トルコリラ円見通し 5月7日からの上昇に対する半値押し手前で下げ渋る
〇トルコリラ円ドル円の下落に4日続落するも先週末に持ち直す
〇ドル円の円高がさらに進む場合にはトルコリラ円の下落感も強まりかねない
〇対ドルでのトルコリラ安再開も要警戒
〇5/30-6/11まで千人以下で推移していたトルコの感染増加数が6/12以降再び千人以上に増加
〇規制緩和と活動再開による感染増加のぶり返しが警戒される
〇トルコ円15.66割れ回避の内は上昇余地あり
〇15.66割れからは弱気サイクル入り、15.50円前後への下落を想定
【概況】
トルコリラ円は5月7日に付けた14.61円の史上最安値から6月3日未明高値16.23円まで反騰してきたが、6月5日夜までは円安基調と対ドルでのリラ安が交錯して16円台序盤での持ち合いとなり、6月8日以降はドル円が急落に転じて対ドルでのリラ安も継続したため、6月11日までは日足4日連続の陰線で下落した。
6月12日朝安値からはやや戻して12日夜には15.74円を付け、日足は5日ぶりの陽線となった。ドル円が下げ一服で戻したこと、対ドルでのリラ安も一服したことが背景だった。
【ドル円との同調性、円高圧力への警戒】
ドル円は5月6日安値105.98円から5月19日高値108.07円まで戻した後は107円台での持ち合いが10日間続いた。5月29日安値107.05円からの反騰で6月5日高値109.84円まで上昇したのは米10年債利回り上昇による押し上げ効果と6月5日夜の米雇用統計が予想外の改善だったことが背景だった。しかし6月8日からは米10年債利回りが低下し始めたために下落に転じ、5月29日安値も割り込む下落となった。
トルコリラ円の6月8日からの下落はドル円の動きとほぼ同調したものだったが、ドル円の週足は前週比2.22円安の陰線であり、3月24日からの下落時や2019年1月3日への下落へ向かった2018年12月の下落開始時等に近い下げ幅となっている。トルコリラ円の週足も5週ぶりの陰線となっているため、目先は12日の反騰を続けたとしても6月末にかけて円高がさらに進む場合にはトルコリラ円の下落感も強まりかねないところと懸念される。
ドル円にとっては米10年債利回り等の米長期債利回り動向が重要となっている。米ナスダックが史上最高値更新まで上昇して3月のコロナショックによる暴落分を解消したが、米国の感染者数が200万人超えたことや経済活動再開エリアでの感染増加等によりアフターコロナの復興相場への楽観的期待にブレーキがかかり、足元の現実を見始めたことが安全資産としての米長期国債買い=長期債利回り低下=ドル円の下落という図式となった。
【対ドルでのトルコリラ安再開への警戒】
対ドルでのトルコリラは5月7日に7.27リラの史上最安値まで下落したが、その後は新興国通貨安一服での揺れ返し上昇に入り、6月3日には6.68リラまで戻した。6月9日まで5日間はリラ高一服でドル高へ揺れ返し、6月11日には欧米株急落によるリスク回避感で6.85リラまで下落したが、12日はドル高一服でやや落ち着いている。
コロナショックによる投資家心理の冷え込みが5月序盤までの新興国通貨安の背景であり、株式市場の持ち直しと復興期待が新興国通貨の5月反騰を支えてきたが、米国での感染拡大第二波への懸念や南米での感染爆発の進行等が6月11日のNYダウ急落を発生させている。トルコリラはブラジルレアルや南アランド等と共に5月は反騰してきたが、レアル等が再び下落基調に入る場合は新興国通貨安再燃として同調安の圧力がかかりやすいと警戒する。
6月12日に発表されたトルコの4月鉱工業生産は前年比マイナス31.4%となり3月のマイナス1.7%から大幅に悪化した。市場予想はマイナス18.2%程度だったため予想を超える悪化となった。また4月の小売売上高も前年比でマイナス19.3%となり3月の0.9%から大幅に悪化した、市場予想のマイナス18.6%を超える悪化であった。
トルコの感染爆発は3月後半から急激に始まり、4月から5月前半がピークであった。ロックダウン等の経済活動停止は5月いっぱいで解除されており6月は経済活動再開に入っているため、すでに過ぎ去った最悪期の統計として市場は動揺せず、イスタンブール100株価指数は下落開始後に買い戻されて12日は前日比0.62%高で終了している。
【経済活動再開、国境封鎖も解除だが、感染者再び増加か】
