外国為替市場の相場変動要因

FXで利益を得るためには為替市場がどのような仕組みで動きレートが決まるのかを理解し予想しなければなりません。ここでは基本となる考え方や変動要因を説明しましょう。

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外国為替市場の相場変動要因

@ 相場変動の考え方の基本(需給と期待の変化と美人投票)

a) 需給

円やドルなどの主要通貨をはじめFXで取引されるほとんどの通貨は、原則として市場の需要と供給で為替レートが決定される「変動相場制」という方法をとっています。
例えばドル円が今1ドル=120円だったとしましょう。もし、為替市場に120円であればドルが欲しい人が多ければ120円でドルを売ってもいいと思う人から全部ドルを買ってしまってもまだドルを欲しい人が残ってしまいます。もう誰も120円でドルを売ってもいいと思っていませんから120円ではいやだけれど121円ならばドルを売ってもいいと思っている人たちから買わざるを得ないでしょう。そのためドル買いの需要はドル高を招きます。ドルを買ってもいいと思っている人とドルを売ってもいい人が同じだけいるレートまで上昇して均衡します。この時点で需要と供給はバランスします。
刻々と動いて留まることがないかのように見える為替レートも実際にはその瞬間瞬間では需要と供給が一致していると考えることができます。

この需要と供給の中には実際に海外との間で実際に物を売り買いした代金や、海外旅行のための両替、留学中の子供への送金などの「実需」のお金もあれば、海外との投資資金のやり取りや企業の買収の資金、そしてFXを含むいわゆる「投機」資金などすべての需要と供給を含みます。
この都度バランスしている需要と供給は次の瞬間に変化します。実需や投資の場合はわかりやすいですね、新たに海外旅行に行くとか、買った商品の支払期日が来るとかで新たな外貨への需要や供給が生じると需給バランスが崩れレートが動きます。もっと大きな海外の大手企業の買収が決まった場合などは買収用の外貨を大量に買うことになりますので121円でバランスしていた需給は123円に均衡点を移すかもしれません。

b)期待の変化

それでは、実需や投資以外の「投機」資金の需給はどのように変化するのでしょうか。
FXなどの「投機」の資金は実際の取引の裏づけがありませんから外貨を買っても売ってもよいわけです。「投機」を行う人は自分が、外貨が今より上がると思えば外貨を買いますし今より下がると思えば外貨を売ります。実際の取引に縛られない分だけ臨機応変に対応でき取引量の総和も実需に匹敵する規模があります。
そしてその需給が変化するのは思惑とか予想が変化するときです。これを「期待の変化」と呼びます。
例えば123円まで上昇したドル円は市場のすべての実需の需給と投機を行う人の思惑や予想がバランスしています。ところがここで新たな動きが出てくると投機筋の「期待」が変化して需給のバランスが崩れます。
例えばこれまではほとんどの人がアメリカの金融緩和は当分続くと考えていたとします。ところが、ある時点から次第にアメリカの景気指標が改善してきました。アメリカの金融の動きをつかさどる要人からも徐々に金融緩和を終わらせることを匂わせる発言が目立つようになってきました。

この時点ではまだ実際に政策金利は変更されていないのですが投機筋の人たちの中には次第に「近々アメリカの政策金利が上がるのではないか」と考える人が増えてきます。ある国の金利が上昇するとお金はそこに引き寄せられる用に集まりその国の通貨は上昇する傾向があります。それを先取りして敏感な投機筋がドルを買い始め123円で均衡していたドルは上昇を始めます。また、投機筋ばかりでなく大口の決済をひかえた実需の企業も上昇を見越して早めにドルを買っておいたり、輸入企業であれば代金で受け取ったドルを売るのを待ったりするなどタイミングをずらすことにより一時的にドルを買うのと同じ需給の崩れをもたらすかもしれません。そしてその動きは例えば125円まで上昇したところで次の均衡点を見つけてとまります。

ここで大事なことはこの時点では実際の金利はまだ変更されていないことです。為替相場は実際に起こったときではなく何かが起こるという「期待」が「変化」したときに動くのです。そのため、「期待」や思惑が過剰な場合には実際に金利が変更された時には逆にポジションが解消される動きのほうが強くなってドルが売られたりする場合もあります。

