ドル円見通し FOMCと日銀会合通過で上昇基調継続、昨年10月高値試しへ(週報9月第四週)

ドル円の上値目途は昨年10月21日高値151.94円まで切り上がった状況にあると思われる。今後は円安けん制、市場介入への警戒感を持ちつつも高値トライを続けると考える。

ドル円見通し FOMCと日銀会合通過で上昇基調継続、昨年10月高値試しへ(週報9月第四週)

FOMCと日銀会合通過で上昇基調継続、昨年10月高値試しへ

〇先週のドル円、FOMCと日銀会合を挟んで乱高下の後、148円台前半の直近高値圏で越週
〇FRBの追加利上げ公算高まり、日銀はマイナス金利解除等は急がず必要なら追加緩和実施も
〇今後は円安けん制、市場介入への警戒感を持ちつつも高値トライを続けると考える
〇148円以上で推移するうちは上昇継続とし、148.45円超えからは149円台を目指す上昇を想定
〇147.70円割れからはいったん下げに入るとみて147円台前半への下落を想定する

【概況】

ドル円は米FOMCと日銀金融政策決定会合を挟んで乱高下したが、9月21日深夜安値で147.31円まで反落したところから日銀金融緩和継続決定により22日夕には148.41円まで戻して9月21日午前のFOMC後に上昇した局面で付けた年初来高値148.45円に迫り、22日深夜に148円を若干割り込んだところから23日早朝に再び148.41円へ持ち直して高値更新を伺う位置取りとした。
9月21日未明のFOMCでは年内あと1回の利上げが必要とし、利上げ状態の長期化を示唆したため、米長期債利回りが上昇して為替市場はドル全面高となった。ドル円は9月20日夕刻に148.16円まで上昇したところからのポジション整理で147.46円まで下げた後、FOMC通過の急伸で21日午前高値148.45円へ上昇した。
松野官房長官や岸田首相による円安けん制やポンド円の急落等から日銀会合前の調整安に入って21日深夜に147.31円まで下げたが、日銀による金融緩和継続を確認して21日夜の下げ幅をほぼ解消したことで、1月16日安値を起点とした長期的な上昇基調を継続している印象を強めた。

【日銀、マイナス金利解除等は急がず必要なら追加緩和も】

日銀は9月22日の金融政策決定会合で、2%の物価目標が持続的・安定的に実現できると見通せる状況ではないとし、マイナス金利や長短金利操作による金融緩和政策の継続を決定した。マイナス金利は据え置きとし、長短金利操作における長期金利の変動許容上限については7月会合で0.5%から1.0%へ事実上の引上げを行った状況のままとした。
植田総裁は会合後の会見において、「物価目標の実現が見通せる状況になれば長短金利操作の撤廃やマイナス金利の修正を検討する」としたが、「現時点では時期や具体的な対応を決め打ちできない」とし、具体的な金融政策正常化の手順は「言える段階ではない」としてマイナス金利解除等の条件がそろわずに議論に入る状況ではないとの認識を示した。

8月の全国消費者物価コア指数が前年同月比3.1%上昇となり、12か月連続で3%以上の伸び率を記録していることについても、「基調的なインフレ率については2%に物足りない」とした。9月9日付けのインタビューが一部メディアに掲載された件については、「年内は(金融政策正常化への修正へ進む)可能性がないと総裁の立場で言うと、強い縛りを掛けてしまうので言わない方が望ましいとの趣旨だった」とし、円安については「政府とも緊密な連絡を取りながら注視していきたい」と述べている。
市場は総裁インタビューにおけるマイナス金利解除等への言及を円安けん制のための口先介入の一つと受け止めており、総裁発言をうけた9月11日の急落はすでに解消している。

【FRBの追加利上げ公算は高まる】

FOMC後のFRB高官や地区連銀総裁の発言を見ると、年内あと1回の追加利上げの可能性が高い印象となっている。
ボウマンFRB理事は22日に「インフレは依然として高過ぎる」、「目標の2%へ速やかに低下させるには追加利上げが必要となる公算が大きいと予想している」、「現行の政策金利ではインフレ低下の進展が遅い」と述べている。
ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁も「大幅利上げにより個人消費支出に思い切りブレーキをかけたはずなのだがブレーキがかかっていない」として引き締めの継続姿勢を示した。

サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は2会合連続の金利据え置きについては「利上げの到達点が近づいているため」としたが、「追加利上げが必要なのかについては指標次第」、インフレ抑制と経済のソフトランディングについて「勝利宣言をする段階にはまだいない」とした。
ボストン連銀のコリンズ総裁は「FOMCにおける年内あと1回の利上げと2024年の緩やかな利下げペース」を「完全に支持する」とし、「金利がピークに達したことを必ずしも意味するものではない」「インフレが持続的に2%の目標へ向かうと確信するのは時期尚早」と述べている。

