ドルは下値正念場、米株の動きを注視
〇ドル円は一時106円台へ下落
〇FOMCでは22年末までゼロ金利を見込むことが示され、景気先行きに厳しい見解を示したとの印象
〇反面で米NEC委員長からは楽観的見方も
〇テクニカルには107円前後で下げ止まるかがポイント
〇欧米時間のドル円予想レンジ106.60-107.60
<< 東京市場の動き >>
11日の東京市場は、ドルが小安い。一時106.90円レベルまで下落、5月15日以来のドル安値を記録する局面も観測されていた。
ドル/円は107.10円前後で寄り付いたのち、ドル売りが先行。107円を割り込み、日中安値である106.90円レベルまで一気に下落している。弱含みの推移となった日米株価が材料視されていたという。
しかし、安値を示現後はやや方向性を欠く値動きに。逆に107.20-25円まで切り返し、日中高値を記録する局面も観測されるなど右往左往をたどっていた。結局、16時現在では寄り付きに近い107.05-10円で推移、欧米時間を迎えている。
一方、材料的に注視されていたものは、「FOMC」と「米中対立」について。
前者は、注目のFOMCで「金利の据え置き」が発表されたうえ、終了後にパウエル議長が「当局は米経済への景気刺激策を継続する」、「22年末までゼロ金利を見込む」などと発言している。先週発表された米雇用統計が良好な内容となったことなどから、マーケットでも米景気についての楽観論が根強いが、議長は予想以上に厳しい見解を示したとの印象だ。
ただ、反面で米NEC委員長から「経済は景気後退からすでに転換している」、米財務長官による「米経済は今年下期に劇的に改善する」との発言が観測されていた。
対して後者は、米国務省が発表した報告書で「中国ではすべての宗教に対する政府主導の弾圧が激しくなっている」と批判したうえ、米軍は中国軍が活動を活発化させている西太平洋に、「ロナルド・レーガン」と「ニミッツ」の2隻を中心とする空母打撃軍を派遣したことを明らかにしている。また、そうしたなか米副大統領からは「対中貿易に関して強い立場をとり続ける」との発言も聞かれていたという。
<< 欧米市場の見通し >>
3週間近く形成していた106.74-108.09円のレンジを一時上放れたドル/円だったが、結果は「行って来い」。本日東京では、一連の上昇の起点に近い106.90円レベルまで下落している。素直に解釈すれば、ドル上値トライが失敗した感は否めないものの、チャート的には元のレンジへと回帰しただけで、ここからさらなるドル安が進むかどうかは未知数だ。そうした意味において、FOMCという重要イベント終了後の米株、とくにナスダックの動きに注意を払いたい。
材料的に見た場合、「貿易や香港情勢などを含めた米中の対立」や「北朝鮮情勢」、「英国情勢」、「イラン情勢」、「新型コロナウイルス」、「米大統領選」、「全米に広がるデモ活動」など、注目要因は依然として目白押し。そうしたなか、もっとも注意を要するのは、引き続き「米中対立」と、「全米に広がるデモ活動」の動きになる。また、一連の米雇用不安を最初に露呈させ指標になった週間ベースの新規失業保険申請件数が本日発表される予定で、こちらも一応要注意。ちなみに、事前予想ではマイナス150万件程度と、前週(マイナス187.7万件)よりもさらに改善される見通しだ。
テクニカルに見た場合、「ドル/円は5月安値105.99円を中心とした逆ヘッド&ショルダーを形成中」の様相にあるが、ヘッドにあたる105.99円を中心とするシンメトリー(左右対称形)が維持されるかどうかにまずは注目。つまり、本日東京安値にも当たる107円前後で下げ止まれば、今後再び110円台回復に向けたドル急反発の可能性も残る反面、しっかり割り込んでしまうと、その可能性は事実上潰れることになりかねない。ドルの下値は正念場に。
本日は、5月の生産者物価指数や週間ベースの米新規失業保険申請件数といった米経済指標が発表される予定となっている。前者ももちろんだが、とくに後者の内容には注意を払いたい。
また、それとは別に米財務省による30年債の入札、ユーロ圏財務相会合などのイベントに注目している声も少なくない。
そんな本日欧米時間のドル/円予想レンジは、106.60-107.60円。東京高値にあたる107.20-25円が最初の抵抗。上抜ければ、移動平均の25日線などが位置する107.70円前後がターゲットに。
対するドル安・円高方向は、フィボナッチで見たサポートであり、本日東京で下げ止まった106.90円レベルの攻防にまずは注視。割り込むと106.74円、そして105.99円が意識されそうだ。
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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