ドル円の反発に合わせて2連騰、10月21日からの大幅下落一服できるか試す
〇トルコリラ円、ドル円の反騰に追従、夕刻7.29まで下げるも7.35まで戻す
〇株売り債券買いで米長期債利回りは低下、ドル円上昇の勢いが欠ける可能性に注意
〇全般にドル高感が強まるも、対ドル/リラは膠着状態を継続、終値ベース中心値は18.63へ低下
〇ロイター社、トルコ輸出業者のコメントを紹介、高インフレに反するリラ抑制政策に不満を抱く
〇7.29を上回るうちは上昇余地ありとし、7.37超えからは7.40前後への上昇を想定する
〇7.29割れからは下げ再開に入ったとみて、7.25前後への下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の12月6日は7.37円から7.29円の取引レンジ、7日早朝の終値は7.35円で前日終値の7.33円からは0.02円の円安リラ高だった。
トルコリラ関連の新たな材料はなくドル円の動向を見ながらの展開だが、ドル円はパウエル米FRB議長講演内容がハト派的だったとしてドル全面安となった局面で11月30日深夜高値139.89円から12月2日夕安値133.60円まで急落して10月21日高値151.94円以降の最安値を更新したものの、12月2日夜の米雇用統計や5日夜の米ISMサービス業景況指数が予想を上回ったことによるドル高のぶり返しで持ち直しに入り、12月6日夕刻には137.46円をつけ、夜に136円を若干割り込んだところも買い戻されて137円を挟んでの揉み合い水準へ切り返した。
トルコリラ円はドル円の大幅下落期に追従して10月21日高値8.17円から12月2日安値7.17円まで大幅下落してきたが、ドル円の買い戻しに合わせて12月5日は高値7.34円まで戻し、6日夕刻に7.37円まで高値を伸ばしたところからいったん7.29円まで反落したところも買われて7.35円へ戻した。
当面は12月5日以降のドル高基調が続くかどうかによりドル円とトルコリラ円の方向性も左右されるが、ユーロやポンド等が下落する一方で12月6日は株売り債券買いで米長期債利回りが低下しており、ドル円の反騰も勢いを削がれる可能性があると注意する。
【ドル/トルコリラは史上最安値近辺での膠着状態変わらず】
ドル/トルコリラの12月6日は18.65リラから18.60リラの取引レンジ、7日早朝の終値は18.62リラで前日終値と変わらずだった。
12月5日の米経済指標が総じて強めだたことで米FRBによる利上げペースがさほど減速せずに利上げ期間が長期化するのではないかとの見方が優勢となり始め、12月6日はユーロやポンド、豪ドルなどが夜に一時的に上昇した後に一段安しており、全般にドル高感が強まっているが、対ドルでのトルコリラは従来からの小動きを続けており、一時的に戻したところは売られて18.60ドル台で史上最安値を試すところは買い戻されている。
わずかな成立枚数によるスパイク的な高安で18.70リラ台や18.50リラ台などのレート提示が各ベンダーで日々みられるものの、本稿ではそれらの極端に乖離したレートを除外して日々の中心的な取引レンジとしている。手元のデータでは、12月3日早朝に取引時間中の史上最安値となる18.69リラをつけ、12月6日早朝にも同値をつけた。その後はややドル安リラ高の気配で推移しているが大きな動きには発展していない。終値ベースでは徐々に水準を切り下げており、中心値は18.60リラ近辺から18.63リラ近辺へと低下してきている。
【インフレ率に見合わない規制された為替レートへの輸出業者の不満】
12月6日のロイター社記事で、当局のリラ安抑止政策でドル/トルコリラの変動率が低下して固定化していることは年間インフレ率が85%近くに達していることに反しており輸出業者の競争力を損なっているとの輸出業者のコメントが紹介されている。
トルコ輸出業者会議(TIM)のグルテペ議長は「為替レートはインフレ率に正比例するべきだ」とし、「我々が商品を競争して販売できるようにするためには、例えばインフレ率が60%なら為替レートも60%変動するべきであり、そうしないと輸出も生産も止まってしまう」と述べた。
12月5日に発表された11月トルコ消費者物価指数の上昇率は前月比2.88%となり10月の3.54%から鈍化、前年同月比は84.39%となり10月の85.51%から鈍化した。生産者物価指数の上昇率も前月比0.74%で10月の7.83%から大幅に低下、前年同月比も136.02%で10月の157.69%から大幅に鈍化したが、それでも異常な高インフレ状態にある。
