FOMCのポイント:「パウエルFRB議長がより「タカ派」な発言を行うか?」
【今回のポイント】
〇 政策金利は据え置き
〇 年内の利下げは1−2回程度
〇 ドルではなく円中心の地合い継続か
【市場コンセンサスは何?】
米連邦準備制度理事会(FRB)による米連邦公開市場委員会(FOMC)が、4月30日‐5月1日に開催され、東京時間2日未明に結果が伝わる。東京時間4月29日21時時点のFOMCコンセンサスは下記の通りである。
・6回合連続となる政策金利5.25%(下限)−5.50%(上限)据え置き
FOMC声明にも大きな変更はなく、「引き続きインフレリスクに細心の注意を払っている」という文言や「インフレが持続的に2%に向かっているとの確信が深まるまで、目標レンジを引き下げることは適切ではない」といった文言も維持され、足元のインフレ長期化を警戒した声明になると考える。
【何がサプライズになる?】
パウエル議長は、16日の講演において、「(インフレが持続的に2%に向かっているとの確信が深まるまで)予想以上に時間がかかりそうだ」と発言。また、「必要な限り現在の引き締め的な水準を維持する」とも述べており、今会合での記者会見も同様のコメントを発する公算が大きい。既に市場では年内1−2回程度の利下げ実施を見込んでいることから、パウエル議長の発言がこのような内容となれば、さほどインパクトはないだろう。
一方、16日の講演よりも、長期化するインフレに対する警戒感を高めるような「タカ派」発言が出た場合は、サプライズになるだろう。さすがに「データ次第では利上げの可能性がある」とまでは言及しないだろうが、利下げに費やす発言と同程度、利上げに関する発言を行った場合は、米長期金利が上昇するなど市場が反応する可能性はある。
【では、ドルはどう動く?】
今回は、パウエルFRB議長の「タカ派」発言の深度がポイントと考える。
〇「タカ派」の深度が深まった場合
時期は問わず「利上げ」と「利下げ」を同じぐらいの可能性で捉えた場合、米10年債利回りは足元の高値水準である4.7%台より上で推移するだろう。日米金利差拡大の思惑が再燃し、シンプルなドル買いが進むと考える。日銀の金融政策決定会合後の160円台という水準到達は、ドル買いではなく、円安による力がメインだった。ドル・インデックスが105台まで下落していることからも、かなりの円売りが入ったと推測する。
日本当局による円買い介入実施を横目に見た動きとなりそうだが、円売り・ドル買いが同時に入ると円安ドル高は一気に進むと考える。一方、29日13時以降の円急伸が、日本当局による円買い介入だったかどうかは不明だが、仮に当局による円買い介入だった場合、「160円より上の円安は容認せず」という意思表示と捉えられることで、今後160円より上の円安水準は想定しにくくなる。
〇「タカ派」の深度が変わらなかった場合
16日の講演と同じような発言に留まった場合、市場へのインパクトは限定的で目立った売買は入らないと考える。米10年債利回りは4.6%台で上げ一服となり、為替市場ではドルは小動きとなろう。もっとも、日本当局による円買い介入実施への思惑などが高いことから、円を中心としたボラタイルな地合いは続く可能性がある。
【最近のFOMC関係者の発言は?】
4月中旬から下旬にかけての米政府高官の発言を見る限り、「年内1回程度の利下げ」がほぼコンセンサスとなりつつある。複数回の利下げを発言する政府高官はおらず、ボスティック・アトランタ連銀総裁は「今年は1回の利下げを予想」「年末まで利下げは出来ないだろう」と「年内0−1回程度の利下げ」を見込んでいる。
※ブラックアウト期間とは、主に中央銀行会合の前々週の土曜日から開始される。例えば FOMCが火曜日と水曜日に開催される場合は、会合翌日の木曜日まで計13日間続くこととなる 。
4月25日、イエレン米財務長官
「ドルは強い、他国との相違ある」
「ドルの評価における重要な要素は米経済の強さと金利水準」
「為替介入は非常にまれで例外的な状況でのみ許容される」
4月19日、グールズビー・シカゴ連銀総裁
「2024年はこれまでのところ、インフレ巡る進展が停滞している」
「FRBはデータが過熱を示しているかどうか確認する必要」
「過去3カ月のインフレは無視できない」
☆「待つのは合理的」
4月19日、ボスティック・アトランタ連銀総裁(2024年投票権を持つFOMCメンバー)
☆「今年は1回の利下げを予想」
「経済が減速しているものの、その減速ペースは緩やか」
「賃金上昇率はインフレ率を上回っている」
「インフレ抑制に向けた進展とともに、経済成長が続いていることは喜ばしい」
「米国のインフレは高すぎる」
☆「年末まで利下げは出来ないだろう」
「景気後退(リセッション)は予想せず」
「依然として2%の軌道。ただ遅くてでこぼこな道」
4月19日、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁
