも105.06円を付けて一段安警戒感が強まっていた。

ところが米通商代表部(USTR)が9月1日から発動予定の制裁関税第4弾について、スマートフォンや衣類等への発動を12月15日まで延期すると発表したためこれまでの悲観的な円高ドル安からドルの買い戻しへ急旋回し、13日深夜には106.95円まで急反発した。107円乗せには至らなかったが、8月1日から8月12日までの下げ幅4.27の円高ドル安に対する半値戻し107.175円に迫る状況となった。また米中両国の協議進展期待でNYダウは372.54ドル高と反騰、債券売りで米10年債利回りは1.71%へ上昇した。

13日夕刻に発表されたドイツの8月ZEW景況指数はマイナス44.1となり前月のマイナス24.5から大幅低下して予想のマイナス28.5を大幅に下回った。これはユーロ安ドル高要因となった。
13日夜に発表された7月の米消費者物価は全体の前月比が0.3%上昇で予想と一致、6月の0.1%から伸びた。前年同月比は1.8%上昇で予想の1.7%及び6月の1.6%を上回った。またコア指数は前月比が0.3%上昇で予想の0.2%を上回り6月の0.3%と一致、前年同月比は2.2%上昇で予想及び前月の2.1%を上回った。ドル円反騰中の発表だったためにドル高円安を助長した。



【市場悲観への一時的なブレーキか、継続性を持てるか】

今回の対中制裁関税発動の一部延期についてトランプ大統領はクリスマス商戦に及ぼす影響への配慮とした。発動延期対象はノートパソコン、ビデオゲーム機、おもちゃ、ベビー用品、靴類など500品目超で米アップルのiPhoneも含まれた。この動きに対して中国国営新華社通信は、8月13日に中国の劉鶴副首相がライトハイザーUSTR代表らと電話協議を行ったこと、2週間以内に再度電話協議を行う予定と報じた。
果たして9月1日の関税発動までに米中双方が合意への前向きな変化をもたらすかどうか注目されるが、ひとまず8月1日夜からの悲観ムードにはブレーキがかかった。このブレーキの効き目が一時的なものなのか、もうしばらく継続するのかどうか、また米中対立による景気減速懸念への予防的措置として利下げした米連銀が追加利下げ判断を先送りする可能性が高まるのかどうかも見定める必要がある。

トランプ大統領の発言・政策表明で状況がリスクオンにもリスクオフにも様変わりし、市場もその都度振り回される。トランプ大統領は特に、中国による米国産農産物大量輸入が実行されないことと人民元安への不満を強く批判してきた。中国が米国産農産物の大量買い付けを具体的に着手、実効性が高まる動きを見せ、人民元安の流れを阻止して元高を発生させ、米国の要求する知的財産権保護への大胆な譲歩姿勢を示し、9月協議への期待感が13日夜時点よりも一段と高まるなら株高を伴ってドル高円安へ進みやすくなるだろう。しかしこれまで何度もこの問題に対する悲観へのブレーキと一時的な期待は裏切られてきたため、市場心理をさらに押し上げるものが見られなければ、市場としては米中協議進展催促及び米連銀の追加利下げ催促として株安債券高、ドル安円高を再開させてゆくと思われる。

新たな材料による一時的な反騰が継続性を持てるかどうか、まずは昨晩の急騰幅の半値を削らずに高値圏を維持し、戻り高値切り上げへ進めるかどうかを14日は試すことになるのだろう。105円割れ寸前からから107円目前まで凡そ2円幅の急騰だったのでその半値は106.00円にある。106円以上での推移中は高値切り上げ余地ありとし、106円割れから続落なら戻りは一時的なものに終わって円高ドル安再開の可能性が高まると思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

60分足/一目均衡表

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月6日朝安値から4日半となる12日夜安値で直近のサイクルボトムを付け、13日夜安値で底割れを回避してダブルボトムとして反騰入りした。8月8日昼高値を基準とすれば6日目に入っており、8日午前高値からも4日目に入っているので既にサイクルトップを付けての反落警戒期にある。弱気転換した場合は次のボトム形成期となる15日夜から19日夜にかけての間への下落が想定されるところだが、底割れ回避のうちは14日の日中から18日にかけての間まではサイクルトップ形成が延長される可能性ありとする。106円割れからは下げ再開を疑い12日夜安値試しとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとする。

60分足の一目均衡表では13日夜の急騰で遅行スパンが好転、先行スパンを突破した。このため遅行スパン好転中は一段高余地ありとする。ただし、戻り高値を切り上げられないと14日夜には遅行スパンも悪化してくる。106円割れからは26本基準線割れとなるため下げ再開を警戒し、遅行スパン悪化からは弱気サイクル入りと仮定して安値試し優先としてゆく。

