日銀追加利上げ観測報道で急落、円高イベント通過で切り返せるか試す
〇ドル円、7/31深夜にNHK等が「日銀0.25%の追加利上げ検討」と報じ円高反応招く
〇7/25夕安値151.93からの反騰続け、7/30午後に155.21まで戻してから、7/31早朝152.41まで反落
〇利上げによる景気への悪影響踏まえ、慎重な姿勢を維持する可能性も
〇利上げ見送りで今後も慎重姿勢なら、円高イベント通過感による買い戻し勢い付きドル円急伸か
〇FOMCが9月利下げ姿勢示し、日銀会合通過し円高継続ならドル円はさらに一段安へ進むと注意
〇米長期債利回り、9月利下げ開始期待が優勢となる中で総じて低下、米株価指数はまちまち
〇154円以下での推移中は一段安余地あり、7/25安値割れからは150.00前後への下落想定
〇154円超えからさらに続伸する場合は上昇期入りとみて7/30午後高値155.21試し
【概況】
ドル円は7月25日夕刻に151.93円へ下落して7月3日の年初来高値161.94円以降の最安値としてこの間の下げ幅が10円を超えたところから7月31日の日銀会合を控えた持ち高調整で買い戻し優勢となり、30日午後には155.21円まで高値を伸ばしていたが、30日深夜に時事通信やNHKが日銀の0.25%利上げ検討を報じたことをきっかけに直前の154円台中盤から下落に転じて31日早朝には152.41円まで失速した。
神田財務官の後任となった三村財務官が「円安は輸入物価を押し上げて国民生活に影響を与えるなどデメリットの方が大きい」、為替介入について「日本経済に悪影響を与え得る投機的な動きを含め相場がファンダメンタルズから大きく乖離している時に必要な手段」と述べたことも円高を助長した。
7月31日に発表された米コンファレンス・ボードによる7月消費者信頼感指数は100.3となり6月の97.8(速報の100.4から下方修正)から改善して市場予想の99.7を上回り、米労働省による6月雇用動態調査(JOLTS)求人件数は前月比4万6000件減の818万4000件となり市場予想の800万件を上回ったが、8月1日早朝のFOMCを控えているために市場の反応は鈍かった。
【日銀会合、追加利上げの有無が焦点】
日銀は7月31日昼頃に金融政策決定会合の結果を公表、午後に植田総裁会見を開く。31日深夜にはNHKや時事通信等が0.25%の追加利上げの検討に入ったと報じたことで円高反応を招いたが、利上げによる景気への悪影響を踏まえて慎重な姿勢を維持する可能性もある。
6月の前回会合では長期金利上昇抑制のための国債買い入れの減額を決定して具体的な計画は今回の会合で示すとされており、現在の月間6兆円程度とされている購入額は段階的に減額されて2025年度末までに3兆円程度とするのではないかとみられている。
政府・与党要人による円安けん制や日銀への追加利上げ要請的発言が相次いだことで今年3月以来となる利上げ観測が強まっているため、利上げを決定して今後も追加利上げの可能性を強く示す場合はドル円の急落反応となることも警戒されるが、逆に利上げを見送り今後も慎重姿勢とされる場合は当面の円高イベント通過感による買い戻しが勢い付いて急伸する可能性もあると思われる。15時半からの植田総裁会見が終了するまでは波乱含みと注意したい。
【FOMCでは9月利下げ姿勢を示せるか】
8月1日3時に米FOMCの金融政策が発表されその後にパウエル議長の会見がある。
市場では最近のインフレ鈍化傾向を踏まえて9月を含めて年内2回の利下げを想定して3回の利下げもあり得るとみており、9月利下げについてはほぼ衆目が一致している。FRB高官やパウエル議長等は数か月単位でインフレ鈍化傾向が示されることで利下げ判断の確信を得られるとの姿勢を繰り返し表明してきたが、労働市場の悪化についても利下げ判断材料としてきた。
今回の会合で利下げ判断にはまだ暫くかかるとして慎重姿勢を示す場合はドル高反応を招く可能性もあるだろうが、利下げ判断へ近づいているとの認識を示せばドル安反応となり、日銀会合を通過して円高が継続している場合にはドル円がさらに一段安へ進む可能性もあると注意したい。
【米10年債利回りは4月以降の最低へ低下、米株価指数はまちまち】
7月31日の米長期債利回りはFOMCを控えて9月利下げ開始期待が優勢となる中で総じて低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.04%低下の4.14%となり4月25日に付けた年初来ピークである4.74%以降の最低となった。30年債利回りも前日比0.03%低下の4.40%となり7月24日に付けた4.55%以降の最低とし、2年債利回りは0.04%低下の4.36%となり7月25日の4.34%に迫った。
一方で米国株価指数はまちまちの動きとなり、NYダウは前日比203.40ドル高と上昇したがナスダック総合指数はIT大手の決算を控えて売り先行となり前日比222.78ドル安と下落し、S&P500も27.10ポイント安と下落した。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は7月25日夕安値151.93円からの反騰を続けて30日午後に155.21円まで戻してから反落した。日銀会合やFOMCを通過しながら乱高下する可能性も警戒されるため、日銀会合後に154円を超えて続伸する場合は直前安値を起点とした上昇期入りと仮定し、明日早朝のFOMC通過後も続伸する場合は8月2日から6日にかけての間への上昇を想定する。ただし、日銀会合通過後に反騰してもFOMC通過後に一段安する場合は新たな下落期入りとして8月5日から7日にかけての間への下落を想定する。
日銀会合に強気転換できずに続落してFOMC通過後も下落継続の場合は8月2日から6日にかけての間へ安値試しが続きやすいとみる。
60分足の一目均衡表では7月30日深夜からの急落で遅行スパンが悪化して先行スパンから転落した。日米金融政策会合を挟んで乱高下する可能性もあると注意するが、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパンを上抜き返すところからは上昇期入りとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は7月30日午後に70ポイント台後半へ上昇してから31日早朝に30ポイント割れへ低下したため、50ポイント以下での推移中は10ポイント台への一段安余地ありとし、50ポイント超えからは反騰入りとみて60ポイント台への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月25日夕安値151.93円を下値支持線、154.00円を上値抵抗線とするが乱高下に注意したい。
(2)154円以下での推移中は一段安余地ありとし、7月25日安値割れからは150.00円前後への下落を想定する。150円前後は買い戻されやすいとみるが、日銀会合とFOMCのいずれも下落反応で通過する場合は149円台へ下値目途を引き下げる。
(3)154円前後へ反発するところではいったん売られやすいとみるが、154円超えからさらに続伸する場合は上昇期入りとみて7月30日午後高値155.21円試しとし、日銀会合とFOMCを通過して上昇する場合は156円台へ上値目途を引き上げる。
【当面の予定】
7/31(水)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 0-0.1%、予想 0-0.1%)
未 定 (日) 日銀展望レポート
10:30 (中) 7月 国家統計局製造業PMI (6月 49.5、予想 49.3)
10:30 (中) 7月 国家統計局非造業PMI (6月 50.5、予想 50.2)
10:30 (豪) 6月 小売売上高 前月比 (5月 0.6%、予想 0.2%)
10:30 (豪) 6月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (5月 4.0%、予想 3.8%)
10:30 (豪) 4-6月期 CPI(消費者物価指数) 前期比 (1-3月 1.0%、予想 1.0%)
10:30 (豪) 4-6月期 CPI(消費者物価指数) 前年同期比 (1-3月 3.6%、予想 3.8%)
14:00 (日) 6月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (5月 -5.3%、予想 -2.0%)
14:00 (日) 7月 消費者態度指数・一般世帯 (6月 36.4、予想 36.6)
15:30 (日) 植田日銀総裁、記者会見
16:55 (独) 7月 失業率 (6月 6.0%、予想 6.0%)
18:00 (欧) 7月 HICP(調和消費者物価指数)速報値 前年同月比 (6月 2.5%、予想 2.5%)
18:00 (欧) 7月 コアHICP(食品エネルギー除く)速報値 前年同月比 (6月 2.9%、予想 2.8%)
19:00 (日) 外国為替平衡操作実施状況(介入実績 6月27日-7月29日)
21:15 (米) 7月 ADP非農業部門民間就業者数 前月比 (6月 15.0万人、予想 15.0万人)
21:30 (米) 4-6月期 雇用コスト指数 前期比 (1-3月 1.2%、予想 1.0%)
22:45 (米) 7月 シカゴ購買部協会景況指数 (6月 47.4、予想 45.0)
23:00 (米) 6月 NAR住宅販売保留指数 前月比 (5月 -2.1%、予想 1.5%)
23:00 (米) 6月 NAR住宅販売保留指数 前年同月比 (5月 -6.6%、予想 -5.8%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC) 政策金利 (現行 5.25-5.50%、予想 5.25-5.50%)
27:30 (米) パウエル米FRB議長、記者会見
8/1(木)
休場 スイス
10:30 (豪) 4-6月期 輸入物価指数 前期比 (1-3月 -1.8%、予想 -0.7%)
10:30 (豪) 6月 貿易収支 (5月 57.73億豪ドル、予想 50.00億豪ドル)
10:45 (中) 7月 財新製造業PMI (6月 51.8、予想 51.5)
16:55 (独) 7月 HOCB製造業PMI改定値 (速報 42.6、予想 42.6)
17:00 (欧) 7月 HOCB製造業PMI改定値 (速報 45.6 予想 45.6)
17:30 (英) 7月 S&PG製造業PMI改定値 (速報 51.8、予想 51.8)
18:00 (欧) 6月 失業率 (5月 6.4%、予想 6.4%)
20:00 (英) 英中銀 政策金利 (現行 5.25%、予想 5.00%)
20:30 (英) ベイリー英中銀総裁、会見
21:30 (米) 4-6月期 非農業部門労働生産性速報値 前期比 (1-3月 0.2%、予想 1.8%)
21:30 (米) 4-6月期 単位労働コスト速報値 前期比年率 (1-3月 4.0%、予想 1.7%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.5万件、予想 23.6万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 185.1万人、予想 185.6万人)
22:45 (米) 7月 S&PG製造業PMI改定値 (速報 49.5、予想 49.6)
23:00 (米) 7月 ISM製造業景況指数 (6月 48.5、予想 48.8)
23:00 (米) 6月 建設支出 前月比 (5月 -0.1%、予想 0.2%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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