来週の為替相場見通し『トランプトレード&円キャリーでドル高・円安トレンドが続く見通し』(11/16朝)

ドル円は9/16に記録した年初来安値139.58をボトムに切り返すと、今週末にかけて、約3カ月半ぶり高値となる156.75(7/23以来の高値圏)まで急伸しました。

来週の為替相場見通し『トランプトレード&円キャリーでドル高・円安トレンドが続く見通し』(11/16朝)

『トランプトレード&円キャリーでドル高・円安トレンドが続く見通し』

〇今週のドル円、週初の安値152.62から週末にかけ週間高値156.75(7/23以来の高値圏)まで上昇
〇日銀会合「主な意見」のハト派的内容、トランプトレードの本格スタート、FRBのタカ派姿勢等が背景
〇買い一巡後は、反動売り、財務相の円安牽制、週末ポジション調整等で週末は154円台に反落
〇ユーロドル、週初の1.07台前半から週後半にかけ一時1.05割れ水準まで下落、週末は1.05台で推移
〇トランプトレード本格化、欧州経済先行き不透明感、欧州圏政治不安等が重石に
〇ドル円、全ての主要テクニカルポイント上抜け、強い買いシグナルも成立、地合い極めて強い
〇トランプトレード本格化、次期政権の関税政策を嫌気したドル買い圧力等もドル円をサポート
〇引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):153.00ー157.00、(EURUSD):1.0375−1.0675

今週のレビュー(11/11−11/15)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初152.66で寄り付いた後、早々に週間安値152.62まで軟化しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)本邦9月貿易収支(結果3152億円赤字、予想662億円赤字)の市場予想を上回る赤字幅拡大や、(2)本邦9月経常収支(結果1兆7171億円黒字、予想3兆4323億円黒字)の市場予想を下回る結果、(3)日銀金融政策決定会合・主な意見の「この先の政策金利の引き上げは時間をかけて慎重に行う必要」「賃金と物価の好循環の持続性に対する自信が強まるまで、当面、政策金利は現状維持でよい」との慎重な見解、(4)円キャリートレードの再開期待、

(5)トランプトレードの本格スタート(共和党がホワイトハウスと上下両院を制すトリプルレッド成立の可能性が高まったことで、トランプ氏が掲げる政策が通り易くなるとの期待感→米金利上昇・米ドル買い)、(6)米10月NFIB中小企業楽観指数(結果93.7、予想92.0)の市場予想を上回る結果、(7)米10月消費者物価指数(結果+2.6%、予想+2.6%、前回+2.4%)の伸び率加速、(8)ダラス連銀ローガン総裁による「FRBはおそらく追加利下げが必要となるが慎重に進める必要性がある」「FRBが中立金利を大幅に超える利下げを行うとインフレが再燃する恐れがある」との慎重な発言、(9)米10月生産者物価指数(結果+2.4%、予想+2.3%)および、同コア指数(結果+3.1%、予想+3.0%)の市場予想を上回る結果、(10)米新規失業保険申請件数(結果21.7万件、予想22.0万件)の良好な結果、(11)パウエルFRB議長による「米経済は早急な利下げが必要とのシグナルは発していない」との慎重な発言、

(12)直近高値突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売りが支えとなり、週末にかけて、週間高値156.75(7/23以来の高値圏)まで上昇しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(13)急ピッチな上昇に対する反動売り(利食い売り)や、(14)加藤財務相による「為替市場の動向を極めて高い緊張感をもって注視」との円安牽制発言、(15)株式市場の冴えない動き(リスク回避の円買い圧力)、(16)週末前のポジション調整が重石となり、本稿執筆時点(日本時間11/16午前2時00分現在)では、154.60前後まで値を崩す動きとなっております。

尚、今週末に発表された米10月小売売上高(結果+0.4%、予想+0.3%)、米10月輸入物価指数(結果+0.8%、予想+0.3%)、米10月輸出物価指数(結果▲0.1%、予想▲1.7%)、米11月ニューヨーク連銀製造業景況指数(結果+31.2、予想±0.0)、米10月鉱工業生産(結果▲0.3%、予想▲0.4%)はいずれも市場予想を上回る結果となりましたが、ドル買いでの反応は限られました。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0712で寄り付いた後、早々に週間高値1.0727まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(1)トリプルレッド成立に伴うトランプトレードの本格スタート(米金利上昇・米ドル買い)や、(2)上記1を背景とした欧州経済の先行き不透明感(トランプ氏による関税政策が欧州経済にダメージを与えるとの警戒感→ドイツ連銀ナーゲル総裁は「トランプ次期大統領の関税はドイツ経済の縮小を招く恐れがある」「関税が発効されればドイツ経済は1%程度縮小するリスクあり」と発言)、(3)ギリシャ中銀ストゥルナラス総裁による「金利は来年9月ごろには2%近くに低下する可能性がある」とのハト派的な発言、(4)ドイツ11月ZEW景況感指数(結果+7.4、予想+13.2、前回+13.1)の市場予想を下回る結果、

