トルコリラ円見通し トルコ中銀の利下げに対する反応は限定的(20/5/26)

5月19日夜高値の後の戻り高値は20日昼15.90円、21日午前及び22日午前の15.86円、25日昼の15.82円とやや切り下がってきている。

トルコリラ円見通し トルコ中銀の利下げに対する反応は限定的(20/5/26)

トルコ中銀の利下げに対する反応は限定的

〇トルコ円5/19の反騰高値15.92の後は戻り高値を切り下げる動き
〇新興国通貨安がコロナ不況長期化を背景に再燃すればトルコリラも史上最安値更新を再び目指しかねない
〇5/21の中銀利下げに対する反応は限定的
〇トルコは本日まで全面外出禁止だがその後は経済活動再開の動きも
〇トルコ円15.74以上で推移中は上昇余地あり、15.82超えからは高値試しへ
〇15.74割れからは19日以降の持ち合い下放れ、5/7からの反騰一巡による下落再開の可能性も警戒

【概況】

5月24日から26日まで、イスラム圏では断食明け大祭で祝日となっている。
トルコリラ円は5月7日午後に14.61円へ続落して史上最安値を更新したが、暴落商状一巡で5月7日当日から5月19日まで9日連続の日足陽線で反騰して5月19日夜には15.92円まで続伸したが、その後は新たな高値更新へ進めずに20日から25日までの間は15.80円を挟んでほぼ横ばいの推移が続いている。5月20日朝安値15.75円の後、21日朝安値15.74円、23日早朝15.74円等の安値を付けたところは買い戻されているものの、新たな高値更新へ進めず、5月19日夜高値の後の戻り高値は20日昼15.90円、21日午前及び22日午前の15.86円、25日昼の15.82円とやや切り下がってきている。

対ドルでのトルコリラは5月7日に7.27リラの史上最安値まで大幅下落となり2018年8月のトルコ通貨危機時の安値7.23リラを超える下落となったが、その後は暴落一巡で反騰入りして5月20日から22日までは3連騰となったが、5月19日に6.75リラまで戻した後は新たな高値更新へ進めずに下げ一服の横ばい程度での推移となっている。25日もトルコ祝日のために手掛かりに乏しく6.81リラを挟んだ小動きにとどまった。

【暴落後のリバウンドも一服、次のきっかけを探すところ】

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により金融市場がパニックに陥って新興国通貨が全面安となる中でトルコリラも対円及び対ドルで急落してきたが、主要国による大規模な金融緩和と欧米での経済活動再開の動き等から新興国通貨安が一服、トルコリラも暴落的な下落の反動で戻してきた。しかしパンデミックの爆発地は欧米から南米へと移りつつ世界的な拡大傾向は収まる兆候が見えない状況だ。

株式市場はアフターコロナの復興需要と金融緩和による押し上げ期待で上昇しているが、コロナショック前の世界景気レベルを回復するには相当の時間がかかるであろうことと、今回のショック安により新興国への投資はより慎重となり、いったん引き上げられた外資が新興国へ再び還流してゆくことにも時間がかかるだろうと思われる。
このため、ひとまず落ち着いた新興国通貨安がコロナ不況の長期化を背景に再燃してくれば、トルコリラも巻き込まれて下落再開へと進み、史上最安値更新を再び目指しかねないのではないかと懸念する。

5月21日のトルコ中銀による9会合連続の利下げに対しては平穏に通過しているが、5月29日に第1四半期のトルコGDP発表も控えている。前年比に対する市場予想は前期の6.0%から5.0%への低下、前期比では前期の1.9%からマイナス1.2%へ悪化が予想されている。トルコの感染爆発は3月末からであり、4月からの経済活動制限とロックダウン等の影響を1−3月期は反映しないため市場の反応も限定的と思われるが、今後の経済活動再開への動きが鈍いようだと先行きの景気後退への懸念によるトルコリラへの売り圧力も再び強まりかねないと注意したい。

【トルコ国内の感染状況は落ち着く】

5月25日終了時点での世界全体の感染者数は558万人を超えて死者も34.7万人台へ拡大した。米国の感染者は170万人を超えて死者も9万9805人となり10万人に迫っている。爆発的な感染拡大が発生しているブラジルは感染者37万人を超えて世界二位となり、ロシアも35万人を超えて三位となっている。南米ではペルーや地理、メキシコ等での感染拡大が顕著であり、欧州は峠を越えたかもしれないが世界的な感染拡大はまだ指数関数的な増加傾向のままとなっている。
トルコの感染者数は5月25日時点で前日比987人増の15万7814人、死者は29人増の4369人となった。感染者増加数は4月11日の5138人増をピークに減少傾向に入り、5月7日以降は2000人を切り、5月20日以降は概ね千人を切った状況まで改善している。
5月23日からラマザン・バイラム(5月24〜26日、断食明け大祭)までの間はトルコ全土で外出禁止となっているが、徐々に経済社会活動再開への動きが始まりつつある。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月19日夜高値の後は新たな高値更新へ進めずに推移したために21日午前時点では19日夜高値を直近のサイクルトップとし、21日朝安値の後は安値更新を回避しての横ばいが続いたために22日午前時点では21日朝安値を直近のサイクルボトムとした。
5月23日早朝安値で21日朝安値をわずかに割り込んだがその後は持ち直して15.80円を挟んだ持ち合いを継続している。このため23日早朝安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りとするのを妥当とみて23日早朝安値を直近のサイクルボトムと改める。トップ形成期は19日夜高値を基準とすれば26日夜までの間と想定されるが27日以降へ延長される可能性もあると注意する。ただし、23日早朝安値を割り込むところからは新たな弱気サイクル入りとして28日早朝から6月1日朝にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では19日夜高値の後は横ばい推移のために遅行スパン及び先行スパンが実線と交錯を繰り返しており方向感に乏しい。25日昼高値15.82円超えからは上向きとして遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、23日早朝安値割れからは持ち合い下放れとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は持ち合い相場のために50ポイント前後での小動きとなっている。60ポイント超えから続伸に入れば上昇再開とみるが、40ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント以下への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月23日早朝安値15.74円を下値支持線、25日昼高値15.82円を上値抵抗線とする。
(2)15.74円以上での推移中は上昇余地ありとし、15.82円超えからは5月19日夜高値15.92円試しへの上昇を想定する。15.90円以上は反落注意とするが、15.75円以上での推移なら27日午前も高値試しを続ける可能性があるとみる。
(3)15.74円割れからは19日以降の持ち合い下放れとして15.60円前後を目指す下落を想定する。15.65円以下は反発注意とするが、23日早朝安値を割り込んだ水準での推移なら27日も安値試しへ進みやすいとみる、また5月7日からの反騰一巡による下落再開へ向かう可能性も警戒される。

【当面の主な経済指標等の予定】

5月28日
 16:00 5月経済信頼感指数 (4月 51.3)
5月29日
 16:00 1−3月期GDP 前年比 (前期 6.0%、予想 5.0%)
 16:00 1−3月期GDP 前期期 (前期 1.9%)
 16:00 4月貿易収支 (3月 -53.9億ドル、予想 −39.8億ドル)
6月01日
 16:00 5月イスタンブール製造業PMI (4月 33.4、予想 40.6)
 20:00 トルコ中銀 MPC(金融政策会合)議事録主旨公開
6月03日
 16:00 5月消費者物価 前年比 (4月 10.94%)
 16:00 5月消費者物価 前月比 (4月 0.85%)
 16:00 5月生産者物価 前年比 (4月 6.71%)
 16:00 5月生産者物価 前月比 (4月 1.28%)

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