ドル円見通し 12月3日深夜からの緩やかな持ち直し続く(20/12/10)

10日未明には104.40円まで上昇して7日夜高値104.31円を上抜いた。

ドル円見通し 12月3日深夜からの緩やかな持ち直し続く(20/12/10)

12月3日深夜からの緩やかな持ち直し続く

〇ドル円、10日未明に104.40まで上昇し7日夜高値104.31を上抜いた
〇NYダウ一時30319.70まで上昇し史上最高値を更新、その後反落するも3万ドルを維持
〇英国とEUの自由貿易協定FTAの交渉最終期限を12/13と設定
〇合意に至らない場合ハード・ブレクジットに陥り、物流や関税、金融取引で大混乱の可能性
〇104.05を割り込まないうちは上昇余地あり、104.50超えからは104.75試しへ
〇104.05割れからは103.91試しとし、底割れから103.67前後への下落を想定

【概況】

ドル円は12月3日深夜に103.67円まで下げたところからの持ち直しの動きを続けて10日未明には104.40円まで上昇して7日夜高値104.31円を上抜いた。先週までのドル安基調に一服感が出ており、ユーロドルは12月4日夜高値1.2177ドルからは軟調推移で9日夜へやや戻したところから深夜に失速して4日以降の安値を更新している。英国とEUのFTA協議難航を背景にポンド/ドルも4日夜高値から下落した後はやや乱調な推移で上値が重い。リスク選好対象として買われてきた豪ドル米ドルも9日夜にこの間の最高値を更新した後は反落しており上昇一服感が出ているほか、新興国通貨買いもやや落ち着いて9日夜からは南アランドやメキシコペソが対ドルで下落している。

12月9日のNYダウは一時30319.70ドルまで上昇して史上最高値を更新した。その後に高値警戒感から前日比105.07ドル安まで反落したが3万ドルの大台を維持して上昇基調を継続している。株高債券安により米10年債利回りは前日比0.02%上昇の0.94%となり、米長期債利回り上昇感がドル円を下支えたが、10日未明からは長期債利回りもやや下げている。
ドル円は全般的なドル安一服感を背景にジリ高基調での推移を続けているが、動きはまだ緩やかであり、11月23日以降の103.60円台を下値支持線、104.70円台を上値抵抗線としたボックス型持ち合いの範囲にある。

【英国・EUのFTA協議、13日期限で土壇場に】

英国のEU離脱移行期間が年末で終了するが、それ以降の両者の自由貿易協定FTAを巡っては対立が続いて合意に至っていない。当初は英国が10月15日を交渉期限として強硬姿勢を示してきたが期限を過ぎても協議は継続し、11月上旬までとされたEU側からの交渉期限を過ぎてもさらに継続となってきた。しかし年末まであと3週となる中、合意か破談の決断を下すべきギリギリの時期にある。

12月9日に両者は交渉の最終期限を12月13日と設定した。12月10-11日にEU首脳会議があり、そこで合意条件等の最終確認があった上で英国との協議決着を図る流れと推察されるが、合意に至らない場合、いわゆるハード・ブレクジットに陥り物流・関税や金融取引等での大混乱に陥りかねない。また12月13日までに合意できたとしても事務手続き的な準備が整わないまま移行期間の延長がないと暫く混乱することになりかねない。
協議の決着次第ではポンドの暴落ないし急騰により為替市場全般が影響されることになりかねないが、仮に合意に至れば、多少の混乱を想定しつつも先行きの楽観を優先してポンド高がユーロ高等へも波及し、株高基調も継続ならリスク選好的な展開をさらに続けやすくなると思われる。

