2022年の為替相場について

2021年はパンデミック禍でも、経済活動を止めることなく欧米経済は緩やかな拡大基調を維持しました。

2022年の為替相場について

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概要

2021年はパンデミック禍でも、経済活動を止めることなく欧米経済は緩やかな拡大基調を維持しました。金融政策面ではFRBがテーパリングを3月に終了後、早期利上げに踏み切ることが確実視されており、さらに早ければ年央にもバランスシートの縮小を開始すると見られています。確かに2020年1月時点では4兆j規模であったFRBの資産は2021年末には8.7兆ドルにまで膨れ上がっており、コロナ禍での量的緩和の規模が尋常でなかったことが解ります。バイデン政権はインフレ圧力を抑えることを重視しており、マーケットはFRBが雇用市場と消費が力強さを保っているうちに、金融政策で対処するのは当然のことと受け止めています。しかし、ベージュブック(地区連銀経済報告)によればアメリカ経済は昨年11月半ばにかけて「緩慢なペースで拡大」し、複数の地区で「供給制約と人手不足がいつ緩和するのか不確実性が高い」と指摘しており、景気判断をやや下方修正しています。

また、サプライチェーンの問題は、企業物価や労働コストの上昇に繋がっており、企業収益を圧迫しています。状況が改善せずに、企業業績の悪化に繋がった場合は、FRBの対応の遅れが指摘されて、下落基調にある株価にさらに追い打ちをかける可能性も否めません。FRBは早急な対応を迫られていますが、3月以降の金融調節に失敗すれば、景況感の悪化にも繋がりかねず、その動向が注目されます。
ECBもパンデミック緊急購入プログラム(PEPP:1兆8500億ユーロ)の新規購入を3月末で終了します。資産購入プログラム(APP)については4-6月期に400億ユーロに増額、7-9月期に300億ユーロに増額、これ以降は必要な限り200億ユーロ/月のペースで購入を続けるとしており、量的緩和政策は継続されますが、経済の回復基調がはっきりすれば金融政策正常化への道筋も見えて来るはずです。

ラガルドECB総裁は現在のインフレ圧力がいずれ緩和するとの見方で、金融政策変更の可能性を否定していますが、データで必要性が示されれば対処することも明言しています。一方日本では、エネルギー価格の上昇やサプライチェーン問題が輸入物価を押し上げ、国内の物価上昇に繋がっています。他の先進国に比べてインフレ率は依然として低く、現時点での日銀の金融政策の変更は考え難いため、景況感格差や金融政策の相違を材料に基調は円安の流れが継続すると見られますが、一方で円の実効為替相場が極端な円安に傾いており、日本経済にとって「悪い円安」が表面化しています。この歪みを是正する動きが名目為替相場に影響を及ぼす可能性もあり、念頭に置く必要がありそうです。

以上から、2022年は中央銀行が景気を冷やさずに金融政策の正常化に成功するのか、その手腕が問われる年と言えますが、先陣を切って利上げとバランスシートの縮小に踏み切る可能性の高いFRBの動向が特に注目されます。財政拡大政策と市場にばら撒かれた余剰資金は、新型コロナウィルス感染拡大で景気後退に陥った経済を短期間で立ち直らせ、消費の喚起を促しました。さらには投資家を積極投資に向かわせた結果、株式相場は史上最高値を更新する賑わいを見せましたが、金融当局がマネー縮小へ向けて動き出すことが明らかになった今、景気を冷やさずに金融政策を正常化へ移行させるのは極めて難しいと見られます。FRBの金融調節の失敗により、景況感が悪化しこれまでの行き過ぎた量的緩和のツケを払わされる可能性に注意する必要がありそうです。その他、ロシア、中国などの地政学的リスク、債務を抱える新興国経済の立ち上がりの遅れや通貨動向、さらには信認が低下しているバイデン政権の中間選挙の行方などにも注目が集まると見られます。

