来週の為替相場見通し:『リスクオフ再燃に警戒。米中対立と米雇用統計がメインイベント』(5/30朝)

ドル円は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、「下落リスク」が警戒されます。

来週の為替相場見通し:『リスクオフ再燃に警戒。米中対立と米雇用統計がメインイベント』(5/30朝)

リスクオフ再燃に警戒。米中対立と米雇用統計がメインイベント

〇今週ドル円は107円台での動き
〇世界的外出規制緩和と株高、原油高で5/27に107.96まで上昇するも108円台に乗せられず
〇その後は米中関係悪化懸念、米経済指標の不冴えから下落に転じ107.08をつける
〇週末は米国が「米中の第一段階合意を破棄しない」との報道やトランプ大統領の香港関連記者会見での肩透かしに107.83に戻して越週
〇ユーロドルは今週週明け早々の1.0870から高値1.1145まで上昇、高値圏の1.1104で越週
〇株高・原油高の楽観ムード、EUが復興基金を承認するとの期待感、米指標悪化によるドル売り等が背景

〇ドル円はテクニカル、ファンダメンタルズとも下落リスクが警戒される
〇ISM指数、雇用統計等の米経済指標を睨みながらも、ドル円相場の下落がメインシナリオ
〇来週の予想レンジ 106.00ー109.00
〇ユーロドルはテクニカル的力強さを見せつつも、ファンダメンタルズ的な弱さが続伸を阻むか
〇来週の予想レンジ1.0900−1.1200

今週のレビュー(5/25−5/29)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初107.58で寄り付いた後、@世界的な外出規制の緩和(新型コロナウイルスに伴う都市封鎖の緩和および本邦における緊急事態宣言解除)を受けた楽観ムードの広がりや、A株高・原油高を受けた投資家心理の改善期待(クロス円上昇→ドル円連れ高の動き)が支援材料となり、5/27に、一時107.96まで上値を伸ばしました。

しかし、心理的節目108.00をバックに伸び悩むと、B米中対立激化(全人代は香港国家安全法を圧倒的賛成多数で採択)を嫌気したリスク回避ムードの再燃や、C108.00トライに失敗したことに伴う失望売り、D米経済指標(米新規失業保険申請件数や、米1-3月GDP改定値など)の冴えない結果、E米長期金利の低下、F米ミネアポリスで発生した暴動、Gトランプ米大統領記者会見を前にした警戒感が重石となり、5/29アジア時間には、一時107.08まで下げ幅を広げる場面も見られました。もっとも、心理的節目107.00円をバックに下げ渋ると、引けにかけて再び反発。H「トランプ米大統領は米中の第一段階合意を破棄しない」との一部報道や、I上記Gの記者会見で真新しい内容(ネガティブサプライズ)が見られなかったことに伴う安堵感が支えとなり、結局107.83まで持ち直しての越週となっております(週間値幅は僅か88銭に留まるなど、方向感を見出し辛い時間帯が継続中)。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0903で寄り付いた後、@オランダ・オーストリア・スウェーデン・デンマークの4カ国がEU復興基金について拒否したとの一部報道や、A米中対立激化を嫌気したリスク回避のドル買いが重石となり、週明け早々に、安値1.0870まで軟化しました。しかし、B世界的な外出規制の緩和(新型コロナウイルスに伴う都市封鎖の緩和)を受けた楽観ムードの広がりや、C株高・原油高を背景とした投資家心理の改善期待、Dドイツ5月IFO景況感指数の好結果、E冴えない米経済指標を受けたドル売り圧力、FEUが復興基金を承認するとの期待感(欧州委員会は7500億ユーロの基金新設を提案するとの一部報道)、G市場参加者に注目されていた200日移動平均線を上抜けたことに伴う短期勢のロスカット(ショートカバー)、H月末ロンドンフィキシングに絡むユーロ買い(ドル売り)の動きが支援材料となると、週末にかけて、3/30以来となる高値1.1145(約2ヵ月ぶり高値)まで急伸する場面も見られました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、結局1.1104での越週となっております(週間値幅は275pipsと比較的な大きな値動きに)。

来週の見通し(6/1−6/5)

