ユーロ週報「材料的にもペース的にも調整の売りが入りやすい」(6月第1週)

ドル円とともにユーロ円の買いも目立ったことから、ユーロドルは比較的底堅い地合いでの週末クローズとなりました。

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ユーロ週報「材料的にもペース的にも調整の売りが入りやすい」(6月第1週)

材料的にもペース的にも調整の売りが入りやすい

〇先週は週初安値から週末高値まで270pips以上の上げ幅を演じるユーロ高の一週間
〇欧州委員会の復興基金提案が好材料とされユーロ上昇をサポートするもやや思惑が先行し過ぎの感も
〇米国内における暴動拡大や、全人代で国家安全法の採択からの米中対立懸念のドル売りもでたか
〇今週はイベント前の先週上昇分の調整、テクニカル等からユーロ買いの勢いは緩みやすいか
〇テクニカルには3月下旬の戻り高値1.1147レベルと先週高値はほぼ同水準
〇また、3月高値と安値の61.8%戻しが1.1168でいったん達成感が出やすい地合い
〇ユーロドル今週は1.1020レベルをサポートに、1.1180レベルをレジスタンスとする週か
〇ユーロ円も週初安値の117.09から週末高値の119.90まで2円80銭以上の大幅上昇
〇テクニカルには年初来高値122.87と年初来安値114.43の61.8%戻しを上抜け大台120円を目指す展開
〇大台達成後は達成感も出て反落しやすいか

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロは、ドイツとフランスによるEU経済復興基金提案に対して反対する国が出たことから週初こそ下押しの展開となりましたが、その後は反転上昇の動きとなり欧州委員会による復興基金の話もユーロ買い材料とされ、週初安値から週末高値まで270pips以上の上げ幅を演じるユーロ高の一週間となりました。

ユーロは対ドルだけでなく対円でも強い動きを見せましたが、週初はドイツ・フランスによる復興基金に反対する国がいることでユーロ売りになりましたが、その後の欧州委員会により同様の提案はおそらく協議が難航するであろうにも関わらず好材料とされ、ユーロ上昇に一躍買うこととなりました。欧州委員会の案では7500億ユーロのうち、5000億ユーロを補助金として新型コロナウイルス被害の大きい国にばらまく予定です。

欧州内では金融政策にしても財政支出にしてもかなり温度差があり、ドイツ・スペイン案でも反対している国が出た以上、欧州委員会の案とはいえすんなりと決まるとはとても思えず、実際に決まるまでには時間がかかることは容易に想像がつきます。先週の動きだけを見ているとやや思惑が先行し過ぎている感が強いのですが、米国内における暴動の広がりや、全人代で国家安全法の採択から米中間の対立という懸念のドル売りが対ユーロで出ていたと考えるとある程度は納得いくところです。

今週は米国雇用統計で失業率の大幅悪化が予想されていることから、そうした動きを先取りしたという面もあるかもしれません。ただ、今週はその前にECB理事会とラガルド総裁の会見もあり、現在の欧州の景気と先行きの見通しにも言及されるでしょうから、週後半に続くイベントを前に先週上昇分の調整が入ってもおかしくはありません。また、テクニカルにもそろそろいったん止まりやすい水準にもなっていますので、ユーロ買いの勢いは緩みやすいというイメージでいます。日足チャートをご覧ください。

今週の週間見通しと予想レンジ

4月以降は先週初まで1.10の大台が強いレジスタンスとなり3回ほど反落していましたが、先週の上昇により1.10の大台を明確に上抜け、現状は1.10の大台が逆にサポートとなってきた流れとなっています。いっぽうで上値側を見ると先週高値1.1145レベルは3月下旬の戻り高値1.1147レベルとほぼ同水準ですし、3月高値と安値の61.8%戻しが1.1168となっていることから、今回のユーロ高はいったん同水準で達成感が出やすい地合いにあると見ています。

さらに一段の上昇となるには、欧州内の一段の好材料とドル売り材料が必要だと考えられますが、現時点ではそこまでの強い材料は見当たらず、特段の材料が出て来ない場合には週後半のイベントを前にした押しが入りやすいでしょう。今週はこれまでのレジスタンスとなっていた1.1020レベルをサポートに、上述したテクニカルなターゲットに近い1.1180レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

今週のコラム

今週もユーロ円の日足チャートを見てみましょう。

今週のコラム

ドル円が動かずユーロドルが大幅高となったことからユーロ円も大幅上昇し、週初安値の117.09から週末高値の119.90まで2円80銭以上もの上昇を演じ、週明け月曜もわずかに高値を更新する動きとなっています。

テクニカルには年初来高値122.87と年初来安値114.43の61.8%戻しを上抜け大台120円を目指す展開となっています。角度的にはやや急なところは引っかかりますが、5月中旬からの上昇チャンネル(ピンクの平行線)の中で、上値の目途を探っている最中という感じです。

しかし、ユーロドルのコメントでも書きましたが、このまま積極的にユーロ高を見込む材料があるとも思えませんし、ユーロドル自体の上昇もスピードが速い点は気になります。あとわずかですから、ユーロ円も一度は120円の大台を見ることになるでしょうが、大台達成後は達成感も出て反落しやすいのではないかという見方をしています。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

6月1日(月)
**:** ドイツ、フランス市場休場
16:50 フランス5月製造業PMI
16:55 ドイツ5月製造業PMI
17:00 ユーロ圏5月製造業PMI
17:30 英国5月製造業PMI

6月2日(火)
15:00 英国5月住宅価格指数

6月3日(水)
16:55 ドイツ5月失業率
17:30 英国5月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏4月失業率
18:00 ユーロ圏4月PPI

6月4日(木)
16:50 フランス5月サービス業PMI
16:55 ドイツ5月サービス業PMI
17:00 ユーロ圏5月サービス業PMI
17:30 英国5月建設業PMI
18:00 ユーロ圏4月小売売上高
20:45 ECB理事会
21:30 ラガルドECB総裁会見

6月5日(金)
15:00 ドイツ4月製造業新規受注
21:30 米国5月雇用統計

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

5月25日(月)
ユーロドルは、東京市場では動きは無かったものの欧州市場に入り、EUの4か国が共同でドイツとフランスが提案した経済復興基金に反対を表明したことから売りが先行。金曜安値を下回るとストップオーダーも出て1.0870レベルの安値をつけました。しかし主要市場が休場となる中ですぐに買い戻しが入り逆に1.0915レベルまで反転上昇する動きを見せ、その後は目立った動きは無くなり1.0895レベルで膠着のまま引けました。

5月26日(火)
ユーロドルは、東京市場から底堅い動きとなっていたものの、欧州市場序盤に特段の材料がない中でポンドドルの買いが入り、それをきっかけに欧州通貨全般が上昇、ユーロドルも若干の遅れはあったものの1.09台半ばへと上昇しました。その後もペースは鈍くなったものの底堅い展開が続き、NY市場ではユーロが対ドル、対円ともに買いが目立ち、後場には1.0996レベルの高値をつけましたが、大台は試しきれずに若干押しての引けとなりました。

5月27日(水)
ユーロドルは東京市場ではやや上値の重たい動きとなっていましたが、欧州市場に入り欧州委員会が5000億ユーロの補助金を計画とのヘッドラインに反応し、ユーロドルは大幅高、一時1.1031レベルの高値をつけました。しかし、1.10台の売りを吸収しての上昇にも無理があり、その後は再び安値圏へと反落、引けにかけては改めて買い戻しも見られる動きでの引けとなりました。

5月28日(木)
ユーロドルは、東京市場では前日高値をわずかに上抜ける動きは見られたものの、1.10台前半では売りも出て上値の重い地合いとなっていました。欧州市場に入り下値も限定的で底固めをしていたところ、NY市場に入りポンド高がきっかけとなりユーロドルも日中高値を上抜け。テクニカルにも買いが強まる展開となったことから、後場には1.1094レベルと3月30日以来のユーロ高を見た後に若干押しての引けとなりました。

5月29日(金)
ユーロドルは基本的にドル円と同様のドルの動きを示し、米国内の暴動やトランプ大統領の会見を控えてのドル売りからじり高となり、NYの朝方には1.1145レベルの高値をつけました。その後はドル買い戻しの動きに沿って東京前場の水準へと押す場面も見られましたが、ドル円とともにユーロ円の買いも目立ったことから、ユーロドルは比較的底堅い地合いでの週末クローズとなりました。

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