米国大統領選挙について(9)(2020年10月9日)

2016年の大統領選挙で大方の予想を覆してトランプが当選したのを、彼のスキルのせいであるとする論評が米国でも一般的である。

米国大統領選挙について(9)(2020年10月9日)

幻のトランプ神話

2016年の大統領選挙で大方の予想を覆してトランプが当選したのを、彼のスキルのせいであるとする論評が米国でも一般的である。どういうスキルなのかわからないが、とにかく彼は、そのようにふるまってきた。当選当初は単なるまぐれであるとする意見もあったが、3年半の治政のうちに徐々に彼の異例の資質が彼を選挙に勝たせ、その資質が2020年の選挙でも発揮されて、再選を獲得するという見方が結構ある。
その異例の資質というのは何か。それは彼の異常な自己顕示である。常に脚光を浴びることによって、彼の存在を人々に印象づけることである。その脚光の浴び方は、よいニュースだけではなく悪いニュースでもよいのだ。常に話題になることが大事なのだ。

もともと、これといった能力に欠ける男が生きていく道はそれしかないのだろう。
フェイカー(偽物)でライアー(嘘つき)、でブリー(いじめっ子)のこの男は中身ゼロですべてがポリティックスなのである。ポリシー(政策)ではなく、政治的立ち回りが大事なのだ。
だから昨日言ったことを平気で翌日ひっくり返す、無規律な言動が繰り返される。
そのような男が、正体がばれて、大統領選挙が不利になってきた選挙戦終盤で、ますます狂気の不規則発言を頻発し始めている。

曰く、コロナウィルスの追加財政支出は、今年中は一切やらない。(翌日発言を訂正)と明らかに選挙に不利な発言をなぜかTweet してしまうのだ。
またCOVID 19を恐れるなと、とんでもない発言をして、国民の大多数から総スカンを食らう(自分は大統領だから最新の最高級のCOVID 治療を受けられることを棚に上げ)、ウィルスを恐れるなは、亡くなった21万人にも失礼である。
その種の不規則発言が毎日のようにまき散らされ、一部のトランプファンを除く人々の不信を掻き立て、支持率が下がるという悪循環である。

今では、2016年の勝利は単なるまぐれでついていた上にロシアの選挙介入が効いて当選しただけであり、まったく本人の能力、資質と関係のないところで、大統領になりあがってしまったという評価が(きわめて正当な評価)増えつつある。
天才(GENIUS)として彼の選挙能力に恐れをなしていた連中が、裸の王様の正体露見に今度は、水に落ちた犬は叩けとばかり一斉に彼の無能を言い立てはじめた。
選挙はブルー・スウィープ(ホワイトハウス、上院、下院とも民主党が制する)の掛け声が盛んである。
トランプのために代弁すれば、彼の治政で何もいいことをしなかったわけではない。
少しはいいこともやっている。ただどうしようもない彼の性格の悪さは、一旦風向きが変わるとたまっていた反感が一気に噴出するという原動力になる。
2016年はタダ単にツイていただけでトランプ神話なるものは幻であったことがあと4週間ではっきりするだろう。

スーパー・スプレッダー・イベント

9月26日、ホワイトハウスのローズガーデンで、トランプ大統領が、最高裁判事候補のアミー・コーニー・バレットを紹介するとして、共和党の上院議員や閣僚、その他のディグネタリー(お偉いさん)180人を招待した集まりが持たれた。
これに出席した人は、もちろんソーシアル・ディスタンスのプロトコル(約束)は守られず、マスクをしている人もほとんどいない会合である。
これがスーパー・スプレッダーであったらしく、上院議員3人がCORVIDに感染、おそらくトランプもこの時に感染したのだろう。
その後これから飛び火して、ホワイトハウス・ウェスト・ウィング(大統領事務局)では14人の感染者が出ている。
ホワイトハウスの中では、今までマスク嫌いのトランプを恐れてマスク無しで勤務をするのが常態で、その結果大量感染したものと思われる。
大統領のマスクの好き嫌いで、生命の危険にさらされるというバカなことが横行している。

トランプは感染して、テストで陽性になったのが10月1日の夜だったといっているが嘘っぽい。9月29日のディベートの時は、顔も真っ赤で、異常な興奮状態で、90分怒鳴りまくって失敗した。おそらくその時にはすでに感染が分かっていて(陽性反応がでて)それを隠してディベートに出たものと思われる。いわゆるパーフォマンス・エンハンスメント・ドラッグ(パーフォマンスを助ける薬)を呑み、その結果異常な興奮状態にあったものと推測される。それが証拠にホワイトハウス医師団は、いつから陽性反応が出たのかというメディアの質問に答えない。ディベートの時は感染していたのだ。77歳のバイデンが7フィートのディスタンスにいたのである。ディベートの際は事前に会場で検査することになっているプロトコルを無視(会場到着を遅らせ、検査の時間をなくした)したのである。
全くとんでもない虚偽に満ちた工作である。木曜日に陽性反応が出て、金曜日には酸素吸入というのは、インキュベーション期間の常識からみて無理がある。明らかに隠蔽がなされたと思われる。何せ大ウソつきのトランプだから。

金曜日10月2日にはウォルター・リード病院に入院、最高級の手当てを受けたといわれる。
ヘリコプターの往復を含め全部で40万ドルはかかったといわれる大統領のコロナ騒ぎである。
一般の人向けにコロナを恐れるな、の発言をしても、まったく逆効果であることは論を待たない。
当初、トランプ感染の報に接したとき、筆者の感想は、トランプは選挙に負けることが分かったので、感染のふりをして、自分の負けを正当化する策略ではないかと考えたが、さすがにそこまで嘘つきではなかったということだろう。
しかしこの嘘で固めた男が、40年続いた嘘の経済政策(新自由主義)の最後の司祭になるのは誠に適役である。
嘘と腐敗の経済政策をまともな方向に修正するリベラルの時代が来ようとしている。

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