トルコリラ円見通し 予想を大幅に超える追加利下げで史上最安値更新
〇トルコ中銀、政策金利を18.0%から16.0%へ利下げ、予想を超える2%の大幅利下げを決定
〇トルコリラ円、10/21は12.41から11.92のレンジ、利下げ強行でリラ全面安となり史上最安値更新
〇ドル/トルコリラ、10/21は9.54から9.18のレンジ、利下げ発表直後9.48へ急落してからも安値更新続く
〇年初から30%近い下落、史上最安値更新により先行きは1ドル=10リラ超えを試す懸念
〇11月会合での3会合連続の利下げも可能性も
〇12.05以下での推移中は、11.90割れから11.80前後への下落を想定する
〇12.05から12.10にかけてのゾーンは、戻り売りにつかまりやすいとみる
【概況】
トルコリラ円の10月21日は12.41円から11.92円の取引レンジ、22日早朝の終値は11.95円で前日終値の12.38円から0.43円の円高リラ安となった。
トルコ中銀は政策金利を18.0%から16.0%へと2%の大幅利下げを決定した。市場は17.0%から17.5%への利下げを想定していたが、予想をはるかに超える利下げ強行となったことでリラ全面安となり、昨年11月6日に付けたこれまでの史上最安値12.03円を割り込んだ。
前日比で0.43円の下げ幅は今年3月22日にアーバル前中銀総裁が突然解任されたときに前週末3月19日終値15.07円から週明け3月22日終値13.94円まで1.13円の円高リラ安となった時に次ぐ下落規模。
中銀の利下げ発表直後に直前の12.29円から11.98円へ急落してからいったん戻したものの早々に売られて安値更新を続けている。
【対ドルも史上最安値更新】
ドル/トルコリラの10月21日は9.54リラから9.18リラの取引レンジ、22日早朝の終値は9.50リラで前日終値の9.21リラから0.29リラのドル高リラ安となった。10月19日に9.37リラまで連日の史上最安値更新が続き、20日は中銀金融政策決定会合前のポジション調整で買い戻されたものの、21日は予想を超える利下げ幅からリラ売り殺到で急落した。利下げ発表直後に9.25リラ近辺から9.48リラへ急落してからも安値更新が続いており、22日朝時点でも売り一巡感が出ていない印象だ。週末の取引となるために投げ売りもさらに加速する可能性があると警戒される。
既に年初から30%近い下落であり、史上最安値更新により先行きは1ドル=10リラ超えを試してゆくとの声も聞かれる。
【トルコ中銀、16%への大幅利下げ】
トルコ中銀は10月21日の金融政策決定会合で政策金利の週間レポレートを現行の18.0%から16.0%へ2%引き下げた。前回会合の9月23日に従前の19.0%から18.0%へと引き下げたことに続いて2会合連続の利下げとなった。主要政策金利としては翌日物貸出金利が19.5%から17.5%へ、翌日物借入金利が16.5%から14.5%。後期流動性貸出金利が22.5%から20.5%へ、いずれも2%引き下げられた。
10月8日にエルドアン大統領が中銀政策への不満と苛立ちを表明、10月13日にカブジュオール中銀総裁と大統領が会談、10月14日にトルコ中銀の副総裁2名と委員1名の3名が突然解任されたことから連続利下げが予想されていたが、9月のトルコ消費者物価指数の前年比が19.58%(8月の19.25%から上昇)、コア指数の前年比が17.0%(8月の16.8%から上昇)だったため、市場の事前予想では17.5%を中心として極端な場合で17.0%への利下げも警戒されていたのだが、18.0%での据え置き予想もあり、今回の16.0%への大幅利下げが大きなサプライズだった。
【追加利下げの可能性は?】
利下げ発表後に中銀は「供給面の一過性の要因により、年末までの政策金利の引き下げ余地は限られている」と表明したものの、エルドアン大統領は「インフレ率と政策金利の一桁」を掲げて利下げが物価抑制に貢献すると繰り返し強調してきたこと、前回の1.0%の利下げには大いに不満があったために今回は中銀メンバーを入れ替えて2.0%の利下げに踏み切ったのであり、11月会合での3会合連続の利下げも可能性があると思われる。
JPモルガンは11月の次回会合でさらに0.10%の追加利下げの可能性があり、通貨インフレの進行で年末のインフレ率予想をこれまでの16.7%から19.9%へ引き上げている。
