ドル円、乱高下を経て138円絡みへ再び下落。パウエル議長によるハト派発言が重石(12/1朝)

月末30日(水)のドル円相場は乱高下を経て急落。

ドル円、乱高下を経て138円絡みへ再び下落。パウエル議長によるハト派発言が重石(12/1朝)

ドル円、乱高下を経て138円絡みへ再び下落。パウエル議長によるハト派発言が重石

〇ドル円、米国時間に139.90まで上昇するも、米国時間午後にかけて、安値137.96まで急落
〇パウエルFRB議長「利上げペースを緩やかにすることは理にかなっている」等ハト派発言
〇米3Q実質GDP改定値は改善、ADP雇用統計は不冴え、ベージュブックはインフレ減速との見解
〇ユーロドル1.0292-1.0416レンジで乱高下、1.04台前半での推移
〇ドル円、140円台の重さ確認、主要テクニカルポイント下回り、売りシグナルも点灯中、地合い弱い
〇ファンダメンタルズもパウエル議長ハト派発言に、市場は米利上げペース鈍化を織り込む動き
〇ドル売り・円買いトレンドの継続メインシナリオとして予想

海外時間のレビュー

月末30日(水)のドル円相場は乱高下を経て急落。(1)輸出企業による月末実需のドル売り圧力や、(2)日経平均株価の軟調推移(リスク回避の円買い圧力)、(3)短期筋のロスカットが重石となり、アジア時間午後にかけて、一時138.33まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(4)セントルイス連銀ブラード総裁による「予測に基づけば、FF金利誘導目標を少なくとも4.9%まで引き上げる必要性がありそうだ」との前日のタカ派的な発言が改めて材料視されたこと(パウエルFRB議長もブラード氏同様、タカ派的なスタンスを示すのではないかとの思惑浮上)や、(5)上記4を背景とした米長期金利の急上昇(米10年債利回りは一時3.79%へ急上昇)、(6)米7ー9月期実質GDP改定値(結果+2.9%、予想+2.7%、※前期比年率)の市場予想を上回る結果、(7)原油価格上昇に伴う円売り再開(貿易赤字の縮小期待後退→構造的な円売り再開)が支援材料となり、米国時間にかけて、高値139.90まで急伸しました。

もっとも、心理的節目140.00をバックに伸び悩むと、(8)パウエルFRB議長による「利上げペースを緩やかにすることは理にかなっており、その時期は、早ければ12月FOMCで訪れるかも知れない」とのハト派的な発言や、(9)ベージュブックにおける「物価上昇ペースは全体的にみて減速した」との見解発表、(10)上記を背景とした米長期金利の急低下(米10年債利回りは3.79%から3.69%へ急低下)が重石となり、米国時間午後にかけて、安値137.96まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間12/1午前5時00分現在)では、137.99前後で推移しております。尚、昨日発表された米11月ADP雇用統計(結果+12.7万人、予想+20.0万人)は市場予想を下回る冴えない結果となりましたが、市場の反応は限定的となりました。

月末30日(水)のユーロドル相場は乱高下を経て急上昇。(1)中国広州市による新型コロナウイルスの感染予防ルールの緩和措置発表(市場心理改善→ユーロ円上昇→ユーロドル連れ高)や、(2)欧州株の堅調推移が支援材料となり、米国時間朝方にかけて、一時1.0395まで上昇しました。しかし、心理的節目1.0400をバックに伸び悩むと、(3)米7ー9月期実質GDP改定値(結果+2.9%、予想+2.7%、※前期比年率)の市場予想を上回る結果や、(4)米長期金利の急上昇、(5)ユーロ圏11月消費者物価指数(結果▲0.1%、予想+0.1%、※前月比)の市場予想を下回る結果、(6)月末ロンドンフィキシングにかけてのドル買い圧力が重石となり、日本時間午前1時過ぎに、安値1.0292まで急落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(7)パウエルFRB議長によるハト派的な発言や、(8)米長期金利の急低下が支援材料となり、米国時間午後にかけて、高値1.0416まで急伸する荒々しい値動きとなりました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間12/1午前5時00分現在)では、1.0412前後で推移しております。

本日の見通し

ドル円は11/28に記録した約3ヵ月ぶり安値137.51をボトムに切り返すと、昨日は一時139.90(11/23以来、約1週間ぶり高値圏)まで上値を伸ばしましたが、今週のメインイベントとして注目されていたパウエルFRB議長講演の予想以上にハト派的な結果を受けて、結局137.96まで値を崩す結果となっております。心理的節目140円に到達できなかったこと(上値の重さを再確認)や、ローソク足が主要テクニカルポイントを軒並み下回っていること(一目均衡表転換線がレジスタンスとして機能)、強い売りシグナルを示唆する三役逆転が継続していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは極めて弱いと判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる利上げペース鈍化期待(パウエルFRB議長のハト派的な発言を受けて、市場は米利上げペース鈍化を織り込む動きに→CMEが提供するFedWatchツールによると、次回12月FOMCでの50bp利上げ確率が前日の66.3%から77.0%に上昇した他、次々回2月FOMCでの25bp利上げ確率も前日の33.1%から41.5%へ急上昇。25bpずつの利上げ幅縮小を織り込む動き)や、(2)上記1を背景とした米長期金利の急低下(対主要通貨でのドル売り圧力)、(3)日銀による金融緩和の脱却期待(市場参加者は来年4月以降のポスト黒田体制下での金融緩和脱却を織り込む動き)、(4)上記1、2、3を背景とした日米名目金利差縮小期待(円キャリートレード逆流への警戒感)など、ドル円相場の下落を連想させる材料が増えつつあります(中国政府によるコロナ規制緩和期待と米利上げペース鈍化期待の組み合わせで株式市場が堅調さを取り戻していることも、リスク選好のドル売りを通じてドル円に下押し圧力)。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル売り・円買いトレンドの継続メインシナリオとして予想いたします(まずは11/28に記録した直近安値137.51を試すシナリオを想定。同水準を下抜けられれば、8/23安値135.51や、200日移動平均線が位置する134.30が射程圏内に)。尚、本日は米経済指標(米11月チャレンジャーレイオフ調査や、米10月個人所得・個人支出、米10月PCEデフレータ、米新規失業保険申請件数、米11月製造業PMI確報値、米11月ISM製造業景況指数、米10月建設支出など)に加えて、米当局者発言(ダラス連銀ローガン総裁発言、ボウマンFRB理事講演、バーFRB副議長講演など)も複数予定されているため、本日同様、米国時間帯のボラティリティ拡大に注意が必要でしょう(乱高下しつつも結果的にドル売り・円買いが強まるシナリオを想定)。

本日の予想レンジ:137.00ー139.00

注:ポイント要約は編集部

ドル円、乱高下を経て138円絡みへ再び下落。パウエル議長によるハト派発言が重石

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