トルコリラ円見通し トルコ中銀による予想外の大幅利上げでトルコリラ反騰(20/9/25)

トルコリラ円は政策金利発表直前には13.59円まで対円での史上最安値を更新していたが、発表直後のサプライズ的な上昇で13.93円まで急伸した。

トルコリラ円見通し トルコ中銀による予想外の大幅利上げでトルコリラ反騰(20/9/25)

トルコリラ円見通し トルコ中銀による予想外の大幅利上げでトルコリラ反騰

〇トルコ中銀、週間レポレートを8.25%から10.25%へ、予想外の大幅利上げを発表
〇トルコリラ円、政策金利発表直後13.93まで急伸、その後9/25早朝にかけて13.80を挟んだ揉み合い
〇トルコリラドル、利上げ発表後高値7.55を付ける、その後は7.60リラ近辺での推移
〇大幅利上げにより実質マイナス金利幅は縮小したが未だ解消せず
〇トルコリラ安の根本原因解決せず、もう一段安へ進みやすい状況継続するか
〇テクニカルには4か月サイクルでのリバウンド入りの可能性も
〇13.70以上での推移中は上昇余地あり、13.93更新からは14.00から14.10前後への上昇を想定
〇13.70割れから続落に入る場合は13.59円試しとし、底割れからは13.50前後を目指すとみる

【トルコ中銀大幅利上げ】

トルコ中央銀行は9月24日の金融政策決定会合で政策金利である週間レポレートを現行の8.25%2.0%引き上げて10.25%とした。
トルコ中銀は3会合連続で政策金利を据え置き、エルドアン大統領が利上げに否定的とされたことで今回も現状維持とされるのではないかと予想され、利上げ催促的なトルコリラ安が続いてきたが、通貨危機的な下落が続いてきたことと消費者物価上昇率を大きく下回る政策金利による実質マイナス金利状態を放置すればさらに通貨危機状況が深刻化するとみて対策を打ってきたと思われる。
市場にとっては強気サプライズであり、トルコリラ円は政策金利発表直前には13.59円まで対円での史上最安値を更新していたが、発表直後のサプライズ的な上昇で13.93円まで急伸した。しかし買い戻し一巡後は落ち着き、25日早朝にかけては13.80円を挟んだ揉み合いとなっている。
対ドルでのトルコリラは24日午後時点で7.71リラまで史上最安値を更新していたが、利上げ発表から反騰して高値では7.55リラを付けた。いったん急騰幅の半値を削り、その後は7.60リラ近辺での推移となっている。

【大幅利上げで実質マイナス金利幅は縮小したがまだ解消せず】

トルコ中銀は2019年7月にエルドアン大統領による「政策金利と物価上昇率を一桁にする」との方針により中銀総裁が更迭され、同年7月にそれまでの24%だった週間レポレートを19.75%へ大幅に引き下げ、以降9会合連続で利下げを繰り返して今年5月には8.25%まで低下させてきた。その一方で消費者物価上昇率は二桁を続けており、6月の12.62%からはやや低下したものの8月は11.77%と高止まりしている。
今回の利上げにより、政策金利と消費者物価上昇率の差はマイナス1.52%となり8月時点のマイナス3.52%からは改善したが、まだ実質マイナス金利状態が続いている。次回の消費者物価発表は10月5日であり、その時点で物価上昇率が低下すれば実質マイナス金利幅も縮小するが、市場予想は11.4%程度の高止まり予想となっている。