政策金利が消費者物価上昇率を下回る実質マイナス金利状態というのは、物価上昇が進んでテーパリングや利上げを模索している欧米においても同様であるが、トルコのように20%近い高インフレ状態にある場合は常識的にインフレ抑制のために金融引き締めを行うことが基本原則であり、無謀な利下げが通貨インフレを加速させ、海外投資家によるリラへの信認低下での投資引き上げ等からハイパーインフレの発生や通貨危機的な様相へと事態が悪化しかねないことと思われる。もちろん、利下げによりトルコ国内企業は借入コストが下がり、リラ安は輸出や海外観光客の集客には都合がよいというメリットもあり、10月21日のイスタンブール100株価指数は1.58%高と上昇しているが、「高金利で高成長のトルコリラ」という海外投資家の興味は大きく削がれることになるのだろう。今回の利下げ先行による物価引下げ作戦が好走してトルコ国内景気にプラスとなるのか、リラ暴落による通貨危機とインフレ進行で国内経済が疲弊して2023年の大統領選挙でのエルドアン大統領再選が危うくなるのか、賭けともいえる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月16日早朝への下落で14日早朝安値を割り込んだために18日午前時点では底割れによる弱気サイクル入りとして19日朝から21日朝にかけての間への下落を想定したが、19日昼へ一段安してからの反騰により20日午前時点では19日昼安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとし、高値形成期を20日夜から22日夜にかけての間とし、12.20円割れからは弱気サイクル入りとした。
20日夕刻の下落で12.20円まで下げたところからは切り返していたが、21日夜の中銀利下げからの急落で12.20円を割り込み19日昼安値も大幅に割り込んでいるので、21日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。ボトム形成期は22日午前から26日昼にかけての間と想定されるが、週末の取引のために22日夜から23日未明にかけてはさらに下げやすいとみる。12.15円超えからはいったん強気サイクル入りとするが戻りは短命の可能性があると考える。
60分足の一目均衡表では10月20日夜の急落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したため、遅行スパン悪化中の安値試し優先とみる。遅行スパン好転の場合はいったん戻しに入るとみるが、先行スパンに届かないうちはその後に遅行スパンが悪化するところから下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は20ポイント割れへ低下してからも横ばい程度の推移となっている。40ポイント以下での推移中は一段安警戒とする。40ポイント超えからはいったん戻しに入るとみて50ポイント前後への上昇を想定するが、50ポイント前後では戻り売りも出やすいとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11.90円を下値支持線、12.10円を上値抵抗線とする。
(2)12.05円以下での推移中は11.90円割れから11.80円前後への下落を想定する。11.80円以下は反騰注意だが、史上最安値更新中のため下げ足がさらに早まる場合は11.70円前後へ下値目途を引き下げる。
(3)12.05円から12.10円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。12.10円超えからは12.15円前後への上昇とその後の反落を想定する。
【10月21日の発表結果】
16:00 10月 消費者信頼感指数 (9月 79.7、結果 76.8)
20:00 トルコ中銀 金融政策決定会合
週間レポレート (18.0% → 16.0% )
翌日物貸出金利 (19.5% → 17.5%、)
翌日物借入金利 (16.5% → 14.5%)
後期流動性貸出金利 (22.5% →、20.5%)
20:30 外貨準備高 グロス 10/15時点 (10/8時点 853.6億ドル、結果 859.6億ドル)
外貨準備高 ネット 10/15時点 (10/8時点 296.1億ドル、結果 321.2億ドル)
【当面の主な予定】
10月25日
16:00 10月 製造業景況感 (9月 113.4)
16:00 10月 設備稼働率 (9月 78.1)
10月27日
16:00 9月 貿易収支 (8月 -42.6億ドル)
16:00 10月 経済信頼感指数 (9月 102.4)
10月28日
16:00 9月 観光客数 前年同月比 (8月 119.4%)
20:30 週次 外貨準備高 10/22時点
※ポイント要約は編集部
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