トルコ政府は6月12日にイランとの国境を除く国境封鎖を解除した。6月9日に閣議決定し、11日に通達が出された。入国者は体温チェック等を行い必要に応じてPCR検査等が行われるが、トルコは観光大国のため夏場の観光収入を確保するために入国規制を大幅に緩和してゆく姿勢だ。
6月14日時点での世界の感染者数は797.8万人、死者は43.5万人に増えている。6月12日には前日比14.2万人増と過去最高記録を更新しており世界規模でのパンデミックは拡大の最中にある。米国は感染者数216万人、死者11.7万人へ増えているが、NY州での拡大は収まってきたもののテキサスやフロリダ及びカリフォルニア等では増加ペースが落ちていない。ブラジルの感染者は86.7万人に増え、ロシアが52.8万人、インドが第4位に浮上する33.3万人となっている。
トルコは14日時点で17万8239人、死者4807人だが、5月30日から6月11日までは感染増加数が千人以下で落ち着いていたが、6月12日に1195人増、13日に1459人増、14日に1562人と増加し始めており、規制緩和と活動再開による感染増加のぶり返しも警戒されるところだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月8日夜の急落で16円台の持ち合いから転落したために、6月9日午前時点からは持ち合いの中間点にある6月4日夜安値を直近のサイクルボトムとし、持ち合い下放れ前の6月5日深夜高値を同サイクルトップとした弱気サイクル入りとして6月9日夜から11日夜にかけての間への下落を想定した。
6月12日朝に安値を更新してから戻したために12日午前時点では12日朝安値を直近のサイクルボトムとし、底割れ回避の内は12日夜から15日朝にかけての間への上昇を想定した。12日夜高値15.76円の後は新たな高値更新へ進めずにいるので既にサイクルトップを付けた可能性があるが、12日深夜安値15.66円を割り込まないうちはサイクルトップ形成期の延長入りによる上昇余地ありとし、12日深夜安値割れからは弱気サイクル入りとして17日朝から19日朝にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では6月12日夜の上昇で遅行スパンが好転し、先行スパンも上抜いている。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、高値更新が続かないと遅行スパンは悪化しやすくなると注意し、遅行スパン悪化からは安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は12日夜に60ポイント台へ上昇してその後も概ね50ポイント台を維持しているのでまだ上昇余地が残るが、50ポイント割れから続落に入る場合は下げ再開とみて30ポイント前後への低下を伴う下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月12日深夜安値15.66円を下値支持線、12日夜高値15.76円を上値抵抗線とする。
(2)12日深夜安値割れ回避の内は上昇余地ありとし、15.76円超えからは15.80円台前半への上昇を想定する。15.80円以上は反落注意とするが、12日深夜安値割れ回避が続くうちは16日午前への上昇余地が残るとみる。
(3)12日深夜安値割れからは弱気サイクル入りとみて15.50円前後への下落を想定する。15.50円前後ではいったん買い戻しも入りやすいとみるが、12日朝安値を割り込んだ水準での推移が続くうちは16日午前にかけても安値試しを続けやすいとみる。また12日朝安値を割り込む場合は16日以降で15.30円台を目指す流れと考える。
【当面の主な経済指標等の予定】
6月22日
16:00 6月消費者信頼感指数 (5月 59.5、予想 65.0)
17:00 5月観光客数 前年比 (4月 -99.26%、予想 -85.0%)
6月24日
16:00 6月景況感 (5月 76.9、予想 80.0)
16:00 6月設備稼働率 (5月 62.6%、予想 65.0%)
6月25日
20:00 トルコ中銀金融政策会合(TCMB)政策金利 (現行 8.25%、予想 7.25%)
6月29日
16:00 6月経済信頼感 (5月 61.7、予想 71.0)
6月30日
16:00 5月貿易収支 (4月 −45.6億ドル、予想 -18.0億ドル)
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