<ドル円相場>
ドル円は、5/19に約1ヵ月ぶり高値108.09まで上値を伸ばすも、200日移動平均線が走る108.35をバックに伸び悩むと、その後下落に転じました(5/29には一時107.08まで反落)。108円台での滞空時間は極めて短く、テクニカル的にみて、「上値の重さ」を印象付けるチャート形状となっております(※5/26高値107.93→5/27高値107.96→5/28高値107.90→5/29高値107.89と4日連続で108円乗せに失敗)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@日米における金融政策余力の違い(追加緩和余地の乏しい日本と、追加緩和余地の大きい米国)や、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感(米国のリセッション入りへの警戒感)、B米中対立激化懸念(トランプ米大統領は対中制裁措置の発動を警告)、C朝鮮半島や中東、香港を巡る地政学的リスク、D新型コロナウイルスの2次感染リスク(外出規制緩和に伴う2次感染リスクの拡大)、E日本経済の先行き不透明感(インフレ鈍化→実質金利上昇→円高)など、ドル売り・円買いを想起させる材料は引き続き沢山残っている状況です。

以上の通り、ドル円は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、「下落リスク」が警戒されます。世界的な外出規制の緩和は既に織り込み済みであり、ここから先は一巡後の「反落リスク」に警戒が必要でしょう。米中対立激化を巡るヘッドライン(米国による対中制裁や、中国による報復措置の発動など)や、人民元相場の基準値動向(中国当局が米国を牽制する目的で人民元安容認姿勢を打ち出せば、世界的な通貨安競争への思惑から円買いが促される可能性あり)、米経済指標(ISM製造業景況指数、ADP雇用統計、ISM非製造業景況指数、非農業部門雇用者数、失業率など)の結果を睨みながらも、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(米中対立激化→リスクオン相場の終了→株および原油の反落→クロス円反落→ドル円下落の波及経路に要警戒)。

来週の予想レンジ(USDJPY):106.00ー109.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は、3/23に記録した安値1.0637をボトムに反発に転じると、今週末(5/29)には、一時1.1145まで急伸しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、雲下限および雲上限、200日移動平均線を上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転も出現するなど、テクニカル的にみて、「地合いの強さ」を印象付けるチャート形状となっております(※但し、週末にかけて急伸した局面において、3/27高値1.1148、3/30高値1.1145とほぼ同水準で失速したことから、1.11台半ばは来週以降も強力なレジスタンスポイントとして意識されると考えられます)。

一方、ファンダメンタルズ的に見ると、@ユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感や、A次回ECBでの追加緩和観測、Bドイツ連邦憲法裁判所がECBの公的部門証券買い取りプログラムの一部が違憲であるとの見解を示していること、C英合意なき離脱リスクの再燃リスク、D米中対立激化懸念(トランプ米大統領は対中制裁措置の発動を警告)、E朝鮮半島や中東、香港を巡る地政学的リスク、F新型コロナウイルスの2次感染リスク(外出規制緩和に伴う2次感染リスクの拡大)など、ユーロドルの上値を抑制する材料は今尚沢山残っている状態です。

以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的に力強さを見せつつも、ファンダメンタルズ的な弱さが続伸を阻むシナリオが想定されます。新型コロナウイルスに係るヘッドライン(外出規制緩和後のユーロ圏の感染者数の動向など)や、欧米株及び欧米長期金利の動向(特にドイツと周辺国の利回り格差)、欧米の主要経済指標(ECB理事会や米雇用統計など)の結果、米中対立激化を巡るヘッドラインを睨みながらも、来週はユーロドル相場の反落をメインシナリオとして予想いたします(月末ロンドンフィキシングに向けたユーロ買い需要が一服→1.1150のレジスタンスをバックにした戻り売り→米中対立激化に伴うリスクオフ→ユーロ円売り→ユーロドル下落の波及経路に要警戒)。尚、来週6/4に予定されているECB理事会では、PEPP(パンデミック緊急購入プログラム)買い入れ枠の増額及び期間延長が予想されております。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0900−1.1200

注:ポイント要約は編集部

リスクオフ再燃に警戒。米中対立と米雇用統計がメインイベント

ドル円日足

オーダー/ポジション状況

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