「インフレ率が2%に戻れば利下げは可能」
「インフレが確実に低下するまで忍耐が必要」
☆「利下げはいくらでも待つことが可能」
☆「利下げを2025年まで待つ可能性もある」
4月18日、ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁(2024年投票権を持つFOMCメンバー)
☆「利下げの緊急性は感じていない」
「経済は好調」
「FF金利は経済をそれほど減速させていない」
「最終的には金利を下げる必要があるだろう」
「利下げは経済活動によって決まる」
☆「利上げは私の基本的な予想ではない」
☆「データが利上げを要求するなら、FRBは利上げするだろう」
4月18日、ボウマンFRB理事(2024年投票権を持つFOMCメンバー)
「インフレ進行は鈍化、おそらく停滞している」
「金融政策が制限的かどうかは時間が経過すれば分かる」
「米経済は堅調、個人消費の強さは雇用の継続的な拡大に繋がっている」
4月18日、メスター・クリーブランド連銀総裁(2024年投票権を持つFOMCメンバー)
「インフレ率が2%へと低下しない場合、金利を現行水準より長期的に据え置く可能性」
「政策緩和を急ぐ必要はないが、ある時点で緩和を開始する」
「労働市場が悪化すれば、利下げの可能性」
4月17日、パウエルFRB議長(2024年投票権を持つFOMCメンバー)
☆「政策の実行にさらに時間がかかるのは適切」
「米労働市場はより良いバランスに向かいつつある」
「賃金圧力は徐々に緩和し続ける」
「確信を得るまでにはさらに時間がかかる可能性が高い」
「労働市場は引き続き非常に堅調」
「過去1年の米国経済は本当に非常に好調だった」
「最近のデータはインフレに関してさらなる進展が見られないことを示している」
4月17日、バーキン・リッチモンド連銀総裁(2024年投票権を持つFOMCメンバー)
☆「利下げの決定に時間をかけるのは賢明」
「経済は過熱していないが、もし過熱しているなら対処可能」
4月16日、デイリー・サンフランシスコ連銀総裁(2024年投票権を持つFOMCメンバー)
「インフレデータに驚くべき点はない」
「過度に強い、あるいは弱い政策対応に対して注意を促す」
「インフレ目標達成の確信が持てるまで政策対応を控えるべき」
4月15日、ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁(2024年投票権を持つFOMCメンバー)
「今年の経済全体の成長率は約2%にとどまるだろう」
「個人消費は好調」
「経済の供給側から追い風が吹いている」
「最近のインフレ統計が転換点になるとは思わない」
「市場はインフレ進行の鈍化を考慮に入れている」
「いつものようにデータに依存している」
【2024年スケジュール】
※米国は現地時間を記載しているので、金利発表及び記者会見は日本時間翌日未明
日銀金融政策決定会合(日銀会合)
1月22日−23日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持
3月18日−19日・・・マイナス金利の解除、YCC終了、ETF等の買い入れ終了
4月25日−26日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持、展望レポート見通し引き上げ、記者会見後は円全面安の展開
6月13日−14日
7月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
9月19日−20日
10月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
12月18日−19日
米連邦公開市場委員会(FOMC)
1月30日−31日・・・FOMC声明及びパウエルFRB議長は「3月利下げの可能性は低い」とけん制
3月19日−20日・・・2024年利下げ見通し「3回」変更無し、パウエルFRB議長は、年内利下げの可能性を再表明
4月30日−5月1日・・・「年内の利下げは1−2回程度」との見方か
6月11日−12日
7月30日−31日
9月17日−18日
11月 6日− 7日
12月17日−18日
欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
1月25日・・・現状の金融政策を維持、利下げの議論は時期尚早
3月 7日・・・現状の金融政策を維持、6月利下げ開始を示唆する発言
4月11日・・・現状の金融政策を維持、大きなサプライズが無い限り6月利下げ開始見通し
6月 6日
7月18日
9月12日
10月17日
12月12日
オーダー/ポジション状況
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