トルコリラ円見通し 連日の史上最安値更新(20/10/30)

トルコリラ円の歴史的暴落は29日も続き、史上最安値は12.47円まで切り下がった。

トルコリラ円見通し 連日の史上最安値更新(20/10/30)

トルコリラ円見通し 連日の史上最安値更新

〇トルコリラ円、歴史的暴落続き、10/29史上最安値12.47まで切り下げる
〇対ドルでも10/29夜8.32リラ、最安値を更新、その後も最安値近辺での推移
〇トルコにおけるフランス批判は一段と深刻化、地政学的リスクはさらに拡大
〇12.66以下での推移中は一段安警戒、12.47割れから12.30台、12.20台を段階的に試す可能性
〇12.66超えからいったん戻りを試しに入るとみて、12.80前後への上昇を想定

【概況】

10月29日はトルコの建国記念日、建国97周年となった。
トルコリラ円の歴史的暴落は29日も続き、史上最安値は12.47円まで切り下がった。
29日は夜に安値を更新してから深夜に戻し、30日未明には12.62円まで戻したが28日夜に12.49円まで安値を更新した後の戻り高値である12.66円超えには至っていない。
対ドルでのトルコリラの史上最安値も続いており、29日夜には8.32リラまで最安値を更新し、その後も最安値近辺での推移が続いている。対ドルでの下落率は前週比で既に4%を超えている。

【フランスとの関係さらに悪化、地政学的リスクはさらに拡大】

フランスではまたイスラム過激派による殺害事件が発生している。フランス人教師殺害事件に関してマクロン仏大統領が原因となった風刺画を擁護する発言を行ったことでトルコ及びイスラム諸国によるフランス批判、仏製品不買運動や抗議デモが発生し、27日にはフランスの風刺週刊紙シャルリエブドがトルコのエルドアン大統領の風刺画をインターネット上に公開したことでトルコにおけるフランス批判は一段と深刻化している。
ナゴルノ紛争、ギリシャ沖東地中海のトルコによるガス田探査、ロシア製ミサイルシステム導入問題、シリア内戦等、あらゆるところでトルコとフランスは対立する立場にある。エルドアン大統領にとってはトルコリラの暴落的な下落とコロナ不況の長期化による国内の批判をフランスとの対立やナゴルノ紛争介入による対外問題へ国民の関心を向けさせて批判の矛先から逃れたいところでもあり、一段とフランス敵視政策を強めるのではないかと思われるが、それもかえって欧州勢のリラ売りの動機となってくると思われる。

【4か月サイクルと40週サイクル】

トルコリラ円は概ね4か月周期の底打ちサイクルで推移してきた。2018年8月13日底以降は2019年1月3日底、同年5月9日底、同年8月26位置底、2020年1月6日底、5月7日底と主要な安値を刻んで来た。5月7日底から現在まで既に5か月半を経過しているが史上最安値更新は止まらない。8月中旬に三角持ち合い的な動きを続けてから9月に一段安しているため、8月10日安値ないしは8月18日前後の安値で4か月サイクルのボトムを付けて既に新たな弱気サイクルに入っている可能性がある。その場合、次の底形成期は12月から年明けの1月にかけての間と想定される。

4か月サイクルの上位には40週前後の週足レベルで確認される底打ちサイクルがある。40週サイクルでは2018年8月底から39週目の2019年5月9日、さらに53週目の今年5月7日に直近のボトムを付けている。すでに5月底を割り込んでいるが、現在は26週を経過したところであり、さらに12週から20週強の日柄的な下落余地が考えられるところだ。年末なら35週目であり、現在の流れが続くようだと底打ちには年末から越年まで時間を要することになるのではないかと考えられる。現在のリラ安基調を改善できず、欧米及び世界の感染拡大が深刻さをさらに増してコロナ不況が長期化し、米大統領選挙後に株高ブームが巻き起こるような楽観的な情勢変化がないとすれば、安値を出し切るような下げ、通貨危機的な様相も含めてリラ安が年末まで続いても不思議ないところだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月22日の中銀利上げ見送りによる急落後も安値更新とその後の戻り高値の切り下がりが続いているため、戻り高値の切り上げ=現状では28日夜高値12.66円を超えないうちは下落基調の継続とみる。22日夜の急落時から4日目となる28日夜安値を直近の底としてすでに底割れにより新たな下落期に入っているとすれば次の底形成期は11月2日から4日夜にかけての間と想定されるが、29日夜安値を基準にすればさらに5日夜まで底形成期も伸びる可能性がある。強気転換は28日夜高値超えからとし、その場合は30日の日中から11月3日にかけての間への上昇余地ありと考えるが、リラ売り情勢が変わらなければ戻り一巡後に再び最安値更新へ向かうのではないかと考える。

60分足の一目均衡表では28日以降の下落角度がやや鈍ったために遅行スパンは実線と交錯し始めているが先行スパンの下限が上値を抑えている。28日夜高値を上抜き返せば先行スパンへ潜り込み、先行スパン突破へ進んでいったん反騰入りとなる可能性があるが、先行スパンを上抜き返せないうちは一時的に遅行スパンが好転してもその後の悪化から下げ再開に進みやすいとみる。

60分足の相対力指数は28日夜から29日夜への安値更新に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られる。しかし30日未明には50ポイントをいったん超えたものの失速しているため、強気逆行からの上昇も既に一巡している可能性がある。このため50ポイント以上を回復する場合は上昇再開とみるが40ポイント割れからは下げ再開と一段安を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、29日夜安値12.47円を下値支持線、28日夜反発時の高値12.66円を上値抵抗線とする。
(2)12.66円以下での推移中は一段安警戒とし、12.47円割れからは12.30円台、12.20円台を段階的に試す可能性があるとみる。28日夜高値を下回っての推移が続くうちは週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)12.66円超えからはいったん戻りを試しに入るとみて12.80円前後への上昇を想定するが、短期的な買い戻しで急反発しても材料が伴わなければ戻りは短命に終わるとみて、その後の12.50円割れからは下げ再開とみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

10月30日
 16:00 9月貿易収支 (8月 -62.8億ドル、予想 -43.0億ドル)
 16:00 7-9月期観光収入 (4-6月 41.0億ドル、予想 34.0億ドル)
 17:00 9月観光客数 前年比 (8月 -71.23%、予想 -48.8%)
11月2日
 16:00 10月イスタンブール製造業景況指数 (9月 52.8)
11月3日
 16:00 10月消費者物価上昇率 前年比 (9月 11.75%)
 16:00 10月消費者物価上昇率 前月比 (9月 0.97%)
 16:00 10月生産者物価上昇率 前年比 (9月 14.33%)
 16:00 10月消費者物価上昇率 前月比 (9月 2.65%)


注:ポイント要約は編集部

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