ドルは上抜け失敗、FRB議長発言を注視(週報6月第3週)

先週のドル/円相場は、ドルが急反落。110円突破を失敗するなか、週末にかけては106円半ば、およそ1ヵ月ぶりのドル安値を示現している。

ドルは上抜け失敗、FRB議長発言を注視(週報6月第3週)

ドルは上抜け失敗、FRB議長発言を注視



〇先週ドル円は急反落、FOMC後に約1ヵ月ぶりのドル安値106円台半ばを示現
〇パウエル議長の弱気コメント、全米経済研究所の米経済拡大2月終了コメント等での株暴落を嫌気
〇「米中の対立」と急速に韓国、米国に対する外交姿勢を硬化させている「北朝鮮情勢」が注目された
〇上値トライには失敗したものの、ドルの下値リスクが高まっているとまでは言えそうになく方向探りか
〇ドル円予想レンジ106.20-108.70

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円相場は、ドルが急反落。110円突破を失敗するなか、週末にかけては106円半ば、およそ1ヵ月ぶりのドル安値を示現している。

前週末、OPECプラスが会合を開き、「7月末までの協調減産で合意」するなか、黒人男性暴行死事件をめぐる大規模な抗議デモが全米各地で行われただけでなく、他国へも飛び火したことが明らかとなった。
そうした状況を受けた、週明けのドル/円は前週末のNYクローズよりも、やや円高の109.55円レベルで寄り付いたのち、週間高値の109.70円を示現。しかし、以降はドル安・円高の動きが目立つ展開で、一時は3円以上も下落した106.58円まで値を下げている。FOMC終了後のパウエルFRB議長のコメントが予想以上に弱気に傾斜したことに続き、全米経済研究所も「米経済の拡大は今年2月に終了」などと発表。それらを受け、11日にはNYダウが終値ベースで1861ドル安と過去4番目の下げ幅を記録したことなどが嫌気された。ただ、さすがに短期的には行き過ぎの感もあったのか、週末にかけてドルは若干買い戻され、12日のNYは107.30-40円で取引を終え、越週となった。

一方、週間を通して注視されていた材料は、「米中の対立」と「北朝鮮情勢」について。
前者は、新型コロナや香港情勢を中心とした米中対立に加え、前述した「全米デモ」も対立の材料として、新たに取り沙汰された。たとえば、米国務長官が「抗議デモを中国は悪用している」などと述べ不快感を示している。また、トランプ米大統領が「ウイグル族弾圧に関与した中国政府当局に対する制裁法案に署名する見通し」だとされ、こちらも両国にとって新たな火種となりかねない。
対して後者は、1週間ほど前から「金正恩党委員長の妹である金与正党第1副部長が、韓国の大統領府を激しく非難する談話を発表」や「金委員長も出席し党政治局会議を開催」などといった北朝鮮関係の報道がたびたび観測されるなか、同国メディアである労働新聞が「南北間連絡ルートを9日正午以降に遮断」と報じ思惑を呼ぶ格好となった。また、韓国に対してだけでなく、米国についても「米朝関係はいまや絶望的な状況。両国の関係改善は見込めない」との見解を示したとされるなど、世界情勢にとって再び脅威となりつつある。

<< 今週の見通し >>

5月安値105.99円を起点に、109.85円まで一時ドル高が進行したが、失速すると週末にかけては3円以上の下落をたどっている。ちなみに、率に換算すると上昇の8割以上も戻してきた計算で、いわゆる「行って来い」の様相だ。チャートを素直に見れば、ドルの上値トライ、110円超えは失敗した格好ながら、ドルの下値リスクが高まっているとまでは言えそうにない。確かに、NYダウをはじめとする米株の動きが要注意であるものの、居心地が良かった過去のレンジ、5月半ば以降のボックス圏に回帰してきたことを考えると、しばらくは次の方向性を探るような値動きが続く可能性もある。

材料的に見た場合、「貿易や香港情勢などを含めた米中の対立」や「北朝鮮情勢」、「英国情勢」、「イラン情勢」、「新型コロナウイルス」、「米大統領選」、「全米に広がるデモ活動と人種問題」など、注目要因は依然として目白押し。そうしたなか、もっとも注意を要するのは、引き続き「米中対立」と、「全米に広がるデモ活動と人種問題」だが、後者と絡めた格好で「新型コロナの感染再拡大」も懸念されている。また、20日にトランプ氏がオクラホマ州で実施する選挙集会も、会場の規模からすれば最大で2万人近くの参加者が集まる可能性があるとされ、こちらも「コロナ第2波発生」のトリガーになると警戒されている

テクニカルに見た場合、先週の日報でたびたび取り上げてきたドル/円の「105.99円を中心とした逆ヘッド&ショルダー」あるいは「シンメトリー(左右対称形)」は、まだ辛うじて維持されている。
先週記録した直近安値106.58円が、いわゆる「右肩」の部分にあたるとすれば、ドルはネックラインにあたる109.50-110.00円に向けて再上昇をたどることになりそう。ただし、ヘッドにあたる105.99円を下回れば、その見方は誤っていたことになる。

今週は、6月のNY連銀製造業景況指数やフィラデルフィア連銀景況指数といった米経済指標が発表される予定となっている。雇用統計に代表されるように、5月分の米経済指標は良好な内容となったものが多く、市場では楽観論も取り沙汰されるが、今週発表される足もと6月分のデータは果たして如何に!?好数字の指標発表が続くのか否かにまずは注目だ。
また、パウエルFRB議長による半期の一度の議会証言やEU首脳会議、前述したトランプ氏の選挙集会再開などにも要注意。

そんな今週のドル/円予想レンジは、106.20-108.70円。ドル高・円安については、先週末高値の107.55円や、移動平均の25日線が位置する107.80円レベルなどをめぐる攻防に注目。移動平均の200日線が位置する108円半ばがターゲットに。
対するドル安・円高方向は、先週安値で、時間足では少なくとも2度トライして割り込めなかった106円半ばが非常に強いサポートとして意識されている。仮に割り込むようだと、5月安値105.99円が視界内に。

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