ドル円の7日ぶり反落で失速、二回目大統領選投票へ向けてリラ安進行
〇トルコリラ円、ドル円の反落に合わせ5/19早朝7円台へ到達したところから下落を続け6.95を割り込む
〇対ドル、5/22午前序盤も19.85リラから19.78リラのレンジで最安値を試す
〇大統領選1回目投票エルドアン氏優勢の結果が政権継続懸念を強め、リラ売りを急がせる
〇エルドアン大統領、5/18CNNインタビューに再選なら高インフレ抑制のため利下げ政策継続を表明
〇次回トルコ中銀金融政策委員会は5/25に開催予定
〇6.98以下での推移中は一段安警戒とし、6.92割れからは6.90、6.88を順次試す下落を想定
〇6.96から6.98にかけては戻り売り有利とみて、6.98を超える場合7.00試しとするがその後の反落注意
【概況】
トルコリラ円の5月19日は概ね7.02円から6.94円の取引レンジ、20日早朝の終値は6.89円で前日終値の7.00円から0.11円の円高リラ安だった。週間では5月12日終値6.93円から0.04円の円高リラ安。
対ドルでトルコリラの史上最安値更新が続く中でもトルコリラ円はドル円を追いかける展開を続けてきたが、ドル円がパウエル米FRB議長の利上げ停止へ含みを持たせる発言を行ったことや楽観視されていた米債務上限問題の協議が不調との報道等により反落したため、トルコリラ円も19日早朝に7円台へ到達したところからの下落を続けて6.95円を割り込んだ。
ドル円は5月4日未明の米FOMCと5月10日の米CPI及び5月11日の米PPIを通過して当面のドル売り材料を消化したとして5月11日夜安値133.74円から5月19日早朝高値138.74円へ連騰して5月2日高値137.76円を超えてこの間の上昇幅は5円となったが、連騰一巡で失速し、19日深夜にはパウエル議長発言をきっかけに137.42円へ下落、いったん138円台到達まで戻したものの失速している。
米連邦債務上限問題が暗礁に乗り上げていることで22日午前序盤も137円台後半で軟調推移となっている。
トルコリラ円は5月2日高値7.08円から5月11日夜安値6.83円へ下落したところからドル円の反騰に合わせて持ち直しに入り、16日の反落も買われて19日早朝には7円台に到達したが、ドル円の反落とドル高リラ安の進行により19日深夜に6.94円へ下落し、20日早朝には6.97円まで戻したものの22日午前には19日深夜安値を割り込んでいる。
良好な米経済指標が続いたことやFRB高官と地区連銀総裁らの利上げ継続支持発言等がドル円と共にトルコリラ円を押し上げてきたもののドル高に一巡感が出ており、ドル円は連騰に対する修正安に入っている印象だ。トルコリラ円としてはドル高リラ安をカバーする円安が後退したことで下落感が強まりやすい局面と思われる。
【大統領選決選投票へ向けてドル高リラ安進行】
ドル/トルコリラの5月19日は概ね19.82リラから19.77リラの取引レンジ、20日早朝の終値は19.80リラで前日終値の19.78リラからは0.02リラのドル高リラ安だった。週間では5月12日終値19.56リラから0.24リラのドル高リラ安だった。
5月14日のトルコ大統領選挙で現職のエルドアン大統領と野党統一候補のクルチダルオール氏が共に過半数に達しなかったために5月28日に決選投票となり、1回目投票でエルドアン氏優勢だったことでエルドアン政権の継続への懸念が強まっていることがリラ売りを急がせており、連日の史上最安値更新となっている。手元のデータでは5月16日に19.74リラ、17日に19.78リラ、18日に19.81リラへと取引時間中の史上最安値を更新して19日も19.82リラへ続落した。終値べースでは16日の19.72リラ、17日の19.74リラ、18日の19.78リラから19日終値19.80リラへと最安値更新が続いている。
5月22日午前序盤も19.85リラから19.78リラのレンジで最安値を試している。
【エルドアン大統領再選なら利下げ】
エルドアン大統領は5月18日にCNNのインタビューにおいて、5月28日の決選投票でに再選された場合には高インフレを抑制するために金利を引き下げる政策を継続すると表明した。エルドアン氏は「私について来てください。そうすれば金利とともにインフレも下がることが分かるでしょう」と述べ、経済政策に変更がないことを意味するのかとの質問に対して「そうだ」と返し、「金利とインフレには直接的な相関関係があり、金利が下がればインフレも下がる、それは幻想ではない」と述べた。
エルドアン大統領は意に沿わないトルコ中銀総裁を繰り返し解任して中銀の独立性を損ないながら高インフレが進行する中で4会合連続の利下げを強行したために2021年末にかけてのリラ暴落を招き、インフレ率は2022年10月に85%へ上昇、その後はベース効果でやや下がったものの4月時点でも44%と高インフレ状態が続いている。
2月6日に発生した大地震の復興へ向けても高インフレが足かせとなっているが、エルドアン大統領再選となれば従来の政策は変わらないどころか益々エルドアン色が濃くなり、リラ安が一段と深刻化することも懸念される。
