ドル円見通し 115円到達は時期尚早としての仕切り直し(週報10月第4週)

10月22日の米10年債利回りは前日比で0.07%低下の1.63%まで下げて週を終えた。

ドル円見通し 115円到達は時期尚早としての仕切り直し(週報10月第4週)

ドル円見通し 115円到達は時期尚早としての仕切り直し

〇ドル円、10/20午前に114.69の高値をつけた後は伸び悩み、高値警戒感、米長期金利の低下等が要因
〇チャート上は連日の陰線で、上昇一巡の可能性も
〇米10年債利回りは一旦1.70%まで上げ、1.63%に反落して越週、調整的な反落か
〇パウエル議長、テーパリングを支持しつつも、利上げは時期尚早との見解
〇米長期債利回り上昇基調が続くことはドル円の上昇要因、115円台到達を目指す可能性も
〇114円以下での推移では一段安を警戒、113円割れの場合112円台中盤試し
〇114.20を超える場合は調整終了、114.69を試すが、達成後は調整安、115円試しと可能性分かれる

【概況】

ドル円は10月20日午前高値で114.69円を付けて2018年10月4日高値114.54円を上抜いたが、その後は伸びずに114円を割り込み、21日夜の113.63円から22日午前高値で114.20円まで戻したものの114円台を維持できずに23日未明には113.39円まで安値を切り下げた。
米長期債利回り上昇による円安効果と共にユーロやポンド、豪ドル等の上昇が続いたことによるクロス円全般の上昇が円安を助長したことで10月序盤からドル円の上昇は勢い付いてきたが、114円台中盤まで上昇したことによる高値警戒感で上値が重くなったところで10月22日は米長期債利回りが低下したこと、ユーロ等も上昇一服で反落したことが重なったために週後半へ調整安となった印象だ。

【日足の連続陰線】

ドル円は10月20日に高値を切り上げたが21日から22日へと連続陰線で下落した。20日についてはベンダーによっては上下のヒゲが目立つ小陽線もあるが、20日から3日連続陰線=三羽烏を示すベンダーもある。三羽烏による下落は7月2日高値からの下落当初や3月31日高値からの下落当初にもみられるため、今回の下落もそれら高値からの下落時に近い展開となる可能性も警戒される。
2019年8月底から2020年2月天井への上昇途中では何度か三羽烏も発生してジグザグ型の上昇を繰り返していたがあくまでも上昇期の途上であり、今回は年初来高値を更新してパンデミック前の2020年2月天井及び2018年10月天井も超えたところで連続陰線が発生しているため、9月15日からの上昇一巡でいったん仕切り直しの調整期に入っても不思議ないところと注意したい。
11月2-3日の次回米FOMC及び11月5日の米10月雇用統計まではまだ間があるところだが、9月15日安値から5.60円の上昇幅で一段高してきたものの115円台に乗せてゆくには時期尚早でもう一つ押し上げ材料が欲しいところだろう。

【米長期債利回り上昇基調はさらに続く】

10月22日の米10年債利回りは前日比で0.07%低下の1.63%まで下げて週を終えた。10月12日に1.63%まで上昇して8月4日の1.12%以降の最高値を付けてから3日間の続落で10月14日には1.50%までいったん下げた。そこから連騰に入って10月21日には1.70%まで一段高してきた。22日は反落したものの一段高したところから3日程度の反落を入れてはさらに一段高する上昇基調で推移しているだけに、22日も同様に一段高した後の調整的な反落と思われる。
利上げ時期に敏感な米2年債利回りは10月22日に0.49%まで急伸して年初来高値を更新したところから反落して前日比は横ばいの0.46%で週を終えている。
米長期債利回りの上昇は2年債においては年内テーパリング開始と来年の利上げを想定しての上昇であり、10年債利回りの上昇は利上げ想定と共に原油価格高騰等による物価上昇の継続を反映し、また物価上昇も景気回復を反映したものとしてNYダウが史上最高値を更新する強気を見せていることでの株買い債券売りによる利回り上昇でもある。

パウエル米連銀議長は10月22日のオンライン会合で「テーパリングをする時だ」としつつも「雇用がまだ新型コロナウイルス感染拡大前の水準を下回っている状況を踏まえれば利上げは時期尚早でありその時ではない」と述べた。この発言を巡って為替市場と債券市場はやや乱高下したが、最近の米連銀高官発言は2022年の利上げを想定しつつもその時期については2022年後半から末にかけてというイメージであり、利上げ時期を前倒ししてゆく姿勢ではないという印象が高まっている。しかし物価上昇は原油高騰、欧州の天然ガス高騰、中国で電力不足を発生させるほどのエネルギー資源不足等にみられるように一時的な需給ギャップによる上昇というレベルを超えており、米連銀のやや緩慢な利上げ想定よりも実際の米10年債利回りの上昇度合いはインフレ進行継続への懸念を反映しているともいえそうだ。