トルコリラ円見通し トルコ中銀による予想外の大幅利上げでトルコリラ反騰

トルコリラが対円、対ドル、対ユーロ等で連日の史上最安値更新を続けている背景は、トルコの外貨準備不足と実質マイナス金利状態の長期化、世界的な感染拡大継続による観光収入の激減及び経常収支悪化、東地中海ガス田を巡るギリシャやフランスとの対立やリビアへの介入問題での地政学的リスク等であり、9月11日には米格付け大手のムーディーズがトルコの格付けを「B1」から「B2」に格下げし、格付け見通しを「ネガティブ」で維持したことがその後のトルコリラ安を加速させてきた。
トルコリラ安要因のうち、東地中海問題ではギリシャとトルコの協議再開が報じられており材料としては一服している。大幅利上げにより通貨防衛姿勢を示したことでマイナス金利状態を引きずりつつも市場としてはトルコ中銀による利上げ継続の可能性等を踏まえてトルコリラ売りについてはひとまず様子見に入る可能性がある。しかし、コロナ不況の長期化による経常収支悪化や外貨準備高不足という根本問題は解決していないため、今回の利上げによりトルコリラ安が一服したとしても、先行きはもう一段安へ進みやすい状況もまた継続すると思われる。

【4か月サイクルでのリバウンド入りの可能性】

トルコリラ円の日足チャートでは概ね4か月周期の底打ちサイクルが見られる。2018年8月13日の通貨危機による安値以降、主要な安値は2019年1月3日、同年5月9日、同年8月26日、今年1月6日、今年5月7日であり、4か月を中心に3月半から4か月半の範囲で底打ちが繰り返されてきた。9月24日のトルコ中銀利上げによる反騰も5月7日底から4か月半を経過したところからの反発のため、このサイクルの底を付けての上昇へ進む可能性がある。
このサイクルの底打ちによる上昇は、5月7日底から6月3日高値まで1か月、昨年8月26日底から10月1日高値まで1か月強のため、平均的には1か月程度の継続性があると思われるが、短い場合は今年1月6日底から1月17日まで数えで10日間の短期的な反発に終わったケースもあるので、今回も1月の短期的な反騰程度に終わる可能性がある。前述のトルコリラ安環境が総じて改善する場合や金融市場全般がリスク選好感を取り戻して新興国通貨高等が勢い付く場合は1か月前後の上昇あるいはそれ以上へ発展する可能性も考えたいが、今のところはそこまでの改善見込みは薄いのではないかと思う。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月17日昼高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとして22日夜から24日夜にかけての間への下落を想定してきたが、24日夜の中銀利上げによる反騰で底打ちしたと思われる。トップ形成期は9月18日の戻り高値を基準とすれば23日から25日午後にかけての間と想定されるが、来週前半にかけてはトップ形成期が延びる可能性があると考える。13.70円割れから続落する場合は弱気転換注意として24日夜安値試しとするが、新たな弱気サイクル入りは24日夜安値割れからとする。

60分足の一目均衡表では9月24日夜の急騰で遅行スパンが好転して先行スパンも突破した。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、新たな高値更新へ進めないと遅行スパンは悪化しやすくなると注意し、遅行スパン悪化からは弱気転換注意とし、先行スパン転落からは下げ再開を警戒して24日夜安値試しへ向かうとみる。

60分足の相対力指数は24日夜の急騰で70ポイントに到達してから下げたが50ポイント以上を維持するうちは上昇余地ありとみるが、50ポイント割れからは下げ再開を疑う。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、13.70円を下値支持線、24日夜高値13.93円を上値抵抗線とする。
(2)13.70円以上での推移中は上昇余地ありとし、24日夜高値更新からは14.00円から14.10円前後への上昇を想定する。14.10円以上は反落注意とするが、13.80円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)13.70円を一時的に割り込んでも早々に切り返すうちは13.80円超えから上昇再開とするが、13.70円割れから続落に入る場合は24日夜安値13.59円試しとし、底割れからは13.50円前後を目指すとみる。また13.65円以下での推移なら週明けは安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

9月25日
 17:00 8月観光客数 前年比 (7月 -85.9%)   
9月29日
 16:00 9月経済信頼感指数 (8月 85.9)
9月30日
 16:00 8月貿易収支 (7月 -26.9億ドル)

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