ドル円見通し 109円割れ回避で下げ渋る、米経済指標と長期債利回りを睨んでの展開続く(21/8/17)

ドル円は先週末に110円を割り込んで大幅続落した流れを継続して8月16日夜には109.10円まで安値を切り下げた。

ドル円見通し 109円割れ回避で下げ渋る、米経済指標と長期債利回りを睨んでの展開続く(21/8/17)

109円割れ回避で下げ渋る、米経済指標と長期債利回りを睨んでの展開続く

〇16日発表NY連銀製造業景況指数悪化で米長期債利回り大幅低下、ドル円109円台序盤へ一段安
〇その後深夜にNYダウ史上最高値更新で長期債利回り反騰、ドル円も下げ渋りに
〇NY連銀8月製造業景況指数は18.3、7月の過去最高43.0から急激に悪化し市場予想29.0を下回る
〇米ボストン連銀総裁「次の雇用統計強ければ9月に量的緩和策の縮小開始発表を支持」
〇8/16夜安値109.10割れからは8/4夜安値108.71試しを想定
〇109.50超えからはいったん戻しに入るとみて109.75前後への上昇を想定

【概況】

ドル円は先週末に110円を割り込んで大幅続落した流れを継続して8月16日夜には109.10円まで安値を切り下げた。109円割れはひとまず回避してその後は下げ渋りだが、8月11日高値110.79円からの下げ幅は1.69円に拡大、8月11日高値への上昇起点となった8月4日夜安値108.71円に迫る展開だった。
ドル円の8月4日夜安値108.71円からの上昇は米長期債利回りの上昇と同調したものであり、8月4日夜の米7月ISMサービス業景況指数が予想を大幅に超えて過去最高となったことをきっかけとし、8月6日の米雇用統計も予想を上回る改善を示したことで110円を突破して勢い付いたものとなり、8月11日高値110.79円までの上昇幅は2.08円となったが、8月11日夜の米7月コアCPI伸び率が前月から鈍化したことで米長期債利回りが低下してドル高一服となったところから下落に転じ、13日夜のミシガン大8月消費者信頼感指数が予想外の大幅低下となったことで110円を割り込む急落となった。

16日もNY連銀製造業景況指数が予想を超える悪化となったことで米長期債利回りが一時大幅に低下、NYダウも序盤に下げたことでドル円も109円台序盤への一段安となった。しかし16日深夜からはNYダウが持ち直しに入り史上最高値を更新するところまで切り返して強さを見せたため株買い債券売りで米長期債利回りが反騰、ドル円も下げ渋りに入った。

【株高の一方で米長期債利回りは大幅続落から反転上昇】

米10年債利回りは8月4日に1.12%へ低下して7月20日と同値水準まで下げたところから反騰入りして8月10日には1.37%台まで上昇したが、戻り一巡から下落に転じて16日は一時1.22%台へ低下した。16日午前発表の中国7月小売売上高が前年比8.5%増となったものの6月の12.1%から鈍化して市場予想の10.9%を下回り、8月の鉱工業生産も同6.4%増となったものの6月の8.3%から鈍化して予想の7.8%も下回ったことで景気回復の鈍化傾向が示された。16日夜の8月NY連銀製造業景況指数も18.3となり7月の43.0から大幅に低下した。景気回復の鈍化がデルタ株による感染再拡大の影響も意識されたことで米連銀によるテーパリング開始も急がれないのではないかと市場は受け止めて米長期債利回りは低下反応を示していた。

しかしNYダウは序盤の下落で3万5231.87ドルへ下げたところから高値で3万5631.19ドルまで反騰して取引時間中の史上最高値を更新し、終値でも前日比110.02ドル高とプラスに戻して史上最高値を5日連続で更新した。デルタ株の拡大、アフガン情勢、NY連銀景況指数の悪化等の懸念材料を消化してもなお景気回復は続くとして先高期待から多少下げたところは買われている。株高基調の確認で株買い債券売り・長期債利回り上昇反応へ回帰して米10年債利回りは1.22%まで低下したところから1.28%まで戻し、16日夜以降はユーロドル等の下落と共にドル円は下げ渋りに入った。
利上げ時期に敏感な米2年債利回りも0.19%台までいったん低下してから0.21%まで反騰しており、10年債も2年債も日足のローソク足では長い下ヒゲを付けている。

【景況感の現況は悪化、先行きは楽観】

8月16日に発表された米ニューヨーク連銀の8月製造業景況指数は18.3となり7月に付けた過去最高の43.0から急激に悪化して市場予想の29.0を下回った。週末のミシガン大消費者信頼感指数も予想外に悪化して過去50年では三番目の前月比からの低下規模となったが、デルタ株の感染拡大、ワクチン接種が進んでもブレイクスルー感染が発生していることで景況感も悪化し始めている印象だ。ただ、NY連銀景況指数の6か月先見通しは46.5となり前月の39.5から上昇しており先行きへの楽観度は健在とみられている。NYダウの最高値更新も足元の不安感よりも先行きへの楽観を優先させている印象だ。