それに比べてドル/トルコリラは昨年末の1ドル13.36リラから18.69リラまで下落しており、下落率は凡そ40%程度にとどまっている。インフレ率を反映するなら1ドル24.7リラ近辺の水準までリラ安が進行していても不思議ないという計算になり、生産者の目線では生産者物価上昇率を踏まえればさらにリラ安水準が切り下がってしかるべきというわけだ。また民間調査機関による実勢レベルの消費者物価上昇率は公式発表をはるかに超えているともいわれている。
物価上昇率と釣り合っていないリラの実勢は輸出業者及び輸出向け製造業者には不利益との見方であり、エルドアン政権の政策及び中銀の姿勢への不満ともいえる。実際、トルコの鉱工業生産、製造業の信頼感指数、イスタンブールの製造業PMIなどは低調な推移が続いている。輸出でドルを稼いでも当局の融資規制により外貨は保有基準を超える量をリラ預金へ転換せざるを得ず、その間に物価が上昇してしまえばドルに換金した際にはドルの上昇率では物価上昇率に届かずに損失となる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月30日深夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとしてきたが、12月2日夕刻に一段安してから深夜にかけて一時急伸し、その後の反落でも底割れを回避したため、5日午前時点では11月29日夜安値から3日目となる12月2日夕安値で直近のサイクルボトムを付けて戻しに入ったとし、底割れ回避のうちは12月5日夜から7日深夜にかけての間への上昇余地ありとした。
12月6日午前時点では7.27円割れからは下げ再開としたが、6日夜の反落では7.29円にとどまって切り返しているのでまだ上昇途中とみる。弱気転換は122月6日夜安値7.29円割れからとし、その際は7日夕から9日夕にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では12月5日夜の上昇で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜いたが、その後も両スパンそろっての好転を続けているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。ただし6日夜安値割れからは下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパンから転落の場合は下げ足が速まる可能性もあると注意する。
60分足の相対力指数は12月6日夜の反落時に50ポイントを割り込んでから切り返しているのでまだ上昇余地ありとするが、相場が6日夜高値に迫るか超える場合に指数のピークが切り下がる弱気逆行となる場合は下げ再開を警戒し、次に45ポイントを割り込むところからは下げ再開に入ったとみて30ポイント割れを目指す低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.29円を下値支持線、7.37円を上値抵抗線とする。
(2)7.29円を上回るうちは上昇余地ありとし、7.37円超えからは7.40円前後への上昇を想定する。7.40円以上は反落注意とするが7.30円以上での推移なら8日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)7.29円割れからは下げ再開に入ったとみて7.25円前後への下落を想定する。7.25円以下は反騰注意とするが、7.29円を割り込んだ後も7.30円以下での推移なら8日も安値試しへ向かう可能性があるとみる。
【当面の主な予定】
12月7日
23:30 11月 財務省現金残高 前月比 (10月 -722億リラ)
12月8日
20:30 週次 外貨準備高 12/2時点 グロス (11/25時点 797.7億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 12/2時点 ネット (11/25時点 195.1億ドル)
12月12日
16:00 10月 失業率 (9月 10.1%)
16:00 10月 経常収支 (9月 -29.7億ドル)
12月13日
16:00 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -1.6%)
16:00 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 0.4%)
16:00 10月 小売売上高 前月比 (9月 1.8%)
16:00 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 9.7%)
注:ポイント要約は編集部
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