ドル円 米中協議結果報告で流れ変わるか?
【概況】
1月3日午前に104円台へ暴落したがパニック的な暴落を消化してからは8日までジリ高で戻して8日夕刻には109.08円をつけた。暴落が年明け早々の薄商い状況で発生したが、突発的な売り材料によるものではなく悲観先行的な心理状況のなかで売りの連鎖反応が巻き起こしたものと思われる。当日に107円台を回復してからは戻してきたが、暴落ショックを一挙に解消するほどに市場心理は改善せず、上値の重さを感じさせる展開だった。8日に109円台をつけたものの、109円超えを強気の加速ポイントとできず、9日は109円台を回復できないままの横這い推移となっていた。
NYダウが1月4日の746.94ドル高となる反騰から週明けも連騰しているが、株高がリスクオン的な円安ドル高には直結してこなかった。米10年債利回りも3日から8日まで上昇してドル高円安を支えていたが9日は反落してドル円の上昇には支えが薄くなった。
ドル指数は1月3日から7日まで3日間続落した後の8日には戻していたが、9日はユーロが11月以降の高値を更新する上昇となり、ポンドも反発、ドル円も下落したために凡そ3か月振り安値水準へ一段安している。
【FOMC議事録】
1月10日未明には米連銀のFOMC議事録(12月18,19日会合分)の公開があった。内容にサプライズはなかったが要旨では金融市場の動揺と世界経済の減速懸念により「将来の適切な利上げ幅とタイミングはより従来よりも不透明」として利上げペースの鈍化が妥当との姿勢が再確認された。12月会合では2018年4回目の利上げが決定されたが2019年の利上げ回数についての参加者予想中央値がそれまでの3回から2回に下方修正された。議事録においてFOMCメンバーは「いくらかのさらなる緩やかな利上げが適切」としつつも多くの参加者が追加利上げを「我慢」できると認識しているとされた。1月4日深夜のパウエル議長発言で米連銀の利上げ姿勢が緩んできた印象が高まったが今回の議事録要旨もこの流れに沿うものとしてドル売り要因となったようだ。
【米中通商協議】
北京で7日から開催されていた米中の次官級通商協議は当初2日間の予定を9日まで延長して続けられていた。協議終了後の関係者発言等から上手く進展したとの見方が強まっており、株式市場は強気反応を見せているが、ドル円は円安反応を見せていない。
中国国営紙の環球時報の編集長がSNS上で「米中双方が中国時間で10日午前に同時に声明を発表する見込み」と報じている。日本時間10時半には中国消費者物価、生産者物価の発表があり、その後に米中双方が声明を出すことになるので、10時半以降は相場全般が動きやすいかもしれない。
米国による対中制裁関税拡大は3か月間の猶予状況にある。今回の次官級協議を踏まえて次のステップとして閣僚級協議開催が示されれば前進であり、さらに米中首脳会談の可能性が高まれば貿易戦争泥沼化回避により金融市場全般が楽観を強める可能性がある。しかしまだ結果は出ておらず、これまでも次官級及び閣僚級の協議が開催されてきたが合意に到達してこなかったことも踏まえればリスクオン心理が一挙に湧き上がるようなきっかけになるという期待を抱くのは時期尚早ではないかと思う。
【60分足一目均衡表、サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月3日暴落時の安値を直近のサイクルボトムとして上昇期に入ったが、リバウンドも丸4日目に入ったため9日朝時点では1月8日午後高値を直近のサイクルトップと仮定し、新たな高値更新へ進まない内は3日午前安値を基準として9日の日中から10日午前にかけての間への下落を想定するとした。また10日午前を超えて続落の場合は7日昼過ぎの安値を直近のサイクルボトムと改めて14日にかけての間までボトム形成が延長される可能性を考えるとした。9日深夜からの下落によりまだ一段安余地ありとみる。108.75円超えからは強気転換注意とするが9日午後高値超えへ進めない内は引き続き一段安余地ありとし、10日午後へ続落の場合は7日安値を基準として10日午後から14日の日中にかけての間への下落を想定する。
8日高値109.08円を上抜く場合は新たな強気サイクル入りとして11日から15日にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では9日夜の下落で先行スパンから転落した。このため先行スパンを上抜き返せない内は遅行スパン悪化中の安値試し優先とみる。両スパン揃って好転するところからは8日高値を上抜いての一段高へ進みやすいとみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)108.75円を抵抗とし、上抜けない内は下落余地ありとみる。
(2)10日早朝安値107.96円割れからは107円前後試しを想定する。中国物価統計や米中声明後に下落反応の場合は106円台後半まで下値目処を引き下げる。また10日夜へ続落の場合は106円前後試しまでさらに下値目処を引き下げる。
(3)108.75円超えからは上昇再開の可能性が高まるとみて8日高値109.08円試しとし、高値更新からは新たな強気サイクル入りとして109.68円(10月4日から1月3日への下げ幅の半値戻し)、昨年8月21日安値109.77円等のある109円台中後半試しへ向かうとみる。(了)<9:55>
【当面の主な予定】
1/10(木)
米中双方が通商協議結果についての声明を発表予定
10:30 (中) 12月 生産者物価指数 前年同月比 (11月 2.7%、予想 1.6%)
10:30 (中) 12月 消費者物価指数 前年同月比 (11月 2.2%、予想 2.1%)
14:00 (日) 11月 景気先行指数(CI)速報値 (10月 99.6、予想 99.5)
21:30 (欧) 欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨
22:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 23.1万件、予想 22.5万件)
22:35 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁講演
26:00 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長講演
26:40 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁講演
27:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁講演
1/11(金)
06:45 (NZ) 11月 住宅建設許可件数 前月比 (10月 1.5%)
07:30 (米) クラリダFRB副議長講演
08:50 (日) 11月 経常収支・季調前 (10月 1兆3099億円、予想 5602億円)
08:50 (日) 11月 経常収支・季調済 (10月 1兆2113億円、予想 1兆1017億円)
08:50 (日) 11月 貿易収支(国際収支ベース) (10月 -3217億円、予想 -6143億円)
09:30 (豪) 11月 小売売上高 前月比 (10月 0.3%、予想 0.3%)
18:30 (英) 11月 貿易収支(物) (10月 -118.73億ポンド、予想 -114.00億ポンド)
18:30 (英) 11月 貿易収支<物、サービス) (10月 -33.00億ポンド、予想 -28.00億ポンド)
18:30 (英) 11月 鉱工業生産指数 前月比 (10月 -0.6%、予想 0.2%)
18:30 (英) 11月 鉱工業生産指数 前年同月比 (10月 -0.8%、予想 -0.7%)
18:30 (英) 11月 製造業生産指数 前月比 (10月 -0.9%、予想 0.4%)
22:30 (米) 12月 消費者物価指数 前月比 (11月 0.0%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 12月 消費者物価指数 前年同月比 (11月 2.2%、予想 1.9%)
22:30 (米) 12月 消費者物価コア指数 前月比 (11月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 12月 消費者物価コア指数 前年同月比 (11月 2.2%、予想 2.2%)
28:00 (米) 12月 財政収支 (11月 -2050億ドル)
オーダー/ポジション状況
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