チャートから見た主要通貨の長期トレンド

1.ドル/円相場

月足でドル/円の長期トレンドを見ると、2015年6月に付けた125.86を基点として上値を切り下げる流れから上抜けた位置を保っており、長期トレンドは“ドル高/円安”の流れにあります。このサポートライン(A)の下値抵抗は107〜108円台にありますが、これを割り込んで越月した場合は、長期トレンドの変化に注意が必要となります。この場合は104.50〜105.00にある、月足の横サポートを切り崩しつつ100円前後まで下値余地が拡がり易くなります。さらに100円台も割り込んで越月した場合は(C)の超長期的な下値抵抗ポイントである94〜95円台まで下落余地が拡がり易くなります。逆に116円台で越月した場合は、ドル強気の流れを維持して一段のドル上昇に繋がり易くなりますが、118円超えには長期的な上値抵抗が控えており、118〜120円は大きな壁となりそうです。

中期的な視点から見ると、昨年1月に付けた102.59を基点として下値を切り上げる流れにあり、このサポートライン(B)の下値抵抗は1月末現在112.00-10に位置しています。112円を割り込んで越月した場合は、中期トレンドが変化して(A)の長期的な下値抵抗をトライする可能性が生じます。31ヵ月、62ヵ月移動平均線は108.55と109.80に位置しており、長期トレンドは“ドル高/円安”の流れにあります。

チャートから見た主要通貨の長期トレンド

週足でもう少し短期的な方向性を見ると、2017年1月に付けた118.60の戻り高値と、昨年2月に付けた112.23を結ぶレジスタンスライン(A)を上抜けた位置を保っており、中期トレンドは“ドル強気”の流れにあります。また、昨年1月に付けた102.59を基点として下値を切り上げて来た流れにも変化なく、このサポートライン(B)の下値抵抗は112.00-10に位置しており、中期トレンドをサポート中です。しかし、一方で、昨年9月に付けた109.12を基点とする短期的なサポートライン(C)を下抜けており、短期トレンドは“ドル安/円高”の流れに入っています。この週足の上値抵抗は1月27日現在115.60-70に位置しており、これを上抜けて越週しない限り、下値リスクがより高い状態です。また112円を割り込んで越週した場合は中期的なサポートライン(B)を下抜けることにより、中期トレンドが変化してドルの下落余地が拡がり易くなります。逆に前述の115.60-70の抵抗上抜けて越週した場合は(C)を上抜けることになり、短期トレンドが“ドル強気”に変化します。

以上から、中・長期トレンドは“ドル高/円安”の流れに変わりありませんが、短期トレンドは“ドル安/円高”の流れにあり、115.70超えで越週するまでは下値リスクがより高い状態です。また、112円割れで越週した場合は、中期トレンドが変化する可能性が生じます。31週、62週移動平均線は112.20と109.65に位置しており、中期トレンドをサポートしています。

チャートから見た主要通貨の長期トレンド 2枚目の画像

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2.ユーロ/ドル相場

ユーロ/ドルは、2008年7月に付けた1.6040を高値として上値を切り下げて来た長期的なユーロ安/ドル高の流れから、2020年11月に上抜けて“ユーロ強気”の流れに入りましたが、1.2300〜1.2500ゾーンにある長期的な横レジスタンス(B)にぶつかって反落、サポートライン(A)を若干下抜けた位置で推移しており、下値リスクが点灯中です。このサポートラインは1月末現在1.1250〜1.1280に位置していますが、1.1200を割りこんで越月した場合は“ユーロ弱気”の流れに戻したことが確定的となり、この場合は2017年1月に付けた1.0341と2020年3月に付けた1.0638との二番底を結ぶサポートライン(C)をトライする動きが強まると見られます。この下値抵抗は1.0900〜1.1000にあり、強い抵抗として働く可能性が高いと見られます。また、下値を攻めきれずに1.14台を回復して越月した場合は、下値リスクが後退します。

1.1450-60の抵抗も上抜けて越月した場合は“ユーロ強気”に変化してユーロの上昇余地がさらに拡がり易くなります。この場合でも1.2300〜1.2500ゾーンは強い上値抵抗として働きますが、1.2550超えで越月した場合は、長期トレンドが大きく変化して一段の上昇に繋がり易くなります。31ヵ月、62ヵ月移動平均線は1.1510と1.1503に位置しており、この下に入り込んでおり、長期トレンドは“ユーロ弱気”の流れにあります。

