米国大統領選・選挙後の市場動向振返りと今後の展望

8月後半から書いてきた米国大統領選コラムも今回が最後です。

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米国大統領選・選挙後の市場動向振返りと今後の展望

米国大統領選・選挙後の主要市場の動向振返りと今後の展望

開票直後からの動きの振り返りと今後の為替市場周辺市場の見通し

8月後半から書いてきた米国大統領選コラムも今回が最後です。前回の大統領選コラムは投票日だったこともあり、クリントン候補が優勢な時点でしたが、開票結果とその後の市場の動きについてはFX羅針盤のコラムで書いてきた通りです。今回は開票直後からの動きを今一度振り返りながら、今後の為替市場と周辺市場の見通しについて現状で考えられることを書いておくこととします。

まずはドル円を含めて主要市場の変化について一覧してみます。

米国大統領選・選挙後の主要市場の動向振返りと今後の展望

       (各市場の 大統領選投票日前日終値、当日安値、終値、21日までの最高値)

一番左に各市場が書いてありますが、各列は順に8日(開票前日)終値、9日(開票当日)安値、同終値、開票日の安値から終値までの上昇率、開票日から21日までの最高値、8日終値から最高値までの上昇率となっています。ユーロはドル基準で示し、株価指数は23時間取引が行われ、為替と比較しやすいシカゴ(GLOBEX)の株価指数先物を用いています。

ドルの対円上昇率は対ユーロ、ドルインデックス以上、対南アはさらに上。米長期金利は0.5%以上上昇。

9日の上昇率は参考までに計算しましたが、ここで見るべきは市場が荒れる前の8日終値と開票日以降の最高値とを比べた場合の上昇率です。

ドル円は5.6%のドル高となっていて、ユーロあるいは6通貨コンポジットのドルインデックスの4%前後のドル上昇率に比べて明らかに高いことがわかります。また新興国通貨の代表として南アフリカランドを例に上げましたが、こちらは8.9%とドル円でのドル上昇率を大きく上回っています。これは米国長期金利の上昇が新興国から米国へと資金還流をもたらす懸念が高まるためです。

次に、為替市場でドル高に動かした原動力とも言える米国の長期金利ですが、単位が小さいだけに上昇率はかなり大きなものとなっていますが、それでも1.858%から2.364%へと0.5%以上もの利回り上昇で、利回りとしてもFOMCで利上げに舵を切る直前の昨年11月以来の水準となっています。米国の長期金利の上昇は他国にも影響を与え、日本でも長期金利の上昇から日銀が国債の指値オペをしました。

日本株の上昇は米株以上、米株の中ではオールドエコノミー銘柄に買い。

次に株価指数です。まず米国の株価指数以上に日本の日経平均株価が上昇していて直近では18,000円の大台に乗せ、上昇率は4.6%となっています。NYダウは史上最高値更新というニュースに注目が集まりましたが、上昇率では3.4%と日経平均株価を下回っています。日経平均の上昇が大きくなった直接な要因は、円安効果と単純に片づけて問題ありません。さらにNYダウに比べるとNASDAQの上昇率はさらに少なく1.6%に留まっています。米国株価については、ハイテク株よりもいわゆるオールドエコノミー銘柄に買いが集まった結果、NASDAQの上昇率が低くなりました。

コモディティ市場にも大きな変化はありましたが、ここでは為替市場、金利市場、株式市場について総合的に見て行けば

アルゴリズムトレード先導の相場に、米金融関係者が短時間でシナリオを書いて便乗か?

まず、開票日まではあれだけトランプリスクに懸念し、実際に開票後の東京市場前場までは上表で確認できる通り、ドル安、株安、金利安の動きとなっていたのです。しかし、東京の後場以降は一転、ドル高、株高、金利高の動きへと舵を切り、下げるスピード以上に上げるという市場参加者を大混乱に陥れる凄まじい値動きとなりました。そのひとつの理由として考えたのは当コラムでも書いた通り、アルゴリズムトレードによる市場の振れの拡大です。

そして、もうひとつ考えなくてはいけないのは、ウォールストリートの金融関係者が開票前に何と言っていたかです。彼らは「トランプリスクは衝撃的だが、相場的にはその方が収益チャンスは多いだろう」と言っていました。そこで、とにかく収益チャンスには目敏い人種ですから、アルゴリズムトレードの反転に沿って、ひとつの大きなシナリオを短時間に顧客に流布したと考えられます。

「強いアメリカ」作りにオールドエコノミー株上昇、減税、インフラ投資の財源確保に米債増発で金利上昇

株に関しては、「強いアメリカ期待で株価は上がる、特にオールドエコノミー株は買いだ」と言いつつ、強いアメリカを作り上げていく過程で減税、インフラ投資を行うには財源が必要だ、実現するためには財源が必要で、そのためには米国債増発が行われるだろう、つまり「米国債は売られ長期金利は上昇する」というわけです。米国内の投資家の為替に関する興味はやや低いとはいえ、為替市場については「長期金利が上昇する動きから短期的にはドル高となる」と言っているはずです。

「強い」米国投資筋の利食いタイミングは本邦投資家本格参入時からか?

半分は想像の世界ですが、投資資金の流れに大きな変化が起きる時の米国金融機関や投機筋の動きには凄まじいものがあり、どんなイベントであろうがチャンスに変え、更にはお金に変えていくという徹底した投資信念を貫くと言っても過言ではありません。現在の動きは9日に始まってまだ12日です。そうした点では、まだまだ相場としては若く収益を刈り取る段階には達していないと思います。多くの市場参加者がトランプ後に混乱し、ようやくついてきた段階ですから、こうした市場参加者(残念ながら日本の投資家も含まれそうです)が一段の高値を見込んだあたりからが、彼らがようやく利食いを入れるタイミングとなってくるでしょう。

ドル円115円、NYダウ20,000ドル、日経平均19,000円からは警戒

反転リスクはまだ先だとは思うものの、トランプ新大統領が就任する1月20日まで2か月あります。それまでには、いったん利食いによる大きなポジション調整が入る可能性は高いと見ています。例えば、ドル円115円、NYダウ20000ドル、日経平均株価19000円とここから更に5%程度の上昇があるとすれば警戒水域ではないかと見ています。

類似性の指摘されるレーガノミクスを参考に

長期的な見通しを立てるには時期尚早だとは思うものの、トランプ新大統領と比較的似通った政策を掲げた大統領にレーガン大統領がいます。当時と違うことがあるとすれば、いまはインフレでは無いというところでしょうか。ただ、歴史を振り返って何が起きたのかを知っておくことはこれからの荒波を乗り越えていく貴重な武器となることは間違いありません。今後の変化については「FX羅針盤」のコラムで書いていきますので、引き続きよろしくお願い致します。

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