この「実需」と「期待の変化」でほとんどの為替の動きは説明できます。
FXで収益を上げるには誰よりも市場の「期待」が今どこにあってそれがどちらの方向に変化しようとしているのか、今後注目されるに違いないのにまだ材料として見落とされているものはないかなどに人一倍敏感である必要があります。

c)美人投票

しかし、いくら材料に「敏感」でなければならないからといって自分だけが正しいと信じていることを基づいてポジションを作ってもFXでは勝てません。
相場には「美人投票」という考え方があります。
これは経済学者のケインズが金融市場における投資家の行動のたとえ話として用いたもので、金融市場を「100枚の女性の写真の中から6名の美人だと考える人に投票してもらい、その回答が最も平均的なものに近かった人に賞品を与える新聞投票」に例えています。
すなわち、賞品をもらうためには自分が美人だと思う女性に投票するのではなく、いかにもみんなが美人だと考えそうな女性に投票する必要があります。
このことはFXにおいてもその舞台である為替市場においても同じことが言えます。
すなわち、自分だけが正しいと信じている相場の材料を見つけたとしても最終的にほかの市場参加者も同じ材料に気がついて行動してくれないと意味がないということです。
つまり、FXで収益を上げるために必要なことは経済学や金融政策を極めることのではなく、いかにも相場を動かすことになりそうな材料に大多数よりは早く気がついて行動する(ポジションを取る)ことです。

A 外国為替市場(FX)と資金・債券市場(金利)と株式市場(株)の関係

a)FXと金利

為替と金利はとても密接な関係があります。一般的には金利が上昇するとその国の通貨から得られる利息が増えるのでより多くの資金がその通貨に集まる傾向があります。
逆に金利が低下するとその国の通貨は売られます。
政府や中央銀行は政策金利をコントロールすることにより経済の運営を行います。FXの取引において景気系の経済指標が重視されるのは、多くの場合、それらの指標が最終的には政策金利の変更につながる可能性があるからともいえます。
ちなみにFXをトレードする場合には金利の絶対水準よりも中長期的にその通貨の金利がどちらの方向に(上昇なのか、下降なのか)向かっているのか、あるいはその方向性やスピードに対する「期待」がどう変化しつつあるのかが重要です。

 

なお、経済環境にかかわりなくある国の通貨が投機的な売りにさらされた場合に中央銀行が緊急に短期金利を引き上げて自国の通貨を防衛する場合もあります。
投資妙味を増して自国に資金を呼び込む狙いももちろんあります。しかし、それよりもむしろ投機で通貨を売るためにはその国の資金を借りてこなければならないので、借入れ金利を高騰させてその国の通貨を売るためのコストを上げる(投機筋に多額のスワップを支払わせる)ことで投機筋の意欲を殺ぐことが主眼です。

b)FXと株式市場

株式市場と為替レートの関係は国により、タイミングにより様々です。
例えば、日本の場合であれば、経済に占める輸出企業の割合が高いので自国の為替が買われて上昇する(円高になる)と株式市場は下落する傾向があります。円高ドル安は輸出企業にとって外貨での収入の目減りを招くからです。
逆に円安になると輸出企業の円建ての売上・収益増から株式市場の上昇につながる傾向があります。
しかし、株式の上昇が基点であるとすれば、株式を海外から投資する投資家の資金流入が起こるので、円が買われ円高になるかもしれません。しかしここ数年は円安→株高がいつのまにか円安=株高のようにとらえられて、株式の上昇がセオリーとは逆に円安を招いたりすることもあるのがむずかしいところです。

c)金利と株式市場

ついでに金利と株式市場の関係も見ておきましょう。
金利と株はわりとしっかりした関係があります。
政策金利の引き下げは景気刺激策として行われることが多くその効果を期待して株式は上昇するのがセオリーです。金利が低下することで預金の魅力が低下する分株式市場に資金が振向けられるとイメージするのがわかりやすいかもしれません。
逆に政策金利を引き上げるのは経済の過熱を警戒してのことですから、一般的には株式にはマイナスの影響を与えます。
しかし、この動きも株式市場を基点とすると方向は逆で、株式の上昇は将来的な政策金利引上げを連想させることから金利上昇に結びつくことが多く、株の下落は逆に金利低下を連想させます。

このように為替市場と金利市場と株式市場は相互に影響を与え合いながら常に均衡点を探して動き続けているのです。

B 個々の為替相場変動要因、その方向と位置づけ

a)中央銀行の金融政策(政策金利の変更、量的緩和)