トルコ中銀の金融政策委員会は5月25日に開催される。投票前のため政策金利の週間レポレポートは現行の8.50%で据え置きと見られるが、再選が確定すればその後は中銀に対する利下げ要求があからさまとなる可能性がある。
【トルコのリラ保護預金制度の預金が急拡大】
トルコの銀行規制監督庁(BDDK)によると、リラ建て預金保護制度(通称KKM)に基づく預金額が5月12日までの週間で約1440億リラ増加して約2兆3500億リラ(約1200億ドル)に達して過去最大となった。18週連続の増加だが、大統領選挙が始まる前から急増しており、トルコ国民がリラ暴落に備えて為替差損の補填があるこの制度へと資金を集中させていることがわかる。
預金保護制度のリラ預金拡大はこの制度の目的であるリラ暴落を阻止するためのリラ建て預金拡大という見方をすればリラ安抑止要因となるものだが、実際にはリラ安は歯止めがかかっていない。
5月18日に発表された週次の外貨準備高は5月12日時点のグロスで608.2億ドルとなり5月5日時点の684.1億ドルから大幅減少。ネットでは23.3億ドルとなり5月5日時点の67.8億ドルから激減して21年ぶりの低水準となっており、リラ安抑制のためのトルコ中銀による非公式市場介入が繰り返されていることで外貨準備が枯渇してきている印象だ。
輸出企業等が保有外貨を半ば強制的にリラへ転換させられていることで市場介入等が無ければ増加してゆくべきところ、保有外貨のリラ転換や預金保護制度へのリラ預金拡大では抑制できないレベルでリラ安が進行していることを示唆している。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月18日早朝への上昇で15日昼高値を上抜いたため、18日午前時点では16日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして18日の日中から22日昼にかけての間への上昇を想定したが、5月19日朝へ一段高したところから反落していたために19日午前時点ではすでにサイクルトップを付けた可能性があるとして6.96円割れからは弱気サイクル入りとした。
5月19日深夜への下落で6.96円を割り込んだため、19日朝高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。ボトム形成期は19日夜から23日夜にかけての間と想定されるのですでに反騰注意期にあるため、6.98円を超えないうちは一段安余地ありとするが、6.98円超えからは強気転換注意とし、7.00円超えからは強気サイクル入りとして24日朝から26日朝にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では5月19日深夜への下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落した。その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンから転落しているうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とするが、先行スパンを上抜くところからは新たな上昇期入りとして遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は5月18日夜に70ポイント台へ上昇したところから下落に転じて30ポイント台へ低下した。50ポイント以下での推移中は20ポイント台への低下余地ありとし、強気転換は50ポイント超えからとする。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6.92円を下値支持線、6.98円を上値抵抗線とする。
(2)6.98円以下での推移中は一段安警戒とし、6.92円割れからは6.90円、6.88円を順次試す下落を想定する。6.90円以下は買いも入りやすいとみるが、6.95円以下での推移が続く場合は23日も安値試しを続けやすいとみる。
(3)6.96円から6.98円にかけての水準は戻り売り有利とみる。6.98円を超える場合は7.00円試しとするがその後の反落注意とする。
【当面の主な予定】
5月22日
16:00 5月 消費者信頼感指数 (4月 87.5)
23:30 4月 中央政府債務残 (3月 4兆4870億リラ)
5月24日
16:00 5月 製造業信頼感指数 (4月 108.0)
16:00 5月 設備稼働率 (4月 75.4%)
5月25日
20:00 トルコ中銀金融政策委員会 政策金利 (現行 8.5%)
20:30 週次 外貨準備高 5/19時点 グロス (5/12時点 608.2億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 5/19時点 ネット (5/12時点 23.3億ドル)
5月26日
17:00 4月 海外観光客数 前年比 (3月 12.32%)
5月28日 大統領選挙第二回投票
注:ポイント要約は編集部
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