13.78円まで最安値更新、対ドル対ユーロでもトルコリラは最安値更新中
〇トルコリラ円、9/17に13.78リラまで一段安、最安値をさらに更新
〇トルコリラ、対ドル・対ユーロでも市場最安値更新
〇メジャー通貨におけるドル高一服したものの、トルコリラ下落止まらず
〇経済活動再開とともに、トルコでの新型コロナ感染者増加、第二波との懸念も
〇13.90以下での推移中は一段安値余地あり、13.78割れからは13.70、さらに13.60台後半試しを想定
〇13.90超えからは13.95前後への上昇を想定、13.95以上は反落注意
【概況】
トルコリラ円(BID)は9月17日早朝に13.85円まで大幅下落して史上最安値を更新してから17日午後には14.00リラまでいったん戻しを入れたが、17日夜には13.78リラまで一段安となり最安値をさらに更新した。
9月17日早朝の下落は、17日未明の米連銀FOMCの声明文・議長会見をみてドル安をさらに進める内容に乏しいとしてドル高反応となり、ユーロやポンド、豪ドル等が下落する中でトルコリラも対ドルで急落したことが背景だった。
ユーロドルは9月17日昼まで続落したもののその後は材料消化で戻しに入り、英ポンドも17日夜の英中銀金融政策発表後に一時的に急落したものの早々に切り返し、豪ドルも17日午前の豪失業率が予想外に改善したことで戻した後に安値を更新したが夜間からはユーロ高等に同調して持ち直した。このためドル高感はメジャー通貨に対しては段階的に緩んだのだが、トルコリラは17日夜へ大幅続落となり、トルコリラ円の一段安要因となった。
また17日昼の日銀金融政策決定会合及び午後の黒田総裁会見後も円高ドル安基調が続いたことも響き、ドル円が夜に104.46円まで下落する過程でトルコリラ円の下落も加速させた。
【ドル円での円高基調継続】
ドル円は9月17日夜に104.46円(ベンダーによっては104.52円)まで一段安となった。8月28日の安倍首相辞任騒動で急落した時の安値105.17円を16日に割り込み、17日未明の米FOMC声明発表後のドル高反応でいったん下げ渋りとなったが、日銀金融政策の現状維持と新たな方針の欠如から円高がかえって加速したこと、米国株式市場の軟調さによるリスク回避感が円高の背景となった。
104円台は7月31日に104.17円まで急落した時以来の安値水準であり、今のところは底割れを回避しているが、8月13日へ反騰した後は105円台序盤を支持線として107円前後を抵抗線としたボックス型持ち合いにとどまっていたところから転落しているため、7月31日安値を割り込んでさらに円高が加速しかねない状況に入っている印象だ。心配されるのは株安であり、NYダウが9月序盤に急落した後は下げ渋っているものの、今回のFOMCをきっかけとして反騰入りしきれずに17日へ反落したことで3月のコロナショック暴落を解消してきた株高基調が行き詰まり、下落に転じる場合には円高感がさらに強まる可能性があり、その際にはトルコリラ円にとっても大きな売り圧力となりかねないことだ。NYダウが9月3日高値以降の安値を更新して崩れる場合は為替市場全般でのリスク回避感による投機通貨売り・資源通貨売り等へ進む一方でリスク回避の円高も加速する状況へ進みやすい。
【対ドルで史上最安値を大幅に更新】
トルコリラは対ドルで9月17日未明のFOMC直後に7.5156リラを付けて史上最安値を更新した。17日午前は下落一服でやや戻していたが、午後に入って下落再開となり、17日夜には7.563リラまで最安値を更新した。日足は9月11日から17日まで5日連続の下落となり、17日は終値ベースで7.549リラの最安値を更新して前日比は0.59%安となった。FOMC直後のメジャー通貨におけるドル高が一服したものの、FOMC前から史上最安値更新が続いてきたトルコリラにとっては下落のブレーキにはならなかったようだ。17日時点で週間ベースでは1.01%安であり、3週連続の下落となっている。
トルコリラは対ユーロでも9月17日安値で8.951リラを付けて史上最安値を更新した。終値ベースでも8.944リラで最安値更新となり前日比は0.87%安となった。週間ベースでは17日時点で前週比1.12%となり、8月23日の週から4週連続の下落気配だ。
対ドル及び対ユーロでのトルコリラの下落ペースは9月16日時点ではやや鈍っていたものの9月17日は急落商状となって下げの加速感が強まっている。