(5)フィンランド中銀レーン総裁による「12月利下げの可能性は高く、さらなる利下げもあり得るだろう」とのハト派的な発言、(6)欧州圏で広がる政治不安(ドイツやフランスを巡る政局不透明感)、(7)デギンドスECB副総裁による「インフレはかなり低下してきた」「インフレが目標に向かって収束すれば金融政策もそれに応じて対応するだろう」とのハト派的な発言、(8)ユーロ圏9月鉱工業生産(結果▲2.8%、予想▲2.0%)の市場予想を下回る結果が重石となり、週後半にかけて、週間安値1.0496(昨年10/13以来の安値圏)まで急落しました。週末にかけて反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間11/16午前2時00分現在)では、1.0550前後で推移しております。

来週の見通し(11/18−11/22)

<ドル円相場>
ドル円は9/16に記録した年初来安値139.58をボトムに切り返すと、今週末にかけて、約3カ月半ぶり高値となる156.75(7/23以来の高値圏)まで急伸しました。日足ローソク足が全ての主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲上限、ボリンジャーミッドバンド)の上側で推移していることや、強い買いシグナルを示唆する「21日線と90日線のゴールデンクロス」「21日線と200日線のゴールデンクロス」「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)トリプルレッド実現に伴うトランプトレードの本格化(米インフレ懸念再燃→米金利上昇・米ドル買い)や、(2)トランプ次期政権による関税引き上げ政策を嫌気した対主要通貨でのドル買い圧力(ユーロや人民元、その他新興国通貨など、関税を引き上げられる可能性の高い国々の通貨が対ドルで売られる展開)、(3)日米金利差に着目した円キャリートレードの再開期待(米商品先物取引委員会が11/8に公表した11/5時点のIMM通貨先物・非商業部門取組状況を見ると、円ショートが前週の2.4万枚から4.4万枚へ倍増するなど、8月以来の高水準へと急拡大)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。

政府・日銀による「為替介入観測」や「12月利上げ観測」がドル円の上値を抑えるカードとして警戒されているものの、いずれのケースも日本株の急落を招くリスクを孕んでいるため(安易に手を出すことが難しいため)、余程強いドル買い・円売り(本年7/3に記録した高値161.99を超えてくるような強烈なドル買い・円売り)が出てこない限り、「為替介入」も「追加利上げ」も見送られる公算が大きいと判断できます。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は日米共に経済イベントに乏しいため、日米当局者発言(植田日銀総裁、シカゴ連銀グールズビー総裁、クリーブランド連銀ハマック総裁など)や、トランプ政権人事を巡るヘッドラインに揺さぶられる神経質な1週間となりそうです。

来週の予想レンジ(USDJPY):153.00ー157.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は9/25に記録した年初来高値1.1214をトップに反落に転じると、今週後半にかけて、約1年1カ月ぶり安値となる1.0496(昨年10/13以来の安値圏)まで急落しました。日足ローソク足が全ての主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲下限、ボリンジャーミッドバンド)の下側で推移していることや、強い売りシグナルを示唆する「21日線と90日線のデッドクロス」「21日線と200日線のデッドクロス」「一目均衡表三役逆転」「弱気のバンドウォーク」「ダウ理論の下落トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて弱い」と判断できます。

向こう数日以内には、EMA(指数平滑移動平均線)ベースでの「弱気のパーフェクトオーダー」点灯も見込まれているため、地合いの更なる悪化に警戒が必要と考えられます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(トランプ政権による関税政策が欧州経済に悪影響を及ぼすとの警戒感)や、(2)欧州政治の先行き不透明感(フランスやドイツの政局不透明感)、(3)ECBによる根強い利下げ観測(来月予定されているECB理事会で50bpの大幅利下げに踏み切るとの警戒感)、(4)トランプトレードの本格スタート(トリプルレッド成立を受けて、トランプ次期大統領による政策が通り易くなるとの警戒感→米国におけるインフレリスク再燃→米金利上昇・米ドル買い)、(5)ウクライナを巡る地政学的リスク(トランプ次期大統領によるウクライナ政策に対する警戒感)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

来週予定されているユーロ圏PMI速報値が市場予想を下回る場合や、ユーロ圏7−9月期協約賃金が冴えない結果となる場合、欧州当局者(ラガルドECB総裁、デギンドスECB副総裁、レーンECB専務理事、ドイツ連銀ナーゲル総裁、フランス中銀ビルロワドガロー総裁、オランダ中銀クノット総裁など)よりハト派的な発言が相次ぐ場合には、ユーロドルにもう一段強い下押し圧力が加わるシナリオが想定されるため、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(昨年10/3に記録した安値1.0447を試すシナリオを想定)。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0375−1.0675

注:ポイント要約は編集部

『トランプトレード&円キャリーでドル高・円安トレンドが続く見通し』

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