米長期債利回り上昇基調が続くことは日米金利差を踏まえてドル円の上昇要因であり、2016年以降の右肩下がりの下降チャンネルから抜け出してここ数年では最大級の上昇となっている主要因であり、世界的な物価上昇も資源輸入国通貨として円安を助長している。このため、目先は115円を前に調整的な動きを見せているものの、足場を固めて次のきっかけから115円台到達を目指す可能性もあるところと思われる。

【11月2-3日のFOMC前は調整期となるか】

【11月2-3日のFOMC前は調整期となるか】

ドル円は7月2日高値を超えて一段高してきたことにより、2018年12月15日高値118.65円を起点とした右肩下がりの下降チャンネルから抜け出してきた。1月6日安値102.57円からの上昇幅は12.12円となり、2019年8月26日底から2020年2月20日高値までの上昇幅7.76円、2018年3月26日底から同年10月4日高値までの9.91円を超えており、2016年6月24日底から同年12月15日高値まで19.61円の上昇となった時以来の勢いとなっている。また2016年以降の上昇期は、2016年12月までが26週、2018年10月までが28週、2020年2月までが26週であり、今年1月6日底から7月2日までの上昇が26週だったところからの一段高であり、上昇規模も上昇期間もここ数年で最大規模といえる。
ただ、2017年5月以降は115円に届かずに終わってきたため、今回も115円を超えてゆくにはもう一つ押し上げのきっかけが欲しいところであり、11月2-3日のFOMC、11月5日の米10月雇用統計がそのきっかけとなりえるところではないかと思われる。

以上を踏まえれば、当面はやや調整気味の推移を続けやすいものの、中長期的には一段高を伺う流れの範囲にあり、やや深めの押し目形成期という情勢認識とし、安値が切り下がるところは買い拾いたいところと考える。
9月15日安値からの上昇幅に対する3分の1押しラインが112.82円、半値押しラインが111.89円、重要支持線となりやすい26日移動平均が現在112.00円にある。
(1)当面は114円を上値抵抗線とし、113円を下値支持線とみておく。
(2)114円以下での推移中か一時的に超えても維持できないうちは一段安警戒とし、113円前後で下げ止まれない場合は112円台中盤(112.70円から112.30円)を試すとみるが、112.50円以下は反発注意圏とみる。
(3)10月22日午前高値114.20円を超える場合は調整を終了しての反騰入りと考えてまず10月20日午前高値114.69円試しとみる。10月20日高値とのダブルトップ形成でその後に調整安を繰り返す可能性もあると注意するが、10月28日の米GDP速報、29日の個人消費支出デフレーター等をきっかけとして高値を更新する場合はFOMCを待たずに115円台を目指す上昇へ発展する可能性もあるとみる。(了)<24日14:30執筆>

【当面の主な予定】

10/25(月)
休場、ニュージーランド(レーバーデー )
04:00 マン英中銀委員、中国金融フォーラムのパネル討論会に参加
14:00 (日) 8月 景気先行指数CI・改定値 (速報 101.8)
14:00 (日) 8月 景気一致指数CI・改定値 (速報 91.5)
17:00 (独) 10月 IFO企業景況感指数 (9月 98.8、予想 98.0)
22:00 (英) テンレイロ英中銀委員、講演

10/26(火)
東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議(10/28まで)
アジアインフラ投資銀行(AIIB)年次総会(10/28まで)
米下院金融委小委員会、中国企業の米上場に関する公聴会
EU、エネルギー危機関連臨時会合
08:50 (日) 9月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (8月 1.0%、予想 1.1%)
22:00 (米) 8月 米連邦住宅金融局(FHFA)住宅価格指数 前月比 (7月 1.4%、予想 1.5%)
22:00 (米) 8月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (7月 20.0%、予想 20.0%)
23:00 (米) 9月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (8月 74.0万件、予想 75.6万件)
23:00 (米) 9月 新築住宅販売件数 前月比 (8月 1.5%、予想 2.2%)
23:00 (米) 10月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (9月 109.3、予想 108.5)
23:00 (米) 10月 リッチモンド連銀製造業指数 (9月 -3、予想 5)
24:45 (欧) ヴィルロワ・ド・ガロー仏中銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省2年債入札

10/27(水)
日銀・金融政策決定会合初日
06:45 (NZ) 9月 貿易収支 (8月 -21.44億NZドル)
09:00 (NZ) 10月 NBNZ企業信頼感 (9月 -7.2)
09:30 (豪) 7-9月期 消費者物価 前期比 (4-6月 0.8%、予想 0.8%)
09:30 (豪) 7-9月期 消費者物価 前年同期比 (4-6月 3.8%、予想 3.1%)
15:00 (独) 11月 GFK消費者信頼感 (10月 0.3、予想 -0.5)
15:00 (独) 9月 輸入物価指数 前月比 (8月 1.4%、予想 1.5%)
15:00 (独) 9月 輸入物価指数 前年同月比 (8月 16.5%、予想 17.9%)
21:30 (米) 9月 耐久財受注 前月比 (8月 1.8%、予想 -1.0%)
21:30 (米) 9月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (8月 0.2%、予想 0.4%)
23:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省5年債、変動利付2年債入札