物価上昇の上ブレと雇用回復が続く中で景況感の悪化も見られるもののNYダウが史上最高値を更新するという錯綜した状況にある中で8月18日には前回の米連銀FOMC議事録が公開されるので市場はそこでの手掛かりを探りたいところだ。
米ボストン連銀のローゼングレン総裁は16日にTVインタビューで「次の雇用統計が強い内容であれば9月に量的緩和策の縮小開始を発表することを支持する」「縮小開始を12月まで待つことを望まない」「10月か11月に着手すべきで2022年半ばには縮小を完了すべき」と述べている。同総裁はFOMCで投票権を持つ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、8月4日夜を起点とした上昇が8月11日夕高値110.79円でピークアウトして下落期に入っている。8月11日へ一段高する前の8月9日夜安値を基準として今回の安値形成期は12日夜から16日深夜にかけての間と想定したが、16日夜安値から下げ渋りやや戻し気味の動きに入っているのでサイクルボトムを付けた可能性がある。109.50円以下での推移中はまだ一段安余地も残るが109.50円超えからは戻しに入るとみて17日の日中から18日夜にかけての間への上昇を想定する。ただしいったん強気転換した後に一段安へ進む場合は新たな弱気サイクル入りとなりボトム形成期が19日夜から23日夜にかけての間へと伸びる可能性もあると注意する。

60分足の一目均衡表では8月11日夜の反落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落し、その後も両スパン揃っての悪化が続いてきたが、16日夜安値からの下げ渋りで遅行スパンは好転しやすくなっている。遅行スパン好転から高値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返せないうちはその後に遅行スパンが再び悪化するところから下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は週末から週明けへの安値更新に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せているので反騰入りしやすい状況と思われるが、50ポイント台では戻り売りも出やすいと注意する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8月16日夜安値109.10円を下値支持線、109.50円を上値抵抗線とする。
(2)109.50円以下での推移中は下向きとし、109.10円割れからは8月4日夜安値108.71円試しを想定する。108.80円以下は反発注意圏とするが、108.71円を割り込む場合は先行きで108円台前半へ向かうとみる。また109.25円以下での推移なら18日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)109.50円超えからはいったん戻しに入るとみて109.75円前後への上昇を想定する。109.70円以上は反落警戒圏とするが、109.50円を超えた後も109.25円以上での推移なら18日も戻り試しを続ける可能性があるとみる。

【当面の主な予定】

8/17(火)
休場 インドネシア(独立記念日)
10:30 (豪) 豪中銀、金融政策会合議事要旨公表
13:30 (日) 6月 第三次産業活動指数 前月比 (5月 -2.7%、予想 1.8%)
15:00 (英) 7月 失業保険申請件数 (6月 -11.48万件)
15:00 (英) 7月 失業率 (6月 5.8%)
15:00 (英) 6月 失業率・ILO方式 (5月 4.8%、予想 4.8%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP改定値 前期比 (1-3月 2.0%、予想 2.0%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP改定値 前年同期比 (1-3月 13.7%、予想 13.7%)
21:30 (米) 7月 小売売上高 前月比 (6月 0.6%、予想 -0.2%)
21:30 (米) 7月 小売売上高・除自動車 前月比 (6月 1.3%、予想 0.1%)

22:15 (米) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 0.4%、予想 0.5%)
22:15 (米) 7月 設備稼働率 (6月 75.4%、予想 75.7%)
23:00 (米) 6月 企業在庫 前月比 (5月 0.5%、予想 0.8%)
23:00 (米) 8月 NAHB住宅市場指数 (7月 80、予想 80)
26:30 (米) パウエル米連銀議長、講演
28:45 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、タウンホール会議

8/18(水)
07:45 (NZ) 4-6月期 生産者物価指数 前期比 (1-3月 1.2%)
08:50 (日) 7月 貿易収支・通関・季調前 (6月 3832億円、予想 2049億円)
08:50 (日) 7月 貿易統計・通関・季調済 (6月 -902億円、予想 2927億円)
08:50 (日) 6月 機械受注 前月比 (5月 7.8%、予想 -3.0%)
08:50 (日) 6月 機械受注 前年同月比 (6月 12.2%、予想 15.2%)
09:30 (豪) 7月 ウエストパック景気先行指数 前月比 (6月 -0.07%)
10:30 (豪) 4-6月期賃金コスト指数 前期比 (1-3月 1.5%)
11:00 (NZ) ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.50%)

15:00 (英) 7月 消費者物価指数 前月比 (6月 0.5%、予想 0.3%)
15:00 (英) 7月 消費者物価指数 前年同月比 (6月 2.5%、予想 2.3%)
15:00 (英) 7月 消費者物価コア指数 前年同月比 (6月 2.3%、予想 2.1%)
15:00 (英) 7月 小売物価指数 前月比 (6月 0.7%、予想 0.3%)
15:00 (英) 7月 小売物価指数 前年同月比 (6月 3.9%、予想 3.7%)
18:00 (欧) 6月 建設支出 前月比 (5月 0.9%)
18:00 (欧) 6月 建設支出 前年同月比 (5月 13.6%)
18:00 (欧) 7月 消費者物価指数 改定値 前年同月比 (速報 2.2%、予想 2.2%)
18:00 (欧) 7月 消費者物価コア指数 改定値 前年同月比 (速報 0.7%、予想 0.7%)

21:30 (米) 7月 住宅着工件数・年率換算件数 (6月 164.3万件、予想 160.8万件)
21:30 (米) 7月 住宅着工件数 前月比 (6月 6.3%、予想 -2.2%)
21:30 (米) 7月 建設許可件数・年率換算件数 (6月 159.8万件、予想 161.0万件)
21:30 (米) 7月 建設許可件数 前月比 (6月 -5.1%、予想 1.0%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省20債入札
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨

※ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る