【米長期債利回りは連騰一服で低下、ダウは4日続落】

9月22日の米長期債利回りは総じて低下した。長期金利指標の10年債利回りは9月14日から21日まで5連騰し、22日も4.51%をつけて2020年以降の高値を更新、2007年11月以来の高水準としたが、連騰に対する修正で前日比0.06%低下の4.44%で終了した。
30年債利回りも9月14日から5連騰し、22日は一時4.59%をつけたがその後の下落で前日比0.05%低下の4.53%で終了した。
利上げに敏感な2年債利回りは9月14日から4連騰し、21日は5.20%をつけて2006値7月以来17年ぶり高水準に達したところから反落して前日比0.03%低下の5.15%とし、22日は0.04%低下の5.11%へと続落して終了した。
金利先物市場では依然として11月と12月のFOMCにおける追加利上げの確率は5割以下としているが、長期債利回りはまだピークに達していないとの見方も優勢のようだ。
一方、NYダウは22日に前日比106.58ドル安となり4営業日続落、ナスダック総合指数も12.17ポイント安で3営業日続落した。利上げ状態の長期化と利下げ再開時期の後ずれによる景気への影響を懸念しているようだ。

【日足 一目均衡表・サイクル分析】

【日足 一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は1月16日安値127.22円を起点として3月8日高値137.91円までを一段目の上昇とし、3月24日安値129.63円から6月30日高値145.06円までを二段目の上昇とし、7月14日安値137.24円を起点として三段目の上昇に入っている。すでに2か月を経過して7月14日安値からの上昇幅は11.21円まで拡大して一段目の上昇幅10.70円を超えているが、二段目の上昇幅は3か月で15.43円だったことと比較すればまだ伸びしろがあり、昨年9月22日の市場介入時高値145.89円を超えているために上値目途は昨年10月21日高値151.94円まで切り上がった状況にあると思われる。今後は円安けん制、市場介入への警戒感を持ちつつも高値トライを続けると考える。

一目均衡表では26日基準線が下値支持線となっており、遅行スパンの好転と先行スパンを上回る状況も続いているため、26日基準線を上回るうちは高値試し優先とし、26日基準線を試す下落時は買い拾われやすいとみる。弱気転換は26日基準線を終値ベースで割り込んで翌日以降へ続落し、遅行スパンが悪化してくるところからとする。

相対力指数は60ポイントを挟んだ持ち合い型で推移しており、相場の高値更新に際して指数のピークが切り上がっていないために抵抗感も見られるが、50ポイント以上でしっかりするうちは一段高余地ありとし、70ポイント超えからは上昇が加速する可能性があるとみる。弱気転換は50ポイント割れからとする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、147.70円を下値支持線、9月21日高値148.45円を上値抵抗線とする。
(2)148円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上昇継続とし、148.45円超えからは149円台を目指す上昇を想定する。149円手前は円安けん制のトーンが強まって反落しやすいとみるが、突っ込んだところは買い拾われて次の上昇期に入るのではないかと考える。
(3)147.70円割れからはいったん下げに入るとみて147円台前半への下落を想定する。9月19日以降は高値を切り上げつつ安値も切り下がるレンジ拡張型の逆三角持ち合いの様相も見られるので、21日深夜安値147.31円を割り込む可能性も考えられるが、147円台序盤はバーゲンハント買いの場と考え、直前の下げ幅の半値を解消するところからは上昇再開と考える。

【当面の予定】

9/25(月)
休場 南ア
14:30 (日) 植田日銀総裁、大阪経済4団体共催懇談会出席
15:35 (日) 内田日銀副総裁、全国証券大会挨拶
16:30 (日) 植田日銀総裁、記者会見
17:00 (独) 9月 IFO企業景況感指数 (8月 85.7、予想 85.2)

9/26(火)
07:00 (日) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、質疑応答
08:50 (日) 8月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (7月 1.7%、予想 1.8%)
14:00 (日) 日銀、基調的なインフレ率を捕捉するための指標
16:00 (欧) レーンECB理事、講演
22:00 (米) 7月 FHFA住宅価格指数 前月比 (6月 0.3%、予想 0.4%)
22:00 (米) 7月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (6月 -1.2%、予想 -0.1%)
23:00 (米) 8月 新築住宅販売件数・年率換算 (7月 71.4万件、予想 70.0万件)
23:00 (米) 8月 新築住宅販売件数 前月比 (7月 4.4%、予想 -2.0%)
23:00 (米) 9月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (8月 106.1、予想 105.5)
23:00 (米) 9月 リッチモンド連銀製造業指数 (8月 -7、予想 -6)
26:30 (米) ボウマンFRB理事、イベント挨拶

