ユーロ週報「1.10台で上値を確認し、もみあい継続」
〇先週のユーロは独仏のEU経済再建基金提案で大きく上昇する流れでスタート
〇その後は上下しながら1.10台をつけるも反落1.08台後半に押して引ける
〇コロナ前の状況に更に悪材料が加わっているのが現在の欧州経済
〇為替市場は欧州、米国、日本等、全てが弱い中での弱いもの比べ、どの通貨が強いという判断は難しい
〇ユーロは方向感が出にくい上に客観的な材料ほど悲観的には動かないという流れが継続
〇今週は1.0825レベルをサポート1.0975レベルをレジスタンスとみる
〇ユーロ円木曜の118.53で目先の高値を付けた可能性
〇5月安値と先週高値の半値押し116.48を目指しやすい流れか
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロは、週初のドイツとフランスによるEU経済再建の5000億ユーロ規模の基金提案のニュースで大きく上昇する流れでスタートしました。その後も上下しながらも上昇を続け木曜に1.10の大台乗せを見ることとなりましたが、無理して大台をつけた感も強く結局は週末に向けて1.08台後半へと押して引けることとなりました。
欧州では国による差はあっても経済活動再開となりましたが、ドル円週報にも書いた通り各国の人出はいまだロックダウン前に比べると半分程度と、市民生活には安ど感とともに警戒感も残っていて、コロナ前に戻るには相当な時間が必要であることは容易に想像できます。先週こそ基金への期待で上昇する動きとなりましたが、実際に基金が始まるのはまだ先のことですし、もともと弱い欧州経済が期待だけで以前よりも良くなることはあり得ません。また、先週書いた通りブレグジット後の協議も難航していることから、コロナ前の状況に更に悪材料が加わっているのが現在の欧州経済と言えます。
もともとEUでは人と物の移動が自由でしたがコロナ禍で各国が国境を閉鎖し、完全に開放されるのはまだまだ先のことでしょうし、域外との人の移動に至っては現状では予想が立たないというのが正直なところでしょう。また今週も連日のように経済指標は出てきますが、新たに出る数字も改定値も悪い数字で当たり前ということから、金融市場への影響はあまり無い状態が続いています。しかし、実際に悪い数字が出てくるということは実体経済が悪いことに他ならないわけですから、将来的にある程度の改善が見られない限り期待だけでリスクオンというのは難しいところです。
株式市場では各国とも悪いのであれば、あまり楽観的にならず期待だけで買う動きには注意が必要という単純な図式で良いと思いますが、為替市場では欧州、米国、日本等、全てが弱い中でのその時の弱いもの比べということになり、客観的にどの通貨が強いという判断は難しく、そのことが今の為替市場で方向感を出にくくしている要因と言えます。
ただ、以前の欧州が弱かったという事実を考えると、先週示したように、もみあいを下抜ける可能性の方が高いと思っていましたが、実際は基金構想に期待したユーロ買いでいったんはトライアングル(三角もちあい)を上抜けた後に、結局は反落という動きとなりました。期待で買われた分だけ反落も大きかったということもできますが、より長い目で見るとサポートはそのまま、レジスタンスは大台1.10という流れのように思えます。
今の相場はユーロだけではありませんが、方向感が出にくい上に客観的な材料ほど悲観的には動かないという流れが続いています。テクニカルに判断した方がよさそうですから、日足チャートをご覧ください。
4月以降は今回も含めて1.10の大台(黄色のラインマーカー)で3回反落する動きを繰り返しています。当然ユーロ売りオーダーが並んでいることもありますが、大台を大きく超えて買う材料が無いことを示している動きです。またサポートはピンクのサポートラインが依然として有効で今週は1.08台前半を緩やかに上昇中です。
大きな材料も出て来ない中、当面はこれら両水準に挟まれたもみあいを継続しやすいと見てよいでしょう。今週はテクニカル観点から1.0825レベルをサポートに1.0975レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
今週のコラム
今週はユーロ円の日足チャートを見てみましょう。
先週のユーロ高の動きの中でユーロ円も木曜に118.53の高値をつけ、その後はユーロドルとともに押しが入る動きとなっています。ユーロドルの上値が1.10で抑えられたこと、タイミングはやや異なるもののドル円も108円台で上値が重たかったことから、ユーロ円も目先の高値を見た可能性は高いと言えます。
またテクニカルにも年初来高値122.87と年初来安値114.43の半値戻しが118.65(赤のターゲット)となっていて、先週の高値でほぼこのターゲットを達成したと考えることができます。ユーロドル、ドル円の動きにもよりますが、5月安値と先週高値の半値押し116.48(青のターゲット)を目指しやすい流れにあると見ています。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
5月25日(月)
**:** LDN、NY市場休場
15:00 ドイツ1〜3月期GDP改定値
17:00 ドイツ5月ifo企業景況感
5月26日(火)
15:00 ドイツ6月GFK消費者信頼感
21:45 レーンECB理事講演
5月27日(水)
15:45 フランス5月消費者信頼感
16:30 ラガルドECB総裁講演
5月28日(木)
18:00 ユーロ圏5月消費者信頼感
21:00 ドイツ5月CPI速報値
5月29日(金)
15:00 ドイツ4月小売売上高
15:45 フランス5月CPI速報値、4月PPI
15:45 フランス1〜3月期GDP改定値
18:00 ユーロ圏5月CPI速報値
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
5月18日(月)
ユーロドルは東京市場では動かず、欧州市場序盤に全般的なドル買いの動きに沿って下押しが先行しましたが、ドイツとフランスがEUの経済再建のため5000億ユーロ規模の基金を提案とのニュースに反応し大幅高。欧州市場前場には1.0800レベルの安値をつけていましたが、NY後場には1.0927レベルの高値をつけそのまま高値圏での引けとなりました。
5月19日(火)
ユーロドルは、東京市場では動きは見られなかったものの欧州市場序盤以降は前日NY市場のユーロ買いの流れを再開、一時1.0976レベルの高値をつけました。しかし、その後は1.10の大台を前に売りが出てきたことや、NY市場ではドル円とともにユーロ円の売りが出たこともあって1.09台前半へと東京市場の水準に押して引けました。
5月20日(水)
ユーロドルは東京市場では前日NYの下げに対して再びユーロ買いが出てくる流れで始まり、その後の海外市場でもユーロ買いの動きが続くこととなりました。材料的には週初の基金構想の話を好材料としての蒸し返しの買いという流れでしたが、NY市場前場には高値1.0999レベルをつけました。1.10の大台超えにはまだ売りが見えていたこともあり、引けにかけてはもみあいとなりました。
5月21日(木)
ユーロドルは欧州市場前場までは方向感がはっきりしないもみあいとなっていましたが、欧州昼前に買いが強まるとストップオーダーも巻き込みながら一段高、NY市場の朝方には高値1.1007レベルと大台超えを見ることとなりました。しかし、達成感と大台超えに控えていたユーロ売りオーダーにぶつかり、引けにかけては1.09台前半に押した後に若干戻しての引けとなりました。
5月22日(金)
ユーロドルは前日NY市場の下げを継続しながらも、東京市場ではリスクオフの動きからユーロ円の売りも目立ちじり安。その後もドル買い戻しの動きの中でユーロは上値が重く、NY朝方に1.0885レベルの安値をつけた後も安値もみあいのままの週末クローズとなりました。
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