中央銀行は金融政策により直接市場に影響を与え、経済の低迷や過熱をコントロールしようとします。一般的には政策金利の引き上げは自国通貨高要因、引き下げは自国通貨安要因となります。最近では主要国の景気低迷が長引いたことから、政策金利がゼロ近辺の国が多く、金利が引き下げにくい状態になったことから市場に出回る資金量を直接増やす量的緩和等も行っている。

b)中央銀行による為替介入

自国の通貨の水準が適切でないと判断した場合や、相場変動があまりにも急激で経済にダメージを与えることとなると考えられた場合中央銀行が直接自国通貨を売買する為替介入に出ることがあります。日本の場合は財務省の指示に基づき日本銀行が実際の介入を行います。また介入のことを外国為替平衡操作と呼び、後日実施状況は公表されます。
http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/feio/
一日の介入金額は数十億円から数兆円規模にも及ぶが、市場全体の規模から考えると需給を変化させるまでの規模では介入できないため意思表示の意味が大きい。
介入は自国経済を守る意味が強いことから、他国と利害が対立するケースも多く、最近では介入の是非が論じられることも多い。
また、介入を行っても効果がなく失敗するケースもある。

c)政治要因

国によっては政治化の政策スタンスや国の首長の選挙などが為替相場に影響を与えることがある。ただし、日本に関してはまったくといっていいほど政治材料は相場に影響を与えない。

d)地政学リスク

地政学リスクとは戦争や地域紛争、テロなど政治的、宗教的な対立から軍事衝突等の危険が高まったり実際におきたりして緊張状態が高まることをさします。地政学リスクがたかまると、経済の不透明さから直接関係ない地域の経済にも影響を及ぼす場合があります。
そのため金融市場も不安定化する場合があります、地政学リスクが高まると為替市場においては相対的に安全と考えられている「危険避難通貨」とよばれる通貨に資金が移動する傾向があります。
古くは「有事のドル買い」といって世界の基軸通貨であるドルに買いが集まりましたが、最近ではもっぱら日本円が危険避難通貨とされており、政治、軍事ばかりでなく経済危機の場合にも危機が強まると日本円が買われます。
日本円の危険避難通貨ぶりは尋常ならざるものがあり、東日本大震災やその後の原発事故のように日本のみが悪影響を受ける大災害の場合でも「有事の円買い」の動きが見られたほどです。
他に危険避難通貨として古くから有名なのは政治的に永世中立国であるスイスの通貨スイスフランです。

e)貿易収支

貿易収支とはその国の輸出額と輸入額の差額のことをいいます。輸出金額のほうが輸入金額よりも多いことを貿易黒字とよび、輸入金額のほうが輸出金額より大きいことを貿易赤字とよびます。
貿易黒字の場合には輸出代金の外貨の受取り超となるために、最終的にそれ自国通貨に交換することになるため需給要因から自国通貨高になります。
一方貿易赤字のケースでは外貨の支払い超となることから自国通貨を売って外貨を購入する必要があるために需給上自国通貨安要因となります。
日本はかつて輸出大国であり巨額な貿易黒字が円高圧力となりまた米国をはじめとする他国との間に貿易摩擦を生じさせていました。その時期は月次の貿易収支は円相場に影響を与える重要な指標として注目を集めていました。
しかし、円高の進行とともに輸出の採算が悪化し、輸出企業が倒産したり生産拠点の海外移転が進んだりしたために現在では貿易収支のバランス化が進み以前ほど貿易収支が為替市場で材料視されなくなっています。
さらに2011年に日本は約30年ぶりに貿易赤字に転じ、以後現在(2015年末)に至るまで貿易赤字国となっています。

f)雇用統計・失業率

現在でも最も注目されているひとつが雇用統計です。特に月次の米国の雇用統計には相場の注目が集まります。なぜならば、FRBが経済の状況を確認し金融政策を行う上での重要な判断材料とみなされているためです。
雇用統計に含まれるさまざまな数字の中でも非農業部門雇用者数と失業率の数字は特に重要とされており、これらの数字の発表結果が予想と大きく食い違った場合などは瞬間的に大きく為替が動く場合があります。
日本でも同様に失業率等が定期的に発表されていますが米国ほど注目されることはなくほとんど材料となることはありません。

g)FOMC(連邦公開市場委員会)日銀政策決定会合等中央銀行の政策決定会議

アメリカの場合は中央銀行の役割を果たすFRB(連邦準備制度理事会)の理事7名と地区ごとの連邦準備銀行総裁5名でこの委員会が構成されていて、約一ヵ月半ごとに年間8回開催されるほか、必要に応じて臨時に召集されることもある。
日本の場合は日銀において金融政策決定会合がやはり年8回程度開催される。
いずれの会議においても経済の状況判断と金融政策が決定され即日公表実施されるが、少し遅れてより詳細な議論の内容も公開されこちらの内容も為替相場の材料とされることがある。

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