トルコリラ円見通し トルコ中銀の利下げに対する反応は限定的(20/5/22)

連騰は9連騰でストップして10日ぶりに日足陰線となったが、21日朝に15.74円まで若干安値を切り下げたものの確りし、15.83円を挟んだ横ばい推移が続いている。

トルコリラ円見通し トルコ中銀の利下げに対する反応は限定的(20/5/22)

トルコリラ円見通し トルコ中銀の利下げに対する反応は限定的

〇トルコリラ円は15.83円を挟んだ横ばい推移、ドルトルコリラも6.8リラを挟んだ横ばい
〇トルコの反騰一巡から調整的円高リラ安ドル高リラ安の可能性も
〇トルコ中銀は昨日予想通り利下げ実施
〇利下げ発表後のトルコリラの反応は限定的
〇トルコ国内のコロナ感染者増加は5/20以降1日千人以下に減少
〇当初の下値支持線を15.74、上値抵抗線5.92とおく

注:ポイント要約は編集部

【概況】

トルコリラ円は5月7日午後に14.61円へ続落して史上最安値を更新したが、暴落商状一巡で7日当日から5月19日まで9日連続の日足陽線で反騰してきた。
5月19日夜にはドル円が108円台に到達する中で15.92円まで一段高したが、その後は新たな高値更新へ進めずにいる。20日朝には15.75円まで下げて連騰は9連騰でストップして10日ぶりに日足陰線となったが、21日朝に15.74円まで若干安値を切り下げたものの確りし、15.83円を挟んだ横ばい推移が続いている。

対ドルでのトルコリラは5月7日に7.27リラの史上最安値まで大幅下落となり2018年8月のトルコ通貨危機時の安値7.23リラを超える下落となったが、その後は売り一巡から反騰に入り、5月7日当日から19日まで9日連続でドル安リラ高へ戻してきた。19日に6.75リラまで戻した後は反騰一服となり6.8リラを挟んだ横ばいとなっている。
対円及び対ドルでの暴落後の反騰がやや減速し始めているため、反騰一巡からいったん調整的に円高リラ安、ドル高リラ安へ進む可能性もあるところと注意したい。
5月22日は日本時間夕刻に5月のトルコ景況感、5月の設備稼働率、4月の観光客数等の発表がある。

【トルコ中銀、予想通りの利下げ】

【トルコ中銀、予想通りの利下げ】

トルコ中銀(ウイサル総裁)は5月21日の金融政策委員会(MPC)において政策金利の1週間物レポ金利を8.25%とし、従来の8.75%から0.5%引き下げた。9会合連続での利下げであるが、市場の事前予想通りであり、利下げ発表後にトルコリラは対ドルで若干下落したが反応は限定的で、トルコリラ円も発表前からの下落で15.78円まで下げていたものの発表後は15.85円まで戻し、その後は15.80円台を中心とした横ばいにとどまった。
トルコ中銀は「計画的な利下げ」としており、声明ではインフレは短期的に若干高まる可能性があるものの年後半には需要面からのディスインフレ効果が優勢になるだろうとの見通しを示した。

エルドアン大統領とトルコ中銀は昨年7月から段階的な利下げ方針を示して実行してきた。2018年のトルコ通貨危機の際には2018年9月に24.00%まで急激な利上げを行ったが、通貨危機が落ち着きトルコ経済も堅調さを取り戻す中で「政策金利とインフレ率の一桁」を目指してきたが、2018年に利上げされる前の安定水準だった8.00%に近付いたことになる。
ただ、一方で4月の消費者物価上昇率は前年比で10.94%であり、実質的なマイナス金利状態に入っている。コロナショックによるデフレ化が進めば物価上昇率も落ち着く可能性があるが、世界不況の長期化となれば再び新興国通貨が売られて通貨インフレを招く可能性もあると警戒される。

【トルコ国内の感染者増加は5月20日から1日千人以下に減少】

5月21日時点での世界の感染者数は518万人を超えて前日からは10万人超の増加となり、死者は33.4万人を超えた。米国は162万人を超え、死者も9万6314人に増えた。ロシアは31.7万人を超えて世界第二位、ブラジルは31万人を超えて第三位に浮上したが前日比で1万6730人の増加でありロシアに迫っている。ブラジルは検査数が極端に少ない(ロシアの784万件に対して73.5万件)ために今後もさらに爆発的増加へ進む可能性があると懸念される。また世界全体での増加も10万人超のペースで衰えない。

トルコの感染者数は5月21日時点で前日比961人増の15万3548人、死者は27人増の4249人となった。感染者増加数は4月11日の5138人増をピークに減少傾向にあり、5月7日以降は2000人を切り、5月20日は千人を切った状況まで改善している。死者も4月19日の127人をピークに大幅に減少が続いている。
5月23日からラマザン・バイラム(5月24〜26日、断食明け祭)までの間はトルコ全土で外出禁止となるが、5月29日からは現在禁止されている集団礼拝等が制限付きで再開される。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月19日朝安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りとして21日夕から25日夕にかけての間への上昇を想定していたが、19日夜高値の後は新たな高値更新へ進めずに1日以上を経過したため、21日午前時点では19日夜高値を上抜き返すところからは新たな強気サイクル入りとするのを妥当とみて19日夜高値を直近のサイクルトップとした。またボトム形成期は21日朝にかけての間と想定されるので既に20日朝安値でサイクルボトムを付けた可能性があるとした。
21日朝安値の後は横ばいが続いているので、21日朝安値を直近のサイクルボトムとする。底割れ回避のうちは22日夜から26日夜にかけての間への上昇を想定するが、21日朝安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りとして26日朝から28日朝にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では19日夜高値の後は横ばい推移のために遅行スパンは実線と交錯しているが、先行スパンからの転落を回避している。19日夜高値超えからは一段高入りとなるので遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、21日朝安値を割り込むところからは先行スパンからの転落へ進みやすくなるために遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は50ポイント前後での小動きとなているので、65ポイント超えからは上昇再開とみるが45ポイント割れへ低下するところからは下げ再開注意とし、21日朝安値を割り込む場合は30ポイント以下への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月21日朝安値15.74円を下値支持線、19日夜高値15.92円を上値抵抗線とする。
(2)15.74円以上での推移中は上昇余地ありとし、15.92円超えからは16.10円前後への上昇を想定する。16.10円以上は反落注意とするが、15.75円以上での推移なら週明けも高値試しを続ける可能性があるとみる。
(3)15.74円割れからは19日朝安値15.56円を目指す下落を想定する。15.60円以下は反発注意とするが、21日朝安値を割り込んだ水準での推移なら週明けも安値試しへ進みやすくなる、また5月7日からの反騰一巡による下落再開へ向かう可能性も警戒される。

【当面の主な経済指標等の予定】

5月22日
 16:00 5月景況感 (4月 66.8、予想 55)
 16:00 5月設備稼働率 (4月 61.6、予想 57.0%)
 16:00 4月観光客数前年比 (3月 -67.8%、予想 -97.0% 
5月28日
 16:00 5月経済信頼感指数 (4月 51.3)
5月29日
 16:00 1−3月期GDP 前年比 (前期 6.0%)

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