60分足の相対力指数は13日夜の急騰で70ポイント台後半へ急伸した。相場がさらに高値を切り上げるところで指数のピークが切り下がる場合は弱気逆行として下げ再開を疑い、50ポイント割れからは下げ再開とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。

(1)当初、106.00円を下値支持線、13日深夜高値106.95円を上値抵抗線とする。
(2)106.50円以上での推移中は13日深夜高値試しとし、高値更新なら107.00円から107.50円にかけてのゾーンを試す上昇を想定する。ただし新たな押し上げ材料が伴わない場合は107円以上では戻り売りにつかまりやすいとみて、いったん107円台へ乗せた後に106.50円割れするところからは下げ再開とみる。
(3)106.50円割れからは106円前後試しを想定する。106円前後では押し目買いも入りやすいとみるが、106円割れから続落に入る場合、特に13日夜の急騰を打ち消すような弱気材料を伴って下落の場合は下げ再開を疑い12日夜安値試しとし、底割れの場合は103円前後への急落型での一段安を想定する。

【当面の主な予定】

【当面の主な予定】
8/14(水)
休場、トルコ
09:30 (豪) 8月 ウエストパック消費者信頼感指数 (7月 96.5)
11:00 (中) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 9.8%、予想 8.6%)
11:00 (中) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 6.3%、予想 5.8%)
15:00 (独) 4-6月期GDP速報値 前期比 (前期 0.4%、予想 -0.1%)
15:00 (独) 4-6月期GDP速報値 前年同期比 (前期 0.7%、予想 0.1%)
15:00 (独) 4-6月期GDP速報値 季調前 前年同期比 (前期 0.6%、予想 -0.3%)
17:30 (英) 7月 消費者物価指数 前月比 (6月 0.0%、予想 -0.1%)
17:30 (英) 7月 消費者物価指数 前年同月比 (6月 2.0%、予想 1.9%)
17:30 (英) 7月 消費者物価コア指数 前年同月比 (6月 1.8%、予想 1.8%)

17:30 (英) 7月 小売物価指数 前月比 (6月 0.1%、予想 0.0%)
17:30 (英) 7月 小売物価指数 前年同月比 (6月 2.9%、予想 2.8%)
17:30 (英) 7月 生産者物価コア指数 前年同月比 (6月 1.7%、予想 1.7%)
18:00 (欧) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 0.9%、予想 -1.4%)
18:00 (欧) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 -0.5%、予想 -1.2% )
18:00 (欧) 4-6月期GDP改定値 前期比 (速報 0.2%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 4-6月期GDP改定値 前年同期比 (速報 1.1%、予想 1.1%)
21:30 (米) 7月 輸入物価指数 前月比 (6月 -0.9%、予想 0.0%)
21:30 (米) 7月 輸出物価指数 前月比 (6月 -0.7%、予想 -0.0%)

8/15(木)
10:30 (豪) 7月 新規雇用者数 (6月 0.05万人、予想 1.40万人)
10:30 (豪) 7月 失業率 (6月 5.2%、予想 5.2%)
13:30 (日) 6月 鉱工業生産確報 前月比 (5月 -3.6%)
13:30 (日) 6月 鉱工業生産確報 前年同月比 (5月 -4.1%)
13:30 (日) 6月 設備稼働率 前月比 (5月 1.7%)
17:30 (英) 7月 小売売上高・除自動車 前月比 (6月 0.9%、予想 -0.2%)
17:30 (英) 7月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (6月 3.6%、予想 2.3%)
17:30 (英) 7月 小売売上高 前月比 (6月 1.0%、予想 -0.2%)
17:30 (英) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 3.8%、予想 2.3%)

21:30 (米) 8月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (7月 4.3、予想 1.9)
21:30 (米) 7月 小売売上高 前月比 (6月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 7月 小売売上高・除自動車 前月比 (6月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 8月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (7月 4.3、予想 1.9)
21:30 (米) 7月 小売売上高 前月比 (6月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 7月 小売売上高・除自動車 前月比 (6月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4-6月期 非農業部門労働生産性・速報値 前期比 (前期 3.4%、予想 1.4%)
21:30 (米) 4-6月期 単位労働コスト・速報値 前期比年率 (前期 -1.6%、予想 1.8%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.9万件、予想 21.2万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 168.4万人、予想 168.5万人)
21:30 (米) 8月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (7月 21.8、予想 10.0)

22:15 (米) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 0.0%、予想 0.1%)
22:15 (米) 7月 設備稼働率 (6月 77.9%、予想 77.9%)
23:00 (米) 8月 NAHB住宅市場指数 (7月 65、予想 66)
23:00 (米) 6月 企業在庫 前月比 (5月 0.3%、予想 0.1%)
27:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 8.25%、予想 8.00%)
29:00 (米) 6月 対米証券投資 (5月 329億ドル)
29:00 (米) 6月 対米証券投資・短期債除く (5月 35億ドル)

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