チャートから見た主要通貨の長期トレンド 3枚目の画像

週足でもう少し近場のトレンドを見ると、昨年5月に付けた戻り高値1.2266を基点として上値を切り下げる流れ(A)から上抜けきれておらず、下値リスクが高い状態です。また、昨年11月に付けた1.1186を基点として下値を切り上げて来た短期的なサポートライン(B)からも下抜け始めており、新たな下落リスクが点灯中です。(B)の週足の抵抗は1/27現在1.1270-80にありますが1.1200を割れで越週した場合は、短期トレンドの変化が確定的となり、新たな下落リスクが生じます。この場合は1.09〜1.12ゾーンで下値余地を探る展開が予想されます。31週、62週移動平均線は1.1576と1.1819に位置しており、中期トレンドは“ユーロ弱気”の流れに変わりありません。

チャートから見た主要通貨の長期トレンド 4枚目の画像

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3.ユーロ/円相場

ユーロ/円は2008年7月に付けた169.97を起点として上値を切り下げて来た流れから若干上抜けた位置で推移しており、上値トライの可能性を残した状態ですが(A)、2020年6月に付けた114.43を基点として下値を切り上げて来たサポートライン(C)を下抜けていることや、昨年6月に付けた戻り高値134.13を基点として上値を切り下げる流れに入っており(D)、上昇余力の乏しい状態にあります。また、トレンドライン(A)のサポートが1/27現在127.50〜128.00に位置していますが、これを割り込んで越月した場合は、(A)の下に入り込んで下値リスクが点灯します。さらに、127円を割り込んで越月した場合は“ユーロ弱気”が確定的となり、120円方向への一段の下落に繋がり易くなります。2012年7月の大底94.12と2020年5月に付けた114.43を結ぶサポートライン(B)が119.50〜120.00に位置していますが、これを割り込んで越月した場合は新たな下落リスクが生じます。

逆に131.50超えで越月した場合は(D)を上抜けて“ユーロ強気”の流れに戻しますが、この場合でも140円はまだ大きな壁となります。31ヶ月、62ヵ月移動平均線は 124.83と126.28に位置しており、長期トレンドをサポートしていますが、127円割れで越月した場合はこれを下抜ける可能性が高くなります。

チャートから見た主要通貨の長期トレンド 5枚目の画像

一方週足で近場のトレンドを見ると、2020年5月に付けた114.43を基点とするサポートライン(A)を下抜けた位置で推移しており、下値リスクが高い状態にあります。また、昨年10月に付けた133.48の戻り高値と今年1月に付けた131.60を結ぶレジスタンスライン(B)が上値を抑え込んでおり、この週足の上値抵抗は131.20-30にあります。これを上抜けて越週した場合は短期トレンドが“ユーロ強気”に変化して上値トライの動きが強まり易くなりますが、2021年6月に付けた134.13を基点とするレジスタンスライン(D)が上値を抑え込んでおり、133円台にしっかり乗せて越週しない限り、下値リスクを残します。また、2020年5月の114.43と昨年12月に付けた直近安値127.39を結ぶサポートライン(C)が128.20-30にありますが、これを割り込んで越週した場合は新たな下落リスクが生じます。31週、62週移動平均線は129.87と129.52で収束しており、この下に入り込んでおり、下値リスクが点灯中です。また両者がデッドクロスする可能性もあり、下値リスクにより警戒が必要です。

以上から、短期トレンドは“ユーロ弱気”の流れにありますが、128円割れで越週した場合は新たな下落リスクが点灯、127.50割れで越週するか値動きの中で127円割れを見た場合はトレンド変化が確定的となり、下落余地がさらに拡がり易くなります。逆に131.30超えで越週した場合は下値リスクがやや後退、133円台で越週した場合は、“ユーロ強気”の流れに変化して上値余地がさらに拡がり易くなります。

チャートから見た主要通貨の長期トレンド 6枚目の画像

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