ユーロドル ポンド主導のユーロ安の可能性高まる(週報9月第2週)

ユーロについては、ブレグジット後の懸念が広がればポンドとともに下げる可能性が高く、材料面ではユーロの下値不安の方がやや高まってきたという印象です。

ユーロドル ポンド主導のユーロ安の可能性高まる(週報9月第2週)

ポンド主導のユーロ安の可能性高まる

〇先週のユーロ、ECB理事会前と後とで市場参加者の反応は全く逆の動き
〇ブレグジット後のEUと英国との関係、実質的に合意無き離脱となる可能性
〇今週は英中銀MPCにおけるブレグジット問題に対する見解に注目
〇材料面ではユーロの下値不安の方がやや高まる
〇今週のユーロドル、1.1700レベルをサポートに、1.1900レベルをレジスタンスとする流れ

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロは、前週に1.20の大台示現後ユーロ高けん制と取れる発言が出たことから、ECB理事会においてもユーロ高への言及があるのではないかとの思惑に加え、追加緩和に関して何らかの発言もあるのではないかとの思惑も広がりユーロ売りが先行してのスタートとなりました。しかし、その後は理事会メンバーは欧州景気の改善に自信を深めている可能性があるのではといった思惑も出て反転、そしてECB理事会ではユーロの水準についても特に問題視していないとの見方が示されたことでECB理事会後には上昇と、ECB理事会前と後とで市場参加者の反応は全く逆の動きを見せました。

しかし、ECB理事会後にはEUが英国の離脱協定修正法案を9月末までに撤回するよう要求、英国がこれを拒否したことに反応し金融政策、為替政策から離れて改めてブレグジット後に向けての政治的な問題も焦点となってきました。ECBイベントは経過しましたが、ユーロについての見方も多くの関係者が容認している中でエコノミストのレーン理事は金融政策に与える影響に強い懸念を示していると見られ、今後ECB内でもどのような方向に進むのかは不透明と言わざるを得ません。

そしてブレグジット後のEUと英国との関係は実質的に合意無き離脱となる可能性が以前よりも高まってきたと見る向きが増えていますが、ジョンソン首相はこれまでもEUに揺さぶりをかけながら少しでも英国に有利な条件を引き出そうとしてきましたので、今回も多分にそうした面があるとは思います。ただ、実際のところはどうなのか、英中銀MPCにおいても10月中にまとまらず、合意無き離脱状態となる場合に考えられることが示される可能性が高く、今週は英中銀MPCにおけるブレグジット問題に対する見解には注目しておきたいところです。

ユーロについては基本的に現行水準に懸念は無いものの、ブレグジット後の懸念が広がればポンドとともに下げる可能性が高く、材料面ではユーロの下値不安の方がやや高まってきたという印象です。

テクニカルにはどうか、チャートも見ていきましょう。

今週の週間見通しと予想レンジ

先週と同じ各ラインをそのまま残してあります。先週の段階では「ピンクの太線で示したネックラインを下抜けると、6月後半の押しと9月高値との38.2%押しとなる1.1689を視野に入れる展開となりますが、逆に同水準で下げ止まるようだと、まだユーロ高に回帰する可能性も残されます」と書きましたが、見通しは下抜け、結果は下げ止まりとなりどちらに動くのか先延ばしの状態です。

ただ、テクニカルにもサポートを下抜けた時のインパクトのほうが大きいですし。材料的にも欧州通貨が全体として下げる懸念があります。もみあいの可能性もありますが、そろそろ煮詰まってくると思うことや値幅の大きさの可能性から今週も下抜けリスクを考えて、上記ターゲットに近い1.1700レベルをサポートに、1.1900レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週のコラム

今週は英中銀MPCもありますのでポンドドルの日足チャートをご覧ください。

今週のコラム

ユーロドルと比べるとよくわかりますが、ポンドは既にネックラインを割り込んで6月高値(ピンクの水平線)の水準へと下げてきています。6月安値と9月高値のフィボナッチ・リトレースメントを見ると61.8%押しが1.2722(赤のターゲット)と、現在の水準よりもまだ100ポイントほど低い水準です。

英中銀MPCも含めてブレグジット懸念が、もう一段のポンド安につながりやすいことも、ユーロ安に動く可能性を考える一要因となっています。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

9月14日(月)
18:00 ユーロ圏7月鉱工業生産

9月15日(火)
15:00 英国8月失業率
15:45 フランス8月CPI
18:00 ドイツ9月ZEW景況感

9月16日(水)
15:00 英国8月CPI・PPI
18:00 ユーロ圏7月貿易収支
27:00 FOMC結果発表
27:30 パウエルFRB議長会見
**:** 英中銀MPC(〜17日)

9月17日(木)
**:** 日銀会合結果発表
15:30 黒田日銀総裁会見
18:00 ユーロ圏8月CPI
18:00 ユーロ圏7月建設支出
20:00 英中銀MPC結果発表

9月18日(金)
15:00 英国8月小売売上高
15:00 ドイツ8月PPI
17:00 ユーロ圏7月経常収支

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

9月7日(月)
金曜の雇用統計を経て週明けのユーロドルは静かな値動きとなっていましたが、ジョンソン英首相がEUとの通商協議は10月15日までに合意できなければ決裂と発言したことから、ポンド安の動きがユーロの上値もやや重くしていました。

9月8日(火)
ユーロドルは若干の上下を挟みながらも終日ユーロ安の流れが続きました。前日のジョンソン首相発言でブレグジット後の協議が難航していることを嫌気した動きとECB理事会を前にユーロ高牽制や将来的な追加緩和の示唆などユーロ売りにつながる発言が出るのではないかという思惑が効いていました。NY前場には1.1766レベルまで下げ、その後はもみあいも上値の重たい展開で引けました。

9月9日(水)
ユーロドルはNY市場まではやや買われた後に再び下げる動きとなり、一時1.1753レベルの週間安値をつけましたが値幅は伴わず、様子見に近い状況となっていました。NY市場に入りECB理事会における緩和思惑が後退、イベント前のストップオーダーも巻き込んでユーロは対ドル、対円で上昇。それぞれ1.1834レベル、125.65レベルまで買い戻され、引けにかけてはやや押して引けました。

9月10日(木)
ユーロドルは前日から続くECB理事会前のポジション調整と追加緩和後退の思惑で1.18台半ばまでじり高の水準での理事会待ち。理事会自体は現状維持だったもののECBはユーロ高に過剰に反応はしないとのヘッドラインでユーロが対ドル、対円で急騰、ラガルド総裁会見でも同様の意見が示され、一時それぞれ1.1917レベル、126.45レベルの高値をつけました。しかし、EUが英国に対して英国内で進んでいる離脱協定修正法案を9月末までに撤回するよう要求し、英国がこれを拒否したことからポンドが大幅安となり、ユーロもポンドに引っ張られて理事会前の水準に押しての引けとなりました。

9月11日(金)
ユーロドルは前日ECB理事会後の英国の離脱協定修正法案に対する懸念に引っ張られて下げた動きに対する調整の買いが先行、フランス中銀総裁の発言もユーロ高容認と取られ欧州市場前場には1.1874レベルの戻り高値をつけました。しかしレーンECB理事はユーロ高が金融政策に与える影響を懸念していて、一方的なユーロ高も見込みにくいこともありNY後場には買われる前の水準へと押しての引けとなりましたが、方向感は定まらず週末前のポジション調整が中心となっていた様子でした。

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