トルコリラ安の背景は(1)政策金利を物価上昇率が上回る実質マイナス金利状態の長期化、(2)外貨準備高不足による通貨防衛力の大幅低下、(3)コロナ不況の長期化、特に観光収入の激減による経常赤字の拡大、(4)東地中海のガス田探査を巡るギリシャ等との対立による地政学的リスク、(5)追い打ちをかけたムーディーズの格下げであり、これらの問題を解消してゆく動きが見られないうちは、トルコ中銀への利上げ催促的なリラ売りが収まらない可能性があり、セリングクライマックス的な下落の発生や、フラッシュクラッシュ的な急落の発生等も警戒されるところだ。
【感染拡大の第二波への懸念】
トルコの新型コロナウイルス感染者累計は9月17日時点で29万8039人となり、イタリアを抜いて世界19位となっている。前日比では1648人増となり、一時は千人を切るペースまで抑制が効いていたが経済活動再開が進む中で再び感染増が顕著となっており、第二波に入っている印象だ。トルコ保健相は第二波ではなく第一波の中の第2のピークという表現をとっているが、フランスやイタリア、英国等の感染再拡大と同様に第二波へ進み始めている可能性がある。死者も前日比66人増となったが、抑制の利いていいた時期は20人前後だった水準から倍増している。
感染拡大抑制と経済活動の再開は難しい。トルコもジレンマに陥り始めている印象だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月10日夜高値をサイクルトップとして弱気サイクル入りしてきたが、17日早朝への下落と反発により、17日朝時点では9月17日朝安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りとするのを妥当とみて9月17日朝安値を直近のサイクルボトムとした。17日夜に一段安しているため新たな弱気サイクル入りと仮定して22日朝から24日朝にかけての間への下落を想定する。ただし、17日夜安値からのジリ高基調が続く場合は直近のサイクルボトムを17日夜安値へ改め、17日夜安値割れから新たな弱気サイクル入りとなる可能性もあると考える。
60分足の一目均衡表では9月11日夜の下落から遅行スパンが悪化し、先行スパンからも転落したが、その後も両スパン揃っての悪化が続いている。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、新たな安値更新を回避して推移すれば遅行スパンは好転しやすくなると注意し、遅行スパン好転からはいったん戻しに入るとみて高値試し優先とする。ただしその際は先行スパンが上値抵抗帯となりやすいとみて、その後に遅行スパンが再び悪化するところからは下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は9月17日朝安値から17日夜安値への一段安に際して指数のボトムが切り下がっているのでまだ一段安が警戒される姿だが、20ポイント台序盤から戻しているため、50ポイント前後への上昇を想定する。ただし再び30ポイントを割り込むところからは下げ再開と一段安を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月17日夜安値13.78円を下値支持線、13.90円を上値抵抗線とする。
(2)13.90円以下での推移中は一段安余地ありとし、17日夜安値割れからは13.70円、さらに13.60円台後半試しを想定する。13.70円以下は反騰注意とするが、13.80円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)13.90円超えからは13.95円前後への上昇を想定するが、13.95円以上は反落注意とし、その後に13.85円を割り込むところからは下げ再開とみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
9月21日
23:30 8月中央政府債務残高 (7月 172.1億ドル)
9月22日
16:00 9月消費者信頼感指数 (8月 59.6)
9月24日
16:00 9月製造業景況感 (8月 106.2)
16:00 9月設備稼働率 (8月 73.3)
20:00 トルコ中銀 政策金利発表 (現行 8.25%)
20:30 週次外貨準備高 9/18時点
9月25日
17:00 8月観光客数 前年比 (7月 -85.9%)
9月29日
16:00 9月経済信頼感指数 (8月 85.9)
9月30日
16:00 8月貿易収支 (7月 -26.9億ドル)
注:ポイント要約は編集部
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