10/28(木)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
未 定 (日) 日銀展望レポート
08:50 (日) 9月 小売業販売額 前年同月比 (8月 -3.2%、予想 -2.3%)
09:30 (豪) 7-9月期 輸入物価指数 前期比 (4-6月 1.9%、予想 3.5%)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
16:55 (独) 10月 失業者数 前月比 (9月 -3.00万人、予想 -2.00万人)
16:55 (独) 10月 失業率 (9月 5.5%、予想 5.4%)
18:00 (欧) 10月 消費者信頼感確定値 (速報 -4.8)
18:00 (欧) 10月 経済信頼感 (9月 117.8、予想 116.8)

20:45 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
21:00 (独) 10月 消費者物価指数速報値 前月比 (9月 0.0%、予想 0.4%)
21:00 (独) 10月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (9月 4.1%、予想 4.4%)
21:30 (欧) ラガルドECB総裁、定例記者会見
21:30 (米) 7-9月期 GDP速報値 前期比年率 (4-6月 6.7%、予想 2.7%)
21:30 (米) 7-9月期 GDP個人消費速報値 前期比年率 (4-6月 12.0%、予想 0.7%)
21:30 (米) 7-9月期 コアPCE速報値 前期比年率 (4-6月 6.1%、予想 4.4%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 29.0万件、予想 29.2万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 248.1万人、予想 242.0万人)
23:00 (米) 9月 住宅販売保留指数 前月比 (8月 8.1%、予想 0.6%)
23:00 (米) 9月 住宅販売保留指数 前年同月比 (8月 -6.3%)
26:00 (米) 財務省7年債入札

10/29(金)
休場、トルコ(共和制宣言記念日)
米大統領、バチカン訪問
08:30 (日) 9月 失業率 (8月 2.8%、予想 2.8%)
08:30 (日) 9月 有効求人倍率 (8月 1.14、予想 1.14)
08:30 (日) 10月 東京区部消費者物価指数・生鮮食品除く 前年同月比 (9月 0.1%、予想 0.3%)
08:50 (日) 9月 鉱工業生産速報値 前月比 (8月 -3.6%、予想 -2.5%)
08:50 (日) 9月 鉱工業生産速報値 前年同月比 (8月 8.8%、予想 0.4%)
09:30 (豪) 9月 小売売上高 前月比 (8月 -1.7%、予想 0.3%)
09:30 (豪) 7-9月期 生産者物価指数 前期比 (4-6月 0.7%)
09:30 (豪) 7-9月期 生産者物価指数 前年同期比 (4-6月 2.2%)
09:30 (豪) 9月 民間部門信用
14:00 (日) 9月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (8月 7.5%、予想 8.0%)

14:00 (日) 10月 消費者態度指数・一般世帯 (9月 37.8、予想 40.9)
17:00 (独) 7-9月期 GDP速報値 前期比 (4-6月 1.6%、予想 2.1%)
17:00 (独) 7-9月期 GDP速報値 前年同期比 (4-6月 9.4%、予想 2.5%)
17:00 (独) 7-9月期 GDP速報値・季調前 前年同期比 (4-6月 9.8%、予想 2.6%)
17:30 (英) 9月 消費者信用残高 (8月 4.0億ポンド、予想 5.0億ポンド)
17:30 (英) 9月 住宅証券融資残高
17:30 (英) 9月 住宅ローン承認件数
17:30 (英) 9月 マネーサプライM4 前年同月比 (8月 7.0%)
18:00 (欧) 10月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (9月 3.4%、予想 3.7%)
18:00 (欧) 10月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (9月 1.9%、予想 1.9%)
18:00 (欧) 7-9月期 GDP速報値 前期比 (4-6月 2.2%、予想 2.1%)
18:00 (欧) 7-9月期 GDP速報値 前年同期比 (4-6月 14.3%、予想 3.5%)

21:30 (米) 7-9月期 雇用コスト指数 前期比 (4-6月 0.7%、予想 0.9%)
21:30 (米) 9月 個人所得 前月比 (8月 0.2%、予想 -0.2%)
21:30 (米) 9月 個人消費支出(PCE) 前月比 (8月 0.8%、予想 0.6%)
21:30 (米) 9月 PCEデフレーター 前年同月比 (8月 4.3%、予想 4.4%)
21:30 (米) 9月 PCEコア・デフレーター 前月比 (8月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 9月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (8月 3.6%、予想 3.7%)
22:45 (米) 10月 シカゴ購買部協会景況指数 (9月 64.7、予想 64.0)
23:00 (米) 10月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 71.4、予想 71.4)

10/30(土)
G20首脳会議(ローマ、10/31まで)

注:ポイント要約は編集部

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