ポンド/ドル及びポンド円は3月のコロナショック暴落からの出直りを続けてきた。ポンド/ドルとドル円の相関性は高くないが、2016年6月に英国の国民投票で離脱が決定したところでのポンド暴落により、ドル円も2016年6月24日に99.04円の大底を形成する下落に見舞われているため、ドル円にとってはポンド/ドル急落の場合はポンド安ドル高による上昇圧力よりもリスク回避的な円買いが優勢となって一段安へ進みかねないところと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、12月3日深夜安値でサイクルボトムを付けて戻しに入ってきたが、7日深夜に103.91円までいったん反落してからジリ高を再開して10日未明には7日夜高値を上抜いてきたため、7日深夜を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りと改める。高値形成期は10日夜から14日夜にかけての間と想定するが、9日夜の小反落時安値104.05円を割り込むところからは下げ再開注意とし、7日深夜安値割れからは弱気サイクル入りとして10日深夜から14日深夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では7日深夜安値からのジリ高が続いて遅行スパンが好転、先行スパンからも上抜けてきており、10日朝時点も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。ただし両スパンそろって悪化するところからは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は9日夜の反落時に50ポイントをいったん割り込んだが切り返して10日未明には70ポイントに到達している。その後は50ポイント以上での推移のためまだ上昇余地ありとするが、10日未明高値を上抜くところで指数のピークが切り下がる弱気逆行が発生する場合は戻り一巡からの下げ再開を疑い、50ポイント割れから続落に入るところからは30ポイント前後を目指す下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月9日夜安値104.05円を下値支持線、12月2日夜高値104.75円を上値抵抗線とする。
(2)9日夜安値を割り込まないうちは上昇余地ありとし104.50円超えからは104.75円試しへ向かうとみる。104.70円台は反落注意としてその後に104.25円を割り込むところからは下げ再開を疑うが、104.25円以上での推移なら11日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)9日夜安値割れからは7日深夜安値103.91円試しとし、底割れからは12月3日深夜安値103.67円前後への下落を想定する。103.80円以下は反発注意とするが、急落商状が発生する場合は3日深夜安値を割り込む一段安へ向かう可能性もあると注意する。また104円以下での推移なら11日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

12/10(木)
EU首脳会議(12/11まで、ブリュッセル)
16:00 (ト) 9月 失業率 (8月 13.2%)
16:00 (英) 10月 月次GDP 前月比 (9月 1.1%、予想 0.4%)
16:00 (英) 10月 鉱工業生産指数 前月比 (9月 0.5%、予想 0.3%)
16:00 (英) 10月 鉱工業生産指数 前年同月比 (9月 -6.3%、予想 -6.5%)
16:00 (英) 10月 貿易収支・物品 (9月 -93.48億ポンド、予想 -96.00億ポンド)
16:00 (英) 10月 貿易収支・全体 (9月 6.13億ポンド、予想 -1.56億ポンド)
21:45 (欧) 欧州中央銀行(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)

22:30 (欧) ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、定例記者会見
22:30 (米) 11月 消費者物価指数 前月比 (10月 0.0%、予想 0.1%)
22:30 (米) 11月 消費者物価指数 前年同月比 (10月 1.2%、予想 1.1%)
22:30 (米) 11月 消費者物価コア指数 前月比 (10月 0.0%、予想 0.1%)
22:30 (米) 11月 消費者物価コア指数 前年同月比 (10月 1.6%、予想 1.6%)
22:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 71.2万件、予想 72.5万件)
22:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 552.0万人、予想 533.5万人)
28:00 (米) 11月 月次財政収支 (10月 -2841億ドル、予想 -2000億ドル)

12/11(金)
16:00 (ト) 10月 経常収支 (9月 -23.6億ドル、予想 -1.0億ドル)
22:30 (米) 11月 生産者物価指数 前月比 (10月 0.3%、予想 0.1%)
22:30 (米) 11月 生産者物価指数 前年同月比 (10月 0.7%)
22:30 (米) 11月 生産者物価コア指数 前月比 (10月 0.1%、予想 0.2%)
22:30 (米) 11月 生産者物価コア指数 前年同月比 (10月 1.5%)
24:00 (米) 12月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (11月 76.9、予想 76.0)
26:40 クォールズFRB副議長、バーチャルイベントで質疑応答

注:ポイント要約は編集部

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