9/27(水)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
10:30 (豪) 8月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (7月 4.9%、予想 5.2%)
14:00 (日) 7月 景気一致指数CI・改定値 (速報 114.5)
14:00 (日) 7月 景気先行指数CI・改定値 (速報 107.6)
15:00 (独) 10月 GFK消費者信頼感 (9月 -25.5、予想 -26.0)
21:30 (米) 8月 耐久財受注 前月比 (7月 -5.2%、予想 -0.5%)
21:30 (米) 8月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (7月 0.5%、予想 0.2%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
24:30 (米) 財務省2年物変動利付債入札
26:00 (米) 財務省5年債入札

9/28(木)
09:00 (NZ) 9月 ANZ企業信頼感 (8月 -3.7)
10:30 (豪) 8月 小売売上高 前月比 (7月 0.5%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 9月 消費者信頼感・確定値 (8月 -17.8)
18:00 (欧) 9月 経済信頼感 (8月 93.3、予想 92.4)
21:00 (独) 9月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前月比 (8月 0.3%、予想 0.3%)
21:00 (独) 9月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (8月 6.1%、予想 4.6%)
21:30 (米) 4-6月期 GDP・確定値 前期比年率 (改定値 2.1%、予想 2.3%)
21:30 (米) 4-6月期 GDP個人消費・確定値 前期比年率 (改定値 1.7%、予想 1.7%)
21:30 (米) 4-6月期 コアPCE・確定値 前期比年率 (改定値 3.7%、予想 3.7%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.1万件、予想 21.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 166.2万人、予想 167.5万人)

22:00 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、講演
23:00 (米) 8月 住宅販売保留指数 前月比 (7月 0.9%、予想 0.2%)
23:00 (米) 8月 住宅販売保留指数 前年同月比 (7月 -13.8%)
26:00 (米) クックFRB理事、講演
29:00 (米) パウエルFRB議長、タウンホール会議主宰

9/29(金)
休場 中国
08:00 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
08:30 (日) 9月 東京CPI(消費者物価指数)・生鮮食料品除く 前年同月比 (8月 2.8%、予想 2.6%)
08:30 (日) 8月 失業率 (7月 2.7%、予想 2.6%)
08:50 (日) 8月 小売業販売額 前年同月比 (7月 6.8%、予想 6.4%)
08:50 (日) 8月 鉱工業生産・速報値 前月比 (7月 -1.8%、予想 -0.8%)
08:50 (日) 8月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (7月 -2.3%、予想 -4.8%)
14:00 (日) 9月 消費者態度指数・一般世帯 (8月 36.2、予想 36.2)
14:00 (日) 8月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (7月 -6.7%、予想 -8.8%)

15:00 (英) 4-6月期 GDP・改定値 前期比 (速報 0.2%、予想 0.2%)
15:00 (英) 4-6月期 GDP・改定値 前年同期比 (速報 0.4%、予想 0.4%)
15:00 (英) 4-6月期 経常収支 (1-3月 -108億ポンド、予想 -143億ポンド)
15:00 (独) 8月 輸入物価指数 前月比 (7月 -0.6、予想 0.6%)
15:00 (独) 8月 輸入物価指数 前年同月比 (7月 -13.2%、予想 -16.2%)
15:00 (独) 8月 小売売上高 前月比 (7月 -0.8%、予想 0.5%)
15:00 (独) 8月 小売売上高 前年同月比 (7月 -2.4%、予想 -0.7%)
16:55 (独) 9月 失業者数 前月比 (8月 1.80万人、予想 1.50万人)
16:55 (独) 9月 失業率 (8月 5.7%、予想 5.7%)
18:00 (欧) 9月 HICP(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (8月 5.2%、予想 4.5%)
18:00 (欧) 9月 コアHICP・速報値 前年同月比 (8月 5.3%、予想 4.8%)

21:30 (米) 8月 卸売在庫 前月比 (7月 -0.1%、予想 -0.2%)
21:30 (米) 8月 個人所得 前月比 (7月 0.2%、予想 0.4%)
21:30 (米) 8月 PCE(個人消費支出) 前月比 (7月 0.8%、予想 0.4%)
21:30 (米) 8月 PCEデフレーター 前年同月比 (7月 3.3%、予想 3.5%)
21:30 (米) 8月 PCEコア・デフレーター 前月比 (7月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (7月 4.2%、予想 3.9%)
22:45 (米) 9月 シカゴ購買部協会景況指数 (8月 48.7、予想 47.1)
23:00 (米) 9月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 67.7、予想 67.7)
25:45 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演


注:ポイント要約は編集部

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