引き続き米中対立を注視、為替の動意期待も
〇先週のドル円は小じっかりながら108円台に乗せられず頭の重さ目立つ
〇週末はトランプ大統領が記者会見で、中国との貿易問題の言及を見送りドルの買い戻し優勢に
〇市場では香港をめぐる米中対立、コロナ後の日常回帰が話題に
〇ドル円はレンジ相場が続くが過去の展開では一か月程度が限度そろそろ動きも
〇ISM指数、雇用統計等米重要指標にも注意
〇今週のドル円予想レンジ106.70-108.50
〇上方向は108.09の攻防に下方向は107.00を割り込むか注目
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場はドルが小じっかり。週足は3週連続の陽線引けとなったものの、週間を通して一度も108円台を示現できないなど、むしろ頭の重さが目についた。
前週末に、朝鮮中央通信が久しぶりに北朝鮮・金委員長の動静を報じたことが観測されるなか、香港情勢などをめぐる米中間の対立激化も改めて話題に。また、アルゼンチンによる9度目のデフォルトや、G7サミットは6月下旬に対面式で実施されることも明らかとなっていた。
そうした状況下、週明けのドル/円は107.50-55円と前週末のNYクローズと大差ないレベルで取引開始。米中間の対立に関するニュースなどに一喜一憂しつつも、レンジから抜けられず、実際1週間を通した値動きは1円にも満たないものにとどまっている。下値も堅いが、上値も重かった。ただ、週末はトランプ米大統領が注目の記者会見で、中国に対する貿易問題の言及を見送ったことが好感され、ややドルの買い戻しが優勢に。金曜日のNYは107.80円前後で取引を終え、越週している。
なお、円は対ドル以外でもやや弱含みに推移、ほぼ全面安の商状。そのため、ユーロ/円や豪ドル/円、ランド/円などはそれぞれ2-3ヵ月ぶりの高値まで一時上昇する局面が観測されていた。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「米中の対立」と「G7など国際会議」について。
前者は、中国による「香港国家安全法案」の導入をめぐり、米中のバチバチとしたやりとりが連日報じられ、その都度マーケットは右往左往。また、香港では法案導入反対の動きから市民デモが発生し、警官隊との激突したことなどが明らかになっている。そうしたなか、トランプ米大統領が「週末に中国に対する措置を講じる」との考えを明らかにし、記者会見への警戒感が一気に広がった。ただ、実際の会見では「米の香港優遇見直し」などを表明したものの、米中貿易合意への言及はなし。金融市場では「貿易合意は維持される」と受け止められるとドル買いへの反応が優勢だった。
対して後者は、新型コロナウイルスの影響をうけ、テレビ会議などに移行していた国際会議が再び対面式に戻りつつある流れがジワリと観測され始めたことが話題に。トランプ米大統領がG7を対面式に戻す考えを示し、それを受け安倍首相やジョンソン英首相らは訪米して出席する考えを明らかにしている。また、ロイターはEUが行う共通予算と新型コロナウイルス復興基金をめぐる首脳会議を、やはり「対面式で開催する可能性がある」と報じていた。「日常」が少しずつ戻りつつあると考えられる。
<< 今週の見通し >>
新型コロナが引き続き市場の注目要因であることは間違いないものの、欧米を中心とした主要国においては感染拡大が取り敢えず終息に向かっていることもあり、以前ほど材料視されにくくなっている。そのためか、ドル/円はもう2週間程度、107円台を中心とした約1円のレンジ取引だ。米中対立への懸念などをにらみつつ、ドル/円に関して言えば、まずは足もとのレンジを抜けていくことが出来るのか否か、抜けるとすれば方向はどちらになるのか、そういった点を今週も注視したい。
材料的に見た場合、「貿易問題のほか香港情勢などを含めた米中の対立」や「北朝鮮情勢」、「英国情勢」、「イラン情勢」、「新型コロナウイルス」、「米大統領選」、「コロナ治療薬をめぐる動き」など注目要因は依然として目白押し。そうしたなか、足もと市場の関心をもっとも集めているのが「米中の対立」になる。前述したように、先週末にはトランプ氏が「米中貿易合意に言及しなかった」ことが好感され、ドル買い・円売りで反応したものの、個人的には継続性への疑問もないとは言えない。また、今週は週末の5月米雇用統計をはじめ、重要な米経済指標の発表が相次ぐだけに、その内容にも警戒を要しておきたいところだ。
テクニカルに見た場合、ドル/円は先週1円にもとどかないレンジ取引だったが、期間を少し広げても106.74-108.09円という1.3円ほどのレンジにとどまっていることが見て取れる。ちなみに、後者もすでに3週間近くに達している。
もちろん、足もとのボックス相場がいましばらく続く可能性も否定出来ないが、昨年来の展開を調べてみると、1円強という狭いレンジ取引は長くても1ヵ月程度が限界であるようだ。とすると、早ければ今週のどこか、遅くとも来週ぐらいにはレンジを放れる可能性も!?
今週は、5月のISM製造業景況指数や同雇用統計といった重要な米経済指標が発表される予定となっている。なお、参考までに指摘しておくと、後者のうち失業率は前月の14.7%から20%近くまで悪化するほか、非農業部門雇用者数もマイナス800万人程度になるとの予想が優勢だ。少なくとも、実際の数値をみるまでドルを積極的には買い難い気もしている。
そんな今週のドル/円予想レンジは、106.70-108.50円。ドル高・円安については、過去3週間程度のドル高値にあたる108.09円をめぐる攻防をまずは注視。上抜けると、移動平均の200日線が位置する108.30-40円がターゲットに。
対するドル安・円高方向は、先週一度も割り込めなかった107円レベルが最初のサポート。割り込めばレンジ下限の106.74円が意識されそうだ。